【懐かしくなった独特の音】レアな存在になった2サイクルのエンジン仕組みを調べてみよう

「2サイクルエンジン」。どの自動車メーカーのカタログを見ていても見ない文字ですね。21世紀になってからのライダー諸氏も、既に聞き慣れないエンジンスタイルなのかもしれません。この2サイクルエンジン、実は以外な実力の持ち主なのですが、何故、自動車やモーターバイクで使われなくなったのでしょう? 今回、その秘密を探ってみます。

2サイクルエンジンのその仕組みとメリット

2サイクルエンジンは、4サイクルエンジンと同じ「レシプロエンジン」に分類されます。もう少し簡単に言えば、燃料を燃やした力をピストンに移し、それが回転へと変換される仕組みを持っているエンジンです。ロケットエンジンなど燃料を燃やした力が「噴射」として使われるタイプと区別されています。

そのレシプロエンジンとしての2サイクルエンジンの仕組みをまずは説明しますね。2サイクルと言う言葉の「サイクル」に注目して見てください。コレをエンジン用語として日本語にしてみると「行程」と訳します。「何の行程?」と言う方には、「ピストンを1回上下させる間に行われる行程の数」と答えましょう。エンジンにはシリンダーと呼ばれる燃焼室があります。この中でピストンを上下させることで回転に変えることがレシプロエンジンだと書きましたが、そのピストンが上下させるために2つのことをやっているのです。一つは、上昇させることでシリンダー内部にある燃料と空気の混ざった「混合気」の圧力を上げる行程です。これを「上昇行程」と呼びます。ということは「下降工程」が対になるのですが、この時には上がっていたピストンを押し下げるために、シリンダー内で混合気に電気プラグで作った火花を当てることで爆発させます。そして爆発によってピストンが下がり始めると、燃えつきた混合気はシリンダーの外に吐き出され、新しい混合気が吸い込まれます。この2つの行程で、ピストンが上下運動をを繰り返し、動力を生み出しているのです。

比較のため、4サイクルエンジンの行程も覚えておこう

簡単に4サイクルも説明しておきましょう。4サイクルは2サイクルが上下1往復の間でやっていた行程を4つに細分化しています。まず、最初にピストンを押し下げて、新しい混合気をシリンダー内部に吸い込みます。これを「吸気行程」と呼びます。そして下がったピストンを上に持ち上げてシリンダー内部の混合気を圧縮する「圧縮行程」を行います。そして、圧縮させた混合気を爆発させる「燃焼工程」が行われて、その圧力でピストンが押し下げられます。更に、この動きの反動で再びシリンダーの中をピストンが駆け上がり、燃え尽きた混合気を外に吐き出す「排気行程」が行われます。

このように、2サイクルエンジンではピストンの上下1往復で行程を完了させていたのに対して、4サイクルでは2往復で行程を完了させているのです。

2サイクル・4サイクルエンジン、それぞれのメリット

こうして、2サイクルと4サイクルエンジンを比較してみただけでは、どちらが良いのか悪いのかが分かりにくいかもしれません。そこで、それぞれのメリットを並べてみましょう。まずは2サイクルエンジンからです。
・比較的簡単な構造で作ることができる:コスト軽減、小型化がしやすい
・ピストンの上下運動1回で燃焼の力を得ることができる:高回転に一気に持ち上げやすい

これに対して4サイクルエンジンでは
・シリンダー内部で燃焼するのは燃料だけ:2サイクルエンジンでは部品の簡略化や構造上の問題でエンジンオイルを燃料に混入させた「混合燃料」が使われるのが一般的(オイルが消費が多い)
・燃焼によって得られた力を最後まで使い切る:2サイクルエンジンでは下降工程の途中で排気が行われるので燃焼で得られた圧力が外に逃げ出してしまう

ということが挙げられますね。

なぜ4サイクルエンジンに移行してしまったのか?

2サイクル、4サイクルそれぞれにメリットがあることは判りました。しかし自動車では1980年代、国産バイクでは1990年代、更にヨーロッパなどのバイクでも2010年代には4サイクルエンジンに切り替わってしまいました。その大きな理由は「排ガス対策」です。

先ほども書いた4サイクルエンジンのメリットの中に「燃料しか燃やさない」ということを挙げました。これは2サイクルエンジンにとってエンジンオイルを多く消費してしまうというデメリットの他に、排ガス対策が困難になってしまうということにも繋がっています。エンジンオイルが燃焼することで「PM」(微粒子)が発生することもありますし、4サイクルエンジンなら排ガス用のクリーナー「三元触媒」で対応窒素酸化物や一酸化炭素に対応していれば充分なところに、更に微粒子対策が必要になると構造が大きくなりやすいのです。

また、下降工程の途中で行われる排気の時に、構造上、新しい混合気が混ざりこみやすくなります。つまり、シリンダーの中に燃やされた古い混合気が残りやすくないのです。これは燃焼によって充分なパワーを引き出しにくくしますし、その「残留ガス」を全て排気しようとすると、今度は、新しい混合した新気(未燃ガス・生ガスとオイル)の一部も排気に送り込んでしまうことになるので、燃費の悪化を招きやすくもなります。このことで空気中に流出する有害物質の量が増えやすくなってしまうのです。

自動車・バイク以外でも排ガス規制への対応のため4サイクルエンジンが主流に

各メーカーともに、2サイクルエンジンの改良に挑んだのですが、世界的な潮流になった「排ガス規制」の強化をクリアするためにはハードルが高く、また4サイクルエンジンも小型化や性能の向上が進んできたため、自動車やモーターバイクの分野からは姿を消してしまったのですね。

更に現在では、モーターバイクと同様に2サイクルエンジンが多用されていた小型船舶(モータボートなど)でも排ガス規制が及んできたため、4サイクルに置き換えが行われました。また、チェーンソーや草刈機にも規制が行われています。当然、手持ちで使う機械なので小型・軽量にできる2サイクルエンジンの独壇場だったのですが、、マキタなどで4サイクルエンジンの小型化が進められ徐々に2サイクルエンジンを搭載している機械が減ってきています。

まとめ

「バイクは2サイクル、自動車は4サイクル」のような住み分けもあったのですが、今では原付エンジンも4サイクルエンジンが積める時代になりました。記事でも紹介したマキタの草刈機機用エンジンでは、2サイクルエンジンに比べ排気ガスの有害物質の量を90%削減し、厳しいアメリカの排ガス規制にも適応しているそうです。ただ、2サイクルエンジンの吹き上がりや甲高い音に魅力を感じる人も多く2サイクルエンジン搭載のモーターバイクの中古車の価格は比較的高値で安定しているとも言われます。

ノスタルジックな部分も多いのですが、一つの時代を築いたエンジンだけに、ただ消え去ってしまうのは惜しい気もします。直噴化やシリンダー内の混合気の流れの解析技術向上などで、もしかしたら2サイクルエンジンが「クリーン2サイクル」として復権する日も来てくるれるのではないかと期待しています!