【プジョー207】大ヒットモデルの後継車ゆえの苦悩

1980年代後半、プジョーの名前を日本に知らしめたのは“205”でした。ドリカムの曲が流れる缶コーヒーのCMに登場した赤色のカブリオレはとても印象的でした。その知名度を盤石の体制にまで押し上げたのが“206”でしょう。かつてフランス車が日本でこれほど売れた事例はないと思います。そんな206の後を担う“207”。ヒット曲の次が売れないように、ヒットモデルの後継車は苦戦を強いられたのでした。

プジョー207という車

出典:http://www.gooworld.jp/catalog/PEUGEOT/207/10039440/index.html

207の日本デビューは2007年3月でした。
欧州でいうBセグメントに属する小型乗用車で、206の後継車になります。PSAグループのもう1社であるシトロエンの小型車C3とプラットフォームや多くの構成部品を共用することで生産・開発コストを抑えています。
主力のハッチバックとワゴンモデルのSWはフランスのポワシー工場で生産されていますが、オープンモデルのCCだけはスペインのビヤベルデ工場で生産されています。
2007年6月に電動格納式のハードトップを備えた207CCクーペカブリオレが追加され、2008年4月にワゴンモデルの207SWが追加されました。

206から全幅が拡大されて1,750mmになったので、日本では3ナンバー登録になります。306との比較では、全長がほぼ同じで全幅は65mmも広いのです。206の後継車なのですが、306に迫るサイズで全幅にいたっては307とほぼ同じです。
ホイールベースも100mm延長されていて、最小回転半径は206の4.9mに対して5.4mと大幅に上昇しました。

6種類のガソリンエンジンと3種類のHDi (高圧直噴) ディーゼルエンジンがラインナップされましたが、日本へは1.6LガソリンエンジンはBMWと共同開発したバルブトロニック付きの120PS自然吸気エンジンと、150PS(GT)と175PS(GTi)の直噴ツインスクロールターボエンジンが導入されました。
2008年8月にスタイルが導入され、可変バルブ機構付きの1.4Lの95PS仕様ガソリンエンジンが搭載されています。
トランスミッションはM/T、エンジンによりA/TやR-M/T (ロボタイズド・マニュアル・トランスミッション) と呼ばれるセミATも選択可能です。

成績不振の207

ここで厳しい現実を確認しておきましょう。
プジョーヒットモデルとなった205シリーズは、全世界で累計500万台というビッグセールスでした。そして大ヒットモデルとなった206は、なんと700万台を突破しているのです。
対して207は...200万台ちょっととのことで、ヒットを飛ばした次の作品は成績が伸びないジンクスを地でいってしまったということです。

不審の原因は?

全長:4,030mm
全幅:1,750mm
全高:1,470mm
ホイールベース:2,540mm
車両重量:1,170kg
最小回転半径:5.4m
これは、207ハッチバックモデルの寸法です。
対して206ハッチバックは
全長:3,810mm
全幅:1,670mm
全高:1,380mm
ホイールベース:2,440mm
車両重量:1,000kg
最小回転半径:4.9m
です。
207がずいぶんと大きくなっていることがおわかりですね。
206の魅力は、なによりもその使い易いコンパクトサイズでした。大人4人がゆとりの広さではないけど無理なく乗れて、最高速度なんてどうでもいいから小狭い街中をキビキビ走ってくれる動力性能と足回りの良さ。日本でもそうですが、フランス、イタリア、イギリスなどのプジョーの主力市場では、少なくとも街の中では抜群に使い勝手が良いのです。日本では1台マルチにこなせる車が好まれますが、通勤・通学・お買い物など日常の生活で使う車と、長期休暇に家族でバカンスに出かけるステーションワゴンは別なんです。
そういう目線で見てみると、国産車で言えば軽自動車~1,000cc+アルファくらいの車はとても使い易いですよね。206はまさにそういう車だったのです。
A+アルファセグメント的な206に対して完全にBセグメントの207。市場の反応はとても正直ですね。

207の魅力

出典:http://www.gooworld.jp/catalog/PEUGEOT/207/10039441/index.html

今まで酷いことを書き並べてきましたが、207の魅力も見てみましょう。
好き嫌いが分かれるでしょうが、飛び抜けたエクステリアデザインは格好いいと思いますし、プラスチック然りだったインテリアの質感も良くなっています。
衝突安全性能はユーロNCAPで5つ星! ステアリング舵角と速度に連動するコーナリングランプは、夜間のドライブをアシストしてくれるでしょう。
そうそう、細かいことですが2DINのオーディオスペースはポイントが高いですね。1DINではカーナビの選択肢が無くて困ります。

性能的にも進化しています

出典:http://www.gooworld.jp/catalog/PEUGEOT/207/10039441/index.html

メインとなる1.6LエンジンはBMWとの共同開発によるものです。とても活発な印象で敏捷な猫科を思わせてくれます。ワインディングでの楽しさは206よりも数段上ですね。
制震、遮音などにも気を配られているのでしょう。走行時の静粛性の高さも格段によくなっています。
以前はエンジン特性と日本の交通事情にマッチしていなかった感じのA/Tも、設定が煮詰められたのかスムーズな変速でショックが少ないところも評価したいですね。
205から206になったときに、ボディ剛性が格段に高くなったのですが、207はさらに高められていますね。コンビにの駐車場の入口で乗り入れをまたいでもよじれる感じはまったくありませんし、ましてや以前のフランス車ならお約束だった“ピシッ”とか“パシッ”とかいう理由のわからない音も聞こえてきません。

もちろんネコ足は健在です

出典:http://www.gooworld.jp/catalog/PEUGEOT/207/10039441/index.html

プジョーはよく“ネコ足”と称されますが、決して広くない街中でしかも石畳の道を走るために鍛えられていますから当然なんです。
国産車に慣れている方には硬すぎる印象かもしれませんが、決して衝撃をつっぱねることはなく、しっかりと吸収しながら路面の情報をドライバーに伝えてくれます。突然荒れた路面に遭遇しても、あわてることなく対処できます。
それでいてのび側は十分すぎるほどストロークしますので、どんなにロールしても後ろ足が路面を放してしまうことはありません。いつまでも路面を掴まえていてくれる安心感があります。
コーナーの進入後に停車車輌などの障害物を見つけても、躊躇することなくステアリングを切り足すことができます。
少しずつ進化しながらもネコ足は健在なのです。

207のラインアップ

では、207はどんなモデルラインナップなのでしょう。

先陣を切ったGT

出典:http://www.gooworld.jp/catalog/PEUGEOT/207/10039442/index.html

最初に日本へ導入されたのは、1.6Lターボエンジン+5速M/TのGTでした。
パノラミックガラスルーフとハーフレザーシートを装備した3ドアのスポーティバージョンです。

ボディタイプ:ハッチバック
ドア数:3ドア
乗員定員:5名
型式:ABA-A75FX
全長×全幅×全高:4,030×1,750×1,470mm
ホイールベース:2,540mm
トレッド前/後:1,470/1,465mm
車両重量:1,270kg
最高出力:150ps/5,800rpm
最大トルク:24.5kg・m/1,400~3,500rpm
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1,598cc
内径×行程:77.0mm×85.8mm
圧縮比:10.5
過給機:ターボ
燃料供給装置:電子制御コモンレール式筒内直接噴射
燃料タンク容量:50リットル
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前):マクファーソン・ストラット式(アンチロールバー付)
サスペンション形式(後):トーションビーム式
ブレーキ形式(前) :ベンチレーテッドディスク
ブレーキ形式(後) :ディスク
タイヤサイズ(前) 205/45 R17
タイヤサイズ(後) 205/45 R17
最小回転半径:5.4m
10モード/10・15モード燃費:12.6km/リットル

次いで導入されたのは

出典:http://www.gooworld.jp/catalog/PEUGEOT/207/10039441/index.html

GTの遅れること2ヶ月、ベースグレードの207と上級グレードのシエロが導入されました。

ボディタイプ:ハッチバック
ドア数:5ドア
乗員定員:5名
型式:ABA-A75FW
全長×全幅×全高:4,030×1,750×1,470mm
ホイールベース:2540mm
トレッド前/後:1,465/1,460mm
車両重量:1,250kg(シエロ:1,280kg)
最高出力:120ps/6,000rpm
最大トルク:16.3kg・m/4,250rpm
種類:直列4気筒DOHC
総排気量:1,598cc
内径×行程:77.0mm×85.8mm
圧縮比:10.5
過給機:なし
燃料供給装置:電子制御式燃料噴射
燃料タンク容量:50リットル
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前):マクファーソン・ストラット式(アンチロールバー付)
サスペンション形式(後):トーションビーム式
ブレーキ形式(前):ベンチレーテッドディスク
ブレーキ形式(後):ディスク
タイヤサイズ(前):195/55 R16
タイヤサイズ(後):195/55 R16
最小回転半径:5.4m
10モード/10・15モード燃費:11.6km/リットル

オープンモデルのCC

出典:http://www.gooworld.jp/catalog/PEUGEOT/207/10041601/index.html

遅れてCC(クーペカブリオレ)が導入されました。

ボディタイプ:オープン・カブリオレ・コンバーチブル
ドア数:2ドア
乗員定員:4名
型式:ABA-A7C5FW
全長×全幅×全高:4,030×1,750×1,395mm
ホイールベース:2,540mm
トレッド前/後:1,470/1,465mm
車両重量:1,430kg
最高出力:120ps/6,000rpm
最大トルク:16.3kg・m/4,250rpm
種類:直列4気筒DOHC
総排気量:1,598cc
内径×行程:77.0mm×85.8mm
圧縮比:10.5
過給機:なし
燃料供給装置:電子制御式燃料噴射
燃料タンク容量:50リットル
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前):マクファーソン・ストラット式(アンチロールバー付)
サスペンション形式(後):トーションビーム付
ブレーキ形式(前):ベンチレーテッドディスク
ブレーキ形式(後):ディスク
タイヤサイズ(前):195/55 R16
タイヤサイズ(後):195/55 R16
最小回転半径:5.3m
10モード/10・15モード燃費:10.8km/リットル

ステーションワゴン? スポーツワゴン? のSW

出典:http://www.gooworld.jp/catalog/PEUGEOT/207/10046826/index.html

最後に登場したのがワゴンモデルのSWです。

ボディタイプ:ワゴン
ドア数:5ドア
乗員定員:5名
型式:ABA-A7W5FW
全長×全幅×全高:4,150×1,750×1,535mm
ホイールベース:2,540mm
トレッド前/後:1,460/1,450mm
車両重量:1,320kg
最高出力:120ps/6,000rpm
最大トルク:16.3kg・m/4,250rpm
種類:直列4気筒DOHC
総排気量:1,598cc
内径×行程:77.0mm×85.8mm
圧縮比:10.5
過給機:なし
燃料供給装置:電子制御式燃料噴射
燃料タンク容量:50リットル
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン
ステアリング形式:パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前):マクファーソン・ストラット式(アンチロールバー付)
サスペンション形式(後):トーションビーム式
ブレーキ形式(前):ベンチレーテッドディスク
ブレーキ形式(後):ディスク
タイヤサイズ(前):195/55 R16
タイヤサイズ(後):195/55 R16
最小回転半径:5.3m
10モード/10・15モード燃費:11.2km/リットル

中古相場はこなれています

デザインが飛びすぎとか、ちょっと太りすぎたとか言われつつも、総合力でのポイントはとても高い車です。お値打ちに手に入るのなら、選択肢に加えるべき存在だと思います。
そこで、某中古車サイトを覗いてみました。

初期もの2007年式のシエロが29万円(走行距離:10万キロ)を筆頭に全部で133台の207がありました。
5年落ちとなる2011年式を目安に探してみましょう。
オープンモデルの“CC”は“プレミアム”128万円~“グリフ”209万円まで幅があります。グリフは本革シートですからお高めですが、この贅沢仕様のオープンカーが5年落ちで200万円で買えるのは凄いことです。
ワゴンモデルの“SW”は69万円~99万円とお手頃です。
限定車“スポーティアム”は50万円アンダーで見つかりますね。
安全装備は充実していますので、本革シートやパノラミックルーフなどの付加装備と色などをお好みで探せます。

最後にまとめ

photo by Tetsurrow

セールス的には失敗だったと言わざるを得ない207ですが、決して車のできが悪かった訳ではありません。時のニーズにそぐわなかっただけなのです。
大きくなったとはいえ、幅が少し超えているだけで5ナンバーミドルサイズの車です。見切りが良くて取り回しも楽ですから、お子さんのお迎えやお買い物など、普段の足として活用できるはずです。
ディーラーネットワークが充実していてサービス体制が万全ですので、初輸入車の方でも安心して始められますね。