エンジンの構造は難しい?実は基本は100年以上変わりません。

空気とガソリンの混合気を圧縮し、スパークプラグの火花で着火することによって生まれたエネルギーで動くのがガソリンエンジンといえます。ディーゼルエンジンも軽油を燃料とし、自然着火を行なうという違いはあるとはいえ、基本的な考え方は同じですが、ここでは一般的な4サイクルレシプロガソリンエンジンの構造について解説します。

エンジン内部の構造を知るため、まず大まかなパーツを見てみよう。

外からはただの金属のかたまりにしか見えないが、内部にはいろいろつまっている。

エンジンの構造を知る上で、まずどのようなパーツから構成されているかを大枠で見ていきましょう。エンジン本体を構成するパーツは数多くありますが、主要パーツとしては、外から見えるものとしてシリンダーヘッド、シリンダーブロック、クランクケースなどがあります。とはいっても、実際に見えるのはシリンダーヘッド(カバー)くらいでしょう。外からは見えず内部にあるものとして吸排気バルブ、カムシャフト、ピストン、コンロッド、クランクシャフトなどがあります。外から見えるものはごく一部ともいえます。

その他に、エンジン内に入る空気の量を調整するスロットルバルブや燃料を供給するインジェクターを制御するインジェクション、混合気に着火するための、燃焼室に設けられたスパークプラグとそれに付随する点火系パーツなどが必要になります。それぞれについて、も見ていきましょう。

シリンダーヘッドにはカムシャフトや吸排気バルブという重要パーツが入っている。

ますシリンダーヘッド内ですが、ここには吸気バルブ、排気バルブ、カムシャフトなどがあります。混合気を圧縮点火するための燃焼室もここに形成され、混合気の入り口である吸気ポート、燃焼後の残留ガスが出て行くための排気ポート、吸排気ポートのフタの役割をする吸排気バルブやそれを駆動するためのカムシャフトを設置するスペースが設けられます。シリンダーヘッドはガスケットを挟み込んでシリンダーブロックとボルト留めされます。上部はシリンダーヘッドカバーで覆われています。

4サイクルエンジンは、吸入・圧縮・燃焼・排気の4行程で動きますが、シリンダーヘッドに装着される吸気バルブは、吸入行程で混合気を燃焼室に取り入れるときに開くようになっています。続く圧縮行程では吸排気バルブとも閉じられ、燃焼室は密室となり圧縮が効率的に行なわれます。

4サイクルを成立させる上で重要なのが吸排気バルブ。

燃焼行程では、高圧縮で高温になった混合気にスパークプラグが着火することで、後に解説するピストンが押し下げられることでパワーが生まれます。このときも吸排気バルブは閉じられたままです。排気行程では、排気バルブが開き燃焼が終わった後の燃焼ガスをピストンの上昇によりエンジンの外に排出する際に開くようになっています。

このように4サイクルエンジンでは、吸排気バルブを効率的に開閉することが必要ですが、それを動かすためのパーツがカムシャフトです。棒状の金属にカムが作られており、それが回転することによりバルブを押し下げたり解除したりして開閉します。当然カムシャフトが回転するにも動力が必要ですが、「カムシャフトがなぜ動くか?」は後に説明します。

シリンダーブロック内はパワーの源であるピストンがある。

ピストンは数トンの燃焼圧力を受ける重要パーツ

次にエンジンの土台ともいえるシリンダーブロックを見てみましょう。中にはピストン、コンロッドなどが内蔵されています。シリンダーブロックの下部にはクランクケースがあり、その中にクランクシャフトが内蔵されています。

燃焼行程では数トンにも及ぶ燃焼圧力が生まれ、それを直接受けるのがピストンです。強度が求められるのと同時に、エンジンレスポンスを良くするために軽さも求められる重要なパーツです。ピストンも細かく見るとピストンリングというパーツがはめこまれています。3つのリングのことが多く、上の2つはプレッシャーリングと呼ばれ気密性を保つ役割を持ち、一つはオイルリングと呼ばれ、オイルをかき落とす役割を持っています。

ピストンが受けた圧力は、コンロッドを介してクランクシャフトに伝わる。

ピストンはコンロッドを介してクランクシャフトにつながっています。コンロッドは地味なパーツではありますが、ピストンの上下運動とクランクシャフトの回転運動により、上下左右に激しく動かされるためにやはり十分な強度が必要なパーツです。

下方でコンロッドとつながるクランクシャフトは、エンジン最下部のクランクケースの中にあります。高速回転するパーツでこれも高性能が求められるほど強度と軽さという相反する要素が求められるパーツといえます。最終的にはクランクシャフトの回転がトランスミッションに伝えられて、続いてデフの中のファイナルドライブギヤから駆動輪へとパワーが出力されることになります。

ピストン運動が回転運動になるのは、自転車漕ぎに似ている。

ピストン運動がクランクシャフトによって回転運動に変換されるということは、自転車漕ぎをイメージするといいかもしれません。膝がピストンでスネがコンロッド。足がクランクとなっているペダルを回します。つまり上下運動が回転運動となっているという面では同じなわけです。

またシリンダーブロックにはピストンが収まるシリンダー室が設けられています。現在、自動車のエンジンはほとんど水冷エンジンです。その場合は、冷却水が循環するためのウォータージャケットがシリンダー室のまわりを取り囲んでいます。これで一定以上にエンジンが加熱しないようにしているわけです。

クランクケースの下には通常オイルパンと呼ばれるエンジンオイルをためておく部分があります。ここに蓄えられたエンジンオイルはオイルストレーナーによって吸い上げられ、オイルギャラリーを通じて金属摩擦が生じるところや、強い圧力がかかる場所にオイル皮膜を作り、エンジンを保護しているのです。

エンジンの能力はアクセルとそれに同期するインジェクションによって制御される。

アクセルの役割はエンジンに入る空気をコントロールすること。

続いて、エンジン本体からは外れますが、スロットルバルブやインジェクターを見ていきましょう。エンジンはガソリンだけでは動きません。冒頭に空気とガソリンの混合気を圧縮し、スパークプラグの火花で着火してガソリンエンジンは動くと書きましたが、ガソリンは空気と適切な割合で混合することで良い燃焼を生むのです。

エンジンを動かすには最初にエンジンに空気を取り入れることが必要になります。これにはスロットルバルブが必要になります。アクセルを踏むとエンジン回転が上がることはわかると思いますが、これは基本的にはスロットルバルブを開いてエンジンに空気を取り入れているからです。

吸入された空気量に応じてインジェクターが燃料噴射する

スロットルバルブによって取り入れられた空気にガソリンが混ぜられます。これは直接的には吸気経路の途中や、燃焼室内に設けられたインジェクターが行なっていますが、総合的にはECU(エンジンコントロールユニット)によって指令を出された電子式インジェクションが行なっています。

始動時、加速時、巡航時など状況によって若干割合は代わりますが、完全燃焼する空気とガソリンの割合は14.7:1とされこれを理論空燃比(ストイキメトリー)といいます。燃料噴射量は、スロットルバルブの上流に設けられたエアフローセンサーを用いて感知しています。これは吸気量や温度をECUに伝え、インジェクションはその指令によってインジェクションから適切な量の燃料を噴射します。

かつてのキャブレターでは緻密さという点で難があった。

ちなみに昔のクルマはこの過程をキャブレターという装置で行なっていました。キャブレターだと、どうしても空燃比がアバウトになり、低回転に合わせると高回転が回らず、高回転に合わせると低回転では乗りづらい……というトレードオフの関係となりました。また触媒による排気ガスの浄化も上手く行かない面がありましたが、電子制御インジェクションにより緻密な制御ができるようになり環境性能の向上も果たすようになりました。

電子制御式インジェクションでは、アクセル開度も吸気量をコントロールするだけでなく、踏んだ量や踏み方、その時の回転数などによって、ドライバーがエンジンに何を望んでいるかを判断し、燃料が供給されるようになっています。そして混合気にスパークプラグが着火することによって、燃焼圧力でピストンが押し下げられエンジンが動くわけです。

エンジンが動き出すと、ガソリンがあるかぎり動き続けるのは?

先ほど「カムシャフトがなぜ動くか?」と書きましたが、実はこれもエンジンが動くことによって動かされています。ピストンが上下すればコンロッドで連結されたクランクシャフトが回転するのは先述のとおりです。このクランクシャフトはタイミングベルトやタイミングチェーン、あるいはプッシュロッドとよばれるパーツでカムシャフトを駆動するギヤとつながっています。これでカムシャフトが回転するわけです。逆に言えば、ガソリンが残っているけれどカムシャフトが動かなくなった……というようなことはエンジンが壊れない限りないわけです。

ここにDOHCやSOHC、OHVというような違いも出てきます。クランクシャフトの回転で1気筒当たり2本のカムシャフトを回転させるのがDOHCですし、1本ならばSOHC、カムシャフトがプッシュロッドを駆動させればOHVです。

DOHC、SOHC、OHVの根本的な違い。

簡単にそれらの違いを説明するならば、DOHCは2本のカムシャフト(吸気側シャフトと排気側シャフト)でバルブを開閉するので燃焼室の中心にスペースがあり、スパークプラグ位置を理想の位置に持ってこれたり、4バルブ化が容易といえます。4バルブにするのはそれだけ吸排気が効率よくできるからです。

SOHCは1本のカムシャフトのためにカム山のスペースの関係から2バルブから3バルブが限界という点があります。OHVは最近は余り見られなくなりましたが、カムシャフト本体がベルト駆動ではない分丈夫な反面、長いプッシュロッドを介してバルブを動かすために、高回転向きではないというデメリットなどがあります。

クランクシャフトの回転で駆動するということでいえば、エンジンの電装系を動かすために必要な電力を作るオルタネーターや、スパークプラグを順序良く点火させるためのディストリビューターなども同じです。卵が先か鶏が先か? というような話になってしまいますが、カムシャフトに限らず、エンジンは動き出すことによって動き続けるという面を持っているのです。

では、最初にエンジンを動かすために何が必要か? というと、セルモーターによって、強制的にエンジンを回転させて、最初の燃焼を起こさせているのです。ここでの動力は、バッテリーから供給される12V電源になります。

エンジン本体以外にも重要なシステムがある。

点火をするためには、本体とは別に「電気系パーツ」が必要。

エンジンには「良い吸気」「良い圧縮」「良い火花」の三要素が重要といわれます。ここまで吸気と圧縮については触れてきました。三つ目の「良い火花」に必要なのが点火系です。

エンジンはオルタネーターという交流発電機を動かしています。これはクランクシャフトの回転からベルトによって取り出されています。これが電装品を動かす電力やバッテリーに充電する役割と同時に点火のための電力の元を作っていますがこれだけでは不十分です。

イグナイターで電圧を上げ、ディストリビューターでスパークの順番を決める。

良い火花をつくるには、イグニッションコイルやディストリビューターといった電気系のシステムが必要です。バッテリーは12Vの電圧を発生しますが、それだけで点火に必要な電力をまかなうことは不可能です。そのためにイグニッションコイルやディストリビューターといったシステムが必要になります。バッテリーの電気はイグナイターとよばれるトランジスタで電圧を大幅にアップしイグニッションコイルから点火に必要な電気を生み出します。

そこで生み出された電気はディストリビューターという配電器が各気筒のスパークプラグに送ります。カムシャフトやクランクシャフトと連動したディストリビューター内部のローターが回転して、スパークプラグに順番に電気を送るのです。

まとめ

このように、一回の燃焼によって動き出せば、それぞれのパーツが同期して動いているのがエンジンです。最近は、いろいろな難しそうな新技術によって解説されることが多くなってしまったために、「エンジンは難しい」というようなイメージがありますが、原理的にはエンジンが発明された1800年代末と変わりません。そして基本がわかれば、現在のエンジンがどう進化しているのかも意外に簡単にわかります。エンジンの理解を深めることで、より豊かなカーライフが送れるかもしれませんね。

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