クリオ、戦後ルノーの成長を支え続けた名車の歴史を振り返る

現在もBセグメントと呼ばれるフィールドでBMW「MINI」やプジョー「208」ホンダ「FIT」などを向こうに回して戦っているのがルノー「クリオ」日本名「ルーテシア」です。最近はCMなどでも見かけるようになり、クリオという名前は知らなくともルーテシアという名前には聞き覚えがある方もおられるのではないでしょうか?今日はそんな徐々に日本でも知られてきている「クリオ」について紹介していこうかと思います。

4CVから始まるルノーコンパクトハッチの歴史

第二次世界大戦後、世界中が復興需要に乗って事業を拡大していく中、ルノーも例外なく戦後の経済復興に合わせて大きく成長していきました。
現在では日産・ルノーサムスン自動車、ルーマニアのダチア、ロシアのアフトヴァースといった世界中の自動車メーカーを参加に収め、2011年の正解販売台数ではトヨタを抜いて世界第3位にまで上り詰めています。日本でも日産とのアライアンス表明からカルロス・ゴーン社長の名とともに年々その存在感を増してきています。
このルノーの成長の原動力となったのは、派手なスポーツカーではなくヨーロッパ中で愛された小さな大衆車でした。今なおルノーという会社とともに成長を続けるフレンチコンパクト「クリオ」について、その歴史をたどっていくことにしましょう。

戦後ルノーの方向性を決定づけた4CV

クリオという車の歴史をたどって行くと、第二次大戦後ヨーロッパでベストセラーとなった4CVにまで遡ることができます。当時のルノーは大戦中に起きた創業者の戦死にシャルル・ドゴール将軍の指示による会社の国有化といったまさに激動の時代に開発・販売された車でした。
4CVは走行性能自体も当時としては高性能で、4人が乗ることができ、経済性にも優れるていました。そんなルノー4CVはフランスを始め多くのヨーロッパ諸国で受け入れられ、クリオやメガーヌに受け継がれる大衆車メーカーとしての地位とノウハウを確立したのです。

4CVが作った大衆車メーカーとしてのイメージを定着させていった「4」・「5」・「スーパー5」

4CVのヒットの後、ルノーではFF(前輪駆動車)である「4」を始め多くの小型車を世に送り出すこととなります。とりわけ「4」のヒットは当時アメリカ進出に失敗し窮地に陥っていたルノーを助け、現在のルノーを形作る大きな役割を果たします。
その後世界初の樹脂バンパーの採用や個性的なスタイリング(とりわけクリフカットと呼ばれるリアのライン)と、「4CV」から受け継がれる高い経済性と実用を併せ持った「5」(サンク)がヨーロッパだけでなく世界中で大ヒットを記録することとなります。
この「5」には一般的なグレードの他に、ルノーが参加に収めたスポーツカーメーカーアルピーヌがチューニングを施した「5」アルピーヌや、WRC(世界ラリー選手権)のホモロゲーションモデルとして開発された「5ターボ」などが開発され、ルノーがスポーツモデルにも力を入れ、その実力があることを世に知らしめることとなりました。特に「5ターボ」はリアのラゲッジスペースにエンジンを搭載しMR化し、巨大なワイドフェンダーを装着してトレッドを広げるなどの大胆すぎるチューニングを行っており、その姿は通常の「5」とはもはや別物といって差し支えなく、多くの人にルノーの狂気じみたスポーツマインドを印象付けることとなりました。

5からクリオへ、受け継がれる系譜

ヨーロッパカーオブザイヤーを受賞し大きな評価を受けた「クリオ」

クリオは「5」「シュペール5」の後継モデルの位置づけで1990年にパリサロンでデビューを果たしました。
デザインは当時主流となりつつあった丸みを帯びたデザインへと変化するとともにホイールベースは拡大され、時代の流れに合わせて「5」からデザイン・パッケージングを向上させた、まさに正常進化を果たしたモデルといえる。「5」の持つ大衆車としてのコンセプトを踏襲した「進化」はヨーロッパを始め世界中で高い評価を受け、発表の翌年、1991年にはヨーロッパカーオブザイヤーを受賞するに至ります。
WRCでのホモロゲーション取得はこのクリオでも行われ、発売されたのが「クリオウィリアムズ」です。ウィリアムズとは当時ルノーF1に参戦していたウィリアムズチームからとったものですが、モデルの作成にチームは関わらず開発はルノースポールで行われます。エンジンはバルブサイズ・カム・クランク・オイルクーラーにまで手を入れ2.0Lにまで拡大され、エンジン以外にも足回り・安全装備・補強と多岐に亘るチューニングが施されています。
魅力的なチューニングを施されたクリオウィリアムズですが、残念ながら日本へは正規に導入されず、並行輸入という形で日本国内に持ち込まれるました。

ボディタイプ: ハッチバック
ドア数: 5ドア
乗員定員: 5名
型式: E-B572
全長×全幅×全高: 3,715×1,630×1,390mm
ホイールベース: 2,475mm
トレッド前/後: 1,365/1,325mm
車両重量: 950kg

エンジン型式: E7J
最高出力: 78ps(57kW)/5,750rpm
最大トルク: 11.1kg・m(108.9N・m)/3,500rpm
種類: 水冷直列4気筒SOHC
総排気量: 1,389cc
内径×行程: 75.8mm×77.0mm
過給機 なし
燃料供給装置: 電子制御燃料噴射(シングルポイント)
燃料タンク容量: 43リットル
使用燃料: 無鉛プレミアムガソリン

足回り系
ステアリング形式: パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前): マクファーソンストラット式独立懸架
サスペンション形式(後): トレーリングアーム+トーションバー式独立懸架
ブレーキ形式(前): ディスク
ブレーキ形式(後): ドラム(リーディングトレーディング)
タイヤサイズ(前): 165/65R13
タイヤサイズ(後): 165/65R13
最小回転半径: 5.3m

V6スポール・2.0ルノースポールといった多くのバリエーションがある「クリオ2」

先代のクリオからさらに丸みを帯びたラインを多用し愛嬌のある姿でフルモデルチェンジをしたのがクリオ2です。エンジンのバリエーションは先代を踏襲しつつ1.9ディーゼルエンジン搭載モデルなどが後から追加されていきました。
フロントマスクの外観がマイナーチェンジ前のph1とph2で大きく異なり、ph1のほうが愛嬌のある顔であるのに対し、ph2では少し精悍な顔つきになり、少し小生意気に感じます。個人的にはph1が好みですね。
このモデルの特徴としては、ルノー・スポールがチューニングを施し販売された「クリオ2.0RS(ルノー・スポール)」に加えて、後部座席を取り外し、巨大なV6エンジンをミッドシップに搭載する「クリオ V6スポール」が有名です。
特に「クリオ V6スポール」はベースのクリオに巨大なオーバーフェンダーを被せてワイドな姿となり、車高も下げているのでハッチバックとはとても思えないワイド&ローな姿を実現しています。ミッドシップにレイアウトされ後輪を駆動するこの車のインパクトは計りしれません。
その姿はルノーになじみのなかった人に、「ルノーとはなんて車を作るメーカーなんだ!」と衝撃を与え、かつての「5ターボ」を知る世代へは「あの5ターボが帰ってきた!」と喜びと興奮と懐かしさを提供しました。

ボディタイプ: ハッチバック
ドア数: 5ドア
乗員定員: 5名
型式: GF-BK4J
全長×全幅×全高: 3,770×1,640×1,420mm
ホイールベース: 2,475mm
トレッド前/後: 1,405/1,395mm
車両重量: 1,050kg

エンジン・燃料系
エンジン型式: K4J
最高出力: 98ps(72kW)/6,000rpm
最大トルク: 13.0kg・m(127N・m)/3,750rpm
種類: 直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量: 1,389cc
内径×行程: 79.5mm×70.0mm
過給機: なし
燃料供給装置: マルチポイントインジェクション
燃料タンク容量: 50リットル
使用燃料: 無鉛プレミアムガソリン

環境仕様
10モード/10・15モード燃費: 12.6km/リットル

足回り系
ステアリング形式: パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前): マクファーソンストラット
サスペンション形式(後): トーションビーム式
ブレーキ形式(前): ベンチレーテッドディスク
ブレーキ形式(後): ドラム(リーディングトレーディング)
タイヤサイズ(前): 175/65R14
タイヤサイズ(後): 175/65R14
最小回転半径: 5.4m

再びヨーロッパ・カー・オブザイヤーを受賞した「クリオ3」

ルノーが実質的に日産を傘下に収めた日産アライアンスの影響もあり、プラットフォームをマーチ・ノートと共有するのが2005年にフルモデルチェンジしたクリオ3です。ユーロNCAPという安全性評価において5つ星を獲得し、安全性の面で高い評価を受けたこと、パッケージング(前席・後席・荷台といった間取りの取り方)の面でも優れているということから、2006年度のヨーロッパ・カー・オブザイヤーを受賞するに至りました。
トレッドを広げ197馬力を発生させるエンジンを積んだ「ルノー・スポール」も2代目に続き設定されていますが、2代目に比べると若干影の薄い印象があり、デザインもやや没個性的な面は否めません。
後期型であるph2ではメガーヌRSにも採用される迫力あるフロントマスクに変更されています。

ボディタイプ: ハッチバック
ドア数: 5ドア
乗員定員: 5名
型式: ABA-RK4MC
全長×全幅×全高: 4,025×1,720×1,485mm
ホイールベース: 2,575mm
トレッド前/後: 1,460/1,455mm
車両重量: 1,190kg

エンジン・燃料系
エンジン型式: K4M
最高出力: 112ps(82kW)/6,000rpm
最大トルク: 15.4kg・m(151N・m)/4,250rpm
種類: 直列4気筒DOHC16バルブ
総排気量: 1,598cc
内径×行程: 79.5mm×80.5mm
圧縮比: 9.7
過給機: なし
燃料供給装置: 電子制御式マルチポイントインジェクション
燃料タンク容量: 55リットル
使用燃料: 無鉛プレミアムガソリン

環境仕様
10モード/10・15モード燃費: 11.6km/リットル

足回り系
ステアリング形式: パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前): マクファーソン/コイル
サスペンション形式(後): トレーリングアーム/コイル
ブレーキ形式(前): ベンチレーテッドディスク
ブレーキ形式(後): ディスク
タイヤサイズ(前): 185/60R15
タイヤサイズ(後): 185/60R15
最小回転半径: 5.1m

マツダからデザイナーを引き抜き、色気のある姿へと変貌した「クリオ4」

マツダから転籍した「ローレンス・ヴァン・デン・アッカー」がデザインを担当し、一新されたのがクリオ4です。クリオ4は2010年に発表されたコンセプトカー「デジール」のフロントマスクの意匠が見事に取り入れられていて、コンセプトカーに時に見られる特異な雰囲気が軽減され一般的になっているにもかかわらず、デジールの持っていたフロントエンブレムから左右のヘッドライトへ伸びる特徴的なラインを見事に取り入れることに成功しています。車全体を形作る直線・曲線のラインが巧みに組み合わされ、ぱっと見るとシンプルな外観なのですが、見ていて飽きのこない素晴らしいデザインとなっています。
エンジン面ではヨーロッパ界隈で流行りのダウンサイジングターボがラインナップに加えられています。最近はホンダなども積極的に取り入れ始めていますね。
これを受けルノースポールもこれまでの2.0Lエンジンから1.6ターボエンジンを搭載しています。200馬力を発生させることもあり、動力性能は1.6Lとなっても劣るということはありません。むしろターボが発生さっせる大トルクを低回転域で使用できるので、街乗りは乗り易くミニサーキットやジムカーナのような速度域の低い競技ではむしろこちらに分があるように思います。

ボディタイプ: ハッチバック
ドア数: 5ドア
乗員定員: 5名
型式: ABA-RH5F
全長×全幅×全高: 4,095×1,750×1,445mm
ホイールベース: 2,600mm
トレッド前/後: 1,505/1,505mm
車両重量: 1,210kg

エンジン・燃料系
エンジン型式: H5F
最高出力: 120ps(88kW)/4,900rpm
最大トルク: 19.4kg・m(190N・m)/2,000rpm
種類: 直列4気筒DOHC16バルブターボ
総排気量: 1,197cc
内径×行程: 72.2mm×73.1mm
過給機: ターボ
燃料供給装置:(電子制御式)マルチポイントインジェクション
燃料タンク容量: 45リットル
使用燃料: 無鉛プレミアムガソリン

足回り系
ステアリング形式: パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前): マクファーソン/コイル
サスペンション形式(後): トレーリングアーム/コイル
ブレーキ形式(前): ベンチレーテッドディスク
ブレーキ形式(後): ドラム(リーディングトレーディング)
タイヤサイズ(前): 205/45R17
タイヤサイズ(後): 205/45R17

コストパフォーマンスで見る中古車選び

日常の足として使える4ATモデルからV6スポールなんてマニアックなモデルまで混在するクリオですが、日本ではルーテシアという名称で正規導入されていることもあり、案外玉数は豊富にあります。
まずスポーツ志向でルノーを選ぶか日常の足として選ぶのかで選択は大きく異なってくるので、「今回は日常の足として」、「趣味車として」、そして「そのどちらも両立させたいお父さんへ向けて」、3台の中古車を選んでみましょう。

日常の足としてならクリオ3で決まり! 28万円~

ルーテシア eLe 禁煙車 ナビ TV バックカメラ ETC
2007年 走行 4.1万Km 排気 1,600cc 車検 検28.5
本体価格28万円 支払総額 45.9万円
※2015年12月末時点

先の紹介分でも没個性的と書きました。魅力的な4代目も発表されている今、スポール以外のクリオ3はバーゲンプライスとも言えるくらいに値落ちしています。
しかし、日本では人気がなくともそこはヨーロッパカーオブザイヤー受賞車、品質や使い勝手は一級品ですし没個性的ではあってもデザインが悪いというわけではなく、他の日産車に似ているというだけですので、リーズナブルにフランス車を楽しんでみたい方にはうってつけと言えるでしょう。

予算があるなら当然クリオV6スポール! 顔はお好みでどうぞ

ルーテシア ルノースポールV6
年式2002年 走行 1.6万Km 排気 3,000cc 車検 検29.7
本体価格298万円 支払総額 320万円
※2015年12月末時点

後輪駆動のハッチバックというだけでも十分乗る価値のある車です。エクステリアも非常に迫力があり非日常的、駐車場に停めて眺めているだけでも満足感があります。私も余裕があるなら是非所有してみたいですね。
ただ、年式も古く各部に修理やメンテナンスが必要な個体が非常に多く、もし購入するなら修理費も予め準備しておいたほうが良いでしょう。

十分すぎる動力性能を持つフレンチロケット クリオ3RS(ルノー・スポール)

ルーテシアRS(ルノー・スポール)
年式2011年 走行 7.8万Km 排気 2000cc 車検 検28.4
本体価格 135万円 支払総額  147万円
※2015年12月末時点

V6スポールと比べてしまうと外観もスペックも見劣りするように感じるのですが、結構速い車が2.0ルノー・スポールです。FD2型シビックタイプRとも十分渡り合える車です。サーキットでのシビアなタイムとなるとFD2型シビックタイプRに軍配が上がる所ですが、山道でたまに流したりする趣味が大部分を占める人にとっては十分選択肢に挙げていいのではないかと思います。横滑り防止装置などの安全装置も付き、FFという駆動方式なこともあり普段あまり運転をされない方ならV6スポールよりこちらのほうがよっぽど簡単に速く走らせることができるでしょう。
3ドアという点が日常ユースでは不利ですが、使い勝手と趣味性を両立できる車です。
ちなみに上記に挙げたのはクリオ3のRSです。クリオ3は没個性的と書きましたが後期型よりフロントマスクが変更され、口を大きく開けた大胆なデザインに変更されています。とりわけRSはフロントマスクの意匠が同時期のメガーヌRSと同様の大迫力な物に変更されており、所有欲を満たしてくれるエクステリアとなっています。

常に大衆とともに、ぶれないことに価値のあるクリオ

車種がモデルチェンジを続けるうちに、前モデルより価値を上げるために大きく・高級になっていくことはどの自動車メーカーでも見られ、ほとんど例外はありません。
しかし、その発展の歴史の中で、常に大衆車としての立ち居地・利便性・安全性を見事に両立させ続けたのがクリオです。時代が移り変わり、V6スポールのようなとても大衆車とは呼べないモデルも誕生しますが、ベースとなるクリオの大衆車としてのコンセプトがぶれることはありませんでした。
他の車・とりわけヨーロッパの車には言えることですが、こういったコンセプトを継承し続けてきたモデルには、敬意を持ってみてしまい、そこにある価値観こそが、日本車とヨーロッパ車の差ではないかと思えてしまいます。