【ブガッティ・シロン】第二世代を迎えた、21世紀を象徴するハイパーカー

2005年の東京モーターショーにて、市販モデルがワールドプレミアに供された21世紀最初の10年を代表するハイパーカー“ブガッティEB16.4ヴェイロン”の後継車として今年春のジュネーヴ・ショーにて世界初公開され、スーパーカー愛好家たちの話題をさらった“ブガッティ・シロン”の国内初お披露目が、このほど千葉県のゴルフ場“東京クラシッククラブ”にて開催されました。

名門の伝統を遵守したネーミング

ブガッティとは?

まず「ブガッティ・シロン」という美しくもアイコニックな名称をご説明するには、時計の針を遥か20世紀前半まで戻す必要があるでしょう。
ロールス・ロイスやフェラーリと並び、自動車史上最高のブランドの一つと言われる「ブガッティ」は、芸術家一族の長子として誕生した瞬間からアーティストであることを宿命づけられていた天才的エンジニア、エットレ・ブガッティが1909年に興したブランド。その作品は現代美術の彫刻作品としても鑑賞に耐えうる美しさと、“キャラコを引き裂くような”という名文句で形容される音楽的エキゾーストサウンドを誇るのに加えて、モータースポーツやコンクール・デレガンスなどの晴れ舞台で観衆の視線を独占した華やかなカリスマ性。そして、クルマ創りからライフスタイルに至る美への徹底的な拘りなど、エットレが表現しようとしたすべてを体現。今なお世界中の熱心な愛好家“ブガッティスタ”を魅了し続ける、真のアートと評されています。

ブガッティ・シロンとは?

一方「シロン」とは、1931年のモナコGP優勝をはじめ、創世記のグランプリレースにおけるブガッティに黄金時代をもたらした名ドライバー、ルイ・シロンにちなんだ名前です。前任のヴェイロンも、1939年のル・マン24時間レースでブガッティT57Gとともに優勝したドライバー、ピエール・ヴェイロンの名前から採ったものでしたが、レーサーとしての実績についていえば、シロンはヴェイロンよりも遥かに格上。それだけ見ても、現代ブガッティが新型車シロンに懸ける意気込みの強さが感じられます。

そして今回のジャパンプレミア会場となったのは、ゴルフ界の帝王ジャック・ニクラウス氏がコース設計を担当し、今年5月のオープン早々から名門の呼び声が高い“東京クラシッククラブ”。自動車や芸術と同じくらいに馬を愛し、仏・モールスハイムのファクトリーに隣接した自宅敷地内には牧場と厩舎も設けていたエットレ・ブガッティの故事に倣ってでしょうか、今後厩舎と乗馬コースの建設も予定されているというこのクラブをお披露目の場に選んだことにも、筆者にとっては新生“ブガッティ・ジャパン”の見識の高さが伺わせる証と映ってしまったのです。

ブガッティらしいブガッティ

この日は、モールスハイムのブガッティ オートモビルズ S.A.S.本社から、セールス、マーケティングおよびカスタマーサービスの担当役員であるステファン・ブルングス氏ほか数名のスタッフが来日。ブガッティがこれまで歩んできた道程と、ヴェイロンの進化。そして新型シロンの技術面およびデザインについての解説を行いました。

9年前、最高出力1,001ps/最高速度407km/hのスペックとともに登場したヴェイロンに対して、新型車シロンではヴェイロンの高性能限定版(1,200ps)さえも大きく凌ぐ最高出力1,500ps、最高速度は420km/h(リミッター作動)、0-100km/hは2.5秒未満を標榜。世界最速のハイパーカーとしての地位を世界に再確認させることになりました。

しかし、シロンというクルマの真骨頂は驚異的なスペックや価格などではなく、第二次大戦前のエットレ時代から継承された芸術性。あるいは、自動車界における最高のブランドであることを象徴するような圧倒的な存在感にこそある。かつてブガッティと密接に関わり、この名門に格別の思いを持つ筆者にはそう感じられました。

まとめ

今回のジャパンプレミア会場におけるプレゼンテーションにて、ブルングス氏は「シロンのデザインには過去のブガッティの名作“T57Sアトランティーク”などのモチーフが盛り込まれているが、それはあくまで機能を追求した結果」と力説していました。単にモチーフを引用しただけではなく、精神からもブガッティであろうとしていることが感じ取れる。現代ハイパーカーの象徴的存在であるヴェイロンよりも“ブガッティらしいブガッティ”になったと思うのです。

これから生産する台数は、500台のみに限定。フランス本国をはじめとするEUマーケットでの車両本体価格は240万ユーロとされています。日本での販売価格は現時点では未定とのことですが、聞き及んだところによるとブガッティ・ジャパンには既に約30台ものオーダーが寄せられているとの由。これは旧ヴェイロンの総輸入台数を大きく凌ぐもので、当代最高のハイパーカーへの期待感が伺われるのです。