【インタープロトシリーズ】プロとアマチュアがタッグを組みオリジナルマシンシェアするガチバトル

自動車レースの世界は、一種独特で近寄りがたいという印象をお持ちの方も、少なくないと思います。でも最近では、フレンドリーな態度で観客を楽しませてくれるレースカテゴリーも増えています。富士スピードウェイを舞台に行われる、この「インタープロトシリーズ」は、超一流レーサーの走りなどを構えずに観戦できるイベントの一つです。

マシンの性能差をゼロにして本当に速いのは誰かわかるのがインタープロト

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ル・マン24時間レースの表彰台、その真ん中に立った日本人は、歴史上でも2人しかいません。その内の1人が、現トムス監督である関谷正徳氏です。

その関谷監督が、念願をかなえて実現させたオリジナルのレースシリーズこそ「インタープロトシリーズ」。2016年現在は富士スピードウェイを舞台に年間8戦が開催されるレースがこれです。

インタープロトの特徴は、マシンの差をほぼゼロにして運転技量やレースの駆け引きだけで勝負がつく、リアルガチのスピード勝負であることでしょう。同時に、一つのマシンをジェントルマン(アマチュア)とプロフェッショナルのドライバーがシェアして、別々にレースを行うというのも興味深い点となっています。

そのため、アマチュアドライバーは、一流のプロレーサーから運転やセッティングのスキルを学べるのが、エントラントとしての大きな魅力と言えます。一方で、自分のレースの時にマシンを壊したりしてしまうと、プロフェッショナルのレース機会を奪うというハメにもなります。そんな仕組みもあいまって、アマチュアレースと言えども、ある程度のプレッシャーがかかる真剣勝負が必要なのです。

もちろん、ドライバーがプロに交代してのレースでは、超一流のドライビングテクニックが披露される熱いバトルも展開されることになります。

Inter Proto Series | インタープロトシリーズ | 日本製レーシングカー【kuruma】

オリジナルのマシンで戦うのがインタープロトシリーズ

実は、インタープロトシリーズのレースは、2種類のマシンの混走レースとなっています。

主役はオリジナルマシンの「Kuruma」

リアカウルを開けて整備中のマシン。サスペンションのダンパーがわずかに見えています
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世にはワンメイクレースはたくさんあるのですが、大部分は市販車を改造したマシンで競い合うものです。インタープロトは、専用に開発されたレーシングカーを使うという意味においても、一般のワンメイクレースとは次元が違います。

そのエキサイティングなレースを演出する主役こそが「Kuruma」と呼ばれるマシン。静岡県御殿場市に集まったレーシングガレージが、その技術力を結集して開発した競技用車両です。

その基本的な作りは、カーボンのシェルにパイプフレームを組み合わせたプラットフォームに、前後ともプッシュロッド式のダブルウィッシュボーンサスペンションを装着。エンジンは、排気量4LのV型6気筒をミッドシップマウントし、変速機はパドルシフト式の6速が組み合わされています。

それに搭載した機構を見る限り、まごうかたなきレーシングカーである、この「Kuruma」。しかしながら、その走行性能を、空力や電子制御に頼っていないというのも大きな特徴です。もちろん、トラクションコントロールやトルクベクタリングなどありませんし、ABSすらついていません。

そんなわけで、セッティングやタイヤの使い方も含めたドライビングスキルのみで、レースの勝負がつくというのがインタープロトシリーズということになります。

エントリーレベルには「レクサス CCS-R」

インタープロトと混走するCCS-R
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非常にフェアな形のレースが行われるインタープロトですが、そのマシンである「Kuruma」を一台用意するのは、どんな参加者にとっても敷居が高いことです。そんなこともあってか、市販車ベースのマシンを使うクラスが設けられています。

そのクラスで使うのは、「レクサス IS F」をベースにした競技用車両「CCS-R」。もちろん、完全なイコールコンディションのもとで行われるワンメイクレースとなっています。

そして当然、このクラスにも、ジェントルマンとプロフェッショナル、2つのレースがあります。1台のマシンを格の違う2人のドライバーがシェアして、個々にレースを行うというしくみも同じです。

インタープロトを楽しめるポイント!!

インタープロトシリーズでは、他のレースカテゴリではあまり見ないような工夫が、色々と考えられているのも嬉しいところです。

プロのレースは8周と10周の2ヒートといった超スプリント

インタープロトのプロクラスでは、抜きつ抜かれつの接近戦をさらに熱くするため、レース自体を8周と10周の2ヒート制としています。

これにより、レース全体を誰かがぶっちぎりの独走で終えるということも起こりにくくなり、見ている方にとってもエキサイティングなものとなります。第1レースと第2レースの間には、10分間のインターバルが設けられ、その間、マシンはグリッド上に留められることになっています。

全体のレーススケジュールとしては、ジェントルマンとプロドライバーの予選を土曜日に行い、ジェントルマンは土日の二日に分けてレースを行います。またプロの方は、超スプリントのレースを日曜日にまとめて開催することになっています。

速さを競うという意味では、プロレーサーの予選走行にも興味が湧くところです。その意味では、土曜日から観戦する方がベターと言えますが、日曜日しか見れないという人にも、濃縮された真剣勝負は十分に堪能できるものになっているわけです。

同乗走行もあり、一流プロレーサーに超接近できる!

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インタープロトシリーズでは、ファンとの距離を出来るだけ短くしてくれているのも、嬉しいところです。レース以外の場所では、さまざまなイベントも開催されます。

その中でも凄いのが、やはりマシンへの同乗走行でしょう。「Kuruma」には、ちゃんと助手席が装備されているので、事前の抽選で選ばれた一般の観客をそこに乗せて、富士の国際レーシングコースをプロドライバー達が走ってくれるという趣向。

実は、この同乗走行、プロレース前に行われるので、本番に向けたマシンチェックを行うドライバーも居るとか。場合によると、100Rでの速度やシケイン手前のフルブレーキングなどは、かなり実戦に近いものになっているかもしれません。

レース当日、我々一般客にもそんな強烈な体験をさせてくれるのは、インタープロトシリーズならではでしょう。また、インタープロトの週末はパドックへパスなしで入場できるので、ここでもドライバーと接近できるチャンスがあります。

パドックでは他に、各企業のブースが出展したり、女性向けのネイルサロンや子供向けカートなど、各種のサービス・楽しみもそろっています。

インタープロトと併催された魅力的なレースの数々

単純なサポートレースではない併催レースが楽しめるのも、インタープロト観戦の大きな魅力の一つです。

ランボルギーニのワンメイクレース他、多数が併催!

直線番長の異名を持つランボルギーニ・ウラカンがワンメイクレースを開催
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毎回、多様なレースイベントも同時に楽しめるインタープロトシリーズ。今回中でも注目だったのが、「ランボルギーニ・ブランパンスーパートロフェオ・アジア」だったでしょう。

このレースは、スイスの高級腕時計メーカーであるブランパンが冠スポンサーとなった、ランボルギーニのワンメイクレースです。このシリーズ、当初はヨーロッパ圏での開催でしたがその後アジアへ進出、現在では北米シリーズも生まれて人気を博しています。

トロフェオ・アジアが生まれた時点から、富士スピードウェイでは毎年開催されており、今年は鈴鹿サーキットでも行われました。

なんといっても、現時点でストレート速度が一番速いと思しきツーリングカーが、ランボルギーニ・ウラカン。そのマシン達が、1.5キロに手が届くという富士のストレートを駆け下るさまは圧巻です。水谷 晃選手など日本人もエントリーするこの国際シリーズ、これからも注目です。

富士チャンピオンレースシリーズでは、フォーミュラ&ツーリングカーのレースも

併催レースも楽しもう!
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一般的に、インタープロトシリーズは、富士チャンピオンレースシリーズと併催となります。したがって、複数のレースカテゴリーが組み合わさったスケジュールとなります。今回は、JAF F4東日本シリーズの第5戦、第6戦、ツーリングカーレース(MR2、シルビアなど)も開催されました。

チャンピオンレースでは、アマチュアが参加するツーリングカーのレースや、若手のための入門フォーミュラーなど、多彩なイベントが行われます。というわけで、レースごとにコース内の各コーナーを周って存分に楽しめるのも魅力となっているわけです。

ちなみに、SuperGTなどでは特別料金となる、グランドスタンの2階席や第1コーナースタンドも無料開放、各駐車場間は自分の自動車で移動できますので便利です。

インタープロトシリーズ第5戦・第6戦の様子と結果

2016年9月17、18日の週末に、インタープロトシリーズ第5戦・第6戦が開催されました。ここで、その様子をレポートです。

【9月17日/土曜】好天&高温、ジェントルマンクラスには初の女性レーサーが参戦

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インタープロト・ジェントルマンクラス第5戦

この週末、日本の南西海上から台風が接近中でしたが、17日の土曜日はなんとかその影響を免れました。朝から、強めの日差しが照り付けるドライコンディションでの開催です。

インタープロトは、午前9時からジェントルマンドライバー達の予選がはじまります。走行時間は20分間、その後10分のインターバルを置き、プロドライバーに交代して15分間の予選が行われました。

ジェントルマンクラスでの話題は、何といっても若手女性レーサー、小山 美姫が参戦したことでしょう。場内で聞いた話によると、ある日関谷監督から「クルマ見においでよ」程度のノリで呼ばれ、現場に行ってみたらオーディションの用意が出来ていたとか。その場でテスト走行をして、この「Kuruma」のシートをゲットしたそうです。

小山選手は、この日はじめての予選において、1'48.327秒というタイムをたたき出し予選2位となりました。この実力は大会本部によって当日評価され、ジェントルマンの中でも格が上のエキスパートドライバーに昇格しています。

この後、土曜日に行われたジェントルマンクラス一本目のレースでは、小山選手はフロントロースタートを生かしきれずミスによるコースアウトで4週目リタイヤとなっています。優勝したのは、ベテランドライバーであるDRAGON選手でした。

プロクラスは満を持しての新タイヤ投入

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テクニカルセクションを走るインタープロト。ドライバーの腕が試されます

インタープロトのプロクラス、この日の話題は、あらたに装着されたソフトタイヤでしょう。スーパーフォーミュラで使っているソフトタイヤをそのまま流用ということで、中山 雄一が持つ1'44.784というコースレコードを更新できるかが興味深いところ。

とは言え、季節はまだ夏の暑さが残る時期、また、ドライバー達にしてもぶっつけ本番のソフトタイヤでの走行です。この日のコンディションでは、スーパーラップが飛び出すところまでは行きませんでした。ポールポジションは、中山選手による1'46.386というタイム。

また、チェカレンジャー(富士スピードウェイの契約ドライバー)である、松田 次生、ロニー・クインタレッリ、平手 晃平ら3選手がそろい踏みしたのも注目で、3人の実力がどう日曜日にぶつかり合うかも楽しみの一つです。

【9月18日/日曜】ジェントルマンクラスはヘビーウェットになり12周→9周に!

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終日、本格的な雨天となった日曜日。インタープロトはジェントルマンクラスの第6戦が、午前9時30分のスタート予定でしたが、若干の遅れの後SC(セーフティカー)先導でのレース開始となりました。

このレースは、12週もしくは25分間という設定。SCスタートはフォーメーションラップから周回がカウントされます。レーシングカーとしてはゆっくりと走り始めるSCスタートでは、開始当初の数周の影響で時間制限にかかったため、結果的に9週のレースとなりました。

優勝したのは、やはり実力派のDRAGON選手、注目の小山選手は、完走して5位を決めました。

悪条件の下でも光ったプロレース

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豪雨の下、スリリングなテクニカルセクションを走行するプロクラス

本来、日曜日にぎゅっと濃縮されて行われる、インタープロトのプロクラスレース。それに加えて今回は、雨天によりどちらもSCスタートとなり、本当の競争をする時間帯がますます濃密なものになりました。

まず第5戦では、ポールスタートの中山選手がSCとの間合いを最大限に活用して、最終コーナー手前から後続車との距離を広げる巧な加速をみせてのスタート。本来は、8周もしくは15分間のところ、結果的に6周に短縮にされたレースをリードしきったままゴールします。

そして、さらに雨脚が強まったのが第6戦。数周のセーフティカーランの後、一度はレーススタートとなりましたが、その直後にふたたびフルコースコーション。SCを再投入するという、めずらしい光景となりました。レースはその後、悪天候のため赤旗中断となります。

普通ならそのままレース観戦は諦めるしかないところですが、インタープロトの大会本部はちょっと違います。グリッド上に一度マシンを止めて、天気の間合いをみはからいつつ、5周程度の長短距離スプリントレースへ組み替えての再スタートを決めたのです。

結果的に、ファイナルラップの最終コーナーで、首位の中山選手を若手成長株の坪井選手が抜き去ると言う、なかなか見られそうもないエキサイティングなレースが演出されました。

非常に残念だったのは、マシントラブルのため、このレースに松田選手が出走しなかったこと。とは言え、最悪とも言えるレースコンディションの下、各選手が一流プロの技でコースを攻め切る姿が見られる濃密な一戦でもありました。

インタープロトシリーズを見に富士へ行こうっ!

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誕生から4年目に入り、毎年・毎レースに充実度合を高めてきているのが、富士スピードウェイを舞台に繰り広げられるインタープロトシリーズ。

比較的にリーズナブルな入場料金(大人2,000円、駐車無料)で、SGTやSFにも乗っている一流ドライバーの本気の走りが見られます。観客向けのホスピタリティも整っているので、自動車レース初体験という人を誘って見に行くのも最適です。

今でも充分に熱いシリーズですが、さらに観戦する側からも盛り立てて、スポンサーとエントラント数がもっと増えることを希望しています。