【シトロエンDS3】“DS”は50年代に端を発するプレミアムラインの称号

シトロエンに詳しい方でしたら、“DS”という名前にピンとくるのではないでしょうか。私はとても違和感を感じました。1955年~1975年までの20年、シトロエンは“DS”という名前の車を販売していましたから。シトロエンのプレスリリースでは、DS3の名前はこの60年前に誕生した“DS”に由来するというから聞き捨てなりません。名前の由来から諸々含めて、新生DSの中身を覗いてみましょう。2016年1月更新

何はともあれDS3という車について

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%88%E3%83%AD%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%BBDS3

2009年2月のジュネーブ・モーターショーで発表された“DSインサイド”というコンセプトカーの市販モデルです。製品版は同年9月のフランクフルトモーターショーでデビュー。2ヶ月後の11月には欧州で販売開始され、2010年5月6日に日本での販売が開始されました。
2代目“C3”とプラットフォームを共有しています。
2012年10月にパリサロン(モンディアル・ド・ロトモビル)で、追加モデルとなるセミオープンの“DS3カブリオ”がワールドプレミアを受けてそのまま発売されました。日本市場では2013年6月18日の発表後、7月5日に販売を開始しています。
車名の“DS”は、1955年に発売されたシトロエンの大型高級乗用車“シトロエン・DS”が由来とのことで、“Cライン”とは一線を画す高級車シリーズ“DSライン”の第一弾として投入されたのです。“Different Spirit”の意味も込められていて、シトロエンブランドの新しい価値を表現しています。
“DS”の特徴の1つである“独立して見えるルーフ”をモチーフにした、ルーフが浮いているように見える“フローティングルーフ”が特徴です。
ボディやルーフ、ダッシュボード、シートカラーなどを自由に組み合わせることができる“ビークルパーソナリゼーション”という色目のカスタマイズ要素が取り入れられています。その組み合わせ次第で、まさに世界に一台だけのパーソナルカーを作ることも可能です。

兄弟車となる“シトロエン・C3”についての記事はこちらです。

由来となった“DS”とは

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%88%E3%83%AD%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%BBDS

これがシトロエン・DSです。
フランス本国では “スィトホエン・デ・エス” と発音しますが、“ディーエス”でいいですね。この語源は“開発コードの省略形”とか、“Désirée Spéciale・デズィへ スペシアレ(特別な憧れ)”の略と言われています。また同じ発音の“女神”を意味するフランス語“déesse(デエス)”を意味しているという説も根強いですが、シトロエンからはなにひとつ明言されていません。
最大の特徴は、なんと言っても“水と空気のサスペンション”と言われる“ハイドロニューマチック・システム(Hydropneumatic System)”の採用でしょう。サスペンションだけでなく、エンジンの動力で造りだした油圧を用いて、ブレーキとパワーステアリングも制御しています。ブレーキング時には、フロントサスペンションにも油圧を送り、ノーズダイブを最小限に抑えるように働きます。
ボディサイズは全長:4.81m、全幅:1.8m、全高:1.47mで、1950年代中期のヨーロッパ車としては異例の大型モデルです。
大柄なボディに対してエンジンは、初期形で1.9L、最終形でも2.3Lと非力なものですが、車重が1.2t〜1.3tと軽量なおかげで動力性能に大きな不足はありません。
随所に意表を突くメカニズムが搭載されていて、設計者が貫く航空機の設計思想が見て取れます。車体重心は前方に・空力重心は後方に、という弓矢のような重量配分が直進安定性に大きく寄与しています。
DSはごく一般的な量産車として企画開発されたモデルで、本国フランスではタクシーや救急車、パトカーなどの特装車にも酷使されるような車です。トヨタでいえばセンチュリーや2000GTといった特化型の少量生産車ではなく、実に数多く生産されたクラウンのような量産高級車と言えます。このような成り立ちの車種に、ジェット旅客機やロケットエンジンに用いる油圧系統並みの精度が要求される技術を導入している例は、今も昔もシトロエン社以外には存在しません。

1999年に、全世界の自動車評論家・雑誌編集者等の意見を集めて選考された“20世紀の名車ランキング”と言われる“カーオブザセンチュリー”で、1位のフォード・モデルT、2位のミニに次ぐ第3位の“偉大な自動車”という評価を得ています。

DS3の中身

DS3の概要が掴めたところで、中を覗いてみましょう。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%88%E3%83%AD%E3%82%A8%E3%83%B3%E3%83%BBDS3

コンポーネント

ボディバリエーションは、当初は3ドアハッチバックのみでしたが、モデル途中で“カブリオ”が追加されたことで2種類になりました。カブリオでは、機構上の制約からハッチゲートの代わりにポップアップ(跳ね上げ)式のトランクリッドが備わります。
カブリオ最大の特徴としては、フィアット・500Cと同様に完全なオープンスタイルではなく、両サイドのパネルを残して、天井とゲート部分だけが開閉する電動ソフトトップが挙げられます。操作はスイッチひとつで“全閉状態”、屋根部分半開の“ミドルオープン”、屋根部分全開の“セミオープン”に加え、スイッチを長押しすることでリヤガラスが前方に倒れて幌が後端まで下がる“フルオープン”の4段階に調整が可能です。フルオープン時でもハイマウントストップランプが作動するように設計されているあたりは流石です。全閉状態からフルオープンまでの所要時間はわずか16秒のみです。

エンジンは、ガソリンエンジンは直列4気筒1.4L/1.6L/1.6Lターボの3種類と、ディーゼルエンジンは1.6L最高出力93psと114psのスペックが異なる2種類に、トランスミッションは5速/6速M/T、ガソリンエンジンの1.6Lには4速A/Tの組み合わせもあります。
2014年2月には“Chic”グレードで、従来の1.6Lからプジョー・208や2008で先行搭載された新開発の1.2L・直列3気筒エンジン+新開発のトランスミッションETG5の組み合わせで、従来比70Kgの軽量化と燃費向上(JC08モードで19.4Km/L)を達成しています。
日本仕様車では、前期が1.6Lのガソリンエンジンのみ、後期は上述の通り1.6Lと1.2Lガソリンエンジンの2種類。1.2LNA+ETG5はハッチバックのみ、1.6Lターボ+6速M/Tはハッチバックとカブリオの両方に設定されています。
2015年10月28日、1.2Lエンジンの見直しと同時に6速A/Tが導入されました。

最新コンポーネントの導入

出典:http://ds.citroen.jp/parisienne/powertrain/

2015年10月28日、インジェクション制御を見直した“1.2L PureTech ターボエンジン”が導入されました。
最高出力110ps/5,500rpm、最大トルク205Nm/1,500rpmを3気筒1.2Lから絞り出します。燃焼室内への直接燃料噴射システムの採用とターボチャージャーの追加により、従来の自然吸気エンジンに比べ最高出力は28psアップ、最大トルクは87Nmアップと大幅にパフォーマンスを高めています。
世界中の主要モータージャーナリストの評価を受け、インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー2015(1.0 – 1.4L)に輝きました。

インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤーの主催は、イギリスのクルマ専門誌“エンジンテクノロジー・インターナショナル・マガジン”です。世界34か国、80名のモータージャーナリストの投票によって選出される、とても権威ある賞です。授賞の理由は、優れた低燃費とCO2排出量削減性能です。PSAグループの次世代に向けたテクノロジーが、世界で最高の評価を獲得しました。

出典:http://ds.citroen.jp/parisienne/powertrain/

ピュアテックターボエンジンに組み合わされるのは、次世代型6速A/TとなるEAT6+ストップ&スタートシステムです。
ギヤレシオを高めに設定することで、同一速度域でのエンジン回転を下げています。トルクコンバーターのスリップロスを、新開発のクラッチによってロックアップ領域を拡大することで低減させています。
さらに、ミッション全体のフリクションロスもさらに削減して、低速域でのニュートラルコントロールを最適化するなど、効率を突き詰めることによりスムースで省燃費性、静粛性も高めています。
より素早く、ダイレクトなシフトフィーリングを実現した次世代型トランスミッションです。

信号待ちなどで、エンジンを自動的に停止・再始動する、ストップ&スタートシステムを装備しました。不要なアイドリングを抑制することで燃費向上に大きく貢献しています。また、ダッシュボードに備えられた“ECOスイッチ”によりONとOFFを任意に切り替えることができます。

スペック

乗車定員:5名
ボディタイプ:3ドアハッチバック、2ドアオープン
エンジン:ガソリン 1.2L直列3気筒・1.6L直列4気筒
最高出力:1.2Lエンジン 110ps/5,500rpm 1.6Lエンジン 165ps/6,000rpm
最大トルク:1.2Lエンジン 20.9kgf·m/1,500rpm 1.6Lエンジン 24.5kgf・m/1,400-3,500rpm
変速機:6速A/T・6速M/T
駆動方式:FF
サスペンション:前 マクファーソン・ストラット 後 トーションビーム
全長:3,965mm
全幅:1,715mm
全高:1,455mm
ホイールベース:2,455mm
車両重量:1,170-1,200kg

乗ってみました

2年ほど前に試乗した際の記憶ですので、残念ながら最新の6速A/TではなくETG5車です。最新に乗る機会がありましたら追記したいと思います。
ETG5は、マニュアルトランスミッションのクラッチ操作とギヤチェンジ操作を車が行う機構ですので、車がクラッチ操作を行うタイミングを感じ取る必要があります。特に走りだしは意外と引っ張るのでシフトアップがスムーズにできませんでした。
やや慣れが必要ではあるものの、そのあとはハンドルから手を離すことなく操作できるパドルシフトのおかげで、期待以上に気持ちよく走ることができます。
シフトレバーでもパドルでも操作できますので好みが分かれるところですが、個人的にはパドル操作の方がレーサーライクで楽しめます。
慣れてきたら、“そろそろクラッチが切れるな”っていうタイミングがわかるようになりますので、それに合わせて右足を僅かに緩めてやると“カッコン”とシフトチェンジしてくれます。
エンジン回転を4,000rpm前後で保てるようにギアを選ぶと、アクセルペダルに載せた足の力の微妙な加減とクルマがリンクして、とても気持ちのよいダイレクトな感覚を堪能できます。
排気量にゆとりのあるエンジンではありませんので、積極的に高回転域を使うと喜びます。1.2リッター3気筒でターボチャージャーもないとは思えない力強さを感じます。かなり足まわりがしっかりしていますので、カーブでの身のこなしも気持ちよいフィーリング。外観こそキュートでファッショナブルですが、およそ似合わない走りが楽しめる車です。

基本的にマニュアルトランスミッションですので、2ペダルで扱うための工夫がいくつかあります。ひとつは発進時にクラッチをはやめにつなぐクリープ機構で、ブレーキペダルを離せばゆっくりと進みます。もうひとつは、坂道での発進をスムーズにおこなうたものヒルスタートアシスタンスです。坂道で停車した場合、ブレーキペダルを離してもブレーキ作動がキープされます。

オーナーになるには

フランス車の割には人気がありますので、中古市場での球数は多いはずです。某中古車サイトを覗いてみましょう。

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意外と少なく113台でした。
1番お値打ちなのは、2011年式・走行5.6万キロ・1.6L・4速A/Tのシックが99.9万円ですね。
逆に高年式では、2015年式・走行750キロ・1.2L・ETG5のシックで236万円です。
5年落ちで100万円を切っているのはなかなか魅力ですが、登録落ち(ディーラーの試乗車など)で236万円はちょっと微妙ですよね。
新車価格でも1番お値打ちなシックでしたら259万円です。差額23万円しかありません。ターボ付きの最新エンジンと6速A/Tを加味すると、むしろ新車を購入した方が賢く感じます。
中古車としての旨みが出てくるのは、初回の車検が切れた3年落ちくらいからでしょうか。

最後にまとめてみます

往年の名車DSの名前を受け継いだ新生DSラインの末っ子“DS3”は、兄弟車のC3と同時に開発することでコストを抑えたプレミアムモデルに仕上がっていました。
トリム類にメッキを多様した室内の質感はこのレンジのモデルではあり得ないレベルに達しています。外観も、塗装の艶感やLEDを多用したランプ類などは高級車の出で立ちです。
フランス流、いえシトロエン流のプレミアムコンパクトに対する答えがDS3なのでしょう。

機会があれば、ぜひ最新エンジン+6速A/T搭載車に乗ってみたいと思います。