ディーゼルエンジンの構造。高圧縮の空気に軽油を噴射して動くのがポイント

ディーゼルエンジンは軽油を燃料としています。軽油はガソリンに比べて着火点が低いことをうまく利用するために独自の構造を持っています。スパークプラグがなく、基本的にスロットルバルブが不要などシンプルなシステムなのも特徴です。最近ちょっとお騒がせな? 面もありますが、そのへんも含めて見ていくことにしましょう。(飯嶋洋治)

ディーゼルエンジンは軽油を燃料とするのが特徴

空気を圧縮し、着火点の低い軽油を噴射して動く

ディーゼルエンジンの構造を知るにはガソリンエンジンの構造を比較するとわかりやすいでしょう。一見、大きな違いはないように見えます。ただ、ちょっと注意してみると、ガソリンエンジンには必ずあるスパークプラグがないことがわかります。これはディーゼルエンジンが軽油を燃料としていることに関係があります。

ガソリンエンジンはガソリンを燃料として、空気の混合気を圧縮してスパークプラグで着火します。逆にいえばスパークプラグがないと着火(燃焼)できないわけです。ディーゼルエンジンが空気を圧縮してそこに燃料である軽油を噴射することで着火することが可能なのは、軽油がガソリンより着火点が低いためです。

燃料噴射で着火するためには、ガソリンエンジンの倍近い圧縮が必要

とはいっても、燃料噴射だけで着火するには空気をより高温にすることが必要で、ガソリンエンジンより強く圧縮することが必要になります。圧縮比は17から20となり、ガソリンエンジンの倍近くになります。高い圧縮比に耐えるために、エンジン各部の強度の確保が欠かせません。このような構造にすることにより、始動時にグロープラグを使用する以外は、空気の圧縮と燃料噴射だけで動き続けます。

高い圧縮比に耐えるための頑丈な作りが要求される

丈夫にするということが必然的に各パーツが重くなりますから、エンジン本体が重くなり、騒音も大きくなり高回転には適さない傾向になります。このためにかつてはトラックやバスという大型車を中心に用いられていたこともありますが、現在はその様相も大分変わってきました。これについてはのちにもふれます。

アクセルペダルは吸気ではなく、燃料噴射をコントロールする。

もう一つ、外からではわかりませんが、大きな構造的な特徴としてガソリンエンジンのようにスロットルバルブを持たないことがあります。ガソリンエンジンでは、アクセルペダルでスロットルバルブをコントロールし、入ってくる空気の量に応じた燃料を噴射することになりますが、ディーゼルエンジンは空気をコントロールしないため、どんどん入ってきます。ディーゼルエンジンでのアクセルは基本的には燃料噴射量をコントロールするものなのです。

スロットルバルブがないということは、吸気抵抗が少なくなりポンピングロスを減らすことができるということでもあります。これは大きなメリットです。エンジンは見方を変えると、空気が出入りするポンプという見方ができます。ガソリンエンジンの低回転時のようにスロットルバルブで吸気を絞ってしまうと、そこに吸気抵抗が発生してせっかく発生したパワーをロスしてしまいます。

ポンピングロスが少ないために、エネルギーを効率的に使える。

たとえれば空気の入り口の大きさが違う注射器を用意して、ブランジャーを引っ張ってみると、入り口が小さい方がより大きな力が必要なことと同じです。これは大きな問題で、解決のためにBMWが採用しているような吸排気バルブを電子制御で精密にコントロールするバルブトロニックなどの機構が開発されてきましたが、コスト的にも高いものとなり、どのクルマにも採用するというわけにはいきません。

地球温暖化につながるCO2の排出削減にはつながるが…

CO2は減らせるがNOxの排出で最近話題に。

ディーゼルエンジンでは、最初からポンピングロスの問題がないために、エンジンとして効率が良いということが言えます。ロスが少なければ燃費も良くなりますからCO2(二酸化炭素)排出量も少なくなり、現在、喫緊の課題となっている地球温暖化防止にも一役買うことになります。

ただし、空気がたくさん入ってくると、低温では燃料との混合が難しくPM(粒子状物質、スス)が発生しやすく、高温ではNOx(窒素酸化物)の濃度が高くなりやすいという問題もあります。NOx排出は、先般フォルクスワーゲンの不正が発覚し、この問題を解決する難しさも浮き彫りにされました。これはディフィートデバイスという装置を用いることにより、排気ガステスト時だけ、NOxの排出量を低減するというものでした。

NOxは光化学スモックなどの大気汚染の原因となる。

燃焼温度が上がればNOxは増えることになります。これは完全燃焼しているということでエンジン性能という面から考えれば悪いことではありませんが、光化学スモッグや酸性雨の原因となります。そこで尿素SCRという尿素を反応させて、排気ガスを浄化する方法などがありますが、これらの改善はさらに求められることになるでしょう。

ちなみにマツダのスカイアクティブ-Dと呼ばれるディーゼルエンジンでは、尿素などでの後処理を行なわずにエンジン本体でNOx排出量を減らす工夫がされています。これが可能となったのは、ディーゼルエンジンとしては低い圧縮比として燃焼温度を下げたことがあります。

こうすると、エンジン各部の強度が従来のディーゼルエンジンほど必要なくなりますから軽量化にもつながり、エンジン自体の軽量化や騒音の低減にもつながります。反面、低圧縮による始動性の悪化や半失火という現象が起きますが、緻密な燃料噴射制御技術によりフォローしています。

新技術が採用されることにより小型ディーゼルもつくられるようになった

「頑丈だけどうるさい」は過去のイメージになりつつある。

軽油はインジェクターにより高圧縮にしてシリンダー内に軽油を直接噴射する方式が一般的です。現在では、コモンレール方式と呼ばれるシステムが採用され、さらに進化しました。コモンレールとは高圧となった軽油をいったん蓄えておく部品といえます。エンジンコンピューター(ECU)が適切な燃料の噴射時期や量を判断し、コモンレールにストックされた燃料で、きめ細やかに燃料噴射するのです。インジェクター本体も、状況に応じた精密な噴射ができるように改善されてきました。

ヨーロッパを中心に乗用車でもディーゼルエンジンが主流となってきました。これはコモンレールのような燃料噴射装置の進化があったことや、排気ガスの浄化システムの改善、静粛性を高める技術の進歩があったからです。先に触れたスカイアクティブ-Dでは、低圧縮としたために、パーツの軽量化が可能となり、ガソリンエンジンに近い静粛性をもつことができました。

まとめ

フォルクスワーゲンの事件により逆風が吹いているディーゼルエンジン。しかし、ダメな技術と決めつけるのは早計のように思います。安価な軽油を燃料とできる構造を持つこと、燃焼効率がよく燃費が良いということは、CO2排出量やエネルギー資源の有効利用という面からも有効なのはかわりがありません。原油から重油を作る過程の中で、ガソリンと軽油は必然的にできていきます。その軽油を使わないということはもったいないことです。これからの技術の進歩により、さらにクリーンなディーゼルエンジンの登場が望まれます。