「直噴エンジン」って、近ごろ目にするけど、どんな仕組み?

「直噴エンジン搭載」などと、最近のクルマのCMやカタログでうたわれています。省燃費性能に優れたハイテク技術のようなのですが、はたして「直噴」とはどんな技術なのでしょうか。ちょっと確かめてみませんか。

ガソリンエンジン、燃費向上のカギは?

出典:http://toyota.jp/technology/powerunit/turbo/

直噴エンジンとは

直噴とは、その名の通りエンジンの燃焼室内に、ガソリンなどの燃料を噴射する仕組みです。燃料を効率的に使えるようになるため、省燃費に結びつく技術として注目を集めています。
軽油を使うディーゼルエンジンでは一般的になってきていますが、最近、ガソリン車でも直噴エンジンが増えてきました。このコラムは、そのガソリン直噴エンジンについて、主に書いていきます。

出典:http://toyota.jp/technology/powerunit/turbo/

まずは、エンジンの仕組みから

まずは、エンジンの仕組みのおさらいしておきましょう。

以下の4行程による「4ストロークエンジン」が現在の主流となっています。

1.吸入:空気と燃料による混合気を燃焼室に入れる
2.圧縮:ピストンの上昇により混合気を圧縮し爆発力を高める
3.爆発:混合気を添加させ、爆発・燃焼させる
4.排気:燃焼を終えた混合気を排出し、次の吸入に備える

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/

エンジンの“秘訣” その1:良いガス

「良いガス、良い圧縮、良い火花」 これは、エンジンの設計や整備をするときの合言葉となっています。

ガソリンなどの燃料は、それだけでは火が付きません。揮発して空気中の酸素と結び合うことが必要です。そのために、吸入の行程で燃料と空気を適度に馴染ませ、着火=爆発しやすい状況にするよう、さまざまな工夫がされています。
その工夫の代表的なものが「直噴」なのですが、その説明は後述します。

エンジンの“秘訣” その2:良い圧縮

そして、理想的な状態にした混合気をきちんと圧縮することも大切です。ギュッと圧縮できるほど爆発力が高まり、パワーが出しやすくなったり、燃費改善が期待できます。
しかし圧縮し過ぎると、混合気は自然に発火し始めてしまいす。軽油を使うディーゼルエンジンはこの仕組みを使って自然発火により爆発させていますが、ガソリンエンジンの場合、自然発火は「ノッキング」といってパワーダウンや最悪の場合、エンジン故障に直結します。
つまり、最も効率よく爆発できるよう、きちんと圧縮の状態を管理することも大切なのです。

エンジンの“秘訣” その3:良い火花

火花はスパークプラグのことで、基本的にはガソリンエンジンを対象とします。
ギュッと圧縮した混合気に対して、ズバリなタイミングで火を付けてあげると、急激に爆発するため、それだけパワーを得ることができます。また、混合気がムラなくきれいに燃えるようになるため、燃料の無駄がなくなり、燃費が改善されます。
この火花をいかに適切なタイミングで、しかも強い火花を飛ばしてあげることも効率の良いエンジンにするための大切な条件となっています。

はじまりは「良いガス」、そこで直噴

混合気、圧縮、火花。それぞれに大切な要素ですが、その始まりはどこかと注目してみると、混合気です。ここで理想的な混合気を作ってあげることが、のちのちの圧縮や火花にも効いてきます。
こうしたことから、理想的な混合気を創る技術がいろいろ模索されていました。その中で現在、主流となりつつあるのが「直噴」という技術なのです。

ガソリンの直噴テクノロジーとは

出典:http://www.bosch.co.jp/press/rbjp-1311-05/

真ん中のノズルから燃料が直接噴射されます

良いのは分かっていたものの・・・

以前から、エンジンの燃焼室に直接燃料を噴射してしまえば、エンジンの効率が高まることは分かっていました。事実、ディーゼルエンジンの多くは直噴を採用しています。
しかしガソリンエンジンの場合、燃料(軽油かガソリンか)の違いや、噴射のコントロール方法、製造コストなどさまざまな問題があり、実用化に時間がかかっていました。
ちなみに一般的な方法は、吸気側の空気の通り道(ポート)に燃料噴射装置を置き、そこから噴射した燃料と空気をポート内で混ぜ合わせて混合気を作り、バルブの開閉によって混合気を燃焼室に吸入しています。

始まりは1990年代

1990年代に、ガソリンエンジンにも直噴モデルが登場します。エンジンの燃焼室に直接ガソリンを噴射します。そこに吸気ポートから空気だけを取り入れて混合気とし、圧縮・爆発させる方式です。
当初は燃費を良くするために、空気に混ぜるガソリンをできるだけ薄くする「リーンバーン」が主流で、そのための技術として直噴が使われました。
しかし、その混合気はガソリンの比率があまりにも薄く、そのため燃焼が上手くいかず煤のような燃え残りがエンジン内に大量に発生したりしていました。

現在の主流は「ストイキ燃焼」

そこで、適切な爆発と燃焼のために、理想的な混合気の状態が模索されました。それを「理論空燃比」と呼び、現在では空気とガソリンの比率は「14.7:1(重量比)」が定説となっています。その理論空燃費になるよう、燃料の噴射を適切に管理するデバイスとして直噴が使われています。
理論空燃費は「ストイキメトリー」と呼ばれおり、そこから「ストイキ燃焼」などとも呼ばれています。
さらに、直噴によるストイキ燃焼には新たなメリットも発見されました。燃焼室内で燃料が噴射され空気と混じり合って混合気となる際、気化熱が発生して温度が下がるのです。ほてった肌に霧吹きで水を当てるようなイメージです。そうなると、燃料の充填効率が上がり、ノッキングを避けつつ圧縮比が上げられるようになり、パワーや燃費の向上につながったのです。

出典:http://blog.livedoor.jp/yamamotosinya/archives/52392903.html

「筒内直噴」と「ポート直噴」

エンジンの圧縮行程では、その圧力は50〜200気圧になるといわれています。200気圧は、水深2,000メートルの地点でかかる圧力とほぼ同等です。これだけの環境で正確に燃料を噴射するデバイスを作り、さらにそれを精密に制御するには、きわめて高いか高精度が求められます。つまり、コストがかかるのです。
そこで、圧力変化の少ない吸気ポートに噴射する「ポート直噴」の技術も開発されました。技術的に難しいことが少なく、コストダウンも進んでいます。また、ポートに噴射することで空気と適切に混じりあい理想的な混合気が作れるといったメリットもあります。
燃焼室に直接噴射する「筒内噴射」と、この「ポート噴射」を併用するエンジンも最近は登場してきています。

エンジン技術者の努力の結晶です

こうして書くと、直噴は一見簡単な技術のようですが、全然違います。
燃焼室内で燃料と空気を適切に混じりあわせるには、どのような角度で噴射したらいいか。また吸入のポートやバルブを開けるタイミングはどうすべきか。もっというと、燃焼室そのもののカタチをどうするか。などなど、「良いガス」を作り出すための要件は数限りなくあり、それをひとつひとつ解決していかないと、燃費が良くて扱いやすいエンジンにはできません。
これら数多くの課題を乗り越えて登場してきたのが「直噴エンジン」なのです。これまで、多くの技術者が困難を乗り越えて夢の技術を開発、実現してきましたが、この直噴技術もそのひとつなのです。

直噴の技術は現在も、さらなる省燃費やパワー改善、さらに排気ガスなどの環境対応といった面でも進化し続けています。

あなたが直噴エンジンに“火”を入れるとき、そんな技術者の奮闘をチラッとでも思い浮かべてもらえるとうれしいです。

出典:http://www.alfaromeo-jp.com/4c/efficiency/

直噴技術はスポーツカーにも使われています