[TVRサーブラウ] フラッグシップたるサーブラウの魅力に迫る

TVRと言えば鋼管フレームにFRPを被せた軽量ボディにV8エンジンをフロントミッドシップに搭載し、後輪で駆動させるという古臭くもオーソドックスなスポーツカーを作り続けるメーカーです。そんなTVRがフラッグシップとして自社開発のエンジンを搭載しロングホイールベースの4シータークローズドボディを与えた車がサーブラウです。TVRの中でも一際輝くサーブラウの魅力を今日は探っていこうと思います。

FRレイアウトに4.0LV8エンジンを搭載し、軽量な鋼管チューブラーフレームの上にFRP製のボディを被せる、まさに軽量・大排気量のFRスポーツです。
その中でもサーブラウはTVRのフラッグシップとなるべくして誕生したモデルです。ホイールベースをキミーラなどよりも延長し、TVRが始めて自社開発したV8エンジンを搭載、4シータークローズドクーペという今までのTVRにはないレイアウトを採用するなど、それまでのTVR以上に贅沢な作り方をしているのがサーブラウです。
ハンドメイドで作られる豪勢なクーペ、ですがスペックや装備にはない部分にこそ、サーブラウの魅力はあるのだと私は感じます。そう、サーブラウの魅力を語る上では、やはりTVRというメーカーを知ることがかかせません。TVRという会社とその姿勢を知ってこそ、サーブラウという車は一層輝きを増すのです。

TVRについて

イギリスはブラックプールに本拠を置き、50年以上の歴史を持つ自動車メーカーがTVRです。「スポーツカーというのは、大馬力で軽量であればそれでいい」という考えの下ひたすらスポーツカーを作り続けたメーカーで、マルチチューブラーフレームと呼ばれる鋼管を用いたフレームにFRレイアウトを採用し、FRPのボディをかぶせ、ローバー製V8エンジンに代表される大排気量エンジンを搭載するというなんとも車好きの琴線を刺激する車作りを続けました。
電子制御や安全装備を一切搭載しないというのもTVRの特徴で、1999年発売のキミーラですら横滑り防止装置はおろかABSやエアバックすら装備されていません。
メーターやダッシュボードといった装飾品に至るまで全て自社生産を行っていたというのもTVRの特徴です。
現在の自動車メーカーがメーターなどの装飾品はおろかボディやエンジンまで共有し、果てはOEM製造され他社の車を自社のエンブレムを付けて販売しており、これは経営効率化の観点からも必要なことだと思われます。それに完全に背を向け頑固な職人集団と化しているTVRの姿勢は、一人の車好きとして非常に好感が持てます。創業者のトレバー・ウィルキンソンを始め、車好きが集まり自分が一番楽しいと思う車を作り続けていたのでしょう。
日本でこそ販売価格が新車で1,000万円以上の車ばかりなため高級車というイメージでしたが、本国などでは安価かつ高性能、しかし壊れやすいスポーツカーを作るメーカーとして認知されていたようです。

栄枯盛衰

1947年にトレバー・ウィルキンソンがイギリスはブラックプールに創業した自動車製造会社がTVRの始まりです。何度か経営者が入れ替わっていく中でメーターまで完全自社生産の大排気量FRスポーツカーを製造するメーカーとしての地位を確立していきますが、2004年ニコライ・スモレンスキーというロシアの富豪に経営権が移ってから風向きが変わります。
ほぼ全てのパーツを自社生産するという体制をニコライ・スモレンスキーは改め、海外生産のパーツを使用し始めました。他にも品質チェック体制を強化や新車購入後2年間の完全補償制度を導入・製造部門と販売部門の完全分離を行いました。彼のやったことは他の自動車メーカーでも行われているような経営の効率化と自社製品の品質改善策と言えるでしょう。例えばトヨタのような大衆車メーカーではこういった改革は非常に有効だと言えますが、車好きを相手に安価ではあるがハンドメイドのFRスポーツカーを製作してきたTVRには、してはいけない改革だったように思えます。

2006年にはそれまで週に12台を生産していたTVRの生産台数は週に2台にまで落ち込み、従業員の解雇などを経過して事実上の経営破綻をきたします。TVRの所有者であるニコライ・スモレンスキーと従業員の関係は非常に悪くなっていたようで、労働組合との争いやサガリスというスモレンスキー時代の車についての再販計画も頓挫することとなります。結局2013年にスモレンスキーがTVRの所有権を手放すまで、経営再建計画なども全てうまく行かず、TVRにとっては停滞の時代が続きました。

現在は自動車業界に精通するレス・エドガーに所有権が移り、再建計画が動いています。かつてのTVRを取り戻すとレス・エドガーは語っており、コスワース製V8エンジンをフロントミッドシップに搭載する新型車を発表予定しており、それに加えてルマン24時間レースへの参戦も計画されているようです。職人気質の新生TVRには、大いに期待したいものです。

サーブラウとは

TVRの象徴ともいえるサーブラウ

TVRのフラッグシップモデルとなるべく生み出されたサーブラウには、それまでのTVR車にはないものを盛って生まれました。従来より延長されるロングホイールベースや4シータークローズドというレイアウトももちろんサーブラウの魅力を引き立たせるものですが、もっともサーブラウを特徴付けているのは搭載しているエンジンにあると思います。TVRが始めて自社開発し4.5Lで420ps・4.2Lで360psを発生させる「AJP8」は非常に高精度に組まれたエンジンであり、かのエンジン屋BMWがエンジンを買い付けに来たなんて話が出るほどその完成度は高いものだったと言われています。1,000万円近くする車両価格の内の約半額がエンジンの値段だというのですから、「AJP8」にTVRがいかに力を入れていたのかが伺えます。
サーブラウには他にもTVR自社開発の直列6気筒エンジン「speed6」を搭載するモデルもラインナップされています、気筒の数こそ少ないものの350psを発生させる「speed6」は「AJP8」と比べても見劣りするものではありません。
TVRの独自かつ先進技術を奢られたサーブラウは、まさに当時のTVRを代表するフラッグシップだったといえます。

素晴らしいインテリア

まるで生き物のような有機的なラインで造形されるインテリアは、ダッシュボードから後席に至るまでまさに芸術品です。一方コックピットといって差し支えないようなタイトな運転席にはどこか英国を思わせるクラシカルかつメカニカルなメーター類と、機能を優先させたと思われるショートストロークに球型のシフトノブが合わさり、他の高級車やスーパーカーのどれにも似ていない空間を作り出しています。
もうこの内装は好きな人にはたまらないでしょう。この空間に身を寄せているだけでも、サーブラウを所有してみたいという欲求に駆られてしまいます。

スペック

フラッグシップらしく、最大出力420psを誇る4.5Lモデルのスペックを載せておきます。

ボディタイプ: クーペ・スポーツ・スペシャリティ
ドア数: 2ドア
乗員定員: 4名
全長×全幅×全高: 4,280×1,865×1,220mm
ホイールベース: 2,566mm
トレッド前/後: 1,464/1,470mm
車両重量: 1,100kg

エンジン・燃料系
エンジン型式: AJP8
最高出力: 420ps(309kW)/6,750rpm
最大トルク: 52.5kg・m(515N・m)/5,500rpm
種類: V型8気筒SOHC16バルブ
総排気量: 4,475cc
内径×行程: 91mm×86mm
圧縮比: 10.75
過給機: なし
燃料供給装置: 電子制御式燃料噴射
燃料タンク容量: 65リットル
使用燃料: 無鉛プレミアムガソリン

足回り系
ステアリング形式: パワーアシスト付きラック&ピニオン
サスペンション形式(前): ダブルウィッシュボーン
サスペンション形式(後): ダブルウィッシュボーン
ブレーキ形式(前): ベンチレーテッドディスク
ブレーキ形式(後): ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ(前): 225/35ZR18
タイヤサイズ(後): 255/35ZR18

V12エンジンを搭載する幻のモンスター サーブラウスピード12

最も非力なエンジンを搭載するspeed6ですら350馬力を発生させるサーブラウですが、そのspeed6を2つ掛け合わせV12エンジンにしてしまい、そのエンジンを搭載したまさにモンスターとも言うべきサーブラウが存在します。
2000年に完成したサーブラウスピード12はプッシュロッド式サスペンション、アルミハニカム&スチールパイプハイブリッドフレームといった最新の技術を惜しげもなく投入しており、エンジン以外にもベースとナルサーブラウに相当な改良が施されています。
肝心のエンジンはというと7.7LV12エンジンはなんと最大出力811ps/7,500rpm、最大トルク89.86kgfm5,750rpmというとんでもない数字をたたき出し、交渉最高速は時速386km/hにまで到達しました。
ロードカーとして販売も企画されたサーブラウスピード12ですが、あまりにも過激なスペックとは裏腹に電子制御はABSまで一切なし、駆動方式はFRのみ、トランスミッションも6速マニュアルのみという余りにも乗り手を選ぶ車に仕上がってしまい、最終的には当時のTVR社長であったピーター・ウィラーの判断の元、販売企画は中止となってしまいます。
幻となってしまったサーブラウスピード12ですがその存在感はやはり別格、車好きなら一度は拝んでおきたい一品です。

サーブラウオーナーになるには

チャンスがあればます試乗を

サーブラウはスペック・用途・パッケージングなんて瑣末なことを考えて乗るような車ではありません。
サーブラウがとことん好きだからサーブラウを所有する。そういう一途な思いがなければ所有者も車も幸せになることは難しいでしょう。
理由は簡単で、サーブラウは日常の足として使うにはネガティブな部分が多すぎるのです。日本の道路事情では大きすぎるボディサイズ、最悪な燃費、TVRを扱える修理工場の少なさ、エンジンの排熱不足から来る各種修理やメンテナンス費用、排気量からくる高額の税金など、普通であれば耐えられないような負担が所有者にのしかかってくる事は用意に想像できます。
だからこそ、もしTVRサーブラウに興味を持ったなら、まず実車に触れてみて欲しいのです。
2015年12月現在確認できたサーブラウの中古車はわずか1台だけ、余りにも中古車市場での流通量の少なさからサーブラウに触れる機会を持つことすら困難ではあります。しかし、実際にコックピットに乗り込み、ステアリングを握り、できればエンジンに火を入れてみてください。
TVRの車作りに共感し、実車に触れて感動できたなら、あとは資金を用意して購入に踏み切るだけとなります。

TVR サーブラウ V8 4.2
年式 1998年 走行 2.1万Km 排気 4,200cc 車検 検29.5
本体価格 309.9万円

TVRのノウハウを持つショップに出会えるかが鍵

サーブラウに限らずTVRの車というのは基本的に様々なパーツの職人たちがハンドメイドで組み上げる車です。TVR自身も細部のパーツに至るまで自社生産を行っていたメーカーではあるのですが、じゃあメンテナンスにはTVR自社生産のパーツじゃないといけないのかというとそうでもなく、他のパーツが結構流用できてしまうことが多いのです。
サーブラウにとってもそれは例外ではなく、エンジンのオーバーホールをショップに依頼したら純正より安いパーツを流用できるというので依頼してみると、4.0Lだった排気量が結果5.0Lまで大きくなってしまったなんてある話があるくらい、パーツの流用が有効なメーカーです。
こういったTVR独特のパーツ流用のノウハウを持つショップを見つけられるかどうかは、サーブラウのオーナーを目指す上で非常に重要だと言えます。

サーブラウを所有するのに必要なのは、愛なのです

これほど強烈で独特な魅力を持つ車はそうありません。TVRという会社の車作りに対する思想は、ちょっと腕に覚えのあるドライバーに強烈に訴えかけてくるものがあります。その思想を一度知ってしまうと、TVRの思想の元に作られた車を一度味わってみたい、かなうならねじ伏せてみたいという欲求がふつふつと湧いてきてしまいます。
エクステリアやインテリアのデザインも他の高級車にはない個性を放ち、いいもの感に溢れています。サーブラウがガレージに鎮座しているのを眺めるだけでも、十分所有欲を満たしてくれることでしょう。
しかし、上記のような要素だけではサーブラウを維持し続けるのは難しいでしょう。サーブラウを所有し続けるのに必要なのは、盲目的にサーブラウを愛することです。一度愛してしまえばその愛が冷めるまで、惜しげもなく金と時間を投入しサーブラウを愛して下さい。
どんなに古臭い老婆でも、どんなに高飛車で金のかかる美人でも、愛さえあれば乗り越えられるものなのです。車を通して所有者が幸せになるのに最も重要なのもまた、その車を愛することなのです。