【フェラーリFXX】公道を走らないフェラーリ「比類なき孤高の存在」

イタリアの高級スポーツカーメーカー、フェラーリが2015年10月21日にニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しました。当日の終値ベースでの時価総額は約1兆2,500億円となり、業績が好調のMAZDAに並ぶ規模となっています。世界で年間76万台以上販売をしているMAZDA。年間7,000台前後を販売しているフェラーリ。販売台数では1/100にも満たないのですが企業価値が同等と評価されています。

フェラーリが創り出す車の価値

エンツォ・フェラーリと本多 宗一郎

エンツォ・アンゼルモ・フェラーリ(1898年2月18日 - 1988年8月14日)。本田 宗一郎(1906年11月17日 - 1991年8月5日)。フェラーリとホンダという共に世界中で知られている自動車メーカーの創業者です。フェラーリ設立1947年、ホンダ設立1946年。そして二人は同じ時代を歩みながら真逆の哲学で世界的な自動車メーカーを育てて行きました。フェラーリはレース活動を継続するために、そのレーシングカーをベースにしたスポーツカーを販売しました。一方のホンダは自動車を販売するために、その技術力の証明としてレースに参加しました。そして、ご両名が他界された現在でもF1という自動車レースの最高峰の舞台でお互いに技術力を競い合っています。第二次世界対戦で同盟を結んでいた日本・イタリア・ドイツの三国がお互いの特色を活かしながら世界の自動車業界を牽引しているのも不思議な運命ですね。

レーシングカーから生まれた車

今日、世界には400社以上の自動車メーカーがありますが、その中で1947年当時から現在に至るまで、純粋にレースをする為に磨かれた技術によって、公道を走れる自動車を製造し続けているメーカーはフェラーリ以外には存在しません。逆に言うとフェラーリの性能に匹敵するスポーツカーを製造する自動車メーカーは数多く存在します。1929年にエンツォ・フェラーリが仲間のレーシングドライーと共に設立したスクーデリア・フェラーリ(レーシングチーム)は現在もF1を頂点として様々なレースに参加しています。自動車メーカーがレーシングカーとチームを作ってレースに参戦することをワークス体制と呼びますが、その当時のフェラーリはレーシングチームが所有するワークス体制の自動車メーカーだったのです。

フェラーリのDNA

Ferrari Enzo

販売期間: 2002年 - 2004年
デザイン:奥山清行
乗車定員:2人
ボディタイプ: 2ドア クーペ
エンジン:F140B型 6.0リットルV12
最高出力:660PS
最大トルク:67kgf·m
変速機:6速セミAT(F1マチック)
駆動方式:MR
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン
全長:4,702mm
全幅:2,035mm
全高:1,147mm
ホイールベース:2,650mm (104.3 in)
車両重量:1,255kg
タイヤサイズ:前・245/35 ZR 19 後・345/35 ZR 19
先代:F50
後継:ラ フェラーリ

フェラーリが創業55年を迎えた2002年に創業者エンツォの名を冠したFerraei Enzoを発表しました。これまで創業40年目に「F40」50年目に「F50」という名称のアニバーサリーモデルをリリースしてきたこともあり「F60」という名称が予想されていましたが、21世紀という新世紀最初の記念碑的モデルとして創業者エンツォ(Enzo)の名を冠しました。また、このデザインは当時ピニンファリーナに在籍していた日本人デザイナー奥山清行氏によってデザインされたものです。

Ferrari FXX

フェラーリの55年の歴史。エンツォ・フェラーリのレースに対する情熱。その創業者の名を冠されてDNAを受け継いだ「Ferrari Enzo」はフェラーリの正統な伝承者(車)と言っても過言ではないと思います。その「Ferrari Enzo」をベース車両としてサーキット走行専用車として開発されたのが「Ferrari FXX」です。生産台数はわずか30台、しかも最後の30台目は、当時フェラーリのF1ドライバーだったミハエル・シューマハーの贈られたそうです。余談ではありますが現在の彼はスキー中の事故で瀕死の重症を負ってしまいました。この場を借りて回復をお祈りしています。

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ミハエル・シューマッハーがフェラーリから贈くられたカーナンバー「30」のFXXです。本人がドライブする貴重な映像です。

販売期間: 2005年(限定29台)
ボディタイプ: クーペ
エンジン: 6.3L V型12気筒
最高出力: 800PS/8,500rpm
駆動方式: MR
全長: 4,702mm
全幅: 2,035mm
全高: 1,147mm
車両重量: 1,155kg
ベース車: エンツォ・フェラーリ

シートやペダルは購入者(ドライバー)に合わせてオーダーメイドされます。助手席を装備することも可能であり、後方視界を得る為にルーフにバックカメラも設置されています。さらにFXXには高性能テレメトリー・システム(エンジンやブレーキなど走行中のデータをモニタリング出来る装置)が搭載され、39種類もの運動特性をピットで常時監視・記録して新型車の開発などに活用されています。

FXXプログラムとは何だろう

このサーキット走行専用に開発された「Ferrari FXX」は公道を走ることが許されていません。しかし2005年当時、約150万ユーロ(約2億円)で20数名が購入しています。この車を手に入れられる人の中には純粋なフェラーリ・コレクターの方も存在すると思います。しかしフェラーリは21世紀に向けて「フェラーリを所有することの新たな価値」を創造しました。それが「FXXプログラム」です。このFXX購入者は向こう2年間フェラーリが主宰するサーキット・イベントに参加する権利が与えられます。そこにはサーキット走行専用車を運転する為のドライビングスクールを始め、フェラーリ・オーナーによるレースや記念行事等が含まれ、FXXをフェラーリ本社に預けておけば「フェラーリ・レーシング・デイズ」などの開催場所(サーキット)へ航空便で輸送手配もしてくれます。そしてFXXプログラムとしてオーナーがサーキットを走る際には、フェラーリの顧客レース部門「コルセ・クリエンティ」からメカニックを含む特別チームが派遣されて各種メンテナンスにあたります。また、FXXの開発に携わるテスト・ドライバーとしての役割も担います。FXXのオーナーは正にフェラーリのセミ・ワークスチームを持ち、そのレーシングドライバーの様な体験を味わうことが出来ます。一般?(一般の基準は置いておいて…)のフェラーリ・オーナーとは違う、フェラーリ・ファミリーの一員としてのステータスが与えられるのです。このFXXプログラムはスタート当初の2005年の段階では2年間で終了する予定でしたが、2007年にトラクション・コントロール、カーボンブレーキ等を新たに組み合わせ、エンジンも860bhpまで引き上げられた「Ferrari FFXEvoluzione」とこの後継車によるFXXプログラム2年間の延長が発表されたました。

受け継がれる「XXプログラム」

Ferrari Corse Clienti(フェラーリ・コルセ・クリエンティ)

この「FXXプログラム」を率いているのが「フェラーリ・コルセ・クリエンティ」という部門になります。「Corse=競争」「Clienti=顧客」という意味なので「フェラーリの顧客レース部門」と言ったところでしょうか。しかし、この部門は日本を始め世界各地で開催されているフェラーリのレース仕様車の開発から製造・販売・サポートまで手がけている重要な部門なのです。あの世界耐久レース「ル・マン」のLMGTマシンからフェラーリのワンメイクレースの車両まで、2013年に日本人F1ドライバーの小林可夢偉の乗っていたフェラーリのレーシングカーもこの部門で生み出された車です。また個人オーナーの手に渡った歴代のF1マシンもこの部門によってメンテナンスされ、常に走れる状態に維持されています。

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フェラーリ・コルセ・クリエンティがスペインのスパ・フランコルシャンで開催した「XXプログラム」の映像を見つけました。歴代マシンが一同に会している貴重な映像。

Ferrari 599GTB fiorano(ベース車両)

そしてFXX Evoによるプログラムが終了する2009年に新たに599GTBフィオラノをベースとした「599XXプログラム」がジュネーブ・ショーで発表されました。日本でも「フェラーリ・フェスティバル・ジャパン2009」で専用ブースを設けて「FXX」のオーナーをはじめとした限られたオーナーのみに公開されました。

Ferrari 599XX・599XX Evo

販売期間: 2009年(限定30台)・2011年(限定30台)
乗車定員: 2人
ボディタイプ: 2ドア
エンジン: 6L V12 DOHC
最高出力: V12 700PS/9,000rpm
変速機: 6速セミAT
駆動方式: FR
サスペンション: 前/後ダブルウィッシュボーン
ベース車: フェラーリ・599GTBフィオラノ

2010年から599XXプログラムがスタートし、FXX同様フェラーリのコルセ・クリエンティ部門によるフルサポートプログラムを受けられました。また、2011年12月に開催されたボローニャ・モーターショーで、空力や排気系などを中心にモディファイを受けた進化版の「599XXエボリューション・パッケージ」が発表されています。

Ferrari Laferrari(ベース車両)

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Ferrai EnzoとFerrari La ferraiと2台揃っての貴重な映像

2013年にフェラーリ初の市販ハイブリッドカーで「Ferrari Enzo」の実質的後継モデルとして発表されたのが「Ferrari Laferrai」です。ボディスタイリングがピニンファリーナではなく、フラビオ・マンツォーニ率いる社内デザインチームによる作品であることも特徴です。

Ferrari FXX-K

「Ferrari Laferrari」をベース車両として「FXX」の後継車種として開発され、搭載された運動エネルギー回生システム (HY-KERS)に由来する「K」を名称に加えた「FXX-Kプログラム」が新たにスタートしました。2009年〜2013年までの「599XX(599XX Evo)プログラム」も含めて、コルセ・クリエンティは「XXプログラム」と呼び方を改めて活動を継続しています。今後もフェラーリのフラッグシップモデルをベースとしたサーキット走行専用車が「XXプログラム」としてサーキットを駆け巡ることになるのでしょう。

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F1ワールドチャンピオンのセバスチャン・ベッテルがドライブするFerrari FXX-Kの凄さが垣間見れる映像です。
ベッテルの楽しそうな笑顔が素敵ですね。

販売期間: 2014年(限定32台)
乗車定員: 2名
エンジン: 6.3L V型12気筒
最高出力: 860PS/9,200rpm
回生システム:190PS
変速機:7速DCT
サスペンション:前 ダブルウィッシュボーン・後 マルチリンク
全長:4,896mm
全幅:2,051mm
全高:1,116mm
ホイールベース:2,650mm
車両重量 - kg

フェラーリのチームワーク

Ferrari FXXは「XXプログラム」の為に作られたマシンだった

これまで日本ではフェラーリから「XX」を冠したモデルの発表であっても、公道を走れるモデルと同じ様に性能や価格が大きく取り上げられて来ましたが、今回は「Ferrai FXX」というマシンの持つ使命や生い立ちを元にご紹介をさせて頂きました。この「XXプログラム」によって、本来は一握りの選ばれし才能をもったレーシングドライバーにしか操れない様なフェラーリのフラッグシップマシンが、公道を走れるようにする為に研究されていのです。日本を含め他の自動車メーカーは高度なドライブスキルを持ったテストドライバーにマシンを委ねて技術的な研究をしますが、究極のレーシングカーを製造する高度な技術を持ったフェラーリは、それを運転する人間(オーナー)を学んでいるところが面白いですね。

Scuderia Ferrariはレーシングチーム

フェラーリのレース活動に関して言えば、1950年の初開催からF1GPに出場し続けている唯一のチームScuderia Ferrari(スクーデリア・フェラーリ)の活躍が世界中の多くに人々に知られていると思います。このScuderiaは「馬小屋、厩舎」という意味が転じて「チーム」を表す言葉として使われているそうです。1929年に設立され87年間の歴史を持つこのレーシング・チームの一員として、いつか「XXプログラム」に参加してみたいものですね。