ルリ子の試乗日記~赤のフェラーリは成功者の証~【F430スパイダー】

東京の街を彩る高級車のように美しいルリ子。車をこよなく愛する彼女は最高の助手席を求めて試乗をかさねる。たどり着く車はいったいどんな高級車!? 彼女の日記を少しのぞいてみましょう。

フェラーリ王子

「こんばんは、今日もとっても可愛いね。」
赤いフェラーリF430スパイダーからスマートに出てきた男とその車が今回のターゲット。フェラーリ王子の異名をもつこの男性は、ランキング大好きな雑誌『西洋経済』の読者が選ぶ『東京で最も結婚したい独身男性』の一人だ。
大学を卒業して、そろそろ「彼氏、代理店だからいろいろコネが使えるの♡」というだけで羨望を得られる時期は過ぎたし、そろそろワンランク上を目指さなきゃと思っていた矢先、読モ仲間が開くパーティで出会ったのが彼。車の話で盛り上がり、「今度食事行かない? 車で迎えに行くから」とトントン拍子に話は進み、デートの約束を取り付けた。

乗っている車を聞いた時、ルリ子はなにがなんでも乗りたいと思った。
フェラーリF430。ヒルズ族が盛り上がっていた頃、私はまだ高校生だったけど、ヒルズ族がこぞって乗っていた360モデナにドキドキしてた。その正当な後継車であるF430はピニンファリーナのフランク・ステファンソンがデザインしただけあって、360の優雅さを引き継ぎつつも、さらに上品なデザインとなっていて、あの頃よりも少しだけオトナの街に進化した六本木によく合う。
F430の助手席であれば、あの頃の憧れを現実にできるはずだ。

学生時代、学業もそこそこに車関係のコンパニオンに明け暮れたのは、いい男に出会いたかったわけでもチヤホヤされたかっただけでもない。車が好きだった。小さい頃友達がお人形遊びに夢中なのに対し、トミカを集めスーパーカーが載っている本をねだった。カッコいいと思う車はいつもなぜか高い車だった。
「パパの車はなんで国産車なの?」と言ってパパを泣かせ奮いたたせたのもパパのいい思い出らしい。

エスコートされ乗り込む助手席。
エンジンがかかるだけで明らかに他の車と違う乾いたエギゾーストノート。ちょっと踏み込むだけで一気に咆哮へと変わるこの音はとっても甘美的。5,000回転を超えたあたりから音がまた変わってくる。もっとずっとこの音を感じていたいと思っていたが、F430で走るには首都高は短すぎる。すぐに飯倉ランプで降り、六本木のビル群に入っていく。
様々な高級車が行きかうこの街の中でもひと際目に付くこの車。私は少しだけあの頃のドキドキを感じることができた。

Diane von FurstenbergのワンピにChristian Louboutinの靴、ペディキュアは車に合わせて赤にしてきた。
ペディキュアを彼に今日見せるかはまだ考え中だけど。成り行き次第ではそれでもいいかな……。もったいぶらせるなんてモテない女のすることよ。イイと思ったら、男も服もまず試着から、選ばれる立場じゃなくて選ぶ立場でいなくちゃ。

「ちょっと、寄りたいとこあるのだけどいい?」
LOUIS VUITTONで降りた彼は大きな紙袋を持って車に帰ってきた。
「新作のコートを取り置きしていてね。」

そういえば、前回も今回も身に着けているものほぼヴィトンだ。しかもわかりやすくロゴが入っているものを好み過ぎるようで、同じブランドで揃えているはずなのにどこかちぐはぐな感じがする。

イルミネーションが綺麗だ。年齢を重ねるごとに見える景色の違う街だとつくづく思う。17歳でこの街ではじめて遊んだときはなんて汚い街だと思った。
純粋な心はこの街の豊かさにある黒いものを感じ取っていたのかもしれない。

「着いたよ。」
そう言って案内してくれたのはグランド・ハイアットのエントランス。彼の車は駐車場ではなく、エントランス止め。
会社も近く、車でのアクセスがしやすいので食事はもっぱらホテル利用らしい。最近ではもうここに住んでしまおうかとホテル暮らしも検討しているらしい。
少し薄暗い店内のカウンターの中には野菜が市場のように並べられている。隣の席は外国人で気兼ねなく話しをすることができた。

そつのない接客、彼にあわせてアルコールは含んでないが、アワビに舌鼓をうち、仕事の話や美味しいレストランの話題などでだんだん距離が近づいてきたころ、
「読モやっているみたいだけど、大きなミスコンに出てみたらどうかな、年齡的にはギリギリ間に合うと思うよ。昨年は僕の仲間が応援していた子がなったんだ。」
そう言った彼は、その子を応援するために仲間がコネやお金をどれだけ使ったのかという話を存分にしてきた。はじめは「すごいですね!!」とお決まりの大袈裟ポーズをとりながら聞いていたが、あまりにも延々続くその話に適当な相槌になっても、彼はそれに気づかずその話を彼は延々と続けた。

そう、フェラーリ、全身ヴィトン、ホテル暮らし、中学生が描くような成功者の王道を突き進む彼にとってほしいのは、広報の仕事をしている読モではない。もっと有名でなければいけないし、そして既に有名であってもならない。会社を大きくしたように自分が有名にしてあげる子を探しているのだ。
決して悪い人じゃないけれど、プリティ・ウーマンごっこに付き合ってあげられるほど自分がないわけじゃない。

この人は自分にある少しの劣等感をなにかで埋めようとしている、今日のデートのはじめに感じたちぐはぐさが彼の内面を表しているようだ。

私には赤のフェラーリの助手席はちょっと窮屈だった。
確かに、パッと目を引くデザインも羨望のまなざしも嫌いじゃないけど、お金だけあれば言いなりになるほど私は若くない。
「もう少しおしゃれな人の車に次は乗ってみたいな。今度のペディキュアは何色にしようかな」って考えながらデザートを食べた。

次回は『黒のベンツGクラスはおしゃれ上級者の証』