【スズキ アルト】軽自動車が躍進するきっかけを作ったスズキの大黒柱

2015年末にアルトワークスが登場したことで話題となっているスズ キアルトですが、1979年のデビューからの長い歴史を持っています。その時のCMのコピーは「アルト 47万円!」というものでした。鈴木自動車工業時代から、スズキの屋台骨をささえてきたこののクルマを、ちょっと駆け足になりますが見ていきましょう。最初に8代目アルトを紹介して、つづいて初代からどう進化していったのかを見てみます。

アルトの名前の由来はどこに?

豆知識のようなものになってしまいますが、「アルト」のネーミングの由来についてここで触れておきましょう。アルトとはイタリア語で「秀でた」「優れた」から来ているとスズキでは説明しています。一般的にアルト(Alto)というと、コーラスなどで女性の低音のパートであることから、個人的には女性ドライバーに指示されるように意図したものだと思っていました。結果的に女性にも受け入れられたということで、なかなかハマったネーミングだと思います。

8代目アルトはプラットフォームから一新。

大幅な軽量化と剛性アップを新プラットフォームで図る。

photo by jima

2014年12月22日には8代目アルトが発売されました。35年にわたる国内累計販売台数は約483万台に及んでいます。このモデルチェンジでは新プラットフォームを採用したのが注目となりました。剛性の確保と軽量化に取り組んだのです。軽量化は燃費にも直接効いてきます。従来モデル比で60kgの軽量化(車両重量610kg)というのはかなり頑張った数値といえるでしょう。パワートレインの高効率化とあわせて燃費は37.0km/L(JC08)となりました。新プラットフォームは軽量化をしながら剛性や静粛性、衝突性能、走行性能などを向上させることにも貢献しています。

プラットフォームが変更されたことで、サスペンションも一新されました。サスペンションフレームはフラットな構造で車体骨格の一部とし、軽量化と剛性の確保を図りました。サスペンションストロークも増やされたことで、乗り心地の向上に貢献しています。2WD車のリヤは従来のI.T.L式からトーションビーム式サスペンションとなりました。2,460mmのロングホイールベースでありながら最小回転半径4.2mというのはタイヤの切れ角の大きさが影響していると思います。

エクステリアは基本線は「シンプル」です。また全高が低くなっているので、スポーティな印象が強いものとなりました。特にヘッドランプまわりのデザインは好みが分かれるとは思いまが、「目ヂカラ」を感じさせる? ものとなっています。インテリアもシンプル路線といっていいでしょう。室内空間は新プラットフォームによるロングベース化で室内長2,040mm、前後乗員間距離900mmとゆとりのあるものとなりました。

photo by jima

エンジンは圧縮比をアップ。燃焼効率をあげ、燃費も向上。ベーシックなFグレードではAGSが選べる。

搭載されたエンジンはR06A型。圧縮比を高め、一部グレードを除きEGR(排気ガス再循環)システム採用に加え、吸気、排気系を新設計し、低中速の動力性能を高めた上で、燃費性能をあげています。シャシーだけでなくエンジンの軽量化にも力が入れられており、排気系では、エキゾーストマニホールド一体型シリンダーヘッドの採用や触媒ケースを簡素化するなど、軽量コンパクトなものとなりました。

photo by jima

全体的な軽量化にともないトランスミッションギヤ比の見直しも行なわれています。L、S、Xには副変速機構付CVTを採用。F、VPには5速MTをベースに、クラッチ、および、シフト操作を自動化した電動油圧式アクチュエーターを採用したオートギヤシフト「AGS」搭載車をスズキ軽乗用車ではじめて設定しました。セレクターレバーはダッシュボードに装着されています。これはいわゆる「シーケンシャルシフト」の要領でマニュアル操作も可能で、スポーティに走るときの楽しみにもつながっているように思います。

安全性能に関しては、レーダーブレーキサポート(衝突被害軽減ブレーキ)を全機種に設定しました。さらに誤発進抑制機能、エマージェンシーストップシグナル。スリップや横滑りを抑えるESPを乗用全車に標準装備しています。運転席に加えて、助手席シートベルトリマインダーを乗用全車に標準装備。L、S、Xグレードには「エネチャージ」、「新アイドリングストップ」「エコクール」を搭載したことも注目されます。価格は、84万7千800円~122万9千40円となっています。デビュー時からの本筋ともいえるアルトバンは経済性と実用性を兼ね備えたものとなっています。荷室長を1,350mm、荷室幅を1,200mm、バックドア下部開口部幅は1,065mmとすることで荷室も広くとれました。

こちらもMTを必要とするユーザー向けにAGS車を設定しています。燃費は26.2km/L(JC08)と商用車でトップクラスとなりました。また、軽商用車初となる衝突被害軽減ブレーキを搭載したレーダーブレーキサポート装着車も設定しています。こちらの価格は69万6千600円~85万5千600円となっています。

ターボRSは、「走り優先」の層に火をつけた!

良い燃焼とターボの効率化でトルクをアップし、ターボラグも減少。

2015年2月1日には、「アルト ターボRS」が発売されました。これは走り好きに訴求したものといえるでしょう。新型アルトをベースに「心躍らせる、気持ちの良い本格的な走り」を目指して開発しています。R06A型吸気VVTターボエンジンは改良型とし加速性能を向上、エンジン内で良い燃焼を得るための高タンブル(縦渦)吸気ポートや高効率ターボチャージャーなどの採用により、低中速域のトルクと最大トルクを向上させ、従来のR06A型吸気VVTターボエンジンと比較すると、ターボラグを約20%抑え、ターボ過給レスポンスを向上しています。最大トルクは98N・m(10.0kg-m)/3,000rpmとなりました。

トランスミッションはAGSを採用しました。これにはパドルシフトも装備してあります。オートモードのギヤチェンジのタイミングを変え、気持ちの良いシフトフィールにチューニングにするとともに5速マニュアルモードではパドルシフトでスポーツライクなドライビングを可能にしました。サスペンションやブレーキも専用チューニングとなりました。しなやかな乗り心地とキビキビとした気持ちの良い走りの両立を図っています。

サスペンションを支えるショックアブソーバーはKYB製で、乗り心地と操縦安定性を両立する減衰力特性としています。フロントには13インチベンチレーテッドディスクブレーキを採用して、剛性感があり安定したブレーキングを確保しました。タイヤは新開発の専用15インチラジアルタイヤ(POTENZA RE050A)となっています。走りを支えるにはボディ剛性も重要になります。

8代目のプラットホームの剛性をストラットタワーバー、スポット増し打ちなどで更に高めた。

アルトターボRSでは、専用の車体補強を施し、さらに高剛性とした他、ストラットタワーバーや高剛性のフロントバンパーメンバーの装着をはじめ、カウルフロントパネルなどの板厚を厚くし、車体のねじり剛性を向上しています。さらに車体後部にスポット溶接を効果的に増し打ちし操縦安定性と応答性を向上を図っています。

エクステリアも走りのパフォーマンスを感じさせることを意図ました。メッキのヘッドランプガーニッシュ、フロントバンパーアッパーガーニッシュ、カラードドアミラー、ルーフエンドスポイラー、リヤバンパーロアガーニッシュ、サイドアンダースポイラーなどがあしらわれました。ボディーサイドにはデカールで「TURBO RS」と入ります。15インチアルミホイールは切削加工&ブラック塗装をほどこしています。

インテリアは、レッドステッチの本革巻ステアリングホイールをはじめ、エアコンサイドルーバーリング、エアコンセンタールーバーをレッドでまとめました。シフトノブはシルバー加飾され、シフトブーツはレッドステッチとなりました。フロントシートも、スポーティな走行時などに体をしっかり支えられるよう形状に変更し、サポート性を向上させた専用フロントシートを採用となりました。

加速性能に優れるターボエンジンとAGSの組み合わせ、停車時アイドリングストップシステムを採用し、2WD車では25.6km/L(JC08)の燃費となっています。アイドリングストップ中、冷風を送り車室内の快適性を持続させる「エコクール」も標準装備となりました。メーカー希望小売価格(消費税8%込み)で2WDが129万3千840円、4WDが140万5千50円となっています。

8代目でアルト ワークスの復活!

MTで走りたい! というニーズに応えてワークスが復活。

photo by jima

そして、2015年12月24日「アルトワークス」が復活しました。「RSターボにMT設定が欲しい」という声も多く、その要望が叶えられたカタチとなりました。目指したのは、「アルト ターボRS」をベースに、「クルマを操る楽しさを追求し、さらに走りを磨き上げた軽ホットハッチ」です。5速マニュアルトランスミッションと専用チューニングの5速オートギヤシフト(5AGS)設定されるとともに、最大トルクを向上させたターボエンジンと組合わせることにより、加速性能も向上しています。

トランスミッションは、1速から4速をクロスレシオ化、エンジンのトルクの厚い回転域でつながりの良いギヤ比とすることで、スポーティな走りとシフトチェンジの楽しさを追求しています。また、ショートストロークシフトとシフトノブ位置の最適設計により、軽快なシフト操作を実現しました。操作荷重を専用設計してダイレクトで節度感のあるフィーリングとしたものです。AGSもよりダイレクト感のあるものとしました。最大トルクは「アルト ターボRS」の98N-mから100N-m(10.2kg-m)/3,000rpmへ高めています。

車体は高剛性の「アルト ターボRS」のものを利用しています。足回りのセッティングを引き締め、高いホールド性を発揮する専用レカロ製フロントシートも採用、15インチアルミホイールはリム幅を広げ、操縦性の向上を図りました。サスペンションは専用チューニングのKYB製ショックアブソーバーとなっています。

そこかしこに現代風のスポーティな要素を取り入れる。

エクステリアでは、WORKSロゴをあしらったフロントバンパーアッパーガーニッシュ、ボディーサイドデカール、足元を引き締める黒のホイール、赤のフロントブレーキキャリパーなどを備えました。インテリアは、シルバーと赤を効果的に配した黒基調のスポーティなものとなっています。ターボ過給圧の高さに応じて色が白から赤に変化するブーストインジケーターをメーター内に装備しています。

さらに、本革巻ステアリングホイール[レッドステッチ]、エアコンサイドルーバーリング[サテンメッキ調]、エアコンセンタールーバー[サテンメッキ調]、シフトブーツ[レッドステッチ]、ステンレス製ペダルプレートなどで「走りの雰囲気」を盛り上げています。メーカー希望小売価格は消費税8%込みで、150万9千840円~161万7千840円となりました。

アルトワークスは、「ボーイズレーサー」として、ドライビングが好きな若者層に絶大な人気を誇っていました。しかし、時代が「速さ」ではなく「エコ」を求めるようになり、クルマの楽しさが重視されなくなるとともに姿を消していました。転機は昨年末。アルト ターボRSの登場すると「MTの設定を!」という声が強まることになります。そこでスズキはMTとするだけでなくワークスというカタチでそれを実現してくれました。

アルトの歴史を振り返る。初代アルトは、緻密なマーケティングによって生まれた!

「アルト47万円!」のコピーで鮮烈にデビュー!

8代目となる新型アルトの解説に続き、ここから初代アルトから7代目までを振り返ってみましょう。1979年5月に「アルト47万円」というコピーで登場したのが初代アルトです。ちなみに当時はスズキ(株)ではなく鈴木自動車工業(株)でした。1970年代は、小型乗用車が生産台数を伸ばしていた時代です。反面、軽自動車は70年台後半、生産台数が減少傾向にありました。当時は軽自動車専業のスズキとしては厳しい状況にありました。そんな時代、マーケットリサーチの結果から(1)中古車市場では45万円から50万円台のクルマがよく売れていること、(2)女性ユーザーは、乗用・商用区分といった専門知識がないこと、などのレポートがまとまりました。つまり、安ければ乗用・商用という区分にはこだわらなくてもいいのではないか?……ということです。

そこで商品企画サイドは「物品税が安く、価格ができる商用車でありながら、乗用車スタイルのクルマ」という提案がされたそうです。これに対して営業サイドからは、「商用車と乗用車のユーザーは異なり、販売時にトラブルのもとになる」などの意見も出たそうですが、結果的に「新ジャンルのクルマを作る!」 ということで意見がまとまりました。その時に社長(現・鈴木修会長)命令として出たのが「目標価格45万円以下で売り出す」ということでした。いくら1970年代とはいっても、一番廉価な軽自動車でも50万円台半ばにはなります。高いものだと70万円程度。これはかなり無謀な命令のようにも思えました。

徹底したコストダウンを図りながら、実用性を確保した。

アルトの開発で優先されたのは徹底したコストダウンです。結果、45万円ではできましたが、それでは利益が出ない! ということで2万円を上乗せしたのが「アルト47万円」という価格だったわけです。このとき商用車系が2ドアハッチバックのアルト、同一シャシー系でも、4ドアハッチバックをフロンテとして市販されました。基本としたのは、「クルマ本来の機能、安全性を充実させること」「省資源、省エネルギー、省スペースに対応できること」「誰もが気軽に買えて、自由に乗り回せること」「使われ方に応じて、多用途に使えること」などでした。

機能優先のシンプルなスタイルで、直線的な安定感のある2ボックススタイルを使用することやFF方式の採用により、レッグスペースも広く、大きなリヤラゲッジスペースも確保することが実現しました。エンジンは、高トルク、耐久性で定評のあった2サイクル・3気筒・550ユニットを搭載し、3段式マフラーの採用により静粛性も確保しています。アルトはそのインパクトのあるテレビCMとともにヒット商品となりました。その後、4サイクルエンジンを搭載したAT車もラインナップされました。それは54万5千円なりました。

2代目アルトは女性が乗ることを徹底して意識。

「小林麻美」を起用してスタイリッシュに変身。

[iframe width="560" height="315" src="https://www.youtube.com/embed/fslClLkCVWw" frameborder="0" allowfullscreen][/iframe]

1984年9月に2代目アルトとなりました。同年8月までの累計販売台数は82万台以上となり、1979年以降、毎年軽ボンネットバンのベストセラーカーとなっていました。2代目特徴としては、一部のグレードに回転ドライバーズシートを採用していることがあげられます。当時、メーカーがいろいろチャレンジしていたことが感じられます。これは女性が美しくやさしく乗り降りできることを考慮したもので、運転席が60度右に回転するものでした。また、一部グレードにフラットシートを採用するなどしました。販売価格は49万円~69万8千円でした。

最廉価版は49万円に抑える。

スタイリングも空力を意識したものとし、広い視界を確保する6ライトウインドウとしていました。このときの最廉価版を49万円におさえたのも当初のコンセプトが守られたといえます。ちなみにイメージキャラクターは小林麻美。「雨音はショパンの調べ」などのヒットで知られる歌手、女優です。また、スズキアルトイメージソング「ヒューマン・ウーマン」はドゥ・プレクスという男性二人のボーカルグループが担当しました。
1987年2月にはラインアップに高性能スポーティミニとしてアルトワークスが設定され、若い男性ユーザーを中心に熱狂的な支持を受けることになります。

3代目アルトには両側スライドドアの設定も…。

デザインに「ヨーロピアン感覚」を取り入れる。

1988年9月7日には3代目アルトとなります。ここまで毎年軽ボンネットバンの年間ベストセラーとして実績を重ねてきていました。1988年8月までの累計販売台数は175万台を超えていました。スタイリングは、「直線と曲面の組合せによるヨーロピアン感覚」を意識したものです。当時の軽ボンネットバン最大のホイールベース(2,335mm)とコンパクトなエンジンルームで、室内空間にゆとりをもたせ、プレスドアの採用、セミコンシールドワイパーの採用し、フラッシュサーフェイス化が行われました。

これはスタイリングの向上とともに、風切り音の低減、空力特性の向上を狙ったものです。また一部グレードにはスライドドアを設定していました。これで狭い場所での乗り降りの利便性などを図っていたのです。これには2代目からの回転ドライバーズシートが合わせて設定されていました。エンジンはF5B型エンジンです。ショートストロークとなり、出力の向上、低回転域での扱いやすさ、高回転までの滑らかな吹き上がりを見せました。販売価格は69万9千円〜75万8千円となりました。

ダイハツ ミラX4Rとチャンピオン争いをすべく「ワークスR」がラインナップ

アルトワークスには、異型丸型ヘッドランプの採用、専用フルエアロパーツ、アルミホイールの装着が行なわれたことで、さらに個性的なスタイリングとなりました。インテリアもワークス専用のフロントバケットシートが採用されました。ステアリングも専用です。1992年6月には全日本ラリー選手権でのライバル、ダイハツミラX4Rに対抗するべくクロスレシオミッションや簡素化された内装を持つ「ワークスR」が発売されました。

4代目アルトは四角くなって登場。

四隅がわかりやすいデザインでドライバーにさらにやさしく!

1994年が4代目のデビューです。バンタイプの4シーターは49万8千円という廉価な設定をして、初代から続くこだわりを見せました。ちなみにセダンタイプでも国産乗用車最低価格となる59万5千円の機種を設定していたのもウリでした。ボディデザインコンセプトは「しっかりした剛性感」と「軽快感」を両立した四角いデザインです。角形デザインでボディ四隅の位置がわかりやすいために取り回しが良いというのも、「ドライバーにやさしく」という配慮からでした。ホイールベースは2,335mmと延長され、室内、ラゲッジスペースとも広いものになっています。

エンジンは、1カム6バルブ、1カム12バルブ、1カム12バルブEPIの3種類の設定です。これは従来のF6Aエンジンに改良を加えて中低速のトルクをあげています。サスペンションは、フロントにマクファーソンストラット式、リヤはI.T.L式サスペンションです。これは、ばね定数、減衰力、ブッシュ類のセッティングを見直すことで乗り心地、操縦安定性両方の向上を図りました。ボディ剛性についても、有限要素法(コンピューター解析)でボディ各部を見直し、ステアリングサポートメンバーを採用することでねじり剛性、曲げ剛性をそれぞれ従来から20%向上させています。

アルトワークスは、K6A型ツインカムターボエンジンとECUフル制御に!

アルトワークスについては、丸型ヘッドランプ、丸型フォグランプ、丸型ターンシグナルランプを採用して個性的なエクステリアとしました。フルエアロパーツ装着となりスポーティ感もアップしています。エンジンは新開発K6A型オールアルミ製ツインカムターボ。16ビットマイクロコンピューターによるエンジンのフル制御システム「SHIC(スズキ・ハイパフォーマンス・インテリジェント・コントロール)」は軽自動車初となり、アルトワークスのRS/Zに採用しました。

このエンジンはヘッドカバー、シリンダーヘッド、シリンダーブロック、ロアケース、チェーンカバーをすべてアルミ化しています。これにより、従来比11.0kgの軽量化が図られています。オイルクーラーは水冷式となっていました。これにより64PS/6,500rpm、10.5kg-m/3,500rpmとなりました。またie/sに採用されたF6A型EPIインタークーラーターボエンジンはターボチャージャーの改良により64ps/6,000rpm、10.0kg-m/4,000rpmとなりました。その他、サスペンションの専用チューニング、RS/Zには四輪ディスクブレーキが採用されています。価格は49万8千円〜108万7千円となりました。

5代目アルトは安全性をさらに高めた。

国内衝突安全性基準を満たすことと軽量化を追求。

1998年10月7日に5代目がデビューしました。衝突安全性の向上を目的とした国内新安全基準を満たしながら、経済性や使いやすさを一層向上させることに腐心しました。新世代の軽自動車として品質、性能を高める努力がされました。開発に当たっては「つよく、やさしく、のりやすく」をキャッチフレーズにしています。国内新安全基準に対応しながら軽量化を徹底した「軽量衝撃吸収ボディ」の開発にも力が注がれています。衝突時につぶれながら衝撃エネルギーを吸収するクラッシャブル構造、衝撃荷重を分散させる骨格構造、高強度なキャビン構造から成り立つ「軽量衝撃吸収ボディ」も採用しています。

ただし、そうすると車体の拡大に伴う重量増によって軽本来の特長である燃費の良さ、経済性の高さ、使いやすさが失われがちになります。それを避けるために、車体、エンジンなど重量部品はもちろん、数gの小さな部品に至るまで軽量化を追求したといいます。結果、車トータルで軽量設計となりました。ここから新スローガン 「小さなクルマ、大きな未来。」がスローガンを掲げています。このスローガンは「小さな車はこれからの社会の要請であり、これに沿って、今後とも真に価値のある小さな車づくりを通じて豊かな未来づくりに貢献したい」という意味合いを込めたものだそうです。

この時は、経済性の向上を図るために、最小限の重量アップにとどめ、中低速トルク重視のエンジンの搭載、実用域での使い勝手を向上させました。セダン全車にEPI(電子制御燃料噴射装置)エンジンを採用、バンは全車キャブレターを可変ベンチュリー式にしました。「Sc」には新開発のDOHCリーンバーンエンジン+電子制御スロットル搭載車を設定、10・15モードでリッター当たり29.0kmの燃費となりました。さらに省燃費タイヤの採用等により、ほぼ全車で先代アルト以上の燃費を達成することになりました。

シャシーの拡大で乗り心地を上げながら、取り回しの良さも向上。

シャシーは安全性向上を目的に全長で100mm、全幅で80mm拡大しています。ホイールベース及びトレッドの拡大により、快適な乗り心地をとなりました。最小回転半径は4.2mに減少 (従来車は2WD車4.4m、4WD車4.6m)しています。安全面では、全車のブレーキに8インチマスターバックを採用して制動力を向上させています。ペダル剛性アップ、ストローク短縮等も行われました。静粛性では、エンジンマウントを3点支持方式に変更、メインマフラーの容量アップ、制振材・遮音材の材質変更等により振動・騒音を低減し、空力特性を向上し風切り音も低減させています。

インテリアは質感の高さにこだわりました。全車にフルトリム採用、樹脂類のシボの変更等が行われました。操作性の向上のために、軽自動車では不自然になりがちなペダル類をシートに正対させ運転席・助手席左右対称のレイアウトとなったのもドライバーにとってはありがたいことでした。シートはヒップポイントを高め、ドア開口部高さを拡大し、乗降性を向上させています。広い荷室をはじめ、インパネ内蔵スライド式カップホルダー (セダン)、クォータートリムポケット(3ドアセダン)、コラムカバーポケット等、収納スペースを増やしています。エアフィルター付エアコン、液晶式オド&トリップメーターの採用、キーレスエントリーにアンサーバック機能を追加等、日常の使い勝手を向上しています。
その上でセダンは64万8千円~104万5千円、バンが49万8千円~71万2千円というメーカー希望小売価格としました。

アルトワークスに関しては、丸型ヘッドランプ(マルチリフレクター)を採用。また、専用エアロパーツを装着し個性的で質感の高い外装と、本格バケットシートと黒基調でスポーティな印象としました。エンジンは、新開発DPHCターボVVT(可変バルブタイミング)エンジン(電子制御スロットル採用)、DOHCターボエンジン及びSiターボ(SOHC6バルブターボ)エンジンを搭載しています。フロントは全機種ベンチレーテッドディスクブレーキを採用となりました。タイヤは全機種155/55R14サイズとなっています。RS/Zの2WDの5MT車には、ヘリカルLSDを採用しトラクション性能を向上させ、RS/Z全車に、新開発の4輪ABSを標準装備しています。

6代目アルトは弟分のワゴンR似となる。

2004年9月13日からは6代目アルトとなりました。このときの商品コンセプトは、「自分の時間に気軽に使える親近感のわくクルマ」です。軽自動車本来の経済性の高さや使い勝手の良さなど「アルト」の基本性能を追求したものとなりました。燃費は「E」2WD・5MTの10・15モード燃費で24.5km/Lとなりました。また「E」「G」の4WD・3AT車を除く全機種がグリーン税制に適合したことで、自動車取得税の減額が受けられました。

6代目では、2003年9月発売のワゴンRの軽乗用車 新プラットフォームを採用しており、さらに新採用のサスペンションや車体構造で、乗り心地を良くし静粛性向上させています。「毎日使う軽自動車としての扱いやすさや使い勝手の良さの向上」も気を使われた部分です。最小回転半径を4.1mと小さくし、狭い道などでの扱いやすさを向上させたことや、前席のシートスライド量を180mmから240mmに前後60mm増やし、大柄な人から小柄な人までより適切な着座位置が選べるようにしています。室内高は30mm高くなり1,230mmとして、室内に余裕を持たせ、前席シート着座高も25mm高く560mmとし、後席シート着座高を20mm高くして605mmとしています。また、前ドア開口部は上下左右に広くなったことで乗降性も良くなっています。

車高が高くなったことで、荷室が余裕を持って使えるようになった。

荷室は、リヤシートを倒さなくても大型のベビーカーが積めるほどの広さとなりました。リヤシートを倒すことで床がほぼフラットな荷室になることも使い勝手の向上が図られた部分です。「X」のリヤシートは分割可倒式となっていました。その他室内では、グローブボックスがティッシュボックスが収納できる大きさとし、ティッシュペーパーを取り出しやすいように内部の形状を工夫したものとなりました。4人分のドリンクホルダー、カードケース、フロアコンソールボックス、インパネアンダートレー、フロントドアポケットの収納スペースを豊富に設定しているのも、女性へのやさしさを意識した部分だと思います。

エクステリアデザインは若々しくあたたかみのあるものを目指しています。「円と直線」をデザインテーマにしたフォルムを採用。居住スペースは「直線」、ボンネットやバックドア、前後フェンダー部などはやわらかな「円」で表現することで美しく安定感のあるフォルムとなりました。フロントグリルは格子グリルで、ターンランプと角型ヘッドランプは、そのグリルと連続したデザインとなっています。インテリアは、明るいベージュを基調とした、あたたかみのある内装色を採用し、シート表皮のデザインに、楽しいパズル柄のパターンを採用しました。

時代の要請に応じて、衝突安全性能、防犯性能も力が注がれた部分です。軽量衝撃吸収ボディ「TECT」や、前席シートベルトの性能向上、運転席・助手席エアバッグの全車標準装備等により乗員に対する衝突安全性を向上させています。これはJNCAPで「5つ星」の評価を受けたワゴンRと同じプラットフォームを採用したことにより成し遂げられました。さらにルーフと車体をつなぐピラーと、ルーフサイドの内装などに衝撃軽減構造を採用、乗員の頭部への衝撃を軽減するようにされています。

搭乗者だけでなく歩行者の安全性の向上も考えられています。ボンネットやフェンダー、ワイパー周辺部などに、万一の時に歩行者の頭部への衝撃を軽減するフロント衝撃吸収構造を採用しました。車両本体価格は、MT車が、経済車「E」65万円、標準車「G」75万円、AT車が、経済車「E」70万円、標準車「G」80万円、上級車「X」90万円とシンプルで分かりやすくしています。特に「E」の2WD・5MT車でエアコン、パワーステアリング、AM/FMラジオ、運転席・助手席エアバッグ、カラードバンパー 等を装着した上での価格で、リーズナブルになっていました。このモデルチェンジでは、商用バンは、5代目アルトを継続販売していました。その後、商用バンがモデルチェンジします。

7代目アルトのコンセプトは省資源、低燃費

エンジンの効率化とCVTの適正化で燃費を向上させる。

2009年12月16日には7代目となりました。コンセプトは「省資源・低燃費で気軽に使え、世代を超えて愛される軽自動車」です。低燃費と環境にこだわり、優れた環境性能と経済性を実現するため、燃費・排出ガス性能を向上させています。エンジンは、燃焼効率を高めたVVT付エンジンを全車に採用しました。さらにインテークマニホールドの変更などにより吸気効率を高め燃費を向上させています。車体の軽量化や副変速機構付CVTの採用も採用したことにより、2WD・CVT車で24.5km/(10・15モード走行)となりました。

このCVTはロー/ハイ2段の副変速機構付とすることで、変速比幅を広く取り、燃費と発進加速を向上させています。AT車は全車4速化し、ロックアップ領域を拡大することで、2WD車は22.5km/Lとなりました。全てのグレードの2WD・4WD車を環境対応車普及促進税制(エコカー減税)に適合させています。転がり抵抗を低減するコンパウンドを配合した大径タイヤを採用したことも燃費の向上に一役買っていました。

低燃費と環境へのこだわりとしては、ボディ鋼板の板厚の見直しと高張力鋼板の使用を拡大することで、剛性を高めながらボディの軽量化に取り組んでいます。フロントサスペンションにはLアーム+サスペンションフレーム構造を採用、リヤサスペンションはショックアブソーバーやトレーリングアームの取り付け位置を最適化することで、しっかりとした走りと快適な乗り心地の実現を目指していました。防振・防音対策による静かな室内も特徴的です。

ホイールベースをさらに延長することで、乗り心地性能を向上。

電動パワーステアリングのモーターのトルクを増すことにより、軽く操作できるのとともに、ステアリングギヤ比を小さくすることで取り回しやすくしています。ホイールベースは2,400mmとなりました。これは快適な室内としっかりした走り、快適な乗り心地に貢献しています。居住空間を拡大し、前後の乗員間距離を広く取ることで、充分な荷室スペースを確保しました。

エクステリアはルーフラインがスタイリッシュになりました。また、やさしい印象の丸みをおびたフロントフェイスなど、親しみやすいデザインとなっています。紡錘形をした愛着のもてるヘッドランプや、やさしい印象の丸みをおびたフロントフェイスを採用しました。これは見た目だけではなく風洞実験とコンピューター解析により、空力性能に配慮したボディ形状です。前後のタイヤをプレスラインと、豊かで張りのあるドア断面、サイドウインドー形状など、きびきびと走る印象を持たせました。実用面も十分に考えられ、ドア開口部を拡大し、後席はステップとリヤフロアの段差を小さくすることで乗り降りしやする配慮が図られました。

インテリアは、ベージュとブラウンの配色など、優しく柔らかな印象になりました。横基調のデザインのインパネや大型メーターの採用など、デザイン性と機能性を併せ持っています。これは「世代を超えて愛される親しみのもてるデザイン」を意図したものだそうです。インパネ全体は丸みをおびた柔らかなフォルムですが、先述したとおり横基調のデザインを取り込むことで室内の広さを表現しています。インパネ中心部は円状のデザインとし、造形に合わせたCDプレーヤーを採用するなど、親しみやすさを醸し出しています。

収納スペースも豊富にとりました。取り出しやすく、小物入れに便利なインパネトレーを採用したり(助手席)、ボックスティッシュホルダー付の大型グローブボックスを採用したりしています。(助手席)。安全性能も先代と同じように考えられ、軽量衝撃吸収ボディTECT[テクト]、歩行者傷害軽減ボディ、頭部衝撃軽減構造インテリアを採用していました。

アルトバンは経済性が高く、広く使い勝手の良い荷室など、商用車に求められる価値を追求しました。リヤドア開度は80度とし、荷物の出し入れがしやすい5ドアを採用しています。2名乗車時の荷室幅は1,185mm、荷室高は915mm、荷室長は1,085mmとなりました。メーカー希望小売価格はアルトが、73万2千900円~115万7千100円、アルトバンが67万7千250円~88万4千100円となっていました。

中古車相場はどのくらい?

中古相場をざっと見てみましょう。ただ、さすがに初代は現存する数が少なそうです。あったとしてもプレミア価格となってしまうでしょう。ここではちょっと除外します。2代目からは安いものなら30万円から40万円程度であるようです。3代目は下は1万円からありますが、スライドドア仕様は90万円程度の高値がつくこともあります。ワークスは50万円程度です。4代目は5万円から20万円程度、ワークスは80万円程度、5代目は10万円から20万円程度、ワークスは100万円程度、6代目は1万円から100万円程度と幅が広く、7代目の相場も10万円から90万円程度と程度やグレードによってばらつきがあるようです。

スズキ アルトの中古車 テキスト検索結果 1~20件目 / 10,643件 / (20件表示) | 中古車情報誌Gooが運営する「Goo-net(グーネット)」は、中古車、新車、自動車ニュースなどの知りたい情報を簡単に検索可能です。

アルトをライバル車と比較してみると……。

アルトのライバル関係にあるのはダイハツのミラ、およびミライースになるでしょう。特に燃費を考えるとミラがJC08モードで21.6~24.2km/Lなのに対して、ミライースが32.2~35.2km/hですから、アルトの2WD、CVT車の37.0km/hを見るとミライースが一択で事実上のライバルとなります。

ミライースは燃費向上の技術を「イーステクノロジー」と謳っています。具体的には緻密なアイドリングストップ、燃焼効率をアップするためのデュアルインジェクター、コンピューターによる点火タイミングの緻密なコントロール、水冷式で排気ガスの温度を低下させて燃焼室に戻しノッキングを防止するクールドi-EGRなどの合わせ技からなっています。現状ではエンジンの改良はもちろん、骨格から見直し軽量化を図ったアルトに分があるという感じはします。

アルトのモデルチェンジ(マイナーチェンジ)の噂の真偽のほどは?

冒頭にも書きましたが、現行アルトは2014年12月に登場しました。となるとマイナーチェンジがあってもおかしくない時期ではあります。ただ、今年のスズキは燃費不正の一件などもあり、やや慎重な動きになっている面はあります。巷では年末から年明けにかけて、アルトのエンジンにS-エネチャージが搭載されるのでは? という話もあるようですが、周囲に取材してみたところ、具体的な情報は入ってきませんでした。

ちなみにS-エネチャージとは、従来からあったエネチャージの進化版で、先行して搭載されているハスラーではISG(モーター機能付き発電機)のモーターアシスト時間を、従来の最長6秒間から最長30秒間まで拡大し、モーターアシストする速度域を従来の「15km/h~85km/h」から「発進後~約85km/h」まで拡大するとともに、モーターアシストする頻度を向上させています。これでリッター40kmか? などいう話も出ているようですが、どうなるかお楽しみといったところです。

まとめ

軽自動車は、「本当は普通乗用車に乗りたいけど、仕方がないから……」というイメージがかつてありました。しかし、アルトが登場してからは、軽自動車だから乗りたいという層が増えたように思います。また、取り回しの良さから女性ユーザーに広く受け入れられたのも事実でしょう。ワークスは軽のスポーツカーという概念を見せてくれました。適当な大きさであることや、中古が出回っていることでカスタムベースとしても楽しませてくれるものです。アルトをはじめとする軽自動車が普及していったことが日本のモータリゼーションには重要だったことは事実だと思います。