【ホンダ NR750】驚愕の楕円形ピストンに32バルブ4気筒エンジン

4気筒エンジンとなると多くても16バルブくらいが一般的ですが、このNR750ではなんと32バルブもあります。そう聞くとイロモノに見えますが、そんなことはありません。実はこれには理由があります。今回はその秘密と、中古車事情や動画、そのほかホンダの伝説のバイクなどを紹介するのでご覧ください!

ホンダ NR750とはどんなバイクか?

HONDA NR750(1992年)は楕円形ピストン!

NR750は市販車初の楕円形ピストンのエンジンを搭載し、炭素繊維強化樹脂、チタンやマグネシウムといった、販売コストを度外視し、軽量な素材をふんだんにつぎ込んだ、次世代型ロードスポーツとして、1992年に販売したバイクです。

このNR750の特徴はなんといっても楕円形ピストンとなります。さらに1ピストンにつき8バルブの設計です。一般的なバイクでは1ピストンあたり2バルブ、または4バルブですが、NR750は倍となっています。ではなぜ楕円にしたのか、という疑問ですが、答えはすでに出ており、バルブ数を増やしたかった狙いがありました。

市販車としては、NR750以後、楕円形ピストンのバイクは未登場ですが、ではなぜNR750はバルブ数を増やすその目的は? と考えてしまいます。

NR500が秘密の鍵を握っている?

その前にNR750の先代モデル、NR500も紹介します。このNR500を紐解けばその謎が解明されるはずです。NR500は1979年に登場したレーサーマシンで、楕円形ピストンを採用した初代となっています。当時ホンダはWGPで2サイクルエンジンに勝つための4サイクルエンジンを設計しました。それがこの楕円形ピストンエンジンです。

当時のレギュレーションでは、500ccで4気筒までという縛りがありました。そうなると2サイクルエンジン(2工程で1回転)と4サイクルエンジン(4工程で1回転)では圧倒的に4サイクルエンジンが不利となります。しかし、ホンダは2サイクルエンジンに勝てる4サイクルエンジンという挑戦をした結果、この楕円形ピストン形状にたどり着きました。

楕円形ピストンにすることでバルブ数が多く設置でき、面積が稼げるので一般的な500ccのエンジンよりもハイパワー化ができるのでは、と考えたということです。実は楕円ピストンのバイクは、ホンダ以前に1940年代にトライアンフ社が実用していたという話もあります。そのエンジンはその後どのような結果が出たかはわかりませんが、記録にはトライアンフとホンダのみが実用化した珍しいエンジンです。

ちなみにこの楕円形ピストンエンジンはV型4気筒なのですが、メンテナンス性をかなり犠牲にしていたようで、なにかある度に車体からエンジンを降ろす必要があったそうです。そこまでしてホンダ4サイクルエンジンでの勝利にこだわった、ということがわかります。レーシングマシンでは整備性はとても重要だと思うのですが……。

とにかく豪華な仕様! NR750はリッチな市販車だった

話をNR750に戻します。レーサーとして活躍してから随分と時間を経てからこの楕円形ピストンが復活し、市販車なのにレーサーの500ccから750ccとなり、パワーアップしての販売となりました。1気筒あたり点火プラグは2本、チタン製のコンロッド、回転数などに応じて臨機応変に対応するPGMイグニッションなど当時の持てる技術を余すことなくつぎ込んでいます。

また、エアロダイナミクスを計算したフルカウルボディは、マフラーをシートカウル内側に通すなど、徹底的に空気抵抗を減らす形状です。フレームには目の字構造のアルミツインチューブを軽量化と剛性のバランスを計算し、適度にしなるように設計するなど、市販車とは思えない力の入れようです。そのため価格は520万円と大変高価なものとなりました。

NR750のスペック紹介

通称名:NR
型式:RC40
全長:2.085m
全幅:0.890m
全高:1.090m
軸距:1.435m
最低地上高:0.130m
シート高:0.780m
車両重量/乾燥重量:244/223kg
乗車定員:1人
燃料消費率:20.8km/L
最小回転半径:3.1m
エンジン型式:RC 40 E
エンジン種類:水冷4サイクル DOHC32バルブV型4気筒(西鉛ガソリン使用)
総排気量(cm3):747
内径×行程:101.2mm(長径)×50.6mm(短径)×42.0(行程)
圧縮比:11.7
最高出力:77PS/11,500rpm
最大トルク:5.4kgf・m/9,000rpm
燃料供給装置形式::電子燃料噴射式(ホンダPGM-FI)
始動方式:セルフ式
点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリ点火
潤滑方式:圧送飛沫併用式
潤滑油容量:4.7L
燃料タンク容量:17L
クラッチ形式:湿式多板ダイヤフラムスプリング
変速機形式:常時噛合式6段リターン
フロントタイヤ:130/70ZR16
リアタイヤ:180/55ZR17
フロントブレーキ形式:油圧式ダブルディスク
リアブレーキ形式:油圧式ディスク

NR750のフルパワーは130PS!

NR750は国内仕様は77PSと、本来のパワーを抑えられた仕様です。しかし、海外輸出仕様なら、130PSという爆発的なパワーを出力しており、NR750のダイナミックな加速を味わえます。もともと出荷台数の少ないNR750。そのパワーを手に入れるために逆輸入車を探すことになりますが、困難を極めることが予想されます。

また、国内仕様をフルパワー化するという手段もありますが、NR750のチューニングを依頼できるショップも探す必要があり、現実的ではありません。

NR750の中古車情報

NR750の中古車は全て応談価格!

車両価格:ASK

現在中古車として販売されているNR750はごくわずかで、特に希少なフルパワーの逆輸入車もあります。どのNR750も新車状態です。応談価格ですが、実際の値段はさておいくらなのでしょうか? こればかりは交渉しない限りわかりません。実際の取引価格も不明です。

NR750の最高速度は?

NR750の最高速度は260km/hくらい

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NR750の最高速チャレンジの動画です。参考にしてください。

最高速アタックをしている動画を見てみると、だいたい260km/hあたりで伸び悩んでいるようです。あまり高回転まで回さず200km/hまではあっという間に到達していますね。さすがNR750といったところ。

NR750を動画で見てみよう!

思わず「あちゃー!」となる動画

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これを見てNR750を知った方もいるほどの有名動画です。グーグルの検索候補に上がっているほど知名度のあるNR750の立ちゴケ動画。フロントブレーキが強すぎたのか、クラッチ操作ミスでエンストしてしまったのか不明ですが、発進直後にエンストし、その反動でコケてしまう、バイク乗りなら経験のある方も多いかと思いますが、それをNR750でやってしまった方の衝撃映像です。

コケた瞬間観客が「わーっ」と思わず叫んでいますが、希少なプレミアバイクなので、みなさんさすがに焦っていますね。その臨場感が伝わります。動画のアップロードが2007年ですが、NR750のパーツ供給は2007年までおこなっていたという話なので、ギリギリ修理に間に合ったのでしょうか? その後も気になります。

NR750の通過音動画

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NR750の動画はいくつかありますが、通過音を撮った動画は珍しいです。動画をアップロードしていただいたオーナーさんに感謝! やはり一般的なV型4気筒と音質が違うようで、重低音の効いた野太いサウンドをなっています。NR750独自の迫力のサウンドです。

ホンダのNR750以外の伝説的名車

RC30 VFR750R(1987年)

プロダクションレースベース車両として販売されたホモロゲーションモデルのVFR750R。エンジンは水冷V型4気筒で、チタン合金コンロッドにクロモリカムシャフトを採用し、ミッションやフレームなど、レースで得た経験をフィードバックした設計となっています。販売価格は148万円と大変高価でしたが、限定1,000台はあっという間に完売したことも有名です。現在では伝説のレーサーのうちの一台となっています。

RC30 VFR750Rのスペック

型式:RC30
全長:2.045m
全幅:0.700m
全高:1.100m
軸距:1.410m
最低地上高:0.130m
シート高:0.785m
車両重量:201kg
乾燥重量:180kg
乗車定員:1人
燃費:32.2km/L
最小回転半径:3.3m
エンジン型式:RC07E 水冷4サイクル DOHC4バルブV型4気筒カムギアトレーン
総排気量:748cc
内径×行程:70.0mm×48.6mm
圧縮比:11.0
最高出力:77PS/9,500rpm
最大トルク:7.1kgf・m/7,000rpm
始動方式:セルフ
キャブレター型式:VDHO
点火方式:CDI式バッテリー点火
潤滑方式:圧送飛沫併用式
潤滑油容量:3.8L
燃料タンク容量:18L
クラッチ形式:湿式多板ダイヤフラムスプリング
変速機形式:常時噛合式6段リターン
フロントタイヤサイズ:120/70-17-58H(バイアス)
リアタイヤサイズ:170/60R18 73H(ラジアル)
フロントブレーキ形式:油圧式ダブルディスク(フローティングディスクプレート)
リアブレーキ形式:油圧式ディスク(フローティングキャリバー)

RC213V‐S(2015年)

最近話題をさらったばかりなので、ご存知の方も多いと思いますがMotoGPマシンのRC213Vを公道走行可能な仕様にしたRC213V‐Sを販売しました。最新のMotoGPマシンがベースなので、極限まで軽量化された車体であり、ハイパワー化された水冷V型4気筒カムギアトレーンエンジンは最高峰であることはいうまでもありません。

日本国内仕様は70PSに規制されていますが、米国仕様は101PS、ヨーロッパ仕様では160PSと爆発的なパワーとなっています。販売価格が2,190万円だったこともRC213V‐Sを語る上で欠かせない話題です。

RC213V‐Sのスペック(ヨーロッパ仕様)

全長:2.100m
全幅:0.790m
全高:1.120m
軸距:1.465m
最低地上高:0.120m
シート高:0.800m
乾燥重量:170kg
乗車定員:1人
最小回転半径:3.7m
エンジン型式:水冷4ストローク DOHC 4バルブ V4
総排気量:999cc
内径×行程:80.0mm×48.5mm
圧縮比:13.0
最高出力:159PS/11,500rpm
最大トルク:10.4kgf・m/10,500rpm
始動方式:セルフ
燃料供給装置形式:電子式(電子制御燃料噴射装置)
点火方式:フルトランジスタ式バッテリ点火
燃料タンク容量:16.3
変速機形式:常時噛合式6段リターン
フロントタイヤサイズ:120/70ZR17M/C
リアタイヤサイズ:190/55ZR17M/C
フロントブレーキ形式: 油圧式ダブルディスク
リアブレーキ形式:油圧式ディスク

ホンダ NR750のまとめ

楕円形ピストンを用いてまで、2サイクルエンジンに勝ちたかったホンダのエンジニア魂を感じる一台。楕円形ピストンはUFOピストンの愛称で親しまれていますが、エンジン工学などの参考資料としてクローズアップされるほど貴重で興味深いエンジンです。NR750はとても希少なバイクなので、どこかのイベントで目にすることがあれば、ぜひエンジンに注目してください。