【ドライビングテクニック「ブレーキング」解説】踏力一定でスピードコントロールしワンランク上を目指せ!

ブレーキングについて深く考えたことがあるでしょうか? 普通はブレーキを踏めばスピードが落ちるし止まる……というところに落ち着くのかもしれません。ただ、ちょっと日常の運転でもブレーキングにテーマを持って運転したり、踏み方を考えることで、運転が見違えるほどうまくなることもあります。今回は、ブレーキの構造から、一般的なテクニック、モータースポーツのブレーキングを解説してみます。

ブレーキングとは?

一般的なブレーキングとモータースポーツでのブレーキングは似て非なるもの

ドライビングテクニックで一番難しいのはブレーキングだといわれます。もちろん通常走行でブレーキペダルを踏めばブレーキは効きます。一般走行では何気なく踏んでいるかもしれませんし、急ブレーキにならなければそれでいいともいえます。スムーズに安全に止まれるのが良いブレーキングといえるでしょう。ただし、モータースポーツなど、極限の状態を前提にしたブレーキはストップするためのものではなく、スピードをコントロールするためのものです。そのためにはいくつか知っておきたい事柄もあります。

まずはブレーキ装置を知ろう

ブレーキはパッドとディスクだけで構成されているわけではない

まずブレーキ装置(システム)を見ていきましょう。ブレーキシステムで思いつくのはまず、ブレーキパッドとブレーキディスク、そしてキャリパーだと思います。もちろんこれらの装置は、ブレーキに不可欠の重要なものです。ただ、普段目につきませんが他にも重要な装置があるので、ここでざっと解説していきましょう。ブレーキはキャリパーのピストンによって押し出されたブレーキパッドがブレーキディスクを挟むことで制動力を発揮します。ただし、そこまでの経路も重要です。ブレーキペダルは直接的にブレーキマスターシリンダーにつながっています。そこからキャリパーまで満たされたブレーキオイル(フルード)を介してキャリパーシリンダーのピストンを押し出し、ブレーキパッドがディスクを挟む力を生みます。

ブレーキ性能を向上させるためにパスカルの原理が利用されている。

実はここは中学の理科の授業で習った「パスカルの原理」を利用しています。「密閉した流体の一部で圧力を増幅させるとそのなかのあらゆる点で、圧力はそれと同じ大きさで増幅する」というのが、その原理の基本ですが、マスターシリンダーよりもキャリパーシリンダーの経を大きくすることでキャリパーピストンを押す力を増幅しているのです。ただ、一般的な使用を考えると、これだけでは踏力が不足しなかなか止まらないという現実もあります。

そこで考えだされたのは、ブレーキマスターバックという装置です。これはアクセルを踏み込んだときに入ってくる空気の流れによって負圧(真空状態)を作っておき、ブレーキを踏んだときにバルブを開き、そこに空気を満たすことを利用してブレーキ踏力を増そうというものです。現代の乗用車には基本的にこのシステムが装着されており、比較的軽くブレーキングをしても、十分なブレーキの効きが得られるようにしています。ただし、デメリットとして踏力にビビッドに対応するフィーリングを得られないという面もあります。繊細なブレーキングが求められるモータースポーツでは、あまり適さないということがあり、純粋なレーシングカーやラリーカーでは、マスターバックを使用しないこともあります。その代わり専用の効きの強いブレーキパッドを利用します。

ブレーキングで起こる危険な現象

ブレーキの多用はベーパーロックとフェードを誘発する恐れがある。

ブレーキローターは、ブレーキパッドに挟まれるという性格上熱を持ちます。正しくは回転力を熱にして大気に放出するからスピードが落ちるのです。ブレーキの効きという面では熱は必要なのですが、必要以上に加熱するのも困りものです。ですからベンチレーテッドディスクといって、走行風による冷却を考えたものや、大型化し表面積を増やすことによって、冷却性をあげたものもあります。ブレーキパッドは、材質によって、性格を変えることができます。一般的な乗用車に使用されているものは低温でも制動力が得られる変わりに、高温ではフェードが起きやすい方向となっています。

ブレーキパッドのフェードを防ぐためにレースでは専用パッドを使用する。

フェードというのは、ブレーキパッドが加熱することにより、材質に化学変化が起きてしまい、そこで発生したガスがブレーキパッドとローターの間に入るためブレーキの効きが悪くなることです。場合によってはブレーキパッド自体がベース(裏金)から燃え落ちてしまうこともあり、非常に危険です。逆にモータースポーツを考えたものは低温時での効きが弱く、ある程度熱が入ることにより十分な効きが得られるようになっています。こういうものを普段使うと、制動力が得られる温度までブレーキパッドが加熱しませんから、非常に危険です。レース用の高性能ブレーキパッドを使ってもメリットがないばかりか危険性をともなうことも認識しておきたいものです。

ブレーキに関する危険な現象でもうひとつ代表的なものには、ベーパーロックがあります。これはブレーキシステムで加熱した熱がブレーキオイル(フルード)に伝わることによって起きます。ブレーキオイルは沸点の高い原料をつかっていますが、それでも最終的には沸騰します。そうすると中に気泡が混じりブレーキの効きが悪くなったり、最悪の場合にはブレーキが効かなくなることもあります。これを防ぐためには、定期的なブレーキオイルのエア抜きや交換が不可欠となります。

スムーズなブレーキングとは?

まずは踏力一定ブレーキで停止線にピッタリ止まること。

お待ちかね? のブレーキテクニックについてみていきましょう。ブレーキングテクニックの減速はスムーズに行なうということでしょう。もちろん、レースなどでは6速アクセル全開から2速まで減速する富士スピードウェイの第一コーナーなどもありますから、急制動を行いますが、そういうときも、ただブレーキをガツンと踏みつければいいということではなく、スムーズな減速が必要です。そうしないと姿勢を乱すなど危険な状態にもなります。ところでスムーズとは何かというと、踏力が一定であるということです。ブレーキングを開始してから、強すぎた、あるいは弱すぎたなどといってコントロールをするのは失敗ブレーキングとなります。まず減速Gを一定にすることが大事です。

前荷重が抜けるのを感じながらブレーキペダルをリリースするとスムーズに停車できる。

踏力一定のブレーキングの感覚を身につけるために一般走行でできることは、信号でストップするときに、黄色、あるいは赤色を確認したらブレーキを踏力を一定にして停止線にピッタリ止めるという方法があります。もちろん、レーシングスピードではありませんから限界ブレーキにはなりませんが、フィーリングという面では練習になります。ブレーキ時には前荷重になっていますから、止まる寸前に荷重が抜けるのに合わせてブレーキを丁寧にリリースすれば、ほとんど減速ショックが感じられないスムーズなブレーキとなり、同乗者に「こいつは違うな……」と思わせることも可能になります。ペダルの踏み方ですが、かかとをフロアにつけて、そこを支点としてペダルを踏むと安定します。

ブレーキが安定することでヒールアンドトゥもより上手にできる。

峠道などをドライブするときも、基本的にはこの踏力一定のブレーキングを意識するといいでしょう。一般走行で限界まで攻めるということはありえませんから、コーナーまで十分な余裕をもってブレーキを開始し、高からず低からずというスピードまで減速し、必要ならばヒールアンドトゥも利用しながらコーナリングすればドライビングの楽しみが何倍にも膨らみます。ヒール・アンド・トウについては、以下のページを参照してください。

これは個人的な感覚ですが、サーキットでも峠道でも同じですが、アクセルからブレーキに踏みかえるときも、間髪を入れずに踏みかえるよりも、アクセルを離して一旦荷重を抜いてニュートラルな状態にしてからブレーキを踏み込んだ方が(速さはともかく)気持ちの良いドライビングができると思いますし、同乗者にうまいドライビングと感じさせることができるようです。別の機会に解説したいと思いますが、ドライビングとスムーズな荷重移動は切っても切れないものです。アクセル全開時は後ろ荷重となっています。そこでいきなりブレーキングして前荷重にしてしまうと、荷重移動が急でスムーズになりません。

荷重移動に注意すればより上手なブレーキングができる。

タイヤというのは、簡単に言うと前後方向(加減速時)にグリップ力を使っていると左右方向(コーナリング時)のグリップ力が減ってしまいますから、いきなりフロントタイヤに前荷重がかかるということはコーナリングを考えてもよくありません。アクセルを抜いて一旦荷重をゼロにすれば、フロントにかかる荷重をコントロールしやすいですし、コーナリング方向のグリップ性能も残りますから、安全にコーナリングできると思います。

モータースポーツのブレーキングという意味では、よく「ロック寸前のブレーキングが必要」といわれます。実際にはスピードコントロールや荷重移動のために「チョンブレーキ」ということもあるのですが、制動距離を短くするという意味ではそれがベストなのは間違いありません。これはもう経験とセンスいうことになってしまうのですが、例えばフルブレーキングが必要なコーナーがあれば、ある程度余裕をもって踏力一定のブレーキを行い、余るようならブレーキ開始ポイントを遅らせる。踏力に関してはまだロックまで余裕があるようなら強めるというような練習を行うということでしょう。

ただし、このような作業が必要なコーナーというのは長いストレートの後に比較的タイトなコーナーが待っている場合で、中低速中心のコースの場合は、フィーリング? でいけてしまうことも多々ありますし、怖い思いまでしてブレーキングを我慢してもあまりタイムにつながらないというのが個人的な感想です。

ブレーキングのコツをご紹介

ロック寸前ブレーキは強く踏むのではなく適度に踏むことで得られる。

私がブレーキングに関して「目からウロコ」という体験をしたのは、ダートドライビングのレッスンを受けたときです。インストラクターはダートトライアルのトップドライバーの国政久郎選手でした。ダートサーキット(丸和オートランド那須)を利用したもので、ある程度ストレートで加速した後フルブレーキングし、なるべく短い距離で止まるということをチェックしてもらったのですが、イイトコロ? を見せようとした私は、フル加速からギリギリまで我慢して、一気にドカン! とブレーキを踏みました。リヤ荷重の抜けた私のスターレットターボはテールを横に振り出しながら停止線をオーバーしました。それを見ていた国政選手は「なんでそんなに乱暴にブレーキを踏むかな~」と呆れ顔……。

「もっと丁寧に!」というアドバイスを元に何度かトライしまいした。結果、国政選手に「今日のベスト」と言われたのは、「自分では軽すぎるかな」と思ったくらいの感じでブレーキを踏んだときでした。これはダートという滑りやすい路面だったからということもあるでしょうが、ウェットの通常のサーキットなどでもいえることであり、要は踏力はケースバイケースでブレーキングの難しさを感じた体験となりました。ちなみに、その日の最後に行なったフルコースでのタイムトライアルでは数十名の参加者中2位でした。

ABS装着車ならフルブレーキしたままでヒール・アンド・トウができるまで練習する。

現代ではABSがスポーティな車種を含めてほぼ全車に取り付けてあることから、ロック寸前にするならばABSを効かせてしまえばいいという考え方もできます。これはレーシングドライバーの土屋圭市選手から聞いたのですが、「ABSを効かせっぱなしでヒール・アンド・トウを使って減速すればいいんだよね」ということでした。もちろんサーキットでの話しです。逆に、そこまで攻められないなら、まだまだレベルの低い走りということも言えるのでしょう。これが現代的なブレーキングのコツと言えるでしょう。もちろんABSの付いていないクルマでは当てはまらないのは言うまでもありません。

まとめ

ブレーキングテクニックについては個人的にも興味があり、いろいろなドライバーから話を聞いたことがあります。ひとによって「まずスーっとブレーキングしてから踏力を一定にする」とい人も入れば「パッっとブレーキを踏んで踏力一定にする」という人に大別されるように思いました。この辺はニュアンスの問題ですから、結局は同じ操作をしているのではないかとも考えられます。いずれにしても、踏力一定に入ってからブレーキ踏力を大きく変えるという人はいませんでしたから、その辺は間違いないと思います。

また、サスペンションのショックアブソーバーの特性は急激な入力が入ったときは縮みにくいですし、ゆっくり入力が入ったときは縮みやすいということがあります。そう考えると、ガツンとブレーキングするよりもスーッとブレーキングした方が前荷重になりやすいとも言えると思います。特に中低速域ではその方がいいでしょう。ショックアブソーバーをしっかりとバンプストロークさせれば、ブレーキをリリースしてもリバウンド側の減衰力によって前荷重がある程度保たれますから、良いコーナリングができるとも考えられます。このように奥が深いブレーキングですから一朝一夕にマスターするというわけにはいかないとは思いますが、その分研究しがいがあるともいえます。まず、踏力一定のブレーキングを心がけることで、ドライビングが見違えるように変わってくるのではないでしょうか?