【水素自動車】ってどうなってるの?って思っていませんか?

2014年12月15日、ついにトヨタ・ミライが走り出しましたね。この1年間で3台ほど見かけた気がしますが、その尖りすぎたデザイン故の存在感はあるものの意外なほど違和感はありませんでした。ハイブリッドや電気自動車が普及したおかげで、“音もなく動く物体”に対する異常な感覚がなくなっているのでしょうか。とは言え、“水素を使って走る”がよくわからないので、しっかりと理解しておきましょう。2016年1月更新

ガソリン以外のガス燃料車

ガソリンを燃やして走るガソリンエンジン。軽油を燃やして走るディーゼルエンジン。この2つがもっともポピュラーですが、他の燃料を使うエンジンもあります。
たとえば、多くのタクシーが使っているLPガス車。ガソリン用のエンジンを改変して、プロパンガスを燃やせるようにしてあります。プロパンガスは高圧縮すると液化しますので、液状のプロパンガスをタンクに充填したのがLPガス(リキッドプロパン)です。少しずつ気化させて使いますが、ガソリンエンジンもガソリンを気化させて使いますので、基本的に構造に大きな違いがありません。
他には、天然ガスを燃やして走っている車もありますね。こちらもプロパン同様の使い方です。私の地元では、とあるガスの供給会社の社用車がすべて天然ガス車になっているそうです。宅配便業者の車でも採用されているそうです。
こうしてみると、ガソリン以外でもガス燃料の車がありますね。

水素を燃やして走る車

では、なぜ水素を燃料にするのでしょうか。原油から精製しなければ入手できないガソリンに対して、水素はほぼ無尽蔵なのです。
しかも、燃焼させると水だけが残りますので、CO2を出しませんし、有毒な排気ガスもほとんど発生しません。
プロパンガスや天然ガスを燃料にしている車と同じように、水素を燃焼して動くエンジンを搭載して走る水素燃料車。
その歴史は以外と古く、日本国内では1970年代から武蔵工業大学(現在の東京都市大学)の古濱庄一教授の下、市販のレシプロエンジンの改造から研究をスタート。
現在まで数多くの水素燃料エンジン技術の開発に成果をあげてきました。
1990年代から、マツダとBMWが既存のエンジンを改良する形で水素燃料エンジンの開発を進めています。
2005年には、トヨタ自動車と日野自動車が共同でFCHVバスを開発していますし、この年の愛・地球博では会場間のシャトルバスとして8台を運行しました。
2006年に、水素エネルギー開発研究所が水素と水を燃料とするエンジン(HAWエンジン)を開発し、世界35カ国で特許を取得しています。
2009年には、マツダ・RX-8水素エンジン搭載車が広島市に納入されています。

実用化されているもの

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E7%B4%A0%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A

1970年、武蔵工業大学(現在の東京都市大学)が日本で初めて水素燃料エンジンの運転に成功しています。1974年、同大学は水素エンジンを搭載した日本初の水素自動車の試作とデモ走行を実施していて、なんと10台の水素自動車を次々に開発、試作しています。
開発した車両の中には、スズキ・セルボ(E-SS20)を改造した“武蔵3号”、日産・フェアレディZ(Z32)を改造した“武蔵8号”、トラック(日野・レンジャー)を改造した“武蔵7号”、“武蔵9号”などがあります。
“武蔵10号”は、1997年12月に行われた地球温暖化防止に関する京都国際会議(COP3)に出展されています。日産・アベニールをベースにした実用車で、燃料に液体水素を使用、100リットルのタンクを搭載しています。4サイクルエンジン、ターボ過給、着火及び燃料噴射方式は、火花点火、電子制御低圧吸気管間欠噴射方式という充実ぶりでした。
最高時速150km、航続走行距離は300km。現在は国家プロジェクトである“次世代低公害車開発促進プロジェクト”に参加して、フル電子制御エンジンの研究開発を行っています。
2009年4月3日、武蔵工業大学は日野自動車の協力を得て、水素燃料を活用した水素燃料エンジンバスの開発に成功しました。大気汚染原因物質である窒素酸化物や二酸化炭素をほとんど排出しない環境対応バスとして普及拡大が期待されています。
日本自動車研究所の技術審査にも合格し、水素燃料バスとして日本で初めて公道走行を可能にしました。窒素酸化物排出量は従来のディーゼルエンジンに比べて約90分の1程度にまで抑えられていますしCO2を一切排出しません。

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BMWは、7シリーズをベースにした水素とガソリンの双方を燃料に使用できるV12気筒レシプロエンジンを搭載した750hLを開発しました。燃料として液体水素を使用したときの航続走行距離は約350kmです。

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他社の水素自動車はレシプロエンジンですが、マツダはロータリーエンジンを採用しています。
2003年の東京モーターショーでは、マツダRX-8を改良して水素ロータリーエンジンを搭載したモデルを出品しています。水素のみによる航続走行距離は約150kmです。
2004年11月に試験車両がナンバーを取得し、公道上での試験走行が可能となりました。燃料は、水素ガスとガソリンの2種類を切り換えて使用可能になっています。両燃料を合わせて使えば、約630kmまで航続走行可能です。

水素を燃やさない水素自動車

実は、今回の本題はこちらです。トヨタ・ミライは水素を燃やしているわけではありません。“水素を充填して走る”という意味では水素自動車という呼び名で間違いはありませんが、水素を燃焼して動く“水素燃料車”ではないのです。
では、ミライはどのようにして動いているのでしょうか。

燃料電池自動車

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%87%83%E6%96%99%E9%9B%BB%E6%B1%A0

トヨタCHV

“燃料電池”ってご存知ですか?
実はミライは“燃料電池自動車”なんです。FCV(Fuel Cell Vehicle)と呼ばれています。
水素と酸素を化学反応させて電気をつくる“燃料電池”を搭載していて、モーターで走行する車です。ガソリンに代わる燃料になる水素は、環境にやさしくさまざまな原料からつくることができるエネルギーです。
トヨタが培ってきたハイブリッド技術を応用して開発されました。トヨタは、燃料電池自動車(FCV)を“サステイナブル・モビリティ”実現に向けての理想的な車として、プリウスよりも早く1992年に開発を開始しました。
2002年12月には、世界に先駆けて“トヨタFCHV”を日米で限定販売するなど確固たる実績を積み上げています。

燃料電池とは?

電気化学反応によって、燃料の化学エネルギーから電力を取り出す(=発電する)電池です。燃料には方式によって、水素、炭化水素、アルコールなどが使われます。
補充可能な何らかの負極活物質(水素などの燃料)と正極活物質(空気中の酸素等)を、常温もしくは高温環境で反応させることにより、継続的に電力を取り出すことができる発電装置を呼びます。
一般的な乾電池や充電池に比べると、正極剤・負極剤を補充し続けられれば電気容量に制限がないので、永続的に放電することが可能な点が大きく異なります。
また、内燃機関を利用して発電機を動かす通常の発電システムとは違い、熱エネルギーや運動エネルギーという行程がないので発電効率が高いのも特徴です。
また、システム規模の大小にほとんど影響されず、騒音や振動も少ないのです。ノートパソコン、携帯電話などの携帯機器から、自動車、鉄道、民生用・産業用コジェネレーション発電所、軍事兵器まで多様な用途・規模をカバーするエネルギー源として利用できます。

水素を反応させて電気を取り出す仕組みとしては、水の電気分解の逆反応となる 2H2 + O2 → 2H2Oを用いるのが一般的です。
反応時に熱を伴い発電効率の高いものほど反応に高温を要する傾向があり、1,000℃近くの環境を必要とする方式もあります。水素の場合反応によってできる物質は水のみですが、生成されるのが高熱環境下なので実際に排出されるのは水蒸気か温水となります。

歴史

燃料電池の原理は、1801年にイギリスのハンフリー・デービーによって考案されました。現在の燃料電池に通じる原型は、1839年にイギリスのウィリアム・グローブによって作製されています。200年以上前に存在したのですね。この燃料電池は、電極に白金を、電解質に希硫酸を用いて水素と酸素から電力を取り出し、この電力を用いて水の電気分解をすることができました。
その後燃料電池は、熱機関(エンジンなど)による発電機の登場でしばらく忘れられていましたが、1955年に米ゼネラル・エレクトリック社(GE社)に勤務していた化学者W. Thomas Grubbは、スルホ基で修飾されたスチレンによるイオン交換膜を電解質として用いた改良型燃料電池を開発したのです。
3年後にはGE社の別の化学者であるLeonard Niedrachが、触媒である白金の使用量を減らすことに成功し、Grubb-Niedrach 燃料電池として世間に知られる事になりました。
GE社は、この技術の開発と利用を当時進行中だったアメリカ航空宇宙局のジェミニ宇宙計画に働きかけて採用され、これが燃料電池の最初の実用となったのです。
1965年にアメリカ合衆国の有人宇宙飛行計画“ジェミニ5号”で、炭化水素系樹脂を使用した固体高分子形燃料電池が採用されて、再び燃料電池が注目されるようになりました。
1959年、Harry Ihrigが率いるチームによって、15kW出力の燃料電池トラクターが米国ウイスコンシン州のアリスシャルマーズ社の米国横断フェアーで公開されました。このシステムは水酸化カリウムを電解質として使用して、圧縮水素と酸素を反応させていたのです。
アポロ計画からスペースシャトルに至るまで、燃料電池は電源・飲料水源として使用されました。その際は材料の信頼性による検討の結果、アルカリ電解質形燃料電池が採用されていました。
民生用燃料電池として、住宅用のコジェネレーションシステムや発電施設向けに研究開発が続けられています。
日本では、通商産業省の省エネルギー政策“ムーンライト計画”に基づいて、りん酸形燃料電池、溶融炭酸塩形燃料電池、固体電解質形燃料電池の開発が始められました。
1982年、東芝が50kWりん酸形燃料電池実験プラントを浜川崎工場に建設しました。加圧形として日本初めての発電に成功しています。
1985年には米国UTCとIFC社(米国コネチカット州)を設立し、世界最大の11MW級プラントの共同開発を開始しました。
1991年には、東京電力五井火力発電所に11MW実験プラントを建設、出力1万1000kWのリン酸形燃料電池の実証運転が行われました。
1987年、カナダのバラード パワーシステム社がフッ素系樹脂(Nafion)を電解質膜に用いた固体高分子形燃料電池を開発しています。この電解質膜が耐久性に優れていたことから、燃料電池が再び注目されるようになりました。
米国防総省と国防総省高等研究事業局(DARPA)のローレンス・H・デュボワは、様々な液体炭化水素(メタノール、エタノールなど)で動く燃料電池に着目して、南カリフォルニア大学(USC)のローカー炭化水素研究所に所属していた酸の専門家スルヤ・プラカッシュと、ノーベル賞受賞者のジョージ・A・オラーに声をかけたのです。USCはジェット推進研究所、カリフォルニア工科大学の協力を得て、液体炭化水素が直接酸化するシステムを発明したのです。これはのちにダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)と名付けられました。

自動車への転用

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ホンダFCX

1994年、ダイムラーベンツが、燃料電池自動車の試作車を発表しました。トヨタは、1997年の東京モーターショーに燃料電池自動車の試作車を発表し、2005年までに量産化することを宣言しています。
2001年にはソニー、日立製作所、日本電気が相次いで携帯機器向けの燃料電池の開発を発表しています。
2002年12月には、トヨタ・FCHVおよびホンダ・FCXの燃料電池自動車市販第一号が日本政府に納入され、小泉純一郎首相が試乗を行いました。これらは首相官邸と経済産業省で使用され、24時間のフルメンテナンス体制付きのリース契約となりました。
2003年には、東京都交通局にトヨタ・日野自動車製FCHVが納入され、2004年末までお台場周辺で運行されていました。
2005年には愛知万博に日野製FCHV-BUSが納入されました。また、2004年には日産も横浜市などへ納入しています。
2006年からは、愛知万博で使用された水素ステーションが移設された中部国際空港でも運行されています。これらの公共バスは、一般人が乗る事が出来る燃料電池車といえます。

燃料電池の実用化には、消防法・高圧ガス保安法・電気事業法及び建築基準法(メタノールを燃料とするものはさらに毒物劇物取扱法)などの法的規制緩和が必要とされていて、電気設備技術基準などの見直しが行われたのでした。
2002年10月には、米国運輸省が燃料電池の飛行機内持ち込みを許可するなど、燃料電池普及に向けた規制緩和の方針をいち早く打ち出しています。また、安全基準や性能評価について国際的な基準制定の動きも出てきています。

世界初の量産燃料電池自動車“MIRAI”

MIRAIは、2014年12月15日に発売されました。納車時期は2019年ごろの見通しとのことです。3~4年後には、街中にMIRAIが溢れる光景が見られるのでしょうか。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BBMIRAI

2013年に発表されたF・CVコンセプト

“トヨタが燃料電池車を2015年に市販へ”
2013年秋の東京モーターショーでトヨタ自動車が発表したニュースは、衝撃とともに世界を駆け巡りました。
燃料電池車(FCV)はダイムラー、ゼネラルモーターズ(GM)、フォードなど、世界の名だたる巨大メーカーたちが、“2010年までに市販する”という目標のもと、躍起になって研究開発をしました。
ですが、どれも実現されていませんでした。急にトヨタが“市販する!”と名乗りを上げたものですから、ポジティブな期待よりもにわかには“信じがたい”という声がほとんどでした。

そんな予想とは裏腹に、予告された2015年を待たずに量産型がデビューしたのです。2014年11月18日、世界初の量産FCV“MIRAI(ミライ)”を12月15日に発売すると発表したのでした。
車両本体価格は723万6000円(税込)。

スペックなど

乗車定員:4人
ボディタイプ:4ドアセダン
エンジン:固体高分子型FCスタック(型名:FCA110)
モーター:3JM型 交流同期電動機
最高出力:FCスタック 155ps
     モーター 154ps
最大トルク:モーター 34.2kgf·m
変速機:なし(モーター直結)
駆動方式:FF
サスペンション:前 ストラット式コイルスプリング(スタビライザー付)
        後 トーションビーム式コイルスプリング
全長:4,890mm
全幅:1,815mm
全高:1,535mm
ホイールベース:2,780mm
車両重量:1,850-2,070kg
プラットフォーム:トヨタ・新MCプラットフォーム

排出するのは“水”だけ

“燃料電池”と言うと、ついついあの“乾電池”や“充電池”をイメージしてしまいますが、決して電気を貯めるわけではありません。
これは、”Fuel Cell”という英語を直訳してしまったためのネーミングです。水素と空気中の酸素を化学的に結合させて発電する装置ですから、“水素発電機”くらいに意訳しておけばよかったのではないでしょうか。
それはさておき、この燃料電池を積み込んで、水素をエネルギー源として充填して、空気の中から酸素を取りだして発電するわけです。
つまりミライは、燃料電池と水素タンクを積んだ電気自動車ってわけですね。
たくさんのバッテリーを積み込んでそれを充電し、放電させながら走る電気自動車に対し、自分で電気をつくりながら走るミライ。
排出するのは水だけで、排出ガスはゼロという究極のエコカーなんです。さらに、水素は地球上にほぼ無限に存在しますから、化石燃料を一切使わないだけでなくエネルギーの枯渇の心配もありません。
“電気自動車だってクリーンでしょ?”っていう声が聞こえてきそうですが、充電する際に使われる電気をつくるには、様々な問題が起きています。
原子力発電所が稼働していない現状では、発電のほとんどは火力発電でまかなわれています。化石燃料を燃やして電気を作っているわけですから、実車はクリーンでも遠回りにはCO2を排出していることになります。
電気自動車は、クリーンな発電が可能になって初めてクリーンビークルと呼べるのです。

MIRAIのすごさ

トヨタ・ミライはなにがすごいのでしょう。燃料電池を自動車に搭載することは、そんなに大変なことなのでしょうか。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A8%E3%82%BF%E3%83%BBMIRAI

ミライのすごいポイントその1

世界中が燃料電池自動車の開発に躍起になっていた頃、実現できたとしても価格は億単位、安くなっても数千万円と囁かれていました。ところがトヨタは、700万円強までコストダウンしたのですから驚きですね。
さらに購入補助金が202万円となり、グリーンカー税制やエコカー減税も活用すれば、実際の支払いは520万円程度まで下がるのです。
ベースとなるプラットホームに加えて、電気モーターやインバーターなどの電気系統のシステムをプリウスと共通にすることで大幅なコスト削減に成功しています。
500万円といえば、トヨタが2012年に小型SUV(スポーツ多目的車)ベースの“RAV4 EV”を発売したときの価格と同等です。500万円近辺の価格帯が、トヨタにとって市販車と呼べるボーダーラインなのかもしれません。

ミライのすごいポイントその2

さらに驚かされるのは、燃料電池システムを乗用車に積めるサイズまで小型化したことです。全長4890×全幅1815×全高1535ミリメートルのコンパクトなボディの中に、燃料電池システムと水素タンク、4人分の乗車スペースが収められているとは信じがたいのです。
なにせ研究段階では、トラックの荷台や後部座席いっぱいに機械が乗っているのが常でしたので。

ミライのすごいポイントその3

燃料電池システムに加えて、プリウスと同じハイブリッド機能も搭載しています。ブレーキ作動時にはエネルギーを回生して、バッテリに貯めておくことができるのです。ゴーストップやアップダウンの激しい道を走るケースなど、ブレーキエネルギーを回生もしくはEV走行に切り替えるなど、ハイブリッド車開発で蓄積されたノウハウが活かされているのです。

水素って安全なの?

“水素を積んで走る”と言われると、なんだか不安になりませんか。水素を利用した“水爆”は、長崎型原爆の数百倍の威力を持つなんて聞いたことがあります。爆弾の原料になるものを車に積んで走るなんて...
安心してください。確かに水素分子は常温・常圧では無色無臭の気体でとても軽く、非常に燃焼・爆発しやすいですが、保管方法・使用方法を間違わなければ安全に使用できるのです。
水爆はウラン型原爆とセットでなければ成立しませんし、水素単体ではさほど大きな爆発力はありません。
元素およびガス状分子の中で最も軽く、宇宙で最も数が多いのが水素です。ただ、地球上では水素単体で存在することはなく、水や有機化合物の構成要素として存在しています。
水素はエネルギー変換効率が高く、燃焼後に二酸化炭素を排出しません。現状では主に化石燃料を使って製造していますが、将来的には水の電気分解やバイオマス・ごみ等を利用により、化石燃料に頼ることなく製造できる可能性があります。
将来性の高いエネルギーの輸送及び貯蔵手段になりうる素材です。

ミライでの解決方法

長距離走行を実現するためには水素を高圧力で圧縮してタンクに蓄積する必要があります。この圧力は70MPa(通常大気圧:101.33kPaの約700倍)もの圧力です。このため部品には高い耐久性と気密性が要求されます。配管や弁には、愛知製鋼やジェイテクトが開発したより高強度な鋼材が採用され、燃料電池スタックにはトヨタ車体が開発した3次元構造体が採用されています。燃料電池セルには水素極側のチタン製セパレーターと水素・空気・冷却水を供給するスタックマニホールドが採用されるなど、最新技術を結集して実現されているのです。

気になるミライの燃費は?

ガソリンエンジン車との違いは数々あれど、究極のエコカーたるミライはお財布に対してどれほどエコなのでしょうか。単純比較はできないものの、“1km走行あたりの燃料代”という考え方で計算してみます。
イワタニが発表した水素の価格が1,100円/1kg(税別)で、遅れてJX日鉱日石エネルギーが1,000円/1kg(税別)で販売することを発表しています。

ミライの水素タンクは2個あるのですが、合計容量は122.4Lとのことで、実際のタンク仕様圧力は70Mpaです。
1Mpa=10.197気圧(kgf/cm2)ですから70Mpa=713.79気圧(kgf/cm2)です。
タンク容量は122.4Lですから、122.4×713.79=87,367.896、つまり常圧では87,368L分の水素を充填できるということです。
水素1kgは水素ガスと液体水素諸元換算表によれば11.2m3(立方メートル)とのことですので、水素充填容量を87,368L=87.4m3と変換して、87.4/11.2=7.80kgとなります。

1kgの水素代金が1,000円/1kg(JX日鉱日石エネルギーの場合)ですから、7.8×1,000=7,800円(税抜)となります。
ミライの満タン時での航続距離は650kmとのことですから、7,800/650=12円/1km(税抜)ですね。

ガソリン車と比べても遜色ない数字ではないでしょうか。
あとはやはり水素ステーションの拡充が急務ということですね。ガソリンスタンドほどとは言いませんが、水素ステーションへ行くために何キロも走行していては本末転倒というものです。

オーナーになるには

現在、バックオーダーは3年以上というミライ。すぐにオーダーしても2019年以降にしか手に入らないということですね。
そんなミライの販売価格は7,236,000円(税込)です。
“さすがに700万円越えはちょっと”と言いたくなりますが、ここからが凄い話なんです。
まず、燃料電池自動車購入補助金制度があるんですね。なんと最大で202万円なんですって。
つまり、車輌本体価格が5,216,000円になってしまうのです。
さらに、都道府県ごとに補助金が用意されていて、関東圏だと101万円というところが多いですね。
最終的には4,206,000円で購入できるってことです。
半額とは言いませんが、なんと42%オフじゃないですか!
さらにエコカーですから自動車重量税や自動車取得税の減税も受けられます。
登録する際には自賠責保険料と車庫証明や登録手数料が必要になりますので、総額で450万円弱くらいで未来が手に入る計算になります。
自動車重量税は、3年後の継続車検時にも免除されますし、登録した翌年の自動車税も減税を受けられますので、維持していく上でもメリットがあります。

ずいぶん現実的な数字になってきましたね。車両価格420万円ともなれば、クラウンアスリートやBMW3シリーズ、メルセデス・ベンツCLAあたりの価格帯です。
車格的にはミライが少し劣るかもしれませんが、とにかく中身が未来ですからその付加価値は大きいはずです。

トヨタ『MIRAI』の公式ページです。環境に配慮した動力源「燃料電池」で動くクルマ 『MIRAI』について掲載しています。

課題もあります

なんと言っても水素の充填方法でしょう。“いったいどこで燃料となる水素を補給すればいいの?”という問題です。
水素ステーションは、開設予定箇所も含めて日本全国に50カ所にも満たない状況です。ミライが1回の補給で走れる巡航距離は約650キロメートルと通常のエンジン車並みですので、水素ステーションが複数存在する大都市近郊なら何とかなりそうな状況です。
ところが、水素ステーションがEVの充電ステーション並みに普及するかどうかは甚だ疑問としか言いようがありません。
一カ所設置するのに数億円の費用が掛かりますし、水素の商用販売は「1キロメートル走るごとの水素の価格を10円」と定める方針ですので、ミライでは満タンでも6500円と、EVほどエネルギーコストの割安感がありません。
現状、トヨタが受注している大半は官公庁ですが、米カリフォルニアでもリース販売をスタートして、年間700台を生産するという高い目標があります。初期のプリウスがそうだったように、夢の未来カーにハリウッド・セレブが飛びつくなどという期待を持たざるを得ませんが、日本国内ではオリンピックに向けて燃料電池バスとあわせて燃料電池の普及と水素ステーションの拡充というインフラ構築と両輪で行う必要があります。
トヨタだけでなく、自動車メーカー同士インフラ側といった垣根を越え、日本全体で燃料電池車の普及に取り組むことが、すべてを円滑に進める鍵になりそうですね。