一旦起これば「大事故」。すすめ!トラックの安全対策

当たり前のように聞く「トラックの横転により」「トラックの追突により渋滞」という朝の交通情報。また、ニュースでも原型を留めないほど、トラックが絡んだ事故は一般車両に比べて大きな被害が出てしまいます。そんなトラックに対する安全対策が様々な面で進められています。今日は、その内容を調べてみました。

トラック事故が与える様々な影響

ニュースの映像などで見るトラックが関連した交通事故。追突などで潰れた一般車両や、破壊された家屋など、トラック以上に相手側の損害が印象に残ります。一方、トラックの多くには「荷主」の存在があります。以前は一つの荷主から、届け先に運搬すれば終わりでした。言ってみれば、道路を走るトラックの半分は積み荷がある状態でしたが、半分は空荷になっていたのです。しかし、物流システムの効率化や合理化から、共同荷主などで、複数の荷主からの届け物を複数の届け先に配送し、スペースが明けば新しい荷物を積むというように、常に貨物積載をした状態で走っている状態です。

こうなると、事故としての対物、対人の問題と同時に荷物への責任が以前よりも高くなっているのが実情ではないでしょうか。

更に、部品配送などでは、定時までに定量の荷物を運ぶことが義務化してきているため、事故の当事者の荷物が配送が遅延したり、あるいは、その余波で起きる渋滞から様々な生産現場にも影響を与えてしまうという実態があります。

こうなると、トラック事故とは直接関係しない人たちの業務や生活にも影響を与えてしまうということになってしまいますね。それだけ、トラック輸送の現場にいる人たちには重大な責任と、そしてプレッシャーが掛かっているということになると思います。

逆に、トラックドライバーの立場で考えれば、事故による自分への信頼の失墜もありますが、トラックの多くが会社などからの借り物です。場合によっては弁済を求められたりすることもあるようです。

普通車を運転している立場からは、トラックの荷台が陰になって前方視認性が落ちたり、あるいは巨大な車体に圧迫感を感じてしまいますが、そういった観点で考えると私たちの生活の基礎になるロジスティックスを担う重要な「働くクルマ」なのです。

トラックはロジスティクスの中核

また、自動車としての登録台数のうち、トラックは2割しかありません。以外に少なく感じませんか? 道路を行き交うクルマをなにげなく数えてみれば、多分、もっと多いことがあると思うのです。その原因はトータルでの走行距離だと思います。実は2割のトラックが、殆どの登録台数をしめる乗用車と同じだけの距離を稼いでしまっているのです。だから、道路を眺めているとトラックが多く感じられるのです。もっと単純に「大きいからでしょ」と思っていたのですが、数字でハッキリと出ているのですね。

その結果とも言えると思いますが、物流の主役は、かつて鉄道や船でした。でも今では陸送、トラックが中心になっています。さて、どのくらいの割合だと思いますか? 少し古い数字ですが、平成18年の統計では、全体の貨物トン数の91%がトラックによる輸送です。残りを船、鉄道、飛行機の順で分けていくという状態ですから、どれだけトラックに依存しているかが判るかと思います。

実際、3.11の東日本大震災でも、生産工場などが壊滅的被害を受けたこともありますが、トラックの走ることができる陸路、高速道路・一般道が酷い被害を受けたため、その改修もできず、また工場などは活動できるのに、材料が運べない・製品を運べないという状況に陥りました。そのため、東京などの消費側に位置する都市部では物不足になってしまったことを記憶されている方も多いと思います。つまりトラックは動くライフラインというのが実態なのです。

その一方で、一般ドライバーなどにはトラックが怖い存在にもなってしまいます。それはトラックの車体の巨大さと無関係ではないと思います。「10トントラック」と言葉にすれば簡単ですが、積み荷だけで一般車両7〜10台の重さがあるのです。大きければ大きい分だけ、もし事故になってしまえば大事故に発展しやすい言えますし、また、先ほども書いたように、後続車にとっては視認性を下げてしまったりするので事故を引き起こす要因になってしまったりもします。また、ライフラインが中断してしまうのですから、社会的な影響も大きいのです。

数字からみたトラック事故

では、そんなトラックが常に安全に走っているか? と問いかければ、残念ながら否定されると思います。実際に統計で見てみると、事業用トラック1万台あたりで起こしている死亡事故件数は4.5件。非常に稼働率が高いので当然と言えば当然なのですが、バス・タクシー1万台あたりの死亡事故件数が2.7件、自家用車の1万台あたりの死亡事故件数0.8件という数字で考えると、飛び抜けているという印象は否めません。(いずれも全日本トラック協会「トラックドライバーとしての心構え」を参照)。

死亡事故率が高いトラック事故

また、人身事故に占める死亡事故の割合を見てみましょう。すると、事業用トラックは人身事故1,000件あたり17件が死亡事故、自家用トラックであれば9.1件、バス・タクシーが2.3件とやはりずば抜けた印象を持ちます(前出資料を参照)。また、平成25年の国交省の統計では事業ごとに死亡事故の発生率を出しているのですが、事業車両での死亡者821人に対して、貸切バスは15件、乗合バスが34件、トラックは697件で約85%を占めてしまっています。それだけ、トラックでの事故が死亡に繋がりやすいと言えるでしょう。

更に残酷な数字を続けなくてはならないのですが、トラック事故での死亡原因の約6割が「衝突」によるものです。ハイヤーやタクシーでは約3割、バスが約4割ですから、やはり車体の大きさが要因になって衝突の衝撃による死者を生み出していると思われます。

故障や病気よりも「運転操作に起因する事故」が高い

では、この事故の原因が何によるかという側面を見てみます。大きく分けると、「車両による事故」「相手方運転手に起因するもの」「乗務員に起因するもの」とできます。この乗務員に起因するという内容は、運転ミスなどの「運転操作不良」、パニックなどの「乗務員の状態」、発作や発病などの「健康状態」、荷崩れなど「積載物」などに細分化されるのですが、殆どの事故は「乗務員に起因する」に仕分けされ、更にトラックはバス、ハイヤー・タクシーの合計よりも遥かに多くの事故を起こしていることになります。

また、平成25年に起きた事業車両による踏切事故の統計もあります。乗務員に起因する事故だけで9件あるのですが、そのうちバスは0件なのに対し、ハイヤー・タクシーが3件、トラックは6件と車両数が多いこともありますが、やはりトップになってしまいますし、その事で不幸にして死亡された方は無かったのですが、一名の重傷者を出しています。

突出する「追突事故」割合

では、もう一度、衝突事故について見なおしてみます。衝突事故も細かく分類すると「正面衝突」「側面衝突」「追突」「接触」「物件衝突」とがあります。乗合バスの場合を見てみると長い車両が影響しているのか、側面衝突の割合が最も多く約34%になり、追突は約21%です。ハイヤー・タクシーの場合は、意外に側面衝突が多く約55%、次いで衝突事故が約17%、追突事故は約10%です。これがトラックになると一変します。側面衝突は約22%、正面衝突が約11%なのに対し追突事故が約56%と追突事故が図抜けて増えるのです。実は、この傾向は貸切バスにも見られて、側面衝突が約10%、正面衝突が約5%に対して追突事故が60%にもなります。

車両の「不具合が原因の事故」は少ない

この乗務員起因とされる事故と様子が変わってくるのが「車両起因」の事故件数です。最も多い故障原因はエンジンなのですが、乗合バスが485件に対してトラックは52件、貸切バスでも85件が発生しているので、かなり低い数字です。その割合は他の部品にも、ほぼそのまま当てはまっていて、トータルで見ると乗合バスが1,922件の車両起因事故を起こしているのに対して、貸切バスが269件、トラックは更に少なく241件と、整備や車両設計による問題は少ないと言えるでしょう。

「事故防止」のための政府と業界の取り組み

さて、ここまで書いてきたことだと「トラックは怖い」というだけになってしまいますね。でも、最初に書いたとおり、トラック輸送は今やライフラインです。無くてはならない存在のトラックが安全に運行するため、いろいろなところで事故防止策が考えられています。では、具体的にどのようなことが対策として考えられ、実行されているかを見てみましょう。

全日本トラック協会の改善活動

国、国交省と協力する形で安全対策を進めているのが全日本トラック協会です。あまり聞き慣れないなまえですが、日本の運送会社で構成されている業界で47都道府県単位に支部を持つ(北海道は7支部に分かれています)トラック業界の「親玉」的な存在です。この活動は、「トラック運送事業の適正な運営、健全な発展の促進」、「公共の福祉に寄与するための事業の発展」、「事業者の社会的・経済的地位向上と会員間の連携・協調の緊密化」とされていて、当然、トラックが安全に走るための指針や対応を行っています。

10年で死者を半減させよう「事業用自動車総合安全プラン2009」

先ほど、国と協力してと書きましたが、これは国交省が2006年3月に策定した「第8次交通安全基本計画」から説明しておいた方が良いかと思います。この内容は、2010年までに交通事故死者数を5,500
人以下、交通事故死傷者数を100万人以下にすることが目標とされていました。ところが、交通事故死
者数は2008年の段階で5,155人と2年も前倒しで目標達成がされたました。
全日本トラック協会でも、2006年度に自主的な交通安全対策と数値目標を掲げ、更に実現のための具体的な対策、行動指針を「交通安全対策中期計画」として取りまとめを行いました。結果として、この数値目標は達成されているそうです。

そこで、政府は新たな目標設定を行っています。それが、「事業用自動車総合安全プラン2009」と呼ばれるもので、2009年1月5日に発表さたのですが、その内容は、10年間を目途に
・交通事故死者数を2008年から半減させて、2,500人以下とする
・事業用自動車の交通事故による死者数を10年間で半減させる
・事業用自動車による人身事故件数を10年間で半減させる
といったものです。また、中間年として5年後の数値目標も合わせて設定されています。

事業用自動車、つまりトラックなどを考えた時には、2008年の死者数517人は10年後に250人以下、中間年の時点で380人以下、人身事故数は2008年の56,305件に対し、10年後に3万件以下、中間年である中間年の5年後には4万3千件以下を達成することが目標とされています。

事業用自動車総合安全プランの「中間改善」

実際に2013年の時点で中間年を迎えているため、その目標に対する状況や施策の実施状況や見直し(改善)などが公表されているので、その内容を見てみましょう。

まず国交省の方針ですが、これまで、業界の安全体質の強化・コンプライアンスの徹底・飲酒運転や危険ドラッグなどの使用根絶・ITや安全技術の活用・道路環境の改善が謳われていましたが、ここに新たに、「運行の現場を含めた関係関係者一丸となった行動、構造的な課題への対処」として幾つかの施策が追加されました。
・業界による主体的な事故分析、必要な対策の検討・実施
・若手を質の高い運転者へ育成し、確保しつつ、高齢の運転者へも運転特性を踏まえた指導
・「事業用自動車事故調査委員会」による事故要因の調査と再発防止策の提言、対策の実施
・運転者の体調急変に伴う事故を防止するための対策
・適正運賃の収受、荷主勧告制度の実効性を確保
となっています。

実効性が低かった「荷主勧告」制度

これに対応して全日本トラック協会としての対策が打ち出されています。

対策の主だった内容にはトラック業者やドライバーによる安全対策が記載されているのですが、それと合わせて荷主など社会全体の理解と協力も期待する姿勢を打ち出しています。実は、ここは大きなポイントだとおもいます。

まず、業者やドライバーだけでは改善には限界があるということを自覚していること、そして、国交省が「適正運賃の収受、荷主勧告制度」を明記したことなどから、荷主側にも「客と業者」という力関係で「言われたことに従う」という姿勢から、法律に従った対応を行うよう求めているのです。

これまでも荷主勧告制度(トラック業者が行政処分などを受けた時に、その違反が荷主側の行為が原因・要因だと認められた場合、荷主に対して再発の防止を勧告する制度)はあったのですが、事業者の間では「制度があっても意味がない」と言われていたそうです。実際、制度が施行されてから一度も勧告が行われたことがなく、客観的にも制度が機能していないと見られていました。

先ほど、トラックの事故の特徴に「追突の多さ」を書きました。一般的に考えた範囲なら、貨物も含めて重い車体が制動距離を延ばしてしまうことや、単調な運転が続き居眠りを起こしやすくなるなどが考えられます。が、そこに荷主側からのプレッシャーで、規定を超えた量の貨物が積載されたり、過重労働が行われていれば、危険度が増してしまうのは当たり前のことですね。

「荷主勧告」制度の強化

ところが、当初の荷主勧告の制度は「過労運転」「過積載運行」「最高速度違反」などの悪質な違反行為をがあっても、行政処分を行などを行う前に、第一段階は荷主に「一般的内容の協力要請書」を提示する必要がありました。言ってみれば、この段階では「協力してください」という紙が送られてくるだけです。そして、そこから3年以内に違反行為があれば「警告的内容の協力要請書」が提示され、さらに3年以内に違反を確認した場合に、やっと「荷主勧告」が行われるという仕組みでした。つまり、3ストライク目ではじめて「荷主勧告」だったのです。

これでは、どんなに悪質な違反が荷主の責任だと認められても、本来の処分には行き着きにくくなります。実際、「野放し」という表現も見られるほど、荷主が是正に前向きにはなっていなかったのです。しかも、2ストライク目の「警告的内容の協力要請書」ですら、年に1件あるかないかという状況だったそうですから、これでは、荷主勧告という命題は絵に描いた餅ですね。

今では、これが改正され、違反行為の内容によっては一発で荷主勧告が発動されるようになりました。つまり荷主が横暴な要求をしてきて事故が起きれば、即「荷主勧告」が行われることになるので、事前に荷主と事業者が交渉しやすくなる。つまりドライバーにとっても無理な運搬をさせなくて済むようになると期待されているのです。

荷主の社会的責任を強める「荷主勧告」

では、荷主勧告が行われると、荷主には何が起こるのでしょう。一番大きいのは、企業名やその事案の概要が公表されることです。ブラック企業が社員に対する横暴さで話題になりますが、この勧告を受けた企業はトラック事業者へのブラック企業として世間に名前が出ることになりますし、しかも、事故などを起こしているわけですから、信用を失ってしまうことは間違いありません。

トラック業界での安全対策の数値目標

では、トラック業界としての実際の目標を見てみましょう。
まず、数値目標ですが、
1. 2018年までに、交通事故死者数を220人以下へ
2. 2018年までに、人身事故件数を15,000件以下へ
3. 飲酒運転の根絶・危険ドラッグ等薬物使用による運行の根絶
としています。

この目標を達成するためには、死亡事故件数をトラック1万台当たり2件以下に減らす必要があります。そして、その目標を各都道府県のトラック協会に展開して、その後、死亡事故率の低い都道府県トラック協会で行った対策を他トラック協会に共有することで、ベストプラクティス化していく方針になっています。

「安全優先」の体質強化へ

全日本トラック協会では、「安全体質の確立」、「コンプライアンスの徹底」、「飲酒運転の根絶・危険ドラッグ等薬物使用による運行の絶無」、「 IT・新技術の活用」とに分け、それぞれの重点対策を掲げています。その内容は、
1. 安全体質の確立
・ 交通安全セミナーなどを通じ、事業者の意識の向上の定着を図る。
・ 「運輸安全マネジメント」として定められた指針を更に定着させて行くため、最低保有台数300台となっている適用トラック業者を更に広げ啓蒙活動を活発化する。
・ ドライバーに対し国土交通省や全日本トラック協会が作成したマニュアル活用を周知し、更に運行管理者の指導・監督が実効性を伴うようにする。
・ 国土交通省や全日本トラック協会が作成した健康管理マニュアルを活用し、心臓発作など健康状態が原因になる事故を防止する。
・国土交通省のメールマガジン「事業用自動車安全通信」の活用方法をトラック協会の広報誌などで周知する。
・研修施設にドライバーを派遣し安全教育訓練を実施するトラック業者に助成する。

「訓練」「マニュアル」ばかり。と思われるかもしれませんが、運輸安全マネジメントは国交省としても専門家を含めて協議している内容なので、ここで書かれている内容が守られないとトラック業界そのものが疑われる可能性があります。安全第一の運転が行われるように頑張っていただきたいですね。

ライフラインとして求められる「コンプライアンス」

2. コンプライアンスの徹底
・集荷・配達時間など法令違反をしてしまうような条件を設けないよう荷主等に要望し、安全運行を荷主、元請事業者と取り組む。
・「Gマーク」(貨物自動車運送事業安全性評価事業)を推進するため、行政機関などと連携して取り組む。
・全日本トラック協会に寄せられる危険行為や、迷惑行為に対する苦情に対応する。
・スピードリミッターの改造など不正な改造をやめさせる活動を実施。

先ほどの荷主の問題だけではなく、トラック業者、そしてドライバーが共同してコンプライアンスに取り組まなければ、何の意味も無くなってしまいます。一般ドライバーも危険運転を見たら「怖かったね」で終わらせるだけではなく、トラック協会などに知らせることで協力ができるかもしれません。

飲酒運転・薬物・危険ドラッグの撲滅

3. 飲酒運転の根絶・危険ドラッグ等薬物使用による運行の絶無
・ 点呼時にアルコールチェッカーの使用を徹底。
・ アルコール・インターロック装置の普及促進のため導入助成を行う。
・ 危険ドラッグ等薬物の啓発活動を推進。

始業前などの点呼で、健康チェックと同時にアルコールが残っていないかなどを検査するそうです。また、危険ドラッグの蔓延で一般車での事故が多発しましたが、トラック業界としても取り組みを進めていく必要があるということで、特に重点として書き記されています。

「テクノロジー」活用による安全対策

4. IT・新技術の活用
・ドライブレコーダやデジタル式運行記録計などEMS関連機器の普及促進を図る。
・ドライブレコーダ活用セミナーや、ドライブレコーダの映像を活用したWeb版のヒヤリハット集を充実させ、危険予知訓練(KYT)を促進。
・最も多い追突事故を防ぐためのセミナーを行ったり、後方視野確認支援装置を普及させるため助成事業を実施。
・エコドライブは事故防止に役立つため、「エコドライブ推進マニュアル」を活用し経営トップや運転者の意識改革を図る。

この点については、トラックメーカーも取り組みを進めていますので、のちほど書きましょう。

ドライバーと経営、そして業界の「協力体制」による安全対策強化

5. 運行の現場を含めた関係者一体となった行動、構造的な課題への対処
・事故情報の集計単位を1年から3カ月単位に短縮し、また車種別など詳細に分析することで、有効な事故防止対策の確立に向けて活用する。
・追突事故の防止の為のセミナーを開くほか、人対車両の衝突にフォーカスしたセミナーも開くことで、事故防止の意識を高める。
・トラック業者やドライバー向けの教育用教材資料を作成し、トラック業者の社内でも安全運転教育が実施できるようにすることで、安全意識の向上を図る。

先ほどの統計資料などを見ていると、トラックとしての特異な状況を素人でも簡単に認識できました。数字に表すことで、セミナーに参加するドライバーや経営者に対して意識を強める効果が高くなるでしょう。

6. 道路交通環境の改善
・計画通り運行しながら、安心して休憩場所と時間を確保するため、高速道路のサービスエリアやパーキングエリアの駐車スペースの拡充を要望する。
・トラック業者から事故多発地点や危険な場所の情報収集を行い、マップの作成や道路管理の運営会社や当局に改善を要望する。

この取組は一般ドライバーにもありがたいですね。オンシーズンのPA・SAの混雑は一般ドライバーにも辛いものですし、混雑によって渋滞が引き起こされることもあります。また、道路の危険箇所は普通車よりもトラックにとってはシビアなもの。その目線で改善が行われれば、一般ドライバーにもより安全な道路を使えることになります。

継続的な安全への取り組み

Plan-Do-Check-Action(PDCA)で、一つ一つの施策がを実施しながら改善していくということですし、各都道府県支部が実施した内容を共有し、効果的な方法を展開することで「良い方法」が進化していくことが期待されます。また、荷主勧告が機能することでトラック業者だけではなく、ドライバーの健康起因の事故を減らし、また睡眠不足から派生するドライバー起因の事故も減らす効果が出ると考えられます。

ドライバーに求められる安全対策

先ほどは、主にトラック業者に対する改善策、対応策を書いてきましたが、次は個別のドライバーに対する事故防止対策です。やはり安全対策の主役はドライバーです。そこで先ほど書いたマニュアルを抜粋した「トラックドライバーとしての心構え」という冊子に書かれているところから、事故防止に関連する内容を見てみました。ざっくりと言ってしまえば、内容は、非常に基本的なことが多いのです。しかし、プロだからこそ気をつけていただきたいですし、また、一般ドライバーも気をつけておくべきことが書かれているので、少しまとめてみます。

■ ドライバーの意識調査の結果から
健康管理:プロドライバーとして最も気をつけていることは、「十分な睡眠」と「食事」となっているが、健康の維持には、家族の協力も大切。安全なドライバーとは:約8割がブレーキに優れていることとしている。

■ トラックは走る広告塔
・他車の手本となるべき安全でマナーの良い運転を心がる
・大きいトラックは一般車両には恐怖の対象なのだから「幅寄せ」や「あおり」は絶対にダメ
・マナーの悪い運転は苦情が寄せられる原因になるのでダメ

■ 思いやり・譲り合い
・「交通ルール」は、最小限のきまり
・常に「思いやり」と「相手に譲る」という姿勢でハンドルを握る
・「強者は弱者を助ける」立場にたつ運転こそ大切である

■ 油断・過信をしない
・毎日通る道だからと油断しない
・わずかな緊張感の緩みが事故の原因
・運転に自信を持ちながら、運転がうまいという過信が「無謀な行為」の原因

■ 「急ぎ」や「あせり」・「いらいら」をおさえる
・スピード超過や、強引な追越しなど危険な運転に陥りやすくする
・他車の動きが遅感じて、全体の交通の流れに対する配慮ができなくなる
・急いだり、あせったりしたとしても、そんなに早く走れれない
・いらいらは、的確な判断力を失わせ、他車の運転が気にさわって仕返しに出がちになる
・事故を起こしたら何にもならないと考える

■ 健康保持のために心掛けておきたいこと
・夜更かし禁止(特に一人暮らし)
・食事は規則正しく(朝食は摂る)
・家族団らんで安らぎを
・悩みごとは早めに解決
・適度な運動で心身のリフレッシュ
・趣味で気分転換
・気持ちにゆとりを
・ストレスを持たず、イライラしない

また、始業前・後の点呼など、トラックドライバー特有の規定があるようです。
■ 乗務開始前
・病気や疲労など、安全運転にリスクの有無を申告
・運行前のトラックの点検の実施確認
■ 乗務終了後の点呼
・乗務に関連する自動車、道路状況の通告
■ 運行途中での点呼
・病気や疲労など、安全運転にリスクの有無を申告

この他にも、休憩や睡眠の地点や日時・事故や運行遅滞の概要などを記録しなくてはなりません。

一般ドライバーも心がけるべきことがずらりと並んだ気がします。トラックドライバー特有としたことも、体調不良でも無理して運転してしまったり、と個人として注意すれば良いことですから、決して「他人事」と思わずに守っていきましょう。

メーカーによるトラックの安全性向上への取り組み

衝突被害軽減ブレーキの義務化

乗用車へも搭載が進んでいる衝突被害軽減ブレーキ。トラックでは義務化が行われました。この仕組を簡単に説明すると、自動車が障害物や他のクルマを検知して衝突に備えるため、ブレーキを自動的にかけたり、アラームを鳴らして運転手に警告する装置などを組み合わせた仕組みです。このために、自動車にレーダーやカメラを搭載し、それをコンピューターが解析、そしてブレーキやアラームを鳴らすという事が行われます。当初は、比較的、「軽いブレーキ」で減速するものが多かったのですが、今では完全に停止するまで自動ブレーキがかかるものが増えてきているようです。

先ほども書いたように、トラックの場合は衝突事故の多くを追突事故が占めているため、この装置によって大きく重大事故の発生を抑えられるのではないかと期待されていて、2013年11月から全新型商用車への搭載が、2015年11月からは全商用車の新車に搭載が義務付けられています。

また、この他にも、様々な安全対策が行われているので日野自動車を例にして調べてみます。

日野自動車プロフィアに搭載された安全対策システム

現在、日野プロフィアに搭載されている安全対策のための装備は、
・PCS(1)衝突被害軽減機能
・PCS(2)衝突回避支援機能
・車両ふらつき警報
・車線逸脱警報
・ドライバーモニター
・VSC
・左右バランスモニター
となっています。個別に、どのような機能かを説明しましょう。

事故防止、被害軽減のためのPCS(プリクラッシュセーフティ)

PCSは衝突時の速度を抑えることで、実際に衝突した時の被害の軽減を図っていました。先ほど書いた「軽いブレーキ」に相当する機能ですね。これが進化し、衝突回避を支援するための機能を搭載されています。どういうことかと言えば、先行車が低速で走っていることを検知することから始まります。この低速で走る先行車は渋滞の最後尾などが意図されているそうなのですが、この先行車を装備しているミリ波レーダーを使って検知し、システムが分析します。分析の結果、追突の恐れがあると判断されると、システムが早いタイミングでフルブレーキに入ります。この事で、衝突を回避することができるのです。それと同時に、さまざまな警報システムの精度を向上させ、さらにオプション装備だったものが標準装備化されています。

1. 衝突被害軽減機能
ミリ波で前方の状況を検知し、システムが追突の恐れがあると分析した場合、警報やブレーキ作動でドライバーに注意を与えます。衝突の危険が更に高まってしまった場合には、ブレーキが更に強くかかり、衝突時の被害を軽減させます。そして衝突後もブレーキが効いた状態を継続して、トラックが衝突した相手のクルマに与える被害を拡大させないようにします。また、ストップ・ハザードランプを激しく点滅させることで、後続車両に注意を促し2次被害の発生防止を支援します。正面衝突防止には対向車検知機能が搭載されています。


2. 衝突回避支援機能
前方の低速走行の先行車をミリ波レーダーで検知し。追突の恐れがあると警報やブレーキ作動でドライバーに注意を与えます。より危険が高まると早いタイミングで強いブレーキが作動します。

※警報システムなどと連携
ドライバーモニター:ドライバーの顔を写すことで、前方不注意状態へ警報を出す精度アップし標準装備化

その他の安全対策システム

■ 車線逸脱警報
車線からの車体が逸脱していないかを画像センサーで検知し、警報によってドライバーに注意喚起します。以前よりも画像センサーの解像度が向上したので、白線の認識精度が上がっているそうです。

■ 車両ふらつき警報
ドライバーによるハンドル操作がふらついているかという度合いが増えると、ドライバーに警報で知らせます。もし、警報が続くような場合には、PCSに連携してPCSの作動が早まります。

■ VSC
濡れた路面や雪路などの滑りやすい路面でのカーブでの車線のはみ出し、更には横転事故を防ぐため警報音だけではなく、エンジンの出力制御、そして、ブレーキの作動をシステムが行い、ドライバーの危険回避操作を支援します。

■ 運転席右側アンダーミラー(熱線ヒーター付)
運転席右側にアンダーミラーを設定しています。右折の時などに、右後側方への視認性を向上させ、並走する自転車などを見つけやすくします。車道を走る自転車、特にルール無視して走る自転車対策になっているようです。


■ FUP/RUP(フロント/リヤアンダーランプロテクター)
トラックが乗用車に衝突すると、乗用車の車体がトラックの車体の下側に潜り込んでしまうことがあります。こうなると乗用車にエアバッグがあってもほとんど意味が無くなってしまうため、車体の下への潜り込みを防止するための「アンダーランプロテクター」をフロント・リヤに装備しています。

単に「事故をなくす」という思想だけではなく、事故が発生しても被害・損害を減らすという考え方が進んでいるようです。また、もう一つは安全対策が、トラックが加害者側になった想定だけではなく、運転席右側アンダーミラーやリアアンダーランプロテクターなど、マナー違反や追突された場合の対策が行われています。あって欲しくはないことですが、他車のマナーや法令違反があったとしてもできるだけ事故を増やさない努力が行われています。

まとめ

トラックドライバーや会社だけではなく、国、協会、メーカー、そして荷主が揃って事故防止に乗り出しているトラックの安全対策。私たち一般のドライバーでも気づいたことは遠慮なく知らせていくことで、その動きに少しでも役に立てるのかもしれませんね。無くてはならない輸送を1台1台のトラックが担っているのですから、マナーの良いトラックドライバーには敬意を表しながら、私たちも安全運転を心がけましょう!

※最後に
以下は、今回のまとめで参照した国交省などの資料です。参考のため、リンクしておきます。

総合安全プラン2009の中間見直し 国交省:自動車総合安全情報 荷主勧告制度改正の概要 トラックドライバーとしての心構え 日野自動車 安全への取り組み