究極の【はたらくクルマ】トラクターから自走砲まで、メルセデス・ベンツ・ウニモグ

一見、いかついトラックに見える「メルセデスベンツ・ウニモグ」。しかし、多目的車として開発されたウニモグはトラックなどという一つのカテゴリーには収まらない恐ろしいクルマです。今日は、そのウニモグの歴史と実力を紹介していきましょう。

「農業用」として開発されたウニモグ

ウニモグ。アルファベットでは「Unimog」という名前は、「Universal-Motor-Gerät」からの造語です。ドイツ語をそのまま訳せば「多目的動力装置」と、一種「自動車」の概念から外れそうなネーミングを与えられた多目的車は、1945年秋、ダイムラー・ベンツで航空エンジンの開発責任者だったアルベルト・フリードリッヒが描いたスケッチからはじまります。このスケッチに「Motorized Universal Working Machine for Agriculture」(農業用原動機付き多目的機械)と書かれた自動車は、そのキャプションもあり当初は農業用自動車とみなされていました。というよりももしかしたら、その時代が農業用車両として開発させたのかもしれません。

当時のドイツは日本と同様、連合国の下にあったため、自動車開発には連合国からの許可が必要でした。当時の連合国の意図として、ドイツが再び軍事大国化しないよう農業を中心とした敗戦復興をさせようとしてたのです。これに対して、フリードリッヒが描いた自動車は「農業用多目的車」ですから、連合国の意図とも合致し、開発が許されます。戦前から高い自動車技術を持っていたドイツ「ダイムラー・ベンツ」の復活に向けて知恵を絞った一手でした。

占領下から現代まで、引き継がれるウニモグのコンセプト

フリードリッヒのスケッチからはじまった代々のウニモグには、一貫したコンセプトが引き継がれています。それは、
・比較的高速で走ることが出来る
・コイルスプリングを装備した柔軟なサスペンション構造をもった車軸
・前・後軸のデフロック
・堅固なシャシ・フレーム
・クレーンなどの作業機を用途に応じて車体の前・中央・後に架装可能とする強度や工夫
・前部、中央部、後部への機械式PTO(Power Take Off:エンジンから作業機へ動力取り出す仕組み)の装備
とウニモグの特徴ともいえる機構の数々です。

「こんなところで働ける」。ウニモグが働く現場

ウニモグは利用の目的によって様々な仕様を取り込んで、1台ずつ組み立てられるため、活躍する場面は非常に多岐に亘っています。これから紹介する内容は、その中の一例だと思って読んでみてください。

■ 除雪
日本で除雪の場面を見ると、ブルドーザーが大きな道から雪を取り除く場面を見かけます。これがウニモグとなると、板状の「スノープラウ」で雪をかき分け、押し固められた雪は「スノーカッター」で破砕し、「スノーブラシ」で雪を取り払うという「おしごと」をアタッチメントの使い分けでやりこなすことができるのです。また、ウニモグ自身が雪でスリップしないよう、スノーチェーンは運転席からの操作で取り付けられます。

■ 鉄道
ウニモグが走るのは、道路だけではありません。油圧昇降式の軌道走行用ガイドローラーをつければ、鉄道に乗り入れることもできるのです。そしてできる仕事は、架線工事などの高所作業から、機関車として客車や貨車などのけん引、そして重連仕様になっていれば2台以上のウニモグを連結させてパワーアップした使い方もできるのです。

■ 災害対策、運搬
斜面や路面状況に高い対応能力があるウニモグは、ヘリコプターが入り込めない山間部や、冠水や倒木で普通のトラックなどの車両が走れない場所にも行ける可能性が高い高機動型仕様ももっています。このため、豪雪や豪雨などで道路が使えない場面でも、資材の運搬や人命救助などに使うことができるのです。

■ 除草
下草刈機や、刈り取った草を風圧で集めるブロワー、道路脇の路肩の芝生などを整えるバンクモアなど、これもアタッチメントによってウニモグ一台で可能になっています。しかもどのアタッチメントの操作もジョイスティック使うので、比較的簡単だそうです。

■ 軍用
必ずしも舗装を前提としない軍事の場面でもウニモグが使われています。しかも、運搬という目的だけではなく、多連装ロケット砲を積載したり、シャーシを利用して装甲車両に改造して利用している例がたくさんあります。

進化したウニモグは、多目的作業型と高機動型に分化

ウニモグは2つのシリーズがあります。一つは多目的作業型(U218/U318/U423シリーズ)と、高機動型U4023/U5023 シリーズです。購入を考えるためには、使用目的によって、どちらに適正があるかを判断する必要があります。それぞれのシリーズの特性を理解しておきましょう。

多目的型の特徴は、豊富なアタッチメントとのコンビネーション

高機動型は路面状況を問わない機動力

多目的作業型は、作業用のアタッチメント1,000種類に対応し、装着ポイントは4カ所。作業の場面によりウニモグを対応させるためのシリーズです。トランスミッションはウニモグが伝統的に採用しいている多段式で前進に8段、後進には6段のシフトが用意されています。このことで作業時の超低速走行にも、巡航時の高速走行にも対応が可能になっています。また、作業環境によって運転席を左・右に買えることができる左右可変式ステアリングシステムも装備されているので、ウニモグを利用する時の想定範囲を非常に柔軟にしています。

高機動型は、走破性を高めているウニモグです。スラスト・チューブ構造を採用していることで、最大で30度まで車軸と梯子型メインフレームがスイングさせることが可能なので、路面の傾きや舗装状況に対応が可能な上、ゲート型のアクスルで最低地上高を高くしているので路上に多少のギャップや障害物があってもクリアすることが可能です。また、前後のオーバーハングが非常に短いので、フロントが顎を打つようなこともなく、オフロードを直線的に走行することが可能です。この性質はパリ・ダカールラリーのカミオン部門で活躍していることでも実証されています。更に4輪全てがシングルタイヤなので、オフロードでも走行を軽快にしています。また、ダブルキャビン装備にすれば最大7人を乗せて悪路の中を作業のために走破することが可能です。ただ運べれば良い、走れれば良いではなく、走るための目的によってキャビンの選択が可能なことはウニモグの適用範囲を広げるために非常に重要な要素になっています。

まとめ

占領政策の中で、自動車開発に苦労したのは日本もドイツも一緒でした。その中で「農業用」として規制の抜け穴を狙ったように開発したウニモグは、今では世界中のあらゆる場所で活躍する「はたらくクルマ」の名車に育ちました。また、その特異なスタイルや機能性から個人でも所有しているオーナードライバーがいるのは少し驚きですが、維持費やさまざまな制約の中でも所有するだけの価値があることを意味しているのでしょう。

また、単に「凄い機能」だけを追求していただけでは時代の波から取り残されますが、ヨーロッパの排気ガス規制「ユーロ6」や世界的にも厳しい日本の基準にも適合させるため、新型エンジOM934LA/OM936LAを踏査した上に、尿素触媒や排ガス再循環装置(EGR)を搭載するなどクリーン化と燃費、そして出力向上を果たしています。

進化を続けるウニモグの活躍する場は、どんなに道路が舗装されても減るどころか、むしろ広がっていきそうな、そんな予感のする名車です。