トヨタ「メガクルーザー」のベース車両! 自衛隊「高機動車」

正規の略称をHMVという自衛隊の「高機動車」。広報活動を行う車両は「疾風」とも呼ばれます。部隊内では「高機」とも呼ばれているそうですが、少し味気ないかもしれませんね。今日は、その高機動車をご紹介します。

ジャンビーとも呼ばれた「高機動車」とは?

陸上自衛隊が装備している人員輸送用車両ですが、この車両をベースにした「派生車両」がとても多く、使い回しのできる車両とも言って良いかもしれません。配備は、1990年代初頭から始まり、開発・納入はトヨタ、製造を担当しているのは日野自動車です。現在までに約3,000両が製造されていて、ほとんど全ての普通科(歩兵)部隊に配備されていますし、現在も製造・配備が進められている隠れたロングセラー車です。一台あたりの費用はおおよそですが、700万円程度と言われています。

民生用に「メガクルーザー」が派生

基本的に、自衛隊のために開発され、製造された車両ですから市販車ではありません。ですが、この車両をベースに「メガクルーザー」が市販されています。もしかしたら乗ったことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。このメガクルーザーが「和製ハマー」とも呼ばれたように、この高機動車もハマーのベース車両「ハンビー」から「ジャンビー」、また「ジャパニーズ・ハマー」とも呼ばれていた時期があったそうです。

なお、メガクルーザーはJAFや消防、地方公共団体などでも活用されていますが、他にも海上自衛隊や航空自衛隊では、高機動車ではなくメガクルーザーをベースとした車両を装備しています。これは「仲が悪い」という理由ではなく、高機動車が陸上自衛隊の要望をベースにした高機動車が、言ってみれば陸上自衛隊での過酷な使用に耐えるように想定されているからであって、陸上自衛隊のように悪路などの酷い環境を前提としていない海上自衛隊や航空自衛隊ではメガクルーザーで充分だということが理由に挙げられています。

「高機動車」のスペックは?

では、気になるスペックですが、外観は確かにハマーやハンビーに良く似た面構えをしています。そして全長4.91m、全幅2.15m、全高2.24m、重量2.64tが基本的なサイズになります。そして人員輸送車の面では乗員数10名、登坂能力60%、変速機:ロックアップ機構付4速ATと公表されています。登坂能力は流石に陸上自衛隊ですね。

基本的には人員の運搬を役割としていますが、多様な利用目的の中には物資運搬が想定されているので、車両の特性としてはマイクロバスとトラック両方の性格を併せ持っている車両とされています。

エアコンは一部の車両にだけ付けられていて、運転席と助手席の間に装置が取り付けられているそうです。また、初期生産以外の車両には、リクライニングシートとCDプレーヤー付きのラジオが設定されました。長距離のドライブや、いろいろなドライバーが乗ることが前提ですから、リクライニングなしのシートは厳しかったでしょうね。また、東日本大震災での災害出動でもあったように、長距離走行が必要な時には、リラックスのために音楽を聴いたり、あるいは交通情報などのためのラジオも必須だったと思います。
また、一般の自家用車のような装備として、ETCが挙げられます。ETCが普及した今では、演習場に行く時に高速道路を使用することが多い、本州や九州の部隊では、やはりマストの装備になっているようで、順次、ETC機器の取り付けが行われているそうです。

こちらは、ソフトスキンと言われる「非装甲車両」ですが、軽装甲をつけられた「軽装甲機動車」が別にあります。その軽装甲機動車ではコスト削減のため、民性部品を多く使っていますが、こちらの高機動車もやはりコストを抑えるために、いろいろな車種とパーツを共用しています。

まず、自衛隊車両で言えば、シャーシは73式中型トラックと4WSの有無、ホイールベース、ばねレート以外は共通は共通化されています。また、エンジンは当初、ダイナやトヨエースなどに使われていた直列4気筒直噴ディーゼルエンジン(15B型)を4バルブ化し、ターボとインタークーラーを装備した15B-FT型として搭載しました。その後は自動車排出ガス規制の強化に伴って電子制御の15B-FTE型、そして日野のOHV直4ディーゼルエンジンの系列「N04C」シリーズになっています。

タイヤはメガクルーザーと同じ37×12.50R17.5-8PR LT。非常に大きいもので、これはボディの下回りのクリアランスには必要だからだと思わえれます。そのため、夏用・冬用共に専用品で、メーカーはブリヂストン、スタッドレスもブリザックの特注品が使われています。

高機動車の強い「足まわり」! 

4WSになっていますが、最小回転半径を小さくするため逆位相のみで高速走行時でも大舵角を与えると逆位相で後輪が前輪と逆方向に動いてしまうそうです。高速走行している高機動車を邪魔しないでください(もとより、セーフティドライビングを心がけている皆さんにはあり得ない事ですが)

また、トヨタらしくダイナやランドクルーザーなどで培った経験を活かしているため、一般道での走行性能は高く運転しやすいそうです。またタイヤ空気圧調整装置によって、装備のランフラットタイヤがもし被弾しても運転席横にあるスイッチを操作すれば、一般道での法定速度走行ができる程度は維持できるそうですから、やはり陸上自衛隊としての性能は持っているのです。

派生型の数が証明する「使い勝手」の良さ

派生車両が多いと、さきほども書きましたが、その例をちょっとリストアップしてみましょう。
■ 重迫牽引車:120mm迫撃砲を牽引ための重迫牽引車としてしての仕様(主役は迫撃砲なので、車両は「備品」扱いだそうです)
■ 国際任務仕様:PKOなどでの国際貢献活動のための仕様(イラク派遣などに使われています)
■ 通信用:師団通信システムのため、通信要員の輸送や機材積載に使用されています。
■ 中距離多目的誘導弾:発射機・追尾装置・自己評価装置を一体化したシステムを搭載
■ 96式多目的誘導弾システム:発射機、射撃指揮装置などを装備した型
■ 地上レーダ装置1号改 JTPS-P23:地上監視レーダー搭載
■ 衛星単一通信可搬局装置 JMRC-C4:衛星通信器搭載
■ 師団等通信システム:指揮通信機器を搭載
■ 発煙機3型:発煙器を搭載
■ メガクルーザー:民生用(販売終了)

まとめ

民生用のメガクルーザーは、車体価格9百万円以上。ホンダNSXと同レベルの高級車でした。タコメーターすら取り付けられなかった、ほぼ「陸上自衛隊仕様」のままでしたが、発売初期には一般ユーザーや企業も購入したそうです(2001年に生産終了)。今でも、高機動車は生産を継続していますから、まとまった注文が政府や自治体の機関からまとまった注文があれば生産可能なのだそうです。

高速道路をドライブしていると見ることの多い、高機動車。少し身近な存在に感じて貰えると嬉しいです。