ポロGTI・ドイツの生んだ高性能ホットハッチの全て

排ガス検査での不正が発覚して以降イメージがすっかり悪くなってしまったフォルクスワーゲンですが、じゃあ車もダメなのでしょうか? 筆者はそうは思いません。排ガス規制の問題と車の質は必ずしもイコールではないと思っています。6年ぶりに復活となるポロGTIを振り返りながら、フォルクスワーゲンの魅力を今一度再確認していくことにしましょう。

フォルクスワーゲンと排ガス規制問題について

排ガス規制問題以降、フォルクスワーゲンの車を語る上で欠かせないのが、この排ガス規制問題ではないでしょうか?
ことの始まりは2015年9月18日、米国連邦政府の環境保護局「EPA」がVWとアウディのディーゼル車の一部が排ガス規制を取得するために違法なプログラムを使っていたのではないかと指摘したことに短を発します。
結果フォルクスワーゲンは不正なソフトを使用し検査のときだけ排出ガスを低減させ、検査を通過させていたことを認めることとなり、世界中で大きなニュースとなりました。
この問題については色々な意見がネット上でも散見されますが、私はアメリカの世界1厳しい排ガス規制と、アメリカの一部地域で販売されている粗悪な軽油への対応などが、フォルクスワーゲンの技術者達に対する強い圧力になり、今回のような不正を起こしてしまったように思えます。
フォルクスワーゲンはヨーロッパ・中国・日本といった市場での販売は好調なものの、北米市場での販売面では苦戦を強いられていたため、当然首脳陣から技術者や販売者への圧力は強いものがあったと予想できます。そういったプレッシャーの中で、アメリカの排ガス規制基準や粗悪な軽油への対応に迫られた技術者が安易な方向へ走ってしまうのも、容易に想像できてしまいます。

つまり、排ガス規制の問題はアメリカ市場へ対応するためフォルクスワーゲンの排ガス関係技術者が行ってしまった不正であって、車の質とは切り離して考える問題だと思うのです。
排ガスに関する機構やソフトウェアも含めて車だという意見もあるでしょう。
しかし、それでフォルクスワーゲンが今まで世に送り出してきた車達自体の評価まで崩れてしまうのは、残念でなりません。

ポロGTIの変遷

初代ポロGTI

三代目ポロをベースに125PS/15.5kgmの出力を発生する1.6L直列4気筒DOHCエンジンを搭載しそれを5MTで操る車が初代ポロGTIです。
エンジンだけでなく15インチのBBSアルミホイールを始め大型のバンパースポイラーやルーフエンドスポイラーといったエアロパーツを装着し、内装でも専用のセミバケットシートや革巻きのステアリングにシフトノブ、パーキングブレーキを装備するなど車好きの心をくすぐる装備を満載したまさにホットハッチと呼べる車です。

二代目ポロGTI

四代目ポロをベースにチューニングや走りの装備で武装を施したのが二代目ポロGTIです。
エンジンは出力150PS、トルク22.4kgmを発生する1.8L 直列4気筒 DOHC5バルブ インタークーラー付ターボエンジンとなり、先代から大きくパワーアップを果たしています。特にターボエンジンとなったことはスピードレンジの低いポロのような車には効果的で、ストップアンドゴーの多い峠道では下から発生するトルクを武器に気持ちよくコーナーを駆け出せる車に仕上がっています。
この代からエクステリアはワンクラス上のゴルフに近い意匠を与えられ、GTIはゴルフGTIを彷彿とさせるものとなっています。つまり先代のポロに比べてより格上の車に乗っているように感じるのです。
実際内装や装備もゴルフGTI由来のイメージを踏襲し、タータンチェック柄のセミバケットシートや皮巻きのステアリングにシフトノブなどを装備しています。
トランスミッションは5MTのみの設定となります。

当時この車は欧州での投入に先駆けて日本で発売されたモデルです。欧州に先駆けてまで日本で販売するというのは中々の力の入れようです。ルノーのルーテシアRSなども日本での販売が好調でトロフィーなど特別な数量限定のグレードなども日本で販売され即日完売となっています。
ミニバンばかりと悲観的になっている方も多いですが、日本も案外捨てたものではないと思えるエピソードです。

三代目ポロGTI

三代目となるポロGTI最大の目玉は、なんといってもスーパーチャージャーとターボチャージャーの2種類の過給機を搭載したツインチャージャー1.4L TSIエンジンを搭載したことでしょう。1.4Lと排気量はダウンしているにも関わらず最高出力は29PSアップの179PSを誇ります。
TSIエンジンが発表当初から売りとしてきた省燃費性能はGTIでも健在で、三代目ポロGTIは179PSを発生するホットハッチにも関わらず、その燃費は16.6km/L(10・15モード測定値)をマークします。
あくまで公証燃費であるため実燃費は当然落ちてしまうのですが、それでもゴルフを含めGTIが燃費でリッター当たり10.0km/Lを割ったという話は聞いたことがありません。良く聞く数値でも13.0km/L程はでているようで、スポーツモデルとしては中々な数字を記録しています。
この省燃費性能が後の排ガス規制問題へと繋がっているように思います。実際に数値を見ているとフォルクスワーゲンがいかにTSIエンジンを始めとする省燃費技術に力を注いでいたかがわかるので、排ガス関係のエンジニアの方へは相当な期待が掛かっていたのではないかと思われます。
TSIエンジンだけでなくこの3代目モデルにはもう1つフォルクスワーゲン自慢の最新技術が装備されていました、それがDSG(デュアルクラッチトランスミッション)といわれる機構です。
このDSGは人間のMT操作よりはるかに速く正確なシフトチェンジを、誰にでも提供する新技術でした。
TSIエンジンにDSGという新技術を武器に販売された三代目ポロGTIは、走る楽しみと省燃費性を両立した、まさに未来のホットハッチと言える車でした。

ツインチャージャーTSIエンジン

トヨタを始めとする日本車が電気モーターとガソリンエンジンを組み合わせたハイブリットカーに力を入れている時期に、フォルクスワーゲンが出した答えの1つがこのTSIエンジンです。
今まで出力の向上のために用いられてきたターボチャージャーとスーパーチャージャーを組み合わせ、1.4リッタークラスの小さな排気量の車でも低回転域はスーパーチャージャー・高回転域はターボチャージャーが過給を加えることで2Lエンジンクラスのパフォーマンスを発揮させているのが特徴です。
既存のクラスよりもワンサイズ小さな排気量のエンジンを使用することと、スーパーチャージャーとターボチャージャーの過給するタイミングをソフトウェアで制御することで2Lクラス動力性能と1.4Lクラスの燃費性能を両立させることに成功しています。
このTSIエンジンの成功はヨーロッパの各自動車メーカーに大きな影響を与え、ダウンサイジングターボの一大ブームを巻き起こしています。

四代目ポロGTI

三代目ポロGTI以降姿を消していた6MTが復活となり、にわかに注目を集めているのが四代目ポロGTIです。
元々DSGではTSIエンジンの持つ大トルクを全て受け止めきることができず、最大トルクを250Nmにとどめていましたが、四代目ポロGTIでは大排気量エンジンに対応するため開発された新しい6MTを装備することで最大トルクを320Nmまで引き出しています。最大出力こそ先代と変わりませんが出力特性は変更がなされており、最大出力の発生回転数が4,300~6,200rpmと1,100rpm分広いレンジへと変更されています。
大トルクと6MTという武器を新たに与えられたポロGTI は、まさにホットハッチと呼べる走りを手に入れています。DSGは確かにできの良いトランスミッションではありますが、クラッチを蹴りシフトノブを操作するMTの楽しさには到底及びません。三代目ポロGTIが性能面を大きく引き上げられた優等生だとしたら、四代目はその性能と二代目にまであったやんちゃな部分を併せ持つ、酸いも甘いも知った大人なホットハッチと呼べるのではないでしょうか。

サイズも出力も拡大されもはや5代目ゴルフGTI にも劣らない内容と性能を持つ車に進化している4台目ポロGTIは、しかしそのターボエンジンから繰り出される大トルクを持って、軽快に山道を駆け抜けられるホットハッチへと進化しています。

主要諸元表

4ドア 7速DSG(R)右ハンドル
車両型式:ABA-6RDAJ
寸法・重量
全長(mm):3,995
全幅(mm):1,685
全高(mm):1,445
ホイールベース(mm):2,470
トレッド前/後(mm):1,440/1,435
最低地上高[空車時](mm):115
車両重量(kg):1,240
乗車定員名: 5
最小回転半径(m):4.9
燃料消費率(国土交通省審査値)
JC08モード(km/L):17.2

主要燃費向上対策
DSG(R)/筒内直接噴射/
電動パワーステアリング/
アイドリングストップ装置/
充電制御

エンジン
型式: DAJ
種類:直列4気筒DOHCインタークーラー付ターボ(4バルブ)
内径 x 行程(mm):82.5 x 84.1
総排気量(cc):1,798
圧縮比:9.6
最高出力[ネット値] kW (PS)/rpm : 141(192)/5,400‐6,200
最大トルク[ネット値] Nm (kgm)/rpm : 250(25.5)/1,250‐5,300
燃料供給装置 : 電子制御式
燃料タンク容量(L) : 45
使用燃料 : 無鉛プレミアム

諸装置
クラッチ : 乾式多板ダイヤフラム式/ダイヤフラム式
トランスミッション(変速装置の形式および変速段数): 自動7段(前進)1段(後退)
変速比: 第1速 3.500
第2速: 2.086
第3速: 1.342
第4速: 0.940
第5速:0.973
第6速:0.780
第7速:0.653
後退:3.722
最終減速比: 1‐4速:4.800/5‐7速:3.428/後退:4.500
フロントサスペンション: マクファーソンストラット(スタビライザー付)
リヤサスペンション: トレーリングアーム
フロントブレーキ: ベンチレーテッドディスク
リヤブレーキ: ディスク
タイヤサイズ: 215/40R17

環境仕様
二酸化炭素:(CO2)排出量 135g/km(JC08モード走行 燃費値換算)
排出ガス: 一酸化炭素(CO):1.15g/km/非メタン炭化水素(NMHC):0.05g/km/
窒素酸化物(NOx):0.05g/km
騒音: 近接排気騒音:81dB/定常走行騒音:68dB/加速走行騒音:74dB
エアコン冷媒: 種類:R134a/使用量:500±15g/GWP値:1,430/環境影響度目標値:150/目標年度2023年

ポロGTIのライバル達

ポロGTIのライバルとなるのが上の写真に乗っているBMW・ミニJCW、ルノー・ルーテシアRS、プジョー208Gtiといった車達でしょう。所謂Bセグメントといわれるコンパクトハッチのスポーツモデル達です。
どのモデルもそれぞれに独自の乗り味や特徴を持っているため甲乙つけがたいものがありますが、こと省燃費性能と動力性能の調和という観点に立ってみれば、ポロGTIの圧勝ではないでしょうか。省燃費性能を追う余りに不正まで行ってしまったフォルクスワーゲンではありますが、それだけ踏み込んでいた分その省燃費性能は同クラスの車達の中でも抜きん出ています。
個人的にはフォルクスワーゲンのかっちりとした乗り味は長旅を優雅に流すグランドツーリングというイメージが強く、元気良く峠道を走るならルノーのほうが好みです。ですが、その長旅でも疲れのこないがっちりとした車の乗り味とホットハッチとしての軽快さを併せ持つのがフォルクスワーゲンの強みなのだと思います。車の好みは人それぞれ、乗ってみないとわかりません、上記のような車達に興味があるなら、とにかく試乗してみて自分との相性を確認してみて下さい。

省燃費性能を追い求めた、まさに現代のホットハッチ

見方を変えるとフォルクスワーゲンの行った不正は、不正を行ってまで省燃費性能を追求していたという風にも見て取れ、フォルクスワーゲンが既存のエンジン技術にどれだけの期待と執念を燃やしていたかが伺えます。歴代のポロGTIの変遷を見ても、二代目から三代目、TSIエンジンを始めとする技術をふんだんに取り入れて作られたポロGTIはサイズや出力の拡大に加え、DSGのイメージからスポーツよりもグランドツーリング的なイメージが強くなってしまっています。しかし、その最新技術の数々はフォルクスワーゲンの技術への執念を感じさせ、それはポロGTIからも感じ取ることができるのです。
四代目となり6MTを搭載するポロGTIを見ていると、ついにフォルクスワーゲンの求めるホットハッチの1つの答えが出るような、そんな気さえしてきます。
省燃費性能と動力性能、そして操る楽しみを追求した四代目ポロGTIは、まさにホットハッチの集大成とも言うべき車です。