【シトロエンサクソ】すまし顔には似合わない韋駄天ホットハッチ

シトロエンというメーカーをご存じですか。でしたらなかなかの車好きですね。70~80年代は、“壊れる車”の代表格だったフランス車。中でもシトロエンは“金のかかる車”と呼ばれていました。でもそれは“ハイドロニューマチック”と呼ばれる風変わりなサスペンションがもたらした悲劇です。現代のシトロエンは決してそんなことはないのですがこれも風評被害と呼ぶべきでしょうか。そんなシトロエンの小さな頑張り屋の話です。

シトロエンサクソという車

出典:http://www.goo-net.com/catalog/CITROEN/CHANSON/9002032/index.html

これがシトロエンサクソです。
それまでの一番小さなシトロエンであるAXとその上のサイズであるZXの間を埋めるべく、プジョー106のコンポーネントを利用してつくられたのがサクソです。実質のAXの後継車で、サクソのデビュー以降はAXは生産されることなく在庫販売のみとなりました。
プジョーとシトロエンの関係はとても面白くて、AXをベースにして106フェーズ1がつくられ、その106をベースにサクソがつくられ、サクソをベースに106フェーズ2ができあがりました。お互いの新型モデルを利用してさらに新しいモデルを交互につくりながら進化しているのです。

全長3,720×全幅1,595×全高1,380mmの5ドアのハッチバックボディに、1.1L、1.4L、1.6LのOHCエンジンと1.5Lディーゼルエンジン。3ドアハッチバックはオーバーフェンダーを貼り付けたスポーツハッチモデルで、1.6LのSOHC+5速M/TのVTRと1.6LのDOHC16バルブエンジン+5速M/TのホットハッチモデルのVTSがラインナップされました。
左ハンドルのマニュアルトランスミッションを日本で販売するのは難しいという判断から、残念ながら日本への導入は5ドアの1.6Lエンジン+3速A/Tの組み合わせのみでした。

日本では仮の名前が

実はこのサクソ、日本でデビューしたときは別の呼び名がありました。上の写真のナンバープレートには“SAXO”とは書いてないですよね。“Chanson”と書いてあります。そう、日本では“シャンソン”という名前でデビューしています。商標登録上の問題で“SAXO”が使えないとか、単純に音の響きが悪いとか、いろいろな事を言われましたが、実際のところは定かではありません。
ただ、マイナーチェンジとともに日本でも“SAXO”に改名されましたので、商標登録上の問題ではないと思います。

右ハンドル仕様は訳あって輸入できず

出典:http://www.honestjohn.co.uk/carbycar/citroen/saxo-1997/

実は、サクソの右ハンドル仕様は存在するんです。日本が右ハンドル・左側通行なのは、英国の自動車文化を真似たからなんです。つまり、イギリスだって右ハンドル・左側通行です。かつてイギリス領だったオーストラリアもそうですよね。もっと言うと、そもそもすべての国が左側通行だったのですが...それを話し出すと長くなってしまいますのでまた別の機会に。
とにかく、イギリス仕様の車は右ハンドルなんです。小さなサクソがイギリスで売れないはずがありませんから、もちろんイギリス向けに右ハンドルの設定がありました。それを日本へ持ってくることは出来なかったのかと言えばできたんです。でも、大きな問題がありました。それはエアコンなんです。
イギリスではエアコンは贅沢品で、エアコン付きの車を購入するときは税金が高くなるんです。そんな理由からイギリスではエアコン付きの車は敬遠されがちなんですね。もちろん、もう少し大きな車でしたら左ハンドル用のエアコンが流用できるのですが、小さなサクソではうまくいきませんでした。一番のマーケットであるイギリスではエアコンが売れませんので、右ハンドル用のエアコンをわざわざ設計することはなかったのです。そんな理由から、エアコン必須の日本には左ハンドルが導入されたのでした。

ホットハッチは見送られ

出典:http://www.honestjohn.co.uk/carbycar/citroen/saxo-1997/

この写真は3ドアハッチのホットモデル“VTS”です。右ハンドルですからきっとイギリス仕様ですね。上述したとおり、日本では左ハンドルでないと売れない理由がありましたから、3ドアモデルは見送られました。ただでさえマニュアルトランスミッションが不人気でしたから、さらに左ハンドルではとても売れないだろうという判断でした。

マイナーチェンジでクサラ顔に

出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Citro%C3%ABn_Saxo

1997年にマイナーチェンジを受けました。ひとつ上のクラスのクサラがマイナーチェンジで丸いデザインになったように、サクソも少し全長が伸びて丸くなりました。全長が伸びたのは、衝突安全性能を上げるためにクラッシュゾーンを増やす措置です。
ここで事件が起きます。一足先に日本へ導入された兄弟車種の106のホットモデル“106S16”が、なかなかの売れ行きをみせているではありませんか! ヴィッツのような大きさで左ハンドル・マニュアルミッションしか設定がない、しかも200万円を超えているにも関わらず、です。

VTSの導入!

出典:http://www.goo-net.com/catalog/CITROEN/SAXO/9003227/index.html

ならば右へならえと、VTSが日本へ導入されたのでした。というか、マイナーチェンジ後は5ドアモデルは輸入されず、3ドアのホットハッチであるVTSのみになりました。これもプジョーにならってのことですが、柳の下に2匹目のどじょうはおらず、シトロエンサクソVTSはプジョー106S16ほどの売れ行きにはなりませんでした。

ラリーで活躍

出典:http://xn--e1akkdfpb6a.xn--p1ai/citroen-saxo-rallye.php

当時ラリーシーンでは、2.0LDOHCTURBO4WDが活躍していたグループAとは別に、2WDのノンターボ車をベースにしたスーパー1600クラスがあり、ルノークリオやプジョー106と共にサクソも参戦していました。

最後にまとめ

初期導入モデル“シャンソン”は、ちょっとおしゃれな5ドアの実用車としてそこそこ売れた印象です。当時は社用車で使っていましたが、ちょっと買い物に出かけたりするにはとても便利な車でした。できれば右ハンドルがよかったですね。
VTSは、106S16と同様にとても元気に走り回れる車です。小さくて軽い(960kg!)ボディに120psを絞り出すエンジンが載っているのですから、楽しい意外に言葉がみつかりません。通勤から買い物やちょっとしたお出かけまで、街中を移動するにはこれくらいが使い易くていいですね。
あぁ、また乗りたくなってしまいました。