大人のスーパーカー「フェラーリ512BB」

かつてスーパーカーの中で、ヒーロー的存在だったカウンタック。そのライバルと位置づけられていたのはフェラーリ512BBでした。365GT4BBの後継として送り出された512BBの最高速度は302km/h。その公表された数値は365GT4BBと同じ強力な戦闘力をアピールしています。では、その実力はどうだったのでしょうか。

「カウンタックのライバル」2代目、512BB

最高速度「302km/h」。スーパーカーブームの中で、ライバルのカウンタックよりも2km/h速いと伝えられていたフェラーリ512BB。その発売は1978年。先代365GT4BBを引き継ぐ形での登場でした。

ランボルギーニにとって、フェラーリは目標であり、ライバルでした。その認識はフェラーリにも同じだったのでしょう。特に双方のフラッグシップモデル、カウンタックと365GT4BBは「最高速」争いも含めてのバトルだったのですが、時代の波がフェラーリに365GT4BBを勝負から引き下げることを求めました。それは排気ガス規制です。フェラーリは排ガス規制に対応するため、フェラーリ・365GT4BBの排気量を約600ccアップし4,942ccとし、圧縮比も9.2に高めることで対応しました。この排気量アップはほぼボアアップであって、365GT4BBのエンジンにボアを1mm、ストロークは7mm拡大したものでした。ただ出力は、365GT4BBの380hpに対して360hpとパワーダウンさせています。そしてフェラーリは同時にコストダウンのためFRPやマグネシウムのパーツをスチールやアルミニウムに置換しています。そのため車重は120kg近く重くなったと言われています。

※参考
【基本情報】
車種名:365GT4BB
デザイン:DEAセンター(現ピニンファリーナ)
販売期間:1973年〜1976年
乗車定員:2名
ボディタイプ:2ドアクーペ
エンジン:4,390cc180°V型12気筒
馬力:380ps/7,700rpm
変速機:5速マニュアルトランスミッション
駆動方式:MR
全長:4,360mm
全幅:1,800mm
全高:1,120mm
ホイールベース:2,500mm
重量バランス:45対55
最高速度:302km/h
生産台数:387台

512BB。その実力と持ち味

4,942cc、圧縮比9.2、ドライサンプ式に変更された12気筒DOHCをミッドシップに縦置きで搭載しています。この水冷V12気筒をミッドシップレイアウトしたのはフェラーリでは先代365GT4BB以来の2台目でした。ただ、このレイアウトを縦置きにすることは、室内スペースを狭めてしまいます。通常ならば、ホイールベースを延長すると言う対応が定石ですが、フェラーリにはポリシーとして「ホイールベースはできる限り短く」という考え方があり定石の手段は使えません。そこで、デイトナが水冷60度V型12気筒エンジンのバンク角を180度に拡大すること、そしてその下にトランスアクスルを配置する「2階建てパワートレーン構造」を採用して対応しました。このことでパワートレインの前後長は上下に逃され、縦置きミッドシップでありながら比較的広い居住空間を確保しています。ちなみに、このレイアウトは後継となったテスタロッサでも採用されています。

ただ、この2階建てのレイアウトは365GT4BBと同様にマイナスの材料を生み出しています。前後重量配分が365GT4BBでは40:60、512BBでは改善され45:55とアンバランスにしてしまっているのです。このリアヘビーな重量配分は、ハンドリングに影響を与えていますし、排気効率が良くないという指摘もあり、これはパワーロスを生んでいると言われています。

デイトナ以来受け継がれたアルミ製エンジン「ティーポF102」は、デイトナではカムシャフト駆動にチェーンが使わていましたが、365GT4BBからはタイミングベルトが使用されています。また、初期の365GT4BBでは、最高速度重視のハイギヤードだったですが、徐々に中低速重視の乗りやすいセッティングへと変更され、512BBではパワー自体を抑えたことで、よりGT色を強めています。ただ、不思議なことにカタログデータ上では365GT4BBから512BBまで一貫して「最高速度 302km/h」とされています。

また、512BBの名前ですが、フェラーリの通常命名規則ならば、数字は1気筒あたりの排気量が使われるのですが、このクルマの場合は「5」リットル、「12」気筒を意味しています。また、BBはBerlinetta Boxer(ベルリネッタ・ボクサー)つまり2ドアクーペ・ボクサーエンジンの意味になるのですが、2ドアクーペはその通りとして、スバルやポルシェのいう水平対向エンジンならば、向かい合ったピストンが中心線から左右対称に逆方向に動くことでバランスを取るようになっていますが、BBの場合は向かい合ったバンクのピストンが同じ方向に動く、単純にV型エンジンのバンク角を開いたもので、一般にはバンク角180度のV型エンジンとされます。

美しいボディ、それを支えるシャシー

■ シャシー
セミモノコック方式を採用し、スチール製のコックピットセクションを3本の楕円断面鋼管で組んだうえ、その前後は角断面鋼管によるサブフレームで構成しています。サスペンションは前後ともウィシュボーンとコイルで、リアは4本のコニ製ショックアブソーバを組み合わせています。また、ブレーキは4輪ベンチレーテッドディスクブレーキを装備しました

■ ボディ
365GTBBと同様のボディーは、後にフェラーリの車体名にも使われるセルジオ・スカリエッティ(当時、多くのコンペティションモデルの製作を手がけたボディ製作工場のオーナー)とイタリア最大のカロッチェリア「ピニンファリーナ」が共同制作したデザインで、流麗かつ低いスタイルをとっています。スーパーカーブームの頃には、カウンタックの猛々しさに比べ、幾分おとなしく見えたデザインですが、今ではむしろ落ち着いた雰囲気を醸し出していて、大人のスーパーカーとも言うべき優美さを漂わせています。このボディは鉄、アルミ、FRPで構成され、フロントスポイラーと側面には365GTBには無かったエアインテークが追加されています。フロントのボンネットフード、そしてリアのエンジンフードはカウル式になっていて、それぞれが車体のセンターから外側に向かって開閉する方式です。但し、大きく開くように見える前部ボンネットですが収納スペースは決して広くはありません。インテリアは365GT4BBに比べ大幅にグレードアップされていて、インパネ、そしてシートも本革仕様になっています。

ちなみに、この時期、フェラーリは製造のタイミングで仕様・部品がたびたび変えられています。そのため、車両ごとにエンジンや装備の仕様が微妙に違っています。

【基本情報】
車種名:フェラーリ512BB
排気量:4942cc
最高出力:360ps/6800rpm
最大トルク:46.00kgfm/3600rpm
駆動形式:MR
全長:4,400mm
全幅:1,830mm
全高:1,120mm
車両重量:1,400kg
重量バランス:45対55
最高速度:302km/h
生産台数:929台

512BBのマイナーチェンジモデル「512BBi」

フェラーリ512BBは、1981年に512BBiへとマイナーチェンジを行われます。最大の変更点は、ボッシュKジェトロニックインジェクションの搭載でしょう。この変更は排気ガス規制への対応もありましたが、スタート時などでの扱いやすさの向上という恩恵を与えることにもなりました。

エンジン自体は変更されていないものの、最高出力は340馬力/6,000rpmと365GT4BBに比べれば、40馬力、512BBと比較しても20馬力も減っています。この理由には更なる乗り心地の向上を狙ったことと、512BBに与えた「運転のしやすさ」を更に高めています。また、ボディ下部を占めていたブラックのカラーリングが廃止され、全体を一色で染め抜いたスタイルに変更されています。

ここで315GT4BB、そして512BBに比べて22km/h低い280kmに低下した数値が公表されましたた。

【基本情報】
車種名:フェラーリ512BBi
製造国:イタリア
販売期間:1981年〜1984年
乗車定員:2名
駆動方式:MR
変速機:5速MT
ボディタイプ:2ドアクーペ
エンジン:4,942cc180°V型12気筒
最高出力:340HP/6,000rpm
最大トルク:46.0kgf·m/4,200rpm
生産台数:1007台

何故か「悪役」と見られる512BB

1/24 サーキットの狼シリーズNo.11 フェラーリ 512bb 謎の極悪コンビ

¥1,963

販売サイトへ

その理由はスーパーカーブームの火付け役であり、子どもたちにとってはスーパーカーのバイブル的そんざいだったコミック「サーキットの狼」の影響が少なからずあったと思います。

この中でフェラーリ512BBは、突然現れてはスポーツカーをクラッシュに追い込む2台のスーパーカーのうちの1台として登場します。もう1台はランボルギーニ・カウンタックだったのですが、この時期には既にスーパーカーブームを支えた子どもたちは、かなりの情報量を持っていて、カウンタックは「ヒーロー」となっていました。これに対して、フェラーリ512BBは数字の上でも、ランボルギーニ社創設に関わるフェラーリとの関わりあいが知られていました。そこにサーキットの狼の影響もあって512BBには「悪役」のイメージが染みこんだのかもしれません。

ただ、当時「512BBよりカウンタックの方が良い」とカウンタック派だった人たちにとっても、512BBは特別な目線で見ていた人たちには特別な思いを持って見られる車両ですし、当時はスーパーカーブームに積極的に関わることの無かった女性にとっては、美しく、魅力的な「大人のスーパーカー」という目線で見られるクルマになっているようです。そのため、中古車の価格も非常に高いものになっているようです。

実車を見たければ、ココに行け!

ここまで書いてきたフェラーリ512BBですが、街なかで見つけることは非常に難しいクルマです。いろいろ調べてみましたが、2つの施設でフェラーリ512BBを観ることができますし、那須PSガレージはカーミュージアム・カフェというべき施設で、入場料の代わりに飲食が必要で、512BBの他にも多数のスーパーカーやミリタリー系車両が見られます。そしてもう1つはサーキットの狼ミュージアム。こちらは、フェラーリ512BBiを含め、サーキットの狼に出てきた様々なスーパーカーを観ることができます。

【基本情報】
スポット名:
所在地:〒325-0304 栃木県那須郡那須町高久甲5755-7
電話番号:0287-63-2285(代)(※カーナビは0287-62-3200 とりっくあーとぴあ迷宮館が便利)
営業時間:11:00~17:00(L.O 16:30)
休業日: 月曜日・火曜日(冬期は変動するため、公式サイトにて確認ください)※定休日が祭日の場合翌日が定休。季節や天候により変更あり
料金:食事代にて

【駐車場】
あり

【アクセス】
東北自動車道 那須インターチェンジより約10分

那須PS「512BB」紹介

【基本情報】
スポット名:池沢早人師・サーキットの狼ミュージアム
所在地:〒314-0133 茨城県神栖市息栖1127-26
電話番号:0299-95-5550
営業時間:10:00~16:00
休業日:月曜日〜金曜日(祝日は営業)
料金:大人 800円、小中高校生 400円 ※保護者同伴の小学生未満は無料

【駐車場】
あり

【アクセス】
東関東自動車道 潮来インターチェンジより約15分

サーキットの狼ミュージアム

まとめ

最近では、2009年にF1チャンピオンにも輝いたジェンソン・バトンが自身の所有するオークションで "売り" に出したことでも話題になったフェラーリ512BB。その時の予想落札価格は9万〜11万ポンド、日本円にすれば約1,200万円〜1,460万円と言われています。ただ、日本の中古車市場では、これよりかなり高い価格で取引されている様子。それほど日本での人気が高いと言えるでしょう。ちなみに、バトン曰く「F1ドライバーとして多忙な中では充分に楽しめないから」と言っているようです。充分に愉しむためには庶民には高値の花ではありますが、中には「芸術品として眺めているだけでも」という人もいるかもしれませんね。

美しさのためにも、様々な努力がされた512BBは1981年に生産を終了し、テスタロッサに道を譲りましたが、テスタロッサだけではなく、その後のフェラーリやスーパーカーと見比べても遜色のない輝きをもつ、フェラーリらしいオーラを感じるクルマです。