【スズキ・ワゴンR】軽自動車の価値観を変えた!今でも人気のワゴンR!

それまでの軽自動車「乗用」「商用」だけだった。乗用はどれも狭く、商用には快適なシートがなかった…。そもそもユーザーが軽自動車に対して、そこまで期待してなかった。不満がないわけではないが、そういうものだと妥協していた。この軽自動車が出るまでは…!軽自動車に対する価値観を変え、軽ハイトワゴンという新たな可能性を生み出したワゴンRのお話。

それまでの軽自動車とはなんだったのか

軽乗用車

別の言い方をすれば「軽セダン」です。
普通車でセダンと言うと一転して高級車を連想させる人もいるかもしれません。しかし、高級セダンであればメーカーとしては「サルーン」の名称を使いたがるでしょう。軽自動車でサルーンとは言いません。じゃあ、もっと大衆車的なイメージなのか? これもNOです。そもそもセダンと聞いて、トランクがあるようなイメージを浮かべているのであれば…それは全くの見当違いです。

これが軽自動車での「セダン」。「スズキ・アルト」です。ダイハツであれば「ダイハツ・ミラ」もそうです。これが「軽自動車におけるセダン」なのです。

セダンの名称は17世紀頃に南イタリアから広まった乗り物のセダンチェア(sedan chair、椅子かご)からである。ラテン語で「腰掛ける」の意味の sedeo, sedo が語源といわれている。

出典:ja.wikipedia.org

セダンの語源からすれば、トランクの有無なんてのはセダンの必要要件ではありません。腰掛けるという意味から考えれば、むしろアルトやミラのほうがセダンとしては正しいのかもしれません。もっともそれでユーザーが納得するかどうかは別問題ですが…。

別にアルトやミラが悪いとも言いません。画像はミライースの車内空間のイメージです。私もミライースの後部座席に座ったことがありますが、足元がゆったりしていて、座席のレイアウトひとつでここまで余裕が出るものなのかと感心しました。ただし、「今のミラ」でのお話です。

ワゴンRが登場する以前のミラにも乗ったことがあります。というのも、私の母の愛車でした。その当時、私はまだ小学生。当然の事ですが、身体の大きさも小学生…ながら、当時のミラの後部座席で窮屈な思いをしていました。小学生の身でありながらも、その後部座席は狭く感じて快適とは言い難いものです。

形だけで言えばトランクを持った物もありました。ダイハツのオプティなんかがそうです。ですが、軽自動車の規格として「全長3.4m以下」という決まりがあります。オプティもこの基準を満たす3,395mmです。さて、オプティにはトランクがあるわけですが…トランクも全長に含まれます。全長3.4m以下の決まりの中でトランク分の長さを確保したら、そのしわ寄せはどこにいくか…。

当時の軽自動車というのはおおむねこんな感じです。360cc規格の頃ではないにしても、まだまだ「クルマとして最低限走れて、雨風を凌ぐ屋根があり、腰掛けられる座席があれば良い」という感じだったわけです。

軽商用車

商用車は今でも走っているので、想像し易いかと思います。いわゆる「軽バン」や「軽トラ」のようなイメージです。今のバンタイプであれば、それなりに快適なシートが用意されていますが、ワゴンRが登場する前の時代には…軽トラの座席とほとんど変わりがないような状態です。
大きさこそ魅力的ではありますが、商用車というイメージが強く、普段から使うクルマとしては受け入れがたいものでした。

ワゴンRの登場

バブル経済崩壊期の紆余曲折 と そこから得たもの

ワゴンRが登場したのは1993年です。もっともその原型自体は1987年頃には出来上がっていたとか…そこから6年の間に何があったか? 日本の長い不況の始まりともなったバブル経済崩壊期です。ワゴンRはそんな中で販売が開始されたクルマなのです。

ワゴンRは徹底したコスト削減が行われています。そりゃ、バブル崩壊した後のお話ですから、コストダウンを図るのは当然の話です。この時期にスズキ自動車の現 会長である鈴木修氏がフォルクスワーゲンの向上視察を行っています。そこで車種の数に対して、基本となるプラットフォームの少なさに驚いたと言います。今でこそ当たり前となった「部品の共有化によるコスト削減」のきっかけとなりました。

最初の販売ターゲットは若い男性…実際の評価は?

その当時の軽自動車というのはセカンドカーであり、主婦が買い物に使うための移動手段でした。それに対してワゴンRでは男性にも受ける軽自動車を作ろうという考えから開発がスタートしています。販売当初のキャッチコピーが「クルマより楽しいクルマ、ワゴンR」という事からもその様子が伺えます。

では、実際のところ狙い通りにいったのか? 残念ながら、スズキの思惑は外れます。若い男性ではなく、老若男女の幅広い支持を受けることになりました。

・天井の高さを生かして運転席の座面も高くしたことで、ドライバーの視点が高くなり運転がし易い。
・それでありながら、軽バンよりも乗り降りがし易い床面の高さだった

現代の軽ハイトワゴンの人気要素をしっかりとおさえていました。当初予定していた月間販売台数を大幅に超える注文が殺到したため、バブル経済崩壊期なのに約1億円をかけて生産ラインの拡張をすることになったほどです。
その後もワゴンRは軽自動車内でトップクラスの販売台数をキープし続けており、以前としてユーザーから高い評価を得ている人気車種です。

リコール情報

2015年(平成27年)内でワゴンRには以下のリコールが出ています。

平成27年3月31日

イグニッションスイッチにおいて、接点部に使用するグリスが不適切なため、可動接点が固定接点から離れる際のアーク放電の熱によりグリスが炭化することがあります。そのため、そのまま使用を続けると、グリスの絶縁性の低下と可動接点の摩耗による金属粉の堆積により接点間が導通し、発熱することでグリスが発煙し、最悪の場合、火災に至るおそれがあります。

出典:www.suzuki.co.jp

平成27年1月30日

補助制動灯において、LED素子内部の電気基板の設計が不適切なため、電気基板が腐食し導通不良を起こすものがあります。そのため、そのまま使用を続けると、補助制動灯が点灯しなくなるおそれがあります。

出典:www.suzuki.co.jp

3月31日のものは「ワゴンRソリオ」などの車種も含めた125,000台以上。
1月30日のものは平成24年10月末~25年3月の期間に製造された76,000台以上にもなる大規模なものです。

ワゴンRのグレードと価格設定

FA

ワゴンR内で最も安価で、シンプルなグレードです。
マニュアルエアコンになっており、衝突被害軽減システムである「レーダーブレーキサポート」、燃費向上の「S-エネチャージ」「エネチャージ」も非搭載となっています。

車両価格は
2WD 税込み1,078,920円 4WD 税込み1,199,880円

FX

こちらはFAから装備が追加されたモデルとなります。また5MTの選択ができるのも特徴です。
フルオートエアコンとなり、CVT車ではエネチャージが標準装備となっており、レーダーブレーキサポート装着モデルの選択も可能になります。レーダーブレーキサポート搭載のセットオプション車ではアルミホイールが標準装備となります

車両価格は
2WD 税込み1,144,800円 4WD 税込み1,265,760円
2WD・5MT 税込み1,134,000円 5MT・4WD 税込み1,251,720円

レーダーブレーキサポート搭載車は
2WD 税込み1,196,640円 4WD 税込み1,317,600円

FZ

上位グレードのモデルです。
フロントバンパーやグリルが専用のものになっており、レーダーブレーキサポートとアルミホイールが標準装備。「エネチャージ」は「S-エネチャージ」に置き換えられマイルドハイブリッド化されています。メーカーオプションとして「ディスチャージヘッドランプ」「オートライトシステム」の選択も可能になっています。
他の車種では余り見られないことなのですが、上位グレードであるFZのみにS-エネチャージを搭載のため、燃費が2WDで 33.0km/L(JC08モード)となり、「上位グレードが燃費性能に優れる」と言う逆転現象が起きています。

車両価格は
2WD 税込み1,372,680円 4WD 税込み1,493,640円

ディスチャージヘッドランプ搭載車は
2WD 税込み1,426,680円 4WD 税込み1,547,640円

スティングレー X

ワゴンRのカスタムモデル。その下位グレードになります。
見た目も一新され、フォグランプが追加。FZではメーカーオプションであった、ディスチャージヘッドランプとオートライトシステムを標準装備。メーカーオプションとして、スマートフォン連携ナビゲーションが設定されています。

車両価格は
2WD 税込み1,465,560円 4WD 税込み1,586,520円

なお、この「スティングレー」の意味なんですが

3代目以降のバリエーションモデル・「スティングレー」は「STING(刺激)」と「RAY(光線)」を合わせた造語であるが、英語ではアカエイという意味もある。

出典:ja.wikipedia.org

とのこと。

スティングレー T

スティングレーの上位モデルにしてターボ搭載モデル。
フォグランプの横にLEDイルミネーション・クルーズコントロール・パドルシフトが標準装備として追加。アルミホイールは15インチにアップされています。

車両価格は
2WD 税込み1,614,600円 4WD 税込み1,735,560円

FXリミテッド

FXをベースとした特別仕様車です。
通常のFXではエネチャージであったところを、S-エネチャージを特別装備。その他、LEDサイドターンランプ付ドアミラー・ブラックインテリアなども特別装備となっています。

車両価格は
2WD 税込み1,215,000円 4WD 税込み1,335,960円

レーダーブレーキサポート装着車は
2WD 税込み1,258,200円 4WD 税込み1,379,160円

ワゴンRの中古車はどうなのか?

既に初代ワゴンRが発売されてから10年以上経ってますので、それらも含めると中古車市場での台数は多いです。数多くある中から選ぶことができるので、妥協せず状態の良い物を探しましょう。

現行の5代目は2012年に販売開始されています。その後、一部改良やマイナーチェンジがあり

・2013年7月16日:一部改良。全車燃費向上・レーダーブレーキサポートのオプション設定追加
・2014年8月25日:マイナーチェンジ。FXとスティングレーXに「S-エネチャージ」追加
・2015年8月18日:一部改良。FZ・スティングレーX・FXのエンジン改良。燃費向上。

これらの年月日は製造日なので、車検証上での初年度登録とは関係ありません。特に2015年の8月18日のエンジン改良などは見た目でわかるような物ではないので、改良後のモデルを探すと言う場合は注意が必要です。

気になるワゴンRの燃費

既に述べたとおりですが、ワゴンRでは上位モデルに「S-エネチャージ」が搭載されています。なので、上位モデルになるほど燃費が良くなるという状態です。

そのSエネチャージ搭載のFZでの燃費は

FZ
2WD 33.0km/L 4WD 30.8km/L

となっています。2WDでの33.0km/Lと言うのは初代プリウスよりも良い数値です。

では、下位グレードはどうか? マイルドハイブリッドではない「エネチャージ」を搭載したFX。FXには更に5MTの設定もありますが…。

FX
2WD 30.6km/L 4WD 29.0km/L

5MT
2WD 25.8km/L 4WD 24.2km/L

CVTのほうが車両重量では30kg重いのですが、それでもCVTのほうが燃費が良いですね。以前のATではこうはなりませんでしたが、今では人よりも細かな制御をクルマの方で行ってくれるので、このような結果になります。

では、そのエネチャージも無いFAはどうなのか?

FA
2WD 26.0km/L 4WD 25.2km/L

エネチャージは無いものの、それなりにいい数値を出しています。

ワゴンRのカスタムにして、唯一のターボモデルである「スティングレー T」。「スティングレー X」の燃費はFXと同じですが、そこからターボを追加したらどうなるのか。

スティングレー T
2WD 28.0km/L 4WD 26.4km/L

こちらもターボありながら中々の数値です。FXから1割ダウンぐらいでしょうか?

ワゴンRの新型はどうなるのか?

現行となる5代目の発売が2012年。既に3年以上が経過しており、フルモデルチェンジの話も出てきました。早ければ2016年中にもあるはずです。というのも

スズキの他の軽自動車では「デュアルカメラブレーキサポート」が搭載されています。それまでのレーダーブレーキサポートとは違い、2台のカメラによるステレオカメラ検知方式。この方式はスバルのアイサイトでも採用されている方式です。
軽自動車で採用されてきた、音波や赤外線を用いたレーダー方式では具体的にどのような物体かを識別できず、歩行者などの対人物に関しては有効とはいえませんでした。

このデュアルカメラブレーキサポートでは対人でもブレーキが作動するようになりました。スペーシアやハスラーではマイナーチェンジで装備されるようになりましたが、ワゴンRに関しては現行モデル販売開始から3年も経過しているので、マイナーチェンジではなくフルモデルチェンジの形で一新されるかと思います。

ワゴンRのライバルとなるクルマ ダイハツ・ムーヴ

メーカーとしてもライバル関係であるダイハツ。ワゴンR登場の直後にムーヴを市場投入しています。

現行車も似ていますが、初代同士を比べて見ても、非常に似ています。

軽自動車という規格に加えて、軽ハイトワゴンという同じジャンル内のクルマでもあります。作りが似てくるのも当然と言えます。

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軽自動車初の衝突被害軽減ブレーキ搭載

5代目ムーヴで搭載されたのが「スマートアシスト」、通称「スマアシ」「SA」です。

このスマートアシストは前方にレーザーレーダーを装備。前方にある物体を検知することによって衝突の恐れがある場合に自動ブレーキによって回避・被害軽減の効果があります。その他「誤発進抑制制御機能」「先行車発進お知らせ機能」「VSC&TRC(トラクションコントロールおよび横滑り防止機能)」が付いています。これらを総合してスマートアシストと呼ばれています。

今では軽自動車でも当たり前となった衝突被害軽減ブレーキシステムを最初に導入したのがダイハツのムーヴだったのです。2012年12月20日のことです。

その後、スマートアシストはバージョンアップ。スマアシIIとなります。スマアシIIでは前方に単眼カメラ、後方にはソナーを装備。

カメラを装着したことで、画像処理での検知が可能となりました。レーザーレーダーだけでは検知できなかった人物を検知して警告音を鳴らしてドライバーに知らせてくれます。残念ながら、こちらは1つのカメラでの検知なので、スズキの「デュアルカメラブレーキサポート」のように人物に対しての自動ブレーキとはなっていません。
またカメラで車線を検知し、車線を逸脱しそうになると警報を鳴らす「車線逸脱警報機能」が追加されました。

後方のソナーはそれまでにもあった「クリアランスソナー」「バックソナー」と言われるものの発展系です。従来のものがブザーなどでの警告だけであったのに対して、スマアシIIでのソナーはCPUにつながっています。ソナーで後方の障害物を検知している状態で、後進時に急激なアクセル操作を行うと、衝突回避のためにエンジン出力を抑えると同時に警告音を発します。

このスマアシIIは現行のムーヴにも用意されており、全てのグレードにおいて選択が可能です。またこのスマアシIIにより、軽自動車ではじめて 予防安全性能評価 最高ランク「先進安全車プラス(ASV+)」を獲得しています。
ダイハツではスマアシIIを搭載した車種では、下位グレードでも搭載可能。積極的に普及を進めているようです。

現在スズキの軽自動車としては「デュアルブレーキサポートシステム」を搭載したスペーシアがASV+での最高得点を持っています。現在のワゴンRのランクはASVなので、今後はASV+とするべく搭載してくることが予想されます。
しかしながら、どのグレードまでの普及を目指しているかは不明。スペーシアでは全てのグレードに対してデュアルブレーキシステムを選択して搭載できましたが、ハスラーではX・Xターボのみ標準装備となっています。こちらは本格的な普及まではもう少し時間がかかりそうです。

燃費に関しても、ムーヴはワゴンRに迫る数値です。NAでの上位モデルであるXにおいて 31.0km/L 最も燃費が悪くなる条件である 4WD+ターボ の組み合わせにおいても 25.6km/L です。

スズキはS-エネチャージによるモーターアシストでの燃費向上なのに対して、ダイハツではエンジンそのものでの燃費向上を目指している形です。
S-エネチャージのモーターアシストによるパワーアシストに対しては、パワーモードとエコモードの切り替えで対抗しています。

ワゴンRとムーヴ。双方共に比較する上では優劣は付け難いです。どちらも高い販売台数の看板とも言えるクルマ。ユーザーとしては選ぶときには迷いますし、新車の値引き材料として引き合いに出すクルマ。最終的にどちらのクルマを選ぶにしても、絶対に双方を徹底的に比較・分析した方が良いです。

ワゴンRを超えるクルマ ダイハツ・タント

ワゴンR販売開始から10年目となる2003年。この年にダイハツから登場したのがタントです。

ダイハツとしてはムーヴの投入よりも、一足先にスズキからワゴンRを販売されてしまい、シェア争いでは不利な立場にありました。実はワゴンRはその登場より長期にわたってトップシェアを維持しています。近年では2011年度(2011年4月~2012年3月)での年間販売台数1位。しかも それ以前の2006年度から5年連続で年間販売台数1位を記録しています。それだけワゴンRの支持は強かったわけです。

タントはワゴンRよりも更に大きな車体を持つ軽自動車「軽スーパーハイトワゴン」として販売されます。かつてのワゴンRがそうであった様に、再び軽自動車の大型化に乗り出したわけです。その結果、見事に年間販売台数1位を獲得しました。…2014年に。
なんとタントが年間販売台数1位になるまでには、その販売開始から10年以上もかかったのです。しかも、途中で軽スーパーハイトワゴンとしては後発である「N-BOX」に1位を奪われるということもありました。

ワゴンRは販売当初から老若男女問わず幅広い支持を得ていましたが、タントでは逆にユーザーから戸惑いの声があがりました。その一番の要因は「横方向への不安定感」

これは軽ハイトワゴン全体で言えることですが、車高が高い分、重心も高いです。その為、ハンドルを切ることでフラつき、横滑りを起こし易いのです。更には横風を受ける面積も大きくなり、横風でも車体は揺さぶられて、横に流れていきます。今は横滑り防止機能が備わっていますが、それでも横風で大きく揺さぶられたりするのは以前として変わりありません。

ワゴンRでも同じ問題は抱えているのですが、タントの場合はそこから更に大型化したことにより、この影響がより大きく出たわけです。当時のユーザーが体験するのもはじめてのことです。

しかし、タントによる「軽スーパーハイトワゴン」の流れは、徐々にではありますがユーザーに受け入れられていきます。その広い室内空間によって、より後部座席は開放的で座り心地が良く、シートアレンジを使えば大容量の収納スペースになります。
「人を乗せても良し、荷物を乗せても良し」の使い勝手の良さが知られるようになると、多くのユーザーから注目されるようになりました。

車中泊ブームに合わせた更なる大型化 ダイハツ・ウェイク

ワゴンRやタントのような「大きな軽自動車」が販売された一方、それを使うユーザー達が新たな使い方をし始めました。

その一つが「車中泊」です。単なる仮眠ではなく、寝台を設けて一晩を車内で過ごすということです。キャンピングカーで専用のベッドなどを用いる場合もありますが、ここでの場合はそのクルマにあるシートを活用して行うスタイルです。

キャンピングカーであれば、オートキャンプで車内で寝るというのは当たり前です。しかし、それ以外で車中泊を行う人がいました。それが釣り人です。彼らは魚が良く釣れる日の出の時間帯から釣りを開始します。そのために夜のうちに釣り場の近くに移動し、車内で一晩を過ごして日の出を寝て待っているのです。
ここでもワゴンRやタントは活躍しました。シートアレンジを使えば簡単に快適な寝台を手に入れやすいこと。天井が高いので、釣竿を格納するロッドホルダーの設置が容易であり、運転時にも支障が出ないこと。
釣りだけに限らず、シートアレンジによって大容量の収納スペースを確保できると言うことで、その他のアウトドアシーンでも活躍し始めます。

またそれと同時に全国各地に、魅力的な道の駅や高速道路のサービスエリアが増えていきます。それらを巡ることがブームとなり、それと同時に道の駅やサービスエリアという駐車場がある場所で一夜を過ごす目的で車中泊のブームにもつながりました。

このような背景を基にして「アウトドアで使い易い」「車中泊もし易い」という条件を満たした軽自動車が開発されるようになりました。

ホンダからは既存のN-BOXを改良した「N-BOX+」を販売。車中泊が出来ることをアピールし、斜め床とスロープの組み合わせでバイクを積み込むことができるということもアピールしています。

ダイハツにはタントがありました。ですが、「アウトドアで使う」にはタントの内装などは不向き。

そこでより一層アウトドアでも使い易くするために、タントから更に大型化したウェイクを販売します。

このウェイクはアウトドアでの使用を目的としたユーザーをターゲットにしています。シートなどは撥水加工が施され、特に荷物を積み込むためのラゲージ部分にかけては防水加工を施しています。これはサーフィンやスキー・スノーボードなどでは、水や雪で積み込む道具が濡れていることを想定してのもの。
更に必要なものをアクセサリーとして多数用意しています。タントよりも高くなった天井にはロッドホルダー。バックドアには着替えスペースや休憩場所として使えるタープ。車中泊をするためのクッションとカーテン。

アウトドアでの使い勝手の良さを求めた一方で、タントと同様の使い方もできるので、街乗りでも使えます。時代の流れに合わせて「より大きく」というのがダイハツの考えです。

軽自動車の大型化に逆行か? スズキ・ハスラー

アウトドアで使い易い軽自動車のため、ダイハツはウェイクを「大型化」させました。しかし、スズキの考える「アウトドアで使い易い軽自動車」というのはまた別の形をしています。

それがこのハスラーです。クロスオーバーSUVタイプの軽自動車として発売されています。

SUVであれば既に「ジムニー」があるのですが、そもそも軽SUVというのは近年では余り見ません。
かつては「ダイハツ・テリオスキッド」「三菱・パジェロミニ」などがありました。スズキにもクロスオーバーSUVタイプの「kei」がありました。ですが、これらは全て生産終了となりました。残すところはジムニーだけという状態でした。

そんな中で売り出されたハスラー。これが今人気となっています。かつての軽SUVが次々と消えていったのに、なにが違うのか?

もちろんウェイク同様にアクセサリーが豊富と言うのもあるでしょう。

しかし、一番大きいのは「ウェイクはワゴンRをベース」である、「オフロード版ワゴンR」だという事です。実はハスラーに使われている足回りなどのプラットフォームの多くは、ワゴンRと共通なのです。
そして、その使い方もワゴンRとほぼ同じ。

例えばこのシートアレンジ。これを見てワゴンRかハスラーかの見分けが付くでしょうか? 正解を申し上げるならこの画像はハスラーの物です。

そしてこちらがワゴンR。全く同じシートアレンジですね。ハスラーではラゲージ部分に防水加工などが施してあります。そのため画像でもカバーをかぶせることなく載せられています。

ハスラーはプラットフォームをワゴンRと共有していますが、クロスオーバーSUVとしての性格上、ワゴンRよりも最低地上高が高められています。
更に「ヒルディセントコントロール」「グリップコントロール」を装備。より悪路に対して余裕を持たせています。ハスラーは悪路に対する走破性でアウトドアでの活躍を想定しています。

アウトドアに対して、「ウェイクでは大型化」「ハスラーでは走破性」と性格が分かれました。そして実際の販売台数ですが、ウェイクよりもハスラーの方が大きく販売台数を伸ばしています。

なぜハスラーのほうが売れているのか? ハスラーのほうが販売開始が早かったと言うのもあるでしょう。アウトドア志向のユーザーを先に販売が開始されたハスラーがより多く獲得したということです。しかし、「ハスラーに乗るユーザー全てがアウトドアでハスラーを使うか?」と言われれば疑問です。ハスラーに乗る女性ユーザーも少なくありません。実際、私が町で走っているハスラーのドライバーを見ると女性であると言うことが多いです。

ここで少し発想を考え直して見ました。「そもそも軽自動車の需要が高い場所とはどこか」ということです。
世間一般的には軽自動車は公共交通機関のインフラ整備が進んでいない地方都市ほど、その需要が高いということです。この話自体は当たり前の話のように思えるかもしれませんが、ここからもう少し掘り下げて「その様な地方都市の共通点とは何か」を考えます。そこで私が見つけた共通点があります。

それは「雪」です。つまり雪道を走ることになる豪雪地帯であるということです。
私の住んでいる地域も豪雪地帯。そのような場所で求められるクルマの条件は一つ「雪道に強いクルマ」です。駆動方式がFRかFFであればFFを選びますし、4WDがあるなら4WDを選びます。しかし、駆動方式だけで雪道を走れるクルマとはならないと言うことは、豪雪地帯に住んでいるユーザーは経験的に知っています。

ウェイクには無くて、ハスラーにあるのは「悪路に対する走破性」です。最低地上高がハスラーでは 2WD 180mm 4WD 175mmなのに対して、ウェイクでは2WD・4WD共に140mmです。この数値はワゴンRやムーヴよりも低い数値。最低地上高の低さは、「亀の子状態」でのスタックをするという可能性が高まります。
しかも、ウェイクの場合はタントよりも大型化したことで車両重量が増加しています。これも雪道を走る上では不利な要素。スタックし易い上に、そのスタック状態から抜け出すと言うことも困難ということになります。

雪道での強さ=販売台数 とはなりません。しかし、軽自動車の保有率が高い地域の多くが豪雪地帯である以上、その影響は無視できないものです。
例えば、フルモデルチェンジによって4WDが追加された「トヨタ・プリウス」ですが、雪道での走破性を強くアピールしています。何故アピールする必要があるかは言うまでもありません。

ハスラーは走破性を重視したことで、結果として需要が高い地域で求められている性能を持ち合わせていたのです。
近年広い車内空間のために大型化し、最低地上高が低くなる一方であった軽ハイトワゴンの中において、あえてワゴンRベースとして大きさを押さえて、最低地上高を高くすることで利点を生み出したというのがハスラーの成功につながったと言えます。

まとめ

いかがでしたか?

今では当たり前のように走っている大きな軽自動車。ですが、ワゴンRが無ければその登場はもっと遅れていたことでしょう。車中泊ブームに関しても、ワゴンRが無ければ軽自動車での車中泊ブームとはならなかったかもしれません。

魅力的な軽自動車が沢山あるのが今では当たり前となりましたが、魅力的な軽自動車を作り出すきっかけとなったワゴンRは今後どうなるのか? フルモデルチェンジの噂もあるだけに今後も期待したいところです。