【スズキ・パレット】ユーザーは「十人十色」!パレットで多彩なカーライフを!

ワゴンRの成功は軽ハイトワゴンの普及と人気に。そして、そのワゴンRを超えるべく作られたダイハツ・タントによる軽スーパーハイトワゴンという流れへの発展。軽自動車に求められるものはより多種多彩に。そんな多種多彩なユーザー要求とカーライフを実現するために作られたパレットというクルマ。

「ワゴンRの成功」と「タントへの発展」

軽自動車に対する価値観の変化

ワゴンRが登場する前までの軽自動車と言えば「セダンというイメージからかけ離れた、乗用できる軽自動車」か「快適性を捨て去った商用車」と言ったものばかり。「ダイハツ・ミラ」「スズキ・アルト」が一般的な軽自動車だった時代。今のミラやアルトでは後部座席には余裕のある空間が確保されていますが…以前は後部座席への快適性なんて考えられなかった…むしろ後部ドアすらなくて、乗り降りのし易さとか利便性も怪しいもの…。もはや単なる移動手段としての位置づけでした。

そんな中で1993年に登場したワゴンRは瞬く間に大ヒットとなりました。
・高い天井。
・高い天井を生かし、高められたシートの座面。それによる目線の高さと視界の広さ。
・軽商用バンとは違い、床面が低くて乗り降りしやすい。
今の軽ハイトワゴンの基礎をしっかり押さえています。このワゴンRの成功により、他社からは続々と対抗するための軽自動車が登場します。

より快適な軽自動車を追及する流れへ

スズキのワゴンRの成功に対抗するべく、ダイハツからはムーヴを投入。しかし、販売時期において出遅れてしまったというのは大きなハンデ。販売ターゲットとなるユーザーの手元には、既にワゴンRがあります。
ムーヴはその後も販売が続けられ、今ではダイハツの人気車種の一つとなっています。しかし、ワゴンRと販売台数で争うものの、なかなかその牙城は崩せず…。というのも、ワゴンRは2006年~2011年の5年連続で軽自動車年間販売台数1位を記録し、普通車を含めた年間販売台数においても1位を記録することもあるほどの人気車種。

ワゴンRと「同じ階級での勝負は難しい」ならば、「より上のランクで勝負すればいい」

ワゴンRやムーヴを超える軽自動車として、ダイハツからタントが登場します。ワゴンRが登場してから10年後の2003年のことです。

当初は大型化したことで「走行時に車体が横揺れする」「横風の影響も受け易い」など、軽ハイトワゴンのデメリットがより強く出てしまったため、ユーザーからは戸惑いの声も。
しかし、それも時間の経過と共に認知されたことで、ユーザーからは受け入れられ、従来の軽ハイトワゴンを超えた「軽スーパーハイトワゴン」としての地位を確立していくことになります。

パレットの登場

タントへの対抗

タントの登場によって、スズキとしてはワゴンRだけではライバルへの対応が難しくなりました。
実際に長年に渡って維持していた軽自動車年間販売台数1位を奪ったのは、軽スーパーハイトワゴンである「ホンダ N-BOX」であり、タントも2014年に軽自動車年間販売台数1位を獲得しています。

「近い将来ワゴンRでは販売台数を確保できなくなる」ということが予想されるようになり、スズキはタントと同じ軽自動車「軽スーパーハイトワゴン」を開発します。

そこで登場したのが「スズキ・パレット」でした。販売開始は2008年。タントが発売されて5年目。このとき既にタントは2代目に移行していました。

パレットの特徴は後部両側スライドドア。それまでは軽商用バンなどでの採用にとどまっていた、後部両側スライドドアをこのタイプではじめて採用します。(初代タントは通常の4ドア仕様。2代目は左側後部のみスライドドア)
その他、最上級グレードでは軽自動車初となるサイドカーテンエアバッグを標準装備。この頃から軽自動車は更なる高品質化が進んでいました。

他社へのOEM供給

しかし、かつてのワゴンRとムーヴと同様。既に軽スーパーハイトワゴンを求めるユーザーの手元にはタントがある状態。このままでは苦戦することは予想されます。

スズキとしてはとにかく売れてもらわないと困ります。そこでパレットを一部改良し、更にパレットをもっと多くの場所で売ってもらうことにします。

それが姉妹車・OEM車とも言われるものです。

まず日産へのOEM供給を開始。パレットから車名を「日産・ルークス」へと変更し、2009年12月より販売が開始されました。
その後、2012年6月にマツダへもOEM供給を開始。「マツダ・フレアワゴン」として販売を開始します。

これによりスズキ・日産・マツダの3つのメーカーとそれに関連するディーラーから車名を変えてはいますが、パレットが販売されるという形になりました。つまりそれだけ多くの販売店で取り扱いされるようになり、かつそれぞれのメーカーを支持するユーザーに対しても販売ができるようになります。タントには及ばないものの、3社合算での販売台数はかなりのものになりました。

「2代目パレットの開発」と「突然の幕引き」

販売開始からしばらく経ち、一部改良やマイナーチェンジを重ねてきましたが、フルモデルチェンジによる2代目パレット開発の時期となりました。しかし、フルモデルチェンジした2代目パレットは販売されませんでした。

というのも、パレットという車名が消滅してしまったのです。2代目パレットとして開発している際に、軽スーパーハイトワゴンの特徴でもある「広い車内空間」をイメージしやすく、アピールできる車名に変更されたのです。

それが「スズキ・スペーシア」です。当初は2代目パレットとして開発されていたため、名前こそ変わったものの後継機になります。実際に型式などはパレットから引き継いでいます。

スズキ・パレットに求められたもの

その名前の由来

パレットというのは画材道具のパレットです。

このパレットの上に絵の具を取り置き、絵の具を混ぜ合わせて違う色を作り出したりします。スズキのパレットという車名もこのイメージから来ています。

同じクルマのユーザーであっても、それぞれクルマの使い方 すなわちカーライフは違います。かつての小さな軽自動車で出来ることと言うのは限られていました。それをパレットではユーザーの様々なカーライフに合わせて、色々な使い方ができるクルマであるということで名付けられたのです。

パレットで考えられた「軽自動車による多彩なカーライフ」とは

パレットと言う車名の背景には「軽自動車による多彩なカーライフ」という考えがあります。その考えはいつ生まれたのか? そして、具体的にはどのようなものなのか? それを考えて見たいと思います。

既にワゴンRの頃よりはじまっていた。

パレットの時代から遡って、ワゴンRが発売された頃の話です。
すでに述べたとおり、ワゴンR登場以前の軽自動車と言うのは「単なる移動手段」という認識。セカンドカーとしての位置づけであり、販売ターゲットは交通インフラが整備されていない地域での移動手段を求めている人。具体的には買い物での移動手段を求めていた主婦などの女性がメインとなる販売ターゲットでした。

それに対して、ワゴンRの販売ターゲットは若い男性。ワゴンRに乗って、ドライブや趣味に使ってもらおうという考えの元で開発されました。当時のキャッチコピーは「クルマより楽しいクルマ、ワゴンR」です。ワゴンRで楽しいと思えることをユーザーにしてもらおうということです。

ワゴンRはその作りの良さもあり、当初の思惑は外れ、老若男女の幅広い層の支持を獲得する人気車種となりました。しかし、ワゴンRの開発コンセプトは「楽しいクルマ」です。もちろん使い易いということは重要なのですが、本来その使い易さはワゴンRで楽しむためのものです。

その考えは今でも残っています。ワゴンRを初めとする軽ハイトワゴンの特徴でもあるシートアレンジ例です。ワゴンRではサーフボードが積み込まれています。「ワゴンRにサーフボードを積み込んで、ワゴンRに乗ってサーフィンを楽しんでもらう」というイメージなわけです。

ワゴンRはその「楽しいクルマ」というコンセプト以外のところでも評価されていますが、本来想定されていた使い方とはこういう感じのものだったのです。

「軽スーパーハイトワゴン」で、ユーザーがより自由に

ワゴンRが成功し、そのワゴンRを超えるために開発されたタント。軽ハイトワゴンから軽スーパーハイトワゴンへと発展していきます。

軽スーパーハイトワゴンと言えば、ファミリーカーとしての側面もあります。しかし、ワゴンRがそうだったように、タントのような軽スーパーハイトワゴンにおいても「楽しいクルマ」としての機能があるということです。その楽しさに「家族」という要素がより強くなったというだけです。

軽ハイトワゴンや軽スーパーハイトワゴンの座席に家族4人で座っての「楽しいドライブ」と言うのが可能になりました。かつての狭さ印象的な軽自動車に乗って家族4人で遠方へのドライブなんてしたらどうでしょうか? 楽しいと言うよりも、むしろ苦痛に感じたかもしれません。
それがワゴンRやタントによって変わりました。かつての「ただの移動手段」から「自由に移動が出来て、自由に載せて、自由に使えるクルマ」というものに変化したのです。

自由なユーザー それに答えられるクルマが必要に

ユーザーが軽自動車で自由を手に入れたことで、逆に厄介なこともあります。あまりにも自由な発想や行動をするユーザーが増えてしまったのです。

シートアレンジで大容量の収納スペースが確保できるようになったことで、まるで積めない物を探すかのようにありとあらゆるものを積み込みます。「大きな家具が積める」「自転車が積める」「アウトドア用品が積める」とユーザーが試し、そしてそれ知ってしまうと、ユーザーの中での評価基準が変わってしまうのです。

そうなってくると自動車メーカーとしては、「いやいや、うちのクルマでも大きな家具が積めますよ」「こっちはこんなこともできますよ」とアピールしないといけなくなってきます。

自転車を積むと言われれば自転車を積みます。

バイクを積みたいとなったらバイクを積むようになりました。

あまりにもユーザーの発想と行動が自由であるため、メーカーはより「多用途に使える」ということを考慮しなければならなくなっています。ユーザーのカーライフはいつの間にかより多彩で豊かなものになっていったのです。
パレットで考えられた「ユーザーの多彩なカーライフ」というのは、今では多彩になりすぎたと言っても過言ではありません。

もはやひとつの車種では受け止められない

ついには「ユーザーの多彩になりすぎたカーライフ」には軽スーパーハイトワゴンでは対応しきれない状態になりつつあります。

例えば、ここ最近の車中泊ブームとそれに伴うアウトドアブーム。
車内で寝泊りが出来るようにしたいと言われても、クルマの座席と言うのはベッドではありません。運転席であれば、運転中のドライバーをサポートする役割があるので、ベッドになるような座席と言うのは作れないのです。

なので、座席をベッドにするのではなく、座席の上にベッドを作るクッションをアクセサリーとして用意するようになりました。

アウトドア志向の要求はどうしたのか? 
タントではBBQをしている画像がありますが、よくよく考えてみると河川敷のようなオフロードを走るようなクルマではありませんし、屋外活動では水で濡れたりすることがよくあります。それでもユーザーはBBQをしたいですし、水がある場所で泳いだり、魚釣りをしたり、サーフィンをしたり、スキー・スノーボードをしたり…とにかくそうやって楽しみたいわけです。

そのためにダイハツはウェイクを作りました。

スズキはワゴンRをベースにして、悪路にも強いハスラーを作りました。

それでも既存のクルマでもユーザーは遊びたい。パレットの後継機であるスペーシアではこのようなバックドアタープが用意されています。


ワゴンRやタントが販売された当初ではできなかったであろうことが、ユーザーの手で出来るようにされていき、ついにはそれ専用の軽ハイトワゴン・軽スーパーハイトワゴンへの開発へと進んでいます。

かつては「このクルマでより自由になってください」と言ったような感じだったのですが、自由になったことでクルマのほうが対応できなくなり、「ある目的に特化した軽自動車」というのが出てくるようになりました。

まとめ

いかがでしたか?

パレットとしての歴史は短かったわけですが、その車名の由来が示していたように、軽ハイトワゴン・軽スーパーハイトワゴンにおけるユーザーのカーライフは、より多彩なものになっています。
最近ではウェイクやハスラーのようなアウトドアを意識したモデルが登場しました。これからも軽自動車に求められるものと言うのは増えていく一方です。

パレットは、そんな軽自動車の未来を暗示していたのかもしれません。ユーザーの要望が尽きない限り、そこから生み出される色は無限に広がっていくことでしょう。