【RJCカーオブザイヤー受賞「アルト ラパン」】低燃費、快適性、遊び心を備えた優等生!

2015年6月に、三代目となる「アルト ラパン」が登場しました。アルトが実用を意識したのに対して、ラパンは女性ユーザー目線で作られたのが大きな特徴です。ファッショナブルなスタイル、パステルトーンのカラーなどが目につくところですが、改良型エンジンや新プラットフォーム、サスペンションでなかなかの優等生ぶりを発揮しています。2016年RJCカーオブザイヤー受賞となったこのクルマを中心に見ていきましょう。

2016年RJCカーオブザイヤーを受賞したのが「アルト ラパン」

女性ユーザーの力強い支持のもと三世代目を迎える。

photo by jima

2016年のRJCカーオブザイヤーを受賞したのが「アルト/アルト ラパン」です。どうしても本家であるアルトの方に注目が行ったようですが、三代目となるアルト ラパンは軽自動車として完成度の高いクルマとなっています。ラパンは女性ユーザーがそのほとんどを占めるということから、開発段階で多くの女性スタッフが関わったのがひとつの特徴です。それがエクステリア、インテリアはもちろん上質な乗り心地にもつながっています。ちなみにですが「ラパン(lapin)」はフランス語でウサギの意味です。

顔つきからスタイルまで、やさしさを表現。

特にここ数年来のクルマのヘッドライトはファミリーカー、スポーツカーを問わず「眼つきの悪い」感じがするものが多いように思うのですが、女性ユーザーということを意識したこともあり、丸いヘッドライトでやさしい顔立ちにしていることは好感が持てます。これも初代からのキープコンセプトですが、ボディ全体を見てもスタンダードなセダンでありながら、スポーティさも感じられる好ましいものとなっており、本家のアルトよりもデザイン的に優れていると個人的に感じます。三代目アルト ラパンについては、改めて触れるとして、ここでざっと初代アルトラパンからの流れを振り返ってみましょう。

女性をターゲットに発売するが、男性ファンも取り込む

ワゴンR人気の中、女性層を取り込むことを視野に入れる。

初代の発売は2002年1月30日でした。アルトは長らくスズキの顔といえる存在でしたが、当時屋台骨をささえていたのはハイト系の軽自動車として爆発的な人気となったワゴンRでした。使い勝手の良さでは従来ながらの乗用車型軽自動車はかなわなくなっていた現状があります。本家アルトも5代目となっていましたが、ちょっと元気がない状態でもありました。そんな状況の中でひとつのテコ入れ策? として出てきたのがアルト・ラパンといえるでしょう。現在の「丸みのある角形ボディ」はその時から続くものです。

車体高は当時の流行りからすると低めでしたが、後席をワゴンR並とするなど、広い室内空間を確保する工夫が入れられていました。外観や内装の部品には家電や家具、雑貨 等とイメージを重ねた生活感のある、親しみやすいデザインとしたのは、最初から女性ユーザーを意識したものといえます。これが思惑通りのヒットとなりました。エンジンは全車「K6A」と名付けられたオールアルミDOHCエンジンです。回転に応じてバルブタイミングを最適化する可変バルブ機構(VVT)がついており、低回転から高回転までストレスなく回りながら、燃費も両立させたものとなっていました。

厳しくなる排気ガス規制に対してエコロジーも追求。

排ガス性能は、「平成12年基準排出ガス50%低減レベル〔優-低排出ガス〕」認定となっています。トランスミッションは全車とも電子制御4速ATです。を採用。コラムシフトで、操作性も良い物でした。これは登降坂制御が採用されているため不要な変速を抑えることができ、燃費と快適性に貢献していました。グレードはG、X、X2の三種類で全グレードとも同じエンジンで4速ATを採用。それぞれに2WDと4WDの設定がありました。

2002年10月17日には、追加グレードとして「アルトラパンターボ」が加わります。Mというのはマイルドという意味で、低過給のターボとして低中速の性能を求めています。DOHC12バルブMターボエンジンを搭載したもので、やはり2WDと4WDが設定されていました。女性を中心に人気を得たラパンですが、男性を意識したモデル「アルト ラパンSS」を追加したのが、2003年9月3日です。このグレードに64PS(47kW)のDOHCインタークーラーターボエンジンを搭載し、5速MT車を設定しました。標準車に対し車高を10mm下げる専用ローダウンサスペンションを採用し、165/55R14サイズのタイヤと専用アルミホイールを履かせるというこだわりぶりを見せました。その後も一部の改良、統廃合を含めながら、二代目に引き継ぎます。現在の中古車価格は車両本体で100,000円から500,000円程度になっています。

二代目はキープコンセプトながら燃費性能をアップ!

初代を支持した女性の志向をさらにもりこみヒット。

「二代目アルト ラパン」は2008年11月26日に登場します。初代の成功を踏まえて、若い女性を中心というスタイルをより鮮明化して、きっちりとマーケットのニーズに応えました。エクステリアは、基本的なフォルムを初代から引き継いでいます。ただ、ロングルーフ化に加え、細部まで造形をよりモダンに、より安心感を得られるようなデザインとする改良が施されました。インテリアは、シンプルかつスタイリッシュを目指し、心地の良い居住空間を目指しています。

パワーユニットは初代と同一ながらシリンダーヘッドまわりの冷却性の向上と吸気系レイアウトの改善によりトルクアップしています。街中を軽快に走れることを意図した自然吸気エンジンを採用した2WD・CVT車は24.5km/L、2WD・4AT車は22.5km/Lを達成。また力強いターボエンジンを採用した2WD・CVT車は23.0km/Lを達成するなど、財布へのやさしさを増しています。トランスミッションはCVTがウリですが、自然吸気エンジン搭載車には4ATも設定しています。

新プラットフォームを採用し、ゆとりのあるパッケージングとした。

居住性については、新型「ワゴンR」で採用した新しいプラットフォームを採用することで、ホイールベース、室内長、前席後席の乗員間距離を拡大し、ゆとりのある室内空間を実現しています。前席乗員のフロントガラスまでの距離を拡大し、前席の開放感を向上させました。グレードはG、X、T(TLパッケージ)で、GとXが自然吸気エンジンで4ATとCVTの設定、T(TLパッケージ)はターボエンジンでCVTのみの設定となっていました。全グレードとも2WDと4WDが選べます。

2012年5月には、燃費の改善を図りました。2WD・NAエンジン搭載車は、エンジン制御を見直し燃料カット時間を長くしたほか、低粘度のCVTオイルを採用してCVT内のフリクション(摩擦抵抗)を低減したことで燃費を改善しています。燃費は23.2km/Lとなり従来より0.4km/向上しています。これにより「平成27年度燃費基準+10%」を達成し、自動車取得税と自動車重量税の減免措置が受けられる「環境対応車普及促進税制(エコカー減税)」の軽減率が、50%から75%に向上しました。中古車価格は車両本体価格で700,000円から900,000円程度となっています。

さらにおしゃれに可愛くなって三代目アルト ラパンが登場!

三代目ラパンはエンジンを改良してダウンサイジング化を図った。

そして2015年に三代目の登場となるわけです。パワーユニットはK6Aをコンパクト化した改良型のR06A型。吸気ポートとピストン形状を最適化したことで、燃焼室内の混合気を均一にしより燃焼しやすくしています。圧縮比が11.5まで上がっており、これにより燃焼効率がよくなる反面、エンジンにダメージを与えるノッキングがおきやすくなりますが、そこは排気ガスの一部を燃焼室に戻すEGRを利用し燃焼温度を下げています。これは吸気行程で起きるエネルギー損失となるポンピングロスを減らす作用ももたらしています。また、L、S、Xのグレードでは、鉛バッテリーとは別にリチウムイオンバッテリーを搭載し、減速時にオルタネーターで回生させるエネチャージを採用するなどして、燃費の向上を図っています。

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軽量化を果たした新設計のプラットフォームも見逃せません。アンダーボディの主要構造や部品の配置は全面刷新しています。先代に比べると全体を滑らかな形状にしており補強部品も減らしてあります。板厚も薄くなっていますから、剛性、強度的にどうかな? という面もあるのですが、これは骨格部を連続化することで、十分なボディ剛性をもたせています。ボディ全体にわたっては、高張力後半を重量比で約45%採用しています。そのうち、超高張力後半の使用範囲を約16%として、軽量化を図った上でボディ剛性の確保も行なっています。

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プラットフォームとともにサスペンションも新設計

新プラットフォームで高剛性を実現。ロングホイールベース化で乗り心地の向上を目指す。

新プラットフォームとなったために、サスペンションも新設計となりました。特にスズキの軽乗用車はリヤにI.T.L式を長年つかっていましたが、トーションビーム式に変更し、これも軽量化に一役買っています。乗り心地の向上を図るためにサスペンションストロークも伸ばしました。軽乗用車はスペースの問題もあり、リヤサスペンションに制約が多いためにストローク不足で不整地は苦手としますが、積極的にその辺の改良を狙ったということでしょう。ねじり剛性を高めた車体にサスペンションが負けないように、サスペンションフレームと車体メンバーとの固定点も増やしてあります。これによりサスペンション取り付け部の横剛性を向上させ、走行性能を高めています。味付け自体もアルトよりもさらに乗り心地重視となっていますが、これも女性の意見を取り入れた結果ということでした。

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新プラットフォームでは、ホイールベースが2.460mmと先代よりも60mm長くなっています。ホイールベースが長いということは、路面の不整の影響を受けにくいということですから、これも乗り心地、操縦安定性の向上に貢献しています。乗り心地という面では、シートの変更も大きいでしょう。フロントシートは、軽量化と高性能化を両立したシートフレームを新開発しています。リヤシートもシートバックフレーム構造の見直しやボディ側への取付部品溶接化などを行い軽量化に貢献しています。実際、アルトと乗り比べると分かるのですが、乗り心地が非常に良いことに驚かされました。個人的にアルトを買うならラパンの方がいいかな? と率直に思いました。

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試乗では感じた特筆ものの乗り心地の良さ!

本家アルトとくらべ、一段上の良い乗り心地は特筆モノといえる。

試乗したときに気がついてちょっと驚いたのがステアリングのロックトゥーロックがちょうど4回転もすることでした。普通に乗っている分にはそんなにギアレシオがスローになっているとは感じません。後になって調べてみると可変ギヤレシオステアリングとなっていることがわかりました。新プラットフォームではロングホイールベースになっており、従来の最小回転半径(小回り性能)が大きくなってしまうところを、ステアリング舵角でフォローしているのとともに、通常走行(駐車時以外)で使う舵角を違和感のないものにしているということだと思います。反面、ハンドルが多く回るということは、車庫入れが得意でないドライバーには、どれだけ切っているのかがわかりづらい面もあるのでは? という懸念もいだきましたが、これはある程度慣れの問題でしょう。

静粛性も走行中はかなり高いものと思います。アイドリングストップからの再始動のときのエンジン音は、それなりに耳障りなところがありますが、ボディに入る振動が少ないのは美点だと思います。この辺はボディ全体の静粛性向上やエンジンマウントの最適化などが好影響を与えていると考えられます。動力性能は、パワフルとまでは言いませんが、燃費の向上も勘案して、飛ばして走ることを想定していないクルマとしては必要にして十分だと思いました。

CVTとAGSは一長一短。

CVTは普通に乗っている分には非常に快適でした。ただ、個人的には無段で加速していくトランスミッションはどうもクルマに乗った気がしないというのは好みの問題はありました。一方、MTをベースとしたAGSの方は比較的違和感無く乗ることができました。ただ、どうしても1速と2速の間の変速ショックは気になりました。ただ、中には変速のスムーズさを評価する人もいます。ここはどこに基準をおくかで変わってくるところなのかもしれません。他にも積載性の良さなどを含めた使い勝手の向上や、「隠れラパン」として、各部にウサギのオーナメントが添えられるなど、遊びココロも忘れていません。メーカー希望小売価格は、車両本体価格で1,077,840円から1,492,560円(消費税8%込み)です。

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まとめ:ラパンが受賞したRJCカーオブザイヤーとは?

アルト ラパンはアルトとともに2016年RJCカーオブザイヤーを受賞しました。ちなみにRJCカーオブザイヤーについても解説しておきましょう。RJCは正式名称を「NPO法人日本自動車研究者ジャーナリスト会議」といって、年に一度カーオブザイヤー、インポートカーオブザイヤー、テクノロジーオブザイヤーを選出することを事業のひとつとしています。もう一つ、日本カーオブザイヤーがありますが、そちらがカーメディアが中心となっているのに対して、個人会員によって投票、選出されるのが違いといえるでしょう。今回はアルト/アルトラパンの対抗馬としてはマツダロードスターがありましたが、やや得票数で差をつけるカタチでの選出となりました。RJCはわりと実用系のクルマが評価される傾向? があるようで、日本カーオブザイヤーがマツダ・ロードスターを選出したことを考えると、RJCらしい結果だったと言えるかもしれません。

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