【ポルシェ928】水冷フロントエンジンポルシェの最高峰モデルは唯一無二の存在

ポルシェといえば空冷の水平対向6気筒エンジンをリアに積んだ911を思い浮かべますが、いまから約40年前には水冷エンジンをフロントに搭載したFR車を主力にしようとする動きがありました。純然たるスポーツカーである911では満足できない富裕層に、911よりも快適に高速移動できるGTカーの開発が急務でした。ポルシェからの回答が928です。ポルシェ史上最長寿モデルでもあるこの928を大解剖してみます。

ポルシェ928という車

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BB928

ポルシェ928の開発は1973年に始まりました。当時のポルシェ社長だったエルンスト・フールマンが、ポルシェ・911に代わる新たな主力車種として開発を始めました。当時911よりも上級グレードだったジャガーEタイプ、アストンマーティン、フェラーリの12気筒モデルなどのプレミアム・スポーツや、高級パーソナルクーペのBMW・6シリーズやメルセデス・ベンツ・SLクラスなどをターゲットとして、企画・開発が進められました。
4年後となる1977年3月に新世代ポルシェのフラグシップモデルとしてデビューしています。フラッグシップモデルと呼ぶにふさわしい新技術を惜しみなく投入し、ライバルたちにも引けを取らない高級仕様と相まって名実ともに最高峰モデルに仕上がっています。
外観は、全体的に丸みを強調した卵形のシルエットにまとめられ、当時の車たちのデザインを台無しにしていた北米の安全基準に適合したボディ一体型の衝撃吸収バンパーも上手にデザインとして取り込んでいるのがわかります。
内装は当時のスポーツカーらしく黒基調でまとめられていて、メーターパネル全体がハンドルと一緒にティルトして高さを調整できるシステムを採用しています。
ほぼすべてが専用設計されていて、ポルシェ量産車のフラグシップモデルとして生産されていましたが、1995年にポルシェの経営悪化に伴い生産が中止されました。これ以降、928の実質的な後継車は発表されていません。
年を追うごとに幾多の改良と発展が行なわれているものの、ポルシェにとって単一車両形式としては最長寿モデルとなりました(19年)。ポルシェ911の930型(1975年から1989年)が15年、ポルシェ356(1948年から1965年)は18年です。

エンジン&トランスミッション

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%BB928

搭載された駆動ユニットは、ポルシェ自社製のV型8気筒エンジンをフロントミッドに搭載したFRレイアウトです。つうじょうの トランスミッションではなくトランスアクスルレイアウトが採用されていて、車重の理想的な前後配分に貢献しています。
911とは対照的にエンジンは水冷で、コグドベルト駆動、ハイドローリック・タペットなど、当時の新鋭技術を満載しています。燃料供給にもボッシュ製Kジェトロニックを採用していました。
トランスミッションは5速M/Tとメルセデス・ベンツ製の3速A/Tが選択できましたが、日本ではA/Tの需要が高く、初期型の928及び928S、M/Tしか設定のないの928GTを除けばA/T搭載車が圧倒的に数が多いです。後の928S4からはA/Tが4速になっていますが、通常は2速発進からの自動変速となるDレンジを選択し、登坂などは1速ホールドとなるGレンジを選択するという現代とは少し勝手の違うA/Tです。
バッテリーボックスは、荷重を50対50に近づける目的とわせて、デファレンシャルケース周りの共振を抑えるスタビライザーとしても機能するようにトランスミッションに固定されています。

革新的な技術

出典:http://www.total911.com/technology-explained-rear-axle-steering/

コーナリング中にかかった横荷重を利用して、外側の後輪が最大2°までトーをイン側に向けように機械的に制御する“ヴァイザッハ・アクスル(Weissach Axle)”が採用されています。これにより、リヤにかかるコーナリングフォースを安定させ、従来モデルよりも安定したコーナーリングが出来るようになりました。
この考え方は、その後の日本車に搭載された4WSやメルセデスベンツが190Eから採用したマルチリンクサスペンションにも大きな影響を与えたのです。

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Porsche_928

928のデザインで大きな特徴になっているヘッドライト。このままでは空を照らしてしまいそうですが、ちょっと変わったポップアップ式を採用しています。スラントノーズを実現するために普段はボディラインの中にいますが、ライトを点灯すると前方に目が飛び出るように動きます。当時、リトラクタブル式を採用している車はありましたが、そのまま採用しないところがさすがはポルシェですね。しかも、立ち上がったヘッドライトは911を始めとする他のポルシェ車とほぼ同じ位置にあります。ルームミラーに映る姿はまさしくポルシェそのもので、狙っていたのだとしたらすごいアイデアだと思います。

多くのスポーツカーに影響を与えた車

T字型のなだらかに乗員を包むようなデザインのダッシュボード形状は、2代目ソアラやZ32日産・フェアレディZやNSX等1980年代中盤以降の日本車にも多く採用されました。進化系の928S4の登場は、そのコンセプトが後のフェラーリテスタロッサやフェラーリ456に影響を与えたと言われています。
なお1978年にヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。これは現在まで数えて唯一スポーツカーでの受賞でもあります。

フロントエンジンポルシェの最高峰

ポルシェといえば空冷水平対向エンジンをリアに置くRRレイアウトが代名詞のようになっていますが、当時は水冷エンジンFRレイアウトを主軸にすることを本気で考えていたようです。928のデビューの直前に、一足先にポルシェ924がデビューしています。もちろんエルンスト・フールマンの発案で、新世代のポルシェとして開発されました。928とは対照的にボトムレンジを担うモデルとして、徹底的なコストカットが行なわれています。
当初はフォルクスワーゲンとの共同開発で“フォルクスワーゲン・アウディ・スポーツ”として開発が進められた924は、部品共有によるコストダウンとVWの生産ラインを使用することでの量産化が前提だったものの、フォルクスワーゲン社の経営陣交代によって開発は打切られてしまい、ポルシェが案件を買い取ることで、独自商品として開発を続けました。
ボトムレンジを担う924シリーズと並行して、911に代わる主力モデルとしての928だったのでしょう。

モデルの変遷

928

出典:http://test-drivez.com/reviews/porsche-928.html

ベースモデルとも呼ぶべき初期型928です。日本では1978年から販売されました。

スペック
ボア×ストローク:95mm×78.9mm
総排気量:4,474cc
圧縮比:8.5
最高出力:228ps/5,250rpm
最大トルク:35.0kgm/3,600rpm
最高速度:230km/h
トランスミッション:5速M/Tまたは3速A/T

1981年にマイナーチェンジ
圧縮比:9.0に向上
ボッシュLジェトロニックに変更(初期型はKジェトロニック)
最高出力:231ps/5,500rpm
最大トルク:36.7kgm/4,000rpm

駆動方式:FR
サスペンション:前 ダブルウィッシュボーン+コイル
        後 セミトレーリングアーム+コイル
全長:4,447mm
全幅:1,836mm
全高:1,313mm
ホイールベース:2,500mm
車両重量:1,500kg

1982年モデルまで928Sと併売されました。

928S

出典:http://test-drivez.com/technical-characteristics/porsche-928s.html

排気量を拡大した928Sです。日本では1981年から販売しました(1980年ヨーロッパとオーストラリアで発売)。

スペック
ボア×ストローク:97mm×78.9mm
総排気量:4,664cc
燃料噴射装置:ボッシュL-ジェトロニック
最高出力:270PS/5,750rpm(ドイツ仕様は300PS/5,900rpm)
最大トルク:39.2kgm/4500rpm
最高速度:250km/h
装着ホイール:16インチ
フロントスポイラーを装備
全高を1,282mm(-31mm)に変更
ステアリングを4本スポークに変更
電動シートをオプション設定。

1983年のル・マン24時間耐久レースにグループBで出走しましたが、レースリザルトは周回数不足で順位付きませんでした。

928S2

出典:http://flickrhivemind.net/Tags/porsche,porsche928/Interesting

エンジンがDOHC32バルブ(4バルブ)に改良された928S2です。日本では1985年に販売しました。

総排気量:4,664cc
最高出力:292PS/5,750rpm
最大トルク:42kgm/2,700rpm
最高速度:247km/h
最高速度:240km/h
燃料供給装置:ボッシュLH-ジェトロニック

928S4

出典:http://starmoz.com/porsche-928-s4.html#

排気量が拡大され、外観の印象が変わった928S4です。日本では1987年から販売しました。

総排気量:4,957cc
最高出力:320PS/6,000rpm
最大トルク:43.9kgm/3,000rpm
最高速度:270km/h

外観の変更点
前後のランプデザイン
バンパー形状
リアスポイラー形状

928GT

出典:http://klassiker-handel.de/fahrzeuge/porsche-928-gt-2/

インテークポートやカムの変更でパワーアップした928GTです。日本では1990年から販売しました。

最高出力:330PS/6,200rpm
最大トルク:43.9kgm/4,800rpm
最高速度:275km/h

サスペンションの設定も変更されています。
5速M/Tのみの設定です。

928GTS

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Porsche_928

さらに排気量が拡大された928GTSです。日本では1992年から販売しました。

総排気量:5,396cc
最高出力:340PS/5,700rpm
最大トルク:50.9kgm/4,250rpm
最高速度:294km/h。
全長:4,515mm
全幅:1,845mm
全高:1,330mm
ホイールベース:2,485mm
車両重量:1,660kg
左右のリアランプをガーニッシュでつないだデザインが特徴です。
運転席、助手席にエアバッグを装備しています。
日本でも5速M/Tと4速A/Tが選択できました。

変わり種 ドクターズカー

出典:http://www.mye28.com/viewtopic.php?t=90656

928の変わり種、ドクターズカー(Doctor's Car)です。1984年にワンオフ製作された車両で、フェリー・ポルシェの75歳を祝って、ホイールベースやルーフラインを延長しスポーツワゴン風に仕立てられたフル4シーターモデルです。
完成直後には世界中の自動車メディアに紹介されましたが、財政的な問題などから市販化は行なわれていません。このモデルには量産モデルのパイロット生産品としての側面もあり、5リッターエンジンや新形状のリヤバンパー、当時としては画期的なプロジェクターヘッドランプがいち早く導入されていました。
現在は本社隣接のポルシェ・ミュージアムに所蔵されています。

さすがポルシェ!な乗り味

随分昔(25年くらい前)のことですが、928S4を運転したことがあります。あの時のことは鮮明に憶えています。今の時代もそうですが、なかなかポルシェに乗る機会なんてありませんよね。しかも当時の最高峰モデルです。
今の基準で見ればさして大きくないボディですが、当時は“なんだこれ?”と思うほど大きな車でした。しかも丸いデザインのおかげで車体の隅がどこにあるのかがさっぱりわかりません。正直、大きな通りしか走れません。狭い道に入ったら確実にこする自信大アリです。
エンジンをかけるとなかなか大きなというか重低音を発します。いかにもトルクがありそうな音です。Dレンジに入れると後ろから殴られるたかのようなシフトショックに驚くのですが、アクセルを踏み込むと別の驚きがやってきます。すごい勢いで前へ出て行きます。オーナーを隣に乗せていましたのでさらにドキドキなのですが、“街中で乗る車じゃないですね”と申し上げると“高速使おうか”とおっしゃっていただけました。それはそれで緊張します!
高速道路に乗せてしまえば、まさに“水を得た魚”。ヴァイザッハ・アクスルの効果かどうかなんて考える余裕はありませんが、車線変更時にハンドルを切って頭が向きを変えると自然とお尻がついてくる感覚は、さすがポルシェ! と発してしまうほど軽快な印象でした。これは911とは全く別な感覚です。
思いの外シャープに吹け上がるエンジンと太いトルクのおかげで、どこからでも加速できてしまう能力を持っています。おかげで速度的にはすぐに危険な領域に飛び込みますが、十分すぎる制動力も相まってじつに安定してコントロールしやすいものですから、さらに右足が...

おもりは大変?維持費など

何人かのオーナーさんがブログ等で維持費を公開されていますが、それらを見ていると維持費に関しても“さすがポルシェ”と言いたい内容ですね。平均燃費は5.61km/Lとのことです。当然ハイオク仕様ですから、ガソリン代だけでも結構な費用です。
このサイズのタイヤだと1台分工賃込みで200,000円くらいしますし、エンジンオイルが8Lも入りますからオイル交換だけでも30,000円コースです。ブレーキパッドはフロント1台分工賃込みで30,000円。タイミングベルトを交換すると、部品代+工賃で350,000円ですって。
1年で10,000km乗ると仮定するとガソリン使用量は1,783Lですから、ハイオクガソリンを125円としても222,816円必要です。タイヤとブレーキパッドは2年で交換するとして115,000円/年必要ですし、エンジンオイルを2回交換すると60,000円です。忘れちゃいけない自動車税は、4.5〜6.0Lだと88,000円です。車検費用まで見ると、全部で1年で600,000円! 頑張りましょう。

「ポルシェ928を一年間乗ってみて」について - ワッキー☆牛田組 のブログです。Powered by みんカラ

そもそもダレが面倒見てくれる?専門店など

シビアな維持管理が求められるポルシェ。しかも928はなかなかの異端児ですから、精通したショップ探しが急務です。FRレイアウトもさることながら、当時の最新技術が盛り込まれていますので911とは違うノウハウが要求されます。

ポルシェの事なら販売・修理・メンテナンス・オーバーホール・レストア・塗装・レースカー製作まで「アウトバーンモーター」へどうぞ。

空冷ポルシェ専門店日之出モータースは、整備修理から足廻りまで、専門店ならではの経験豊富なメカニックが対応します。

最後にまとめ

さすがはポルシェがフラッグシップとして開発した車です。高速道路を走るとつくりの良さがよくわかります。グランツーリスモとはこうあるべきというポルシェの思いが伝わってくる気がします。とても魅力的な車なのですが維持するのも大変そうですから、もし試乗をする機会に恵まれたなら覚悟をしてから乗ってくださいね。