【トラヴィック】スバルのなかでも外観に似合わぬ変り種!その秘密と魅力に迫る。

「スバル・トラヴィック」この名を聞いてクルマをイメージできますか?当時のミニバンのなかでも地味な存在だけど、実は生い立ちも性能もかなり個性的なクルマでした。今回はその魅力を紹介します。

トラヴィックってどんなクルマ

トラヴィック誕生

2001年頃、富士重工業はアメリカのGMと資本提携していました。富士重工業には3列シートのミニバンがなかったため、GMの子会社であったドイツのオペルが開発したミニバン「ザフィーラ」のOEM供給を受け製造されることとなりました。生産はドイツではなくGMのタイ工場でされました。販売はGMジャパンを通じて輸入されスバル車として売り出されました。
つまり、トラヴィックはドイツで開発、タイで生産、そして日本のスバルで販売される完全なる多国籍輸入車でした。

販売価格の秘話

トラヴィックの当時の価格は、標準モデルが199万円、エアロパーツ、16インチアルミホイール、本革巻きステアリング、メタル調パネルなどが備わるSパッケージが224万円、そして15インチアルミホイール、ヘッドランプ・ウォッシャー、サイドエアバッグ、リモコン付きステアリングといった豪華装備のLパッケージが234万円。ヤナセが販売しているオペル・ザフィーラの1.8リッターモデル(装備はトラヴィックのLパッケージとほぼ同等)が289万円だから、さらに2.2リッターでパワフルでありながら、60万円以上も安いということになります。これは、トラヴィックが人件費の安いタイ工場で製造したということもありますが、それ以外に、ホンダ・ストリーム、トヨタ・イプサムあたりのモデルを意識した価格設定にしたのだと思います。しかし、同型輸入車の販売価格の逆転は、日本における外車の価格設定におけるプレミアム価格の存在を如実に示すものとして話題になりました。このような状況の中、ヤナセによる販売は累計3,300台程度をもって2001年12月に中止となり、オペルの日本市場撤退の最大要因となったともいわれています。トラヴィックはかなりお買い得のクルマだったのです。当時スバルの営業マンも「トラヴィックは外車なので値引きはありません。」といっていました。

トラヴィックを解剖

スペック

スバル トラヴィック 2WD・2.2・Sパッケージ・4AT のスペックです。
【エンジン】
エンジン型式:Z22型 直列4気筒DOHCエンジン
総排気量:2,198cc
使用燃料:レギュラーガソリン
タンク容量:58 リットル
燃料供給:EGI
最大出力:108kW(148PS)/5,800rpm
最大トルク:203N・m(20.7kgf・m)/4,000rpm
【ミッション】
アイシン製:4速A/T FF2WD
【ボディー】
車両重量:1,470kg 車両単体の重量(乗員や積載物の重量を含まない重量)
車両総重量:1,855kg 車両重量に乗車定員と最大積載量を加算した重量
全長:4,315mm 車両(車体)の最前端から最後端までの長さ
全幅:1,740mm 車両(車体)の幅(ドアミラー等は含まれない)
全高:1,630mm 車両(車体)の地上からの高さ
ホイールベース:2,695mm 前後のタイヤ(ホイール)の中心間の距離
室内長:2,515mm 室内の長さ
室内幅:1,385mm 室内の幅
室内高:1,280mm 室内の高さ
トレッド(前):1,460mm フロント右タイヤの中心からフロント左タイヤの中心の距離
トレッド(後):1,475mm リア右タイヤの中心からリア左タイヤの中心の距離

スタイル

ボディサイズは全長4,315mm×全幅1,740mm×全高1,675mm、ホイールベース2,695mm。全体としては全長はプレマシー、全幅はイプサムといった感じで、それまでの国産ミニバンにはないサイズでした。外観上、ザフィーラとの主な違いはフロントグリルぐらいで、グリルは横バーからメッシュタイプに変更され、スバルのエンブレムが装着されていました。
もとが1999年4月に発表されたクルマだけにデザイン的には斬新さないものの、Sグレードにはスバルがデザインしたリップスポーラー、サイドステップといった専用エアロが装備され、モールディングやバンパーはすべてボディ同色で統一されました。オリジナルのラインを尊重しながらも、カチッとした重厚感が巧みに表現されており、日本人の好みに合った仕上がりだ。しかもCd値はザフィーラの0.32から0.30まで向上しておりました。トラヴィックには、機能美を追求するというスバルらしい姿勢がしっかりと込められ、スタイルも燃費や運動性能もすぐれたクルマに進化したのでした。

インテリア

シートアレンジにおいてもザフィーラと全く同じでシートレイアウトは2-3-2の7人乗りです。全長がプレマシーとほぼ変わらないのですが、巧みなデザインのためサードシートは思いのほか、ゆったりと座れエアコンの吹き出し口もありました。サードシートは左右それぞれを独立して格納可能で、しかもセカンドシートの床下にスッポリと収まる仕掛けは感心させられるデザインです。セカンドシートは最大300mm前後にスライドできるため、サードシート格納時に後方にスライドさせればファーストクラスの快適性を味わうこともできるのです。全幅が1,260mmあるため横方向における開放感もストリームやスパシオといった5ナンバーミニバンでは味わえない魅力です。
インパネもステアリングのエンブレムが異なるだけで基本的にザフィーラと大きな違いはありませんが、ヨーロッパ生まれのクルマらしく、豪華で派手なデザインではないもののとても機能的な作りです。フロントシートは全高の余裕から生まれる空間を上手く利用して高めの位置にセッティングされており、広い視野を確保しています。座り心地は国産車のフワフワ感はなく、ドイツ車然とした硬めなものです。初めて乗る人にとっては慣れを要すると思うが、お尻や腰がしっかりと固定されるポジションであることには変わりはありません。特に長距離ドライブのときはその優れた性能を感じられるでしょう。
装備面でもザフィーラとほぼ同一です。7席全てに3点式シートベルト、上下調整機能つきヘッドレストが装備され、低価格モデルといえども安全性の確保に手抜きはありません。アウトバーンのスピードレンジでも高い緊急回避性能を確保する4センサー4チャンネルABSも全車に標準装備され、また高度なイモビライザー(盗難防止装置)も装着されるなど、トラヴィックがヨーロッパ生まれであることを感じさせてくれます。

ドライブフィーリング

エンジンはザフィーラの1.8リッター(最高出力125ps、最大トルク17.3kgm)に対して、トラヴィックはGMグループが開発したオールアルミ製の2.2リッター直列4気筒DOHC(147ps、20.7kgm)を搭載しています。2,200rpmから5,300rpmという実用的な回転域で最大トルクの90%以上も発揮する扱いやすい特性を持ったエンジンです。
ミッションは日本の道路事情に合わせた4速ATで、エコノミー・スポーツ・スノーの3つの走行モードをチョイスできます。また「ニュートラル・コントロール装置」も搭載されました。クルマが停止中にブレーキペダルを踏むとギアが自動的にニュートラルような状態となり、放すと再びギアが入るというもので、無駄な燃料消費を抑えることができるようになっています。
足回りは前/ストラット、後/トーションビーム。形式こそザフィーラと同じだが、スバルが日本の道路にあったダンパーチューニングをし、さらにSパッケージでは16インチタイヤと専用サスによりスポーティーな味付けとなっています。
試乗したことがあるのは最もスポーティなSパッケージです。排気量がザフィーラのそれより400cc増しになったためか出足は力強く、長い上り坂でもトラヴィックのボディの重さが気にならないぐらいにスイスイ上っていき、実用域からのトルクの厚さを堪能できました。また、エンジンの吹け上がりもとても軽く、フル乗車のファミリーユースで使っても重々しさを感じることはありませんでした。
乗り心地はドイツ車然とした硬さを残してあるもののスバルがチューニングしたすばらしい足です。16インチタイヤとスポーツサスを装着しているだけに、走りのしっかり感は申し分なく、ステアリングを通してボディ剛性の高さがハッキリと伝わってきました。まるでドッシリしたスポーティーセダンのような感じです。急激なレーンチェンジであっても不安のない挙動とトレースを発揮しました。ミニバンにありがちな「フワフワ感」は微塵もなく、ハンドリングは正確で俊敏でした。フットワークはミニバンとしてはそうとうスポーティな方向に味付けされていると思いました。
ただし、この硬質な乗り味も運転者は満足しても、乗員である奥さんや子供から「お尻が痛い」と言われるかもしれませんね。このあたりの関係がミニバンの難しいところでトラヴィックはスバルにとっては初の本格的ミニバン。他のグレードなら印象ももっと変わっていたと思うが、Sパッケージに乗る限り「スポーティに過ぎなのでは?」という感じを受けてしまいます。
それでもトラヴィックを輸入車として見る人には十分満足できると思うし、(ザフィーラと比べて)圧倒的に安い価格からしてもオススメできます。国産ミニバンとは一線を画す、ひと味もふた味もクセのある玄人好みのミニバンと言っていいと思うクルマでした。

トラヴィックの弱点

わたしの経験と個人的な見解からの報告です。クルマのあたりはずれもあるので参考として見てください。

・部品が高めで取り寄せに時間がかかる。
・ブレーキダストが多くすぐホイールが真っ黒になる。
・ラジエーターの耐久性が悪い。
・早期時の電装系のトラブルが多少あった。
・マイナーチェンジ前まではワイパーとウインカーのレバーの位置が逆。
・オートエアコンがない。
・フロントシートのリクライニングがダイヤル式のため使いにくい。
・オーディオが1DINのみ。
・7人乗ってしまうと荷物がほとんど入らない。
・4WDの設定がない。

国産ミニバンとしてトラヴィックをみると上記のようなことが挙げられるが、輸入車としてみると当然である不便さであり、総合的にとくに問題を持っているクルマではありません。むしろ総合点の高い優等生と呼ぶのがふさわしいクルマだと思います。

中古のトラヴィック

トラヴィックは2001年から2004年までの3年間、販売累計台数約12,000台を販売しました。生産終了から10年以上経過したことや販売台数の少なさにより、現在中古車で手に入れようとしても出回っている数が圧倒的に少ないのです。中古車も人気が薄いのか、走行距離が10万キロ以下の程度の良いSパッケージでも車両価格10万円から40万円くらいで販売されているようです。トラヴィックのことを知らないユーザーにしてみればデザインや装備面で妥当な価格かもしれませんが、トラヴィックの良さを知っているユーザーにとっては信じられないくらいお買い得価格だと思います。3列シートのミニバンをお探しで、運よくトラヴィックとの出会いがあれば即決しても損はしないでしょう。

まとめ

欧州のドイツで開発され、アジアのタイで生産され、米国のGMから日本のスバルが輸入販売したトラヴィック。派手さのない地味なデザインのせいか爆発的な人気車にはならなかったが、探求すればするほど機能美に優れ、運動性能もすばらしい、個性的な味付けを持ったクルマだとあらためて感じました。トラヴィックは、私が運転席のドアを開けたときから完全なるドイツ車であり、室内に入るとクルマの臭いまでドイツ車の香りがしていました。走り出すと、ハンドリングも走行性能も欧州車独特の堅い安定した味付けで、キビキビ走る姿は個人的にとても好みのクルマでした。今では街を走る姿を見るのも少なくなってしまいましたが、このレポートを書いているとまたトラヴィックのハンドルを握って走ってみたくなりました。安いミニバンをお探しのかたは、絶対にお得な買い物になると思いますよ。ぜひ、候補にあげてみて検討されてはいかがでしょう。ウィークデーは、ひとりでビジネスや営業に使い、週末には家族を乗せ高速を軽快にロングドライブする。長距離を走っても腰が痛くなることもなく、運転を楽しむことができます。いろんなシチュエーションにも自然と馴染む「スバルの皮を被ったドイツ車」は本当に個性的なファミリーカーでした。