ヴェロッサって知ってる?トヨタの生んだ名車?迷車?について

トヨタというメーカーは市場調査に基づいて、次々に対抗馬を出していくメーカーです。ステップワゴンへ対向したノア、ストリームに対してのウィッシュ、結果その市場を席巻する車を世に送り出してしまうところがトヨタのすごいところですが、そういったウィッシュのような車とは対照的に、日の目を浴びることもなく退場してしまった車も少なくありません。今日はそんなヴェロッサにスポットを当ててみましょう。

ヴェロッサという車について

どんな車にも企画・製造された理由というものが多かれ少なかれあるものです。車好きという人種はそのコンセプトが明確である車ほど高く評価しがちですが、誕生したときとは別の用途で愛されることとなる車も少なからず存在します。
トヨタの4ドアセダンヴェロッサもまた、企画と市場とが合致しないまま新たな価値が生まれた車と言えるのではないでしょうか。
しかしながら、ヴェロッサの誕生を語る上では、ヴェロッサだけで話を進めることはできません。ヴェロッサを語る上で欠くことのできないマークIIとアルファロメオ156を話しに絡めて、ヴェロッサという車を掘り下げていきましょう。

マークIIとは

遡ること1968年、クラウンとコロナの中間車種として誕生した4ドアセダンがマークIIです。トヨタがトヨペットやビスタといった販売チャネルの多様化を行っていた関係もありマークIIもグリルやエンブレムなどエクステリアを若干変更したクレスタやチェイサーといった兄弟車種を持つ車です。
特に2JZ-GEや1JZ-GTEといったヤマハ製直列6気筒エンジンをFRレイアウトで搭載するなど、走りのモデルとしても十分な性能を持つ一方、トヨタ流のラグジュアリーな内装も相まってその時代のデートカーとして主に当時の若者に指示されることとなります。
マークXが後継車としてデビューする2004までの間、36年もの間に9回もフルモデルチェンジを続けてきたトヨタの代名詞的な車で、現在発売されているマークXにもその系譜は脈々と受け継がれています。

ヴェロッサとマークII

マークIIの最終モデルとなる9代目マークIIでは姉妹車であるチェイサー・クレスタが廃止され、その後継車として登場したのがヴェロッサです。この世代のマークIIは110型と呼ばれ、残念ながら新車販売の面ではそれ以前のマークIIには及ばないものでした。しかしながらそれまでのマークIIに比べて室内はより広く、エクステリアもそれまでよりボリュームあるデザインとなっており、一部では高評価を得ていました。筆者もマークII系では110型が一番好みのデザインです。
メインユニットとなるエンジンも280psを発生する1JZ-GTE型 2.5L 直6ターボエンジンと5速MTを組み合わせ、それをFRレイアウトで操るという車好きなら誰もが反応するであろう物を搭載しており、GT的ではありますが中々良い走りをしています。
このエンジンやレイアウトはヴェロッサにも設定されており、最終型のマークII同様ヴェロッサも十分走りを楽しめるモデルであったが、ヴェロッサはマークIIとは違いアクの強いフロントフェイスを採用していることもあり、販売面ではマークII以上に苦戦することとなります。

アルファロメオ156とは

日本では1998年に発売され、日本でグッドデザイン賞を受賞したのがこのアルファロメオ156です。2.5リッターV6エンジンに6MTもしくはセレスピードと言われるセミオートマ機構を採用するスポーツセダンとしてデビューしました。特に2005年に追加された3.2リッターV6エンジンにセレスピードを組み合わせたモデルの走りは高く評価され、その官能的な走りはE46M3のSMG2(セミオートマ)モデルと比較しても互角以上とまで言われる程でした。
エクステリアはセダンとしては非常に流麗で美しくまとまっており、2ドアクーペには及ばないもののいつまでも見ていたい気持ちにさせてくれるものがあります。リアドアのノブを隠すなど細部にもデザインへのこだわりは見て取れます。

ヴェロッサとアルファロメオ156

さて、アルファロメオ156の画像と上のヴェロッサの画像を見比べてみて下さい、なんだかお顔が似てる気ような気がしてきませんか? 
ヴェロッサの発表当時、車好きたちの持ったヴェロッサの第一印象が「プアマンズ156」です。
プアマンズとは貧乏人のとかという意味でよく使われる言葉です。例えばプアマンズボクスターと呼ばれるトヨタのMR-Sという車がありますが、これは安物のボクスターという意味になります。
つまり、ヴェロッサが車好きに与えた第一印象は安物のトヨタ版156であり、またトヨタがセダンとして成功した車の市場に参入するために作ったのだろうと思われたのです。
実際にトヨタがそんなことを発表するはずもありませんが、筆者は案外この説は正しいのではないかと思っています。
この2台、やっぱ顔が似ています。ヘッドライトが縦か横かの違いはあれど、ヘッドライトの中心にこんな形のグリルを持ってくるなんて普通ありません。ヴェロッサの発売時期が2000年と156の二年後とタイミングもバッチリです。
真偽の程は定かではありませんが、ヴェロッサが156を意識して開発されたようには思えます。

ヴェロッサの顛末

マークIIの姉妹車として、156っぽいイタリアンなフェイスを与えられたヴェロッサでしたが、結局販売面ではふるわず販売開始からわずか3年で生産終了となってしまいます。
顔はたしかにラテン系で筆者もヴェロッサのエクステリアは好きなのですが、いかんせん顔以外はマークIIです。微妙にボディラインは曲線を入れるなどしていじっているようですが、根本的に体系がマークIIそのままでなので、ボディから細部に至るまで計算された色気がある156と比べるのは無理があります。遠めに見てもらうとわかりますが、156はシルエットだけでも美しく色気があり、ヴェロッサはシルエットだけで見るならただの4ドアセダンです。
走りに関してもあのBMW・M3と比べて互角以上とまで言われた156と、ヤマハがチューニングしている直6エンジンを積んでいるとはいえトヨタ流の運動性能を与えられているヴェロッサでは比べ物になりません、というか方向性がまず違います。
中途半端に156を意識して作ったマークIIの姉妹車というのが、新車販売時のヴェロッサの評価ではないでしょうか。

ヴェロッサの中でも最もスポーティなVR25のスペックを載せておきます。

ボディタイプ: セダン
ドア数: 4ドア
乗員定員: 5名
型式 :GH-JZX110
全長×全幅×全高: 4,705×1,760×1,450mm
ホイールベース: 2,780mm
トレッド前/後: 1,495/1,475mm
室内長×室内幅×室内高: 1,950×1,480×1,180mm
車両重量: 1,520kg

エンジン・燃料系
エンジン型式: 1JZ-GTE
最高出力: 280ps(206kW)/6,200rpm
最大トルク: 38.5kg・m(378N・m)/2,400rpm
種類: 水冷直列6気筒DOHC24バルブターボ
総排気量: 2,491cc
内径×行程: 86.0mm×71.5mm
圧縮比: 9.0
過給機: ターボチャージャー
燃料供給装置: 電子制御式燃料噴射装置(EFI)
燃料タンク容量: 70リットル
使用燃料: 無鉛プレミアムガソリン

環境仕様
10モード/10・15モード燃費: 9.8km/リットル

足回り系
ステアリング形式: パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前): ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング(スタビライザー付)
サスペンション形式(後): ダブルウィッシュボーン式コイルスプリング(リヤスタビライザー付)
ブレーキ形式(前): ベンチレーテッドディスク
ブレーキ形式(後): ディスク
タイヤサイズ(前): 215/45ZR17
タイヤサイズ(後): 225/45ZR17
最小回転半径: 5.3m

駆動系
駆動方式: FR
トランスミッション: 5MT
LSD: 標準

ドリ車ヴェロッサ

販売面で奮わず立ち消えになる車なんていうのは結構な数がありますが、新車販売終了後ヴェロッサは徐々に、主に一部で注目されるようになります。
280psの直列6気筒エンジンを搭載し後輪駆動レイアウト・純正5MTを搭載するという最近では希少になった内容のヴェロッサは、モータースポーツ分野のそれもドリフトで注目を集めるようになっていきます。

D1選手権にも出場していたヴェロッサ

D1選手権とは全日本プロドリフト選手権のことでして、元々はカー雑誌などで広く知られている「ドリキン」こと土屋圭市氏と雑誌「OPTION」の創刊者稲田大二郎氏の二人により手案されたことに短を発します。
D1の特徴は車の速さを追求するのではなく、ドリフトのスライドの大きさや迫力などからくる芸術性をポイント化し評価するというのが最大の特徴です。
スピードスケートとフィギュアスケートのような関係を想像していただければと思います。
このD1選手権に出場するのはスポンサーを持つまさにプロのドライバー達です。スポンサーとなる企業も自動車の改造パーツなどを扱うチューナーなどがほとんどで、自社の技術や資金を惜しみなく投入して作られるマシンには、1,000万円以上の資金が投入されることもあるようです。
そんなドリフトのプロ達が集う2007年のD1グランプリにヴェロッサが登場しました。
タービン交換を始め多くのチューニングを施されたヴェロッサは600馬力にまで出力を高められています。ローダウンされGTウィングを始めとしたパーツで武装されたヴェロッサには、マークII譲りの4ドアセダンとしての顔も、156への中途半端な対抗心も全くない、まさにドリフトのための車へと変貌していました。

元々マークIIという車はヤマハ製エンジンを始めスポーツ走行を行う素質を十分に備えていることと、国内での流通台数の多さからメンテナンス費用を抑えられるという理由から、主にドリフトなどのベース車として人気の車でした。その姉妹車であるヴェロッサも当然ながらモータースポーツのベース車として基本的な部分は備わっているのです。

中古車市場の異常事態

D1グランプリでも活躍を見せるヴェロッサです。当然ながら一般のモータースポーツユーザーにもヴェロッサをベースとして購入しようという動きが出始めました。その結果、現在の中古車市場では4ATノンターボモデルのヴェロッサは安ければ40万円ほどで購入できてしまいますが、1JZ-GTE搭載の5MTモデルではどんなに安くとも総支払い額100万円は必要です。特に車高調やマフラー・インタークーラー・エアロパーツ・ラジエーター・アルミホイール・社外タービン・サブコンピュータ・社外マフラーなどの改造が施された車だとさらに価格は跳ね上がり、2015年12月現在確認できる最も高価なヴェロッサだと総支払い額278万円となってしまっています。
しかもその車両だけが顕著に高いわけではなく、ある程度手の入ったヴェロッサなら大体200万円台になってきます。
ただ200万円台で販売しているヴェロッサのチューニング内容を見てみると、改造費だけでも200万円以上は掛かっているような車体ばかりですので、素の状態のヴェロッサを購入して1からチューニングを施すよりかは安上がりと言えるかもしれません。
パーツの多くをマークIIとも共有していますので、どうしてもベース車が見つからないといった場合にはATノンターボモデルを安く購入してエンジン・トランスミッションを丸ごと交換してしまうという選択肢もあります、特にエンジンはスープラなどに搭載された2JZ-GTEエンジンへの換装も可能ですので、そういった選択をするのも良いかもしれません。

また、程度の良く安価な4ドアセダンが欲しい場合には、中古のATノンターボモデルのヴェロッサはまさにうってつけとも言えます。マークIIという車はトヨタを代表する車としてしっかりとした作り込みをされた車ですので多少年数がたっていても信頼性は抜群ですし、仮に故障があったとしてもパーツも対応してくれるショップやディーラーも多くあります。
中古でも安価に安心して乗れる4ドアセダンとしては、ヴェロッサは中々良い選択だと思います。

誕生してから十数年、市場によって新たな価値が与えられた車

発売当初のヴェロッサはトヨタの販売チャネルの統合という大きな動きにあわせて企画販売された車です。企画のコンセプトも中途半端でターゲットの見えないヴェロッサは、わずか3年でその生産を終了してしまいます。
しかし、そこからドリフトというモータースポーツのベース車としての価値が見出され、現在も重宝されています。実際に中古車市場で価格が上がるということはそれだけの需要がある、つまり必要とされているということです。
どんな車にも良いところはあるもので、今後もヴェロッサのように車の良い部分を見出しながら、車を楽しんでいきたいものです。