【フィアット850】ただの大衆車じゃないピッコロの実力

時は1964年。日本では東京オリンピックが開催された年です。森永製菓が高級チョコレート“ハイクラウン”を、カルビーが“かっぱえびせん”を発売した年なんだそうです。自動車に目を向けると、本田技研工業が“S600”を、マツダの前進である東洋工業が初めての乗用車となる“ファミリア”を発売した年です。遠くイタリアでは小型大衆車の開発が一段落し、それをベースにひとつ上のクラスが走り出していました。

これがフィアット850だ!

出典:http://www.wikiwand.com/es/Fiat_850

どうですか、このずんぐりしたなんともかわいらしいフォルム。この頃のフィアットはとても愛嬌があって好きです。フィアットに限らず、この時代の車は個性があふれていて見ているだけでも飽きないですね。またこんな強烈な個性の車が出てこないものですかねぇ。
そんなフィアット850のデビューは1964年です。最初に登場したのがこの“ベルリーナ”です。この年号にピンとくるのは結構なお年頃の方々かもしれませんが、東京オリンピックの年なんですね。残念ながら私はまだ生まれていませんでした。乗用車の個人所有比率は、1961年に12%しかなかったのですが、3年後の1964年には22%に延び、人々のクルマ所有の欲求は日ごとに高まっていた時代でもあります。
あのイタリア国民的大衆車となるフィアット500の兄貴分、フィアット600の拡大版として開発されたのがフィアット850です。500、600と同じくダンテ・ジアコーサがデザインしました。600のレイアウトを踏襲しながらもホイールベースを30mm延長し、エンジンの排気量を843ccまで拡大して34psを絞り出し、動力性能を格段に高めました。
後部座席にゆとりをもたせるためにエンジンルームを独立させたため、小さなノッチバックデザインになっているのが特徴的です。大きくて丸いヘッドライトと短いテールがなんとも愛嬌のあるルックスではないですか。ボディサイズは、全長3,575mm×全幅1,425mm×全高1,385mmで、ホイールベースは2,030mmです。コンパクトとは言え車両重量は670kgととても軽量な設計でした。

商用車の“T”とワゴンの“ファミリアーレ”

出典:https://it.wikipedia.org/wiki/Fiat_850

FIAT850T

先代のフィアット600にも“ムルティプラ”というバンモデルが存在しましたが、850にもバン/ワゴンが追加されました。ベースの850の面影はありませんが、これはこれで愛嬌のある車ですね。当時の小型のバンとしては排気量が大きく機動力が高かったので、シリーズの中でも大人気で一番の長寿生産モデルになりました。
ワゴンモデルのファミリアーレはなんと3列シートの7人乗り仕様です。

出典:http://bringatrailer.com/2013/06/05/rare-in-the-us-1967-fiat-850-familiare-minibus/

FIAT850FAMILIARE

スポーティなクーペモデル

出典:http://classics.honestjohn.co.uk/reviews/fiat/850-coupespider/

850クーペ

1965年のジュネーヴモーターショーでデビューしたクーペです。デザインはフィアット社内でおこなわれました。初期モデルのエンジンは843ccのままながら47psに強化されていて、最高速度はベルリーナの120km/hに対して135km/hまで高められていたのです。スマートな見た目と相まって、とても人気のスポーツクーペとなりました。
1968年にはエンジン排気量が903ccに拡大されて出力も52psとなり“850スポルト・クーペ”と改称されました。フロントエンドのデザインが改められ、補助ランプとV字型のエンブレムが装着されています。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB850

850スポルト・クーペ

1971年には再度マイナーチェンジが行われました。V字マークが取り外され、ヘッドライトは4灯式になりました。

出典:http://ww3.autoscout24.de/classified/283237836

850クーペ最終期

ジウジアーロの傑作 850スパイダー

出典:http://blog.hemmings.com/index.php/2015/06/09/along-came-a-topless-850-1967-fiat-850-spider-brochure/

850spider

クーペと同時に発表された2座席のオープンモデルです。ベルトーネ在籍時代のジョルジェット・ジウジアーロの傑作デザインのひとつとされています。843ccエンジンはシリーズ中最強の49psまで引き上げられ、空力に優れたボディデザインによって最高速度は145km/hを誇ります。車体の製造もベルトーネの工場が担当しました。この傾斜したヘッドライトが特徴的ですよね。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A3%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%BB850

850spider後期型

1968年にはクーペと同様にエンジン排気量が903ccに拡大されて“850スポルト・スパイダー”となりましたが、米国の安全基準に対応するためにヘッドライトが起き上がり初期型の美しさは大きく損なわれてしまいました。
ただ、850スパイダーはアメリカ市場ではとても好評だったので、ベルリーナやクーペよりも長く1973年まで製造されました。

ハイスペックモデルのスペシャル

出典:http://fiat850.com/fiat-news/banned-from-california-clean-1971-fiat-850-special/

1968年には上級版の“スペシャル”が登場しました。クーペやスパイダーと同じように、903cc・47psのエンジンと前輪ディスクブレーキ、13インチのホイール・タイヤが与えられました。ベルリーナと比べると、タイヤが大きくなったおかげか全体のバランスが良くなったように思えますね。ボディサイドにメッキモールが追加されているのも、スポーティに見せるアイデアなのでしょう。ステアリングホイールもスポーティーなデザインのものに変更されました。

日本での販売

当時の輸入代理店だった西欧自動車によって、セダン・クーペ・スパイダーともに相当数が輸入されたようです。比較的手ごろな価格(とは言っても当時のトヨタ・クラウンの高級モデルとほぼ同じ価格帯)だったおかげで、日本市場でも人気のモデルだったようです。
私の知人も後期モデルのスパイダーを持っていますが、小さいながらも楽しさ満載の車に仕上がっています。

ABARTHの存在

出典:http://www.16vminiclub.com/forums/showthread.php?t=4539&page=2

ABARTH OT1600

ご多分に漏れず、アバルトの手によって何種類ものチューニングされたスペシャルモデルが作られました。中でもDOHC1592cc・150psエンジンを押し込んで、最高速度210km/hを誇る“アバルトOT1600”というモンスターマシンもありました。

最後にまとめ

この当時の車を思い返してみると、日本車がとても遅れていたことがわかります。だからこそ“追いつけ、追い越せ”とがんばれたのかもしれませんね。少しだけでいいので、この時代のエッセンスを加えた車が出来てくれることを望みます。