【ドラマで話題】ロケットエンジンの絶大なるパワーを産み出す仕組みとは?

ロケットエンジンは、とても大きなロケットを打ち上げるだけのパワーを産み出すために繊細かつ高度な技術を持った技術者たちの努力で創りだされていることが話題のドラマでも大きく取り上げられました。でも、実際にはどのような仕組みで動いているのでしょう? 今日は、そんな話題のロケットエンジンについて調べてみました。

自動車エンジンと全く違う見た目の「ロケットエンジン」

「ロケットエンジン」というと、種子島やアメリカ・ロシアの宇宙基地から打ち上げられる光景で、物凄い爆音と炎を上げながら空高く舞い上がっていく風景を思い出す方が多いと思います。そのエンジン部分だけを取り出すと、上の写真のようにノズルとたくさんのパイプの組み合わせで出来ていますね。ドラマの中でも、エンジン単体が映しだされていたのでご存知の方も多いでしょう。実は、ロケットエンジンを大別すると、「化学式」「電気式」「原子力式」の3つの方式があるのです。電気式は、既に宇宙空間にある人工衛星や探査機が使うタイプで電気を使って動作する方式。主に使われているのは化学式と電気式の2つ。原子力式は安全性や宇宙条約の関係で使われていません。そして、今日は打ち上げシーンでお馴染みの化学式について書いていきます。

宇宙ロケットもロケット花火と同じ「原理」

先ほど書いたロケットエンジンの3つの種類に共通するのは、炎や噴射剤、あるいは原爆の爆発力を推進力に使うという点です。ニュートンの第三法則(つまり作用・反作用というやつですね)を使っているのです。なので、噴射する力で動けば「ロケットエンジン」とされるようで、外国ではジェットエンジンもロケットエンジンの一種にされています。ただ、日本では、特に今では化学式のエンジンがロケットエンジンと認識されているので、もう少し掘り下げましょう。

化学式には燃料によって2つに分類されています。一つは「固形燃料」というもので、もう一つは「液体燃料」を使っています。固体燃料の代表格、それは「ロケット花火」です。導火線を伝って火薬に着火することで炎が推進力になって打ち上がりますね、この原理が応用されているのが「固体燃料ロケット」です。
日本では、戦後のロケット開発でペンシル型やカッパー型などで宇宙ロケット用として研究開発が進められて、H-IIA、H-IIBのブースターとして、そしてイプシロンロケット2-AのメインエンジンとしてIHIが開発したSRB-Aが使われています。

軍用ミサイルに利用しやすい「固定燃料ロケットエンジン」

また、多くの国が持っているミサイルが使っているエンジンも固定燃料エンジンが採用されています。その理由は燃料の保存期間です。ミサイルは基地に置かれいつでも発射できるようにしておかなかればならないのですが、中身が個体で安定しているので特に大きなメンテナンスをしなくても、置いたままで発射ボタンさえ押せば打ち上げができるからです。

では、この固体燃料が何で出来ているのでしょうか。流石に宇宙や長距離ミサイルとなると花火の火薬では充分な推進力は得られません。そのため、「推進剤」と呼ばれる火薬が開発されています。この推進剤、第二次世界大戦の頃には(既にありました)ニトロセルロースとニトログリセリンをベースにしたダブルベース火薬を使用しています。実は日本でも戦争末期に「桜花」という特攻飛行機を開発していますが、この飛行機のエンジンにもダブルベース火薬を使用したロケットエンジンが使われています。

その後、コンポジット推進剤が開発されて今も使われています。このコンポジット推進剤の主要な材質は「合成ゴム」の一種です。そこにアルミなどを加えて推進力を強化しています。ところで、宇宙空間など酸素が極端に薄いところで、どうやって火を燃やすのでしょう。実は、固定燃料ロケットには、そのコンポジット推進剤に酸化剤というものを混ぜています。酸化剤は過マンガン酸カリウムや過塩素酸アンモニウムが使われていて、化学の授業に出てきた「還元」によって酸素を発生させ、コンポジット推進剤の燃焼に使われています。このため、酸素が全くない環境でも燃焼が可能なのです。

固定燃料ロケットエンジンの欠点

では、この固定燃料ロケットにデメリットは無いのでしょうか? 実はあります。一つは、ロケット花火も同じですが、一旦、燃焼を始めると止めたり推進力を制御することがほとんどできないのです。以前あった、NASAのスペースシャトル「チャレンジャー」の事故も、異常燃焼に対してストップできなかった事が要因だったとされていますし、ブラジルでも2003年に無人ロケットの打ち上げに失敗して20名以上が亡くなっています。

大型ロケットに使われる「液体燃料ロケットエンジン」

そして、もう一つの液体燃料ロケットですが、こちらは大型の宇宙ロケットのメインエンジンに使われていることが多いものです。こちらは推進剤と酸化剤を別々のタンクに入れておき、パイプを使ってエンジン燃焼室に送り込んで燃焼をさせます。

こちらのメリットは一つは、固定燃料と違って燃焼室へ送る推進剤と酸化剤の量を調整すれば、停止や出力の調整ができる点です。また、もう一つは「比推力」の大きさです。ロケットエンジンは、先ほど書いた「噴射」の力で動かす仕組みになっていますが、この噴射がどれだけのパワーを持っているかを示すために「比推力」という指標をつかっています。一般に、液体燃料の方が個体燃料よりも比推力は大きいとされているため、大型ロケットや、かつてのスペースシャトルなどを打ち上げるためのメインエンジンとして使われるのです。

液体燃料式ロケットエンジンのデメリット

ただ、この液体燃料式ロケットエンジンにもデメリットはあります。大きくは推進剤と酸化剤に起因する問題です。

推進剤は大きく分けて「ヒドラジン系」「ケロシン」「液体水素」が使われています。ヒドラジン系は、固形燃料と同様に長期の保存が可能なため、ミサイルに使われる事が多かったのですが、ヒドラジンがタンクなどの金属を腐食させてしまったり、更にヒドラジンがもつ毒性が問題とされました。実際、アメリカ空軍のミサイルでは大きな事故が起きていて、今では西側諸国で使われている例はほとんど無いようです。ただ、ロシアのミサイルには使われていて、その理由は固形燃料ロケットの開発が遅れたこと、また、ヒドラジンを安全に保管する技術開発に成功しているのではないかと言われています。

ケロシンはジェットエンジンの燃料にも使われているので入手しやすいメリットがありますが、酸化剤に液体酸素を使うため、次に説明する液体水素と同じようなデメリットがあること、また、比推力が液体水素よりも小さいことなどから大型ロケットエンジンには不向きと言われているようです。ただ、やはりロシアのことですが、ソユーズの打ち上げロケットはケロシンが使われています。

宇宙ロケットエンジンの主役は液体水素を使った液体燃料エンジンに

液体水素はケロシンと同様に酸化剤に液体酸素を使っています。比推力は液体燃料では最も大きく大型ロケットエンジンに使われることが多いのですが、反面、様々なデメリットがあります。一つは液体水素の保管がケロシンやヒドラジンよりも難しいことです。液体酸素もですが、非常に低温で保存しておかないと蒸発してしまいますし、極低温の環境にあっても僅かずつですが気化してしまったり、漏れだしてしまうのです。そのため、時間の経過とともに目減りしてしまいますから、常に補給し続ける必要があります。また、外に漏れだした液体酸素・水素は空気の水分を凍らせてロケットに付着してしまいます。そのためにロケット本体の重量を増やすことにもなります。更に極低温の環境によって金属が劣化することもあります。

それでも比推力のの大きさや比較的安全性が高いことから、大型ロケットエンジンは液体水素を推進剤は、液体酸素を酸化剤としたコンビネーションが主流となっています。

まとめ

ただ、どのロケットエンジンもほとんどが「使い捨て」です。ドラマで血の滲むような製作現場を見ていると、「もったいない」と言われそうですが、その方が実は効率が良いのだということです。というのは、スペースシャトルが使っていたSRB-Aというエンジンは繰り返し使用が可能なエンジンで、スペースシャトルが退役した今でもNASAで将来の利用を考え厳重に保管されています。しかし、繰り返し使うために構造が複雑になった上、メンテナンスの費用も莫大にでした。そのことがスペースシャトル計画を早期に終了させる引き金になったとも言われているのです。確かに莫大なコストのかかるロケット製作ですから、できるだけ再利用をした方が無駄がなさそうですが、実際にはかなり難しいというのが結論になっています。