【ダートトライアル(ダートラ)セッティングまとめ】デミオディーゼル、ヴィッツターボ、86、リーフの最新情報

7月31日に開催された全日本ダートトライアル選手権第6戦「ALL JAPAN SUPER DT2016(主催:チーム・エフ/エムスリーレーシング)」では、丸和オートランド那須という国内屈指の高速コースで、熱い戦いが繰り広げられました。今回はその中で、マツダデミオディーゼル、トヨタ ヴィッツターボ、トヨタ 86、日産 リーフという注目のマシンのセッティングを紹介します。(飯嶋洋治)

DLオクヤマ☆モンスターデミオ(Dr.川島秀樹)が6戦中3勝を挙げ好調!

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丸和オートランド那須の奥の中速コーナー。ここはストレートにもつながる重要なポイント。川島デミオはセッティングもかなり煮詰まったということで、ストレートに向かいスピードに乗って舵角も少ない安定した姿勢のコーナリングを見せる。

全日本ダートトライアルのトップクラスで戦い続ける川島秀樹選手。昨年デミオディーゼルターボを全日本選手権に投入し初優勝をもたらし、今年は2年目のシーズン。現在6戦中3勝を挙げてシリーズチャンピオンに王手をかけているところ。デミオがエントリーするPN2クラスというのは、足回りとLSD装着程度の改造しか許されないノーマルに近いクラス。ダートラでディーゼルエンジンを使うのは、かなり勇気の必要な選択だったと思えますが、まずチョイスした理由を聞いてみました。

デミオ ディーゼルのトルクの厚さがマシンチョイスの決め手!

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「ノーマル車に乗ったとき”イケる”という感触がありました。ディーゼル特有のトルクフルな感じもそうですし、NAのガソリンエンジンだと、高回転ではじめてパワーが出て路面に伝わるのと違って、ディーゼルではホイールスピンが少なくそのまま前に出せることも想定できました。ダートラは砂利の上を走るので、そこは優位点だなというところがありました」と言います。

ただ、想定どおりにいかないところが、モータースポーツのマシンチョイスの難しいところでもあり、面白いところ。「実際にダートで乗ってみた感じは思ったとおりなんですけど、ドライビングスタイルも変えなければいけませんでした。今まで、自分も高回転型のエンジンのクルマを乗ってきていますから、低回転の中でクルマを前に出すということを考えていかなければならない」とドライビングスタイルの変化という対応を求められたようです。

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デミオ ディーゼルのパーツは、各社の協力を得る!

毎年同じところでとどまっていてチャンピオンが狙えるほど全日本ダートラは甘くはありませんから、セッティングは年々進歩しています。「二年目でセッティングは大分煮詰まってきました。去年よりも足回りは全面的にリファインしてきている」と言いますが、もう少し詳しく聞いてみましょう。
「基本的に車重が重い。15MBであれば1トンくらいですが、100kgくらい重くなります。それを踏まえてデミオというコーナリングの良いマシンを生かした足回りにしなければなりませんでした。パーツに関しては、各メーカーが協力して作ってくれるということだったので不安はありませんでした」。具体的には足回りはテイン、ガードロールバーはオクヤマ、LSDはクスコとなっています。

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デミオディーゼルのサスペンションセッティングはフロントを硬くしていく傾向

続いてセッティングの過程についても聞きました。
「セッティングの傾向はフロントがだんだん硬くなっていく傾向になりました。初期から比べるとバネレートも上がっています。現在はフロントに3.5kg/mmのものが入っています。リヤが2.8kg/mmです。ショックアブソーバーに関してはテインは減衰力調整式(16段)です。とはいってもコースによって減衰力は大きくは変えないです。1クリック、2クリックを変えるくらいです」と言います。

ブレーキパッドはブリッグ製。これはデミオディーゼル用として設定してもらったものということです。タイヤサイズは185/65R15を現在使用しており、ドライ路面に関してはこれでいいそうですが、「ウェットに関してなどは195/65R15もいいのかなと思います。そこは選択の余地が多少あります」ということでした。

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デミオディーゼルがチャンピオン最右翼! 次戦以降にも期待

今回は優勝すればチャンピオン決定ということでしたが、クラス4位ということで、次戦以降に持ち越しとなりましたが、「思ったようにセッティングが煮詰まってきたという感じはあります。だからこそこういう結果も出ているのだと思います」と自信をのぞかせる川島選手。ただ、クルマとしては「高速コースよりも中速コースくらいの方が相性がいい」という面もあるそうで、今回、高速コースである丸和オートランド那須でストレート区間を長くとったレイアウトということもあり、「ちょっと厳しかった」と悔しそうな顔も見せていました。

ブリッドDLオクヤマヴィッツG(Dr.櫻井貴章)が昨年2勝、今季初優勝!

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手前の右コーナーをややオーバースピード気味に立ち上がってきた櫻井選手だが、その慣性を利用して左コーナーに進入。入口ではカウンターステアが当たっているが、中盤から立ち上がりにかけてはターボパワーを生かして一気に立ち上がっていくアグレッシブな走りだ。

ヴィッツターボを選んだのは新しいことをやりたかったから。パーツはNAのものも使用

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桜井貴章選手は、学生時代から25年ほどダートトライアルを続けているというベテラン。ヴィッツターボを実践投入してから2年目となります。今回取材をしたイベントでは、見事に優勝し、今年1勝目を挙げました。すでに去年2回勝っているので、これから調子を上げていきたいところでもあります。

櫻井選手は豊田自動織機の社員という関係もあり、今回のマシンチョイスにつながっているそうです。
「ヴィッツターボの前にはNAヴィッツに乗っていましたが、ちょっと勝負にならないなということで、これを選びました。同じ会社で全日本ラリーに天野智之さんが出ていて、やらないか? と言われたことも理由のひとつです」

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ただ、モータースポーツ車両というのは、少数派だとどうしてもパーツ供給などの面で不利や否めないところ。その辺の問題について聞いてみました。
「とにかく新しいことをやりたかったので、"イチかバチか?"という感じもありました。ただパーツに関してはラリーの天野さんが先にやっていたので、心配はしていなかったです」と櫻井選手。ボディパーツに関しては、ロールバーとかアンダーガードは、実績のあるオクヤマの協力もあるそうです。

足回り関係のパーツやLSDは既存品と言います。
「足回はのNA時代のノウハウがなかったわけではありませんから、あまり心配していませんでした。ショックアブソーバーはエナペタルです。スプリングは、フロントがエナペタルで、リヤがノーマルのRS用を使っているのですが、フロントバネレートは4キロだったと思います。本当をいうと直巻きのスプリングを使いたいのですけれど、それはこれからやれればと思っています」

ヴィッツターボはドライブシャフトがNAとは異なるため、LSDはSW20MR2のものを装着

流用が効かなかったのがLSD。これはNAとはドライブシャフトの径が違っていることが理由です。
「LSDのメーカーはATSです。これに使っているのは、SW20MR2のNAやZZTセリカと同じものです。パワーがある分、ドライブシャフトが太いんですね。ブレーキは4ポッドのキャリパーとなりますが、ブレーキパッドはGC8(インプレッサ用)が合うので、それを使っています」

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櫻井選手は、この4ポットキャリパーの影響で意外なところで苦労する? ことになりました。
「キャリパーとホイールのクリアランスでぎりぎりになってしまうんです。それで近くのタイヤ屋さんにいって会うのを探してもらいました。そうしたら15インチで履けるのこれしかないといわれて……」ということで、キャリパーの逃げの問題から履けるホイールはかなり限定されてしまうよう。現在使っているホイールサイズは6J×15で、タイヤサイズは185/65R15を使用しています。

ヴィッツターボのフロントバネレートは来シーズンに向けてトライの予定

サスペンションの問題に戻ると現在は、「フロントが若干硬くて跳ねる感じがある」と言います。改善するにはスプリングレートを変えなければなりませんが、「シーズンに入ってしまうとなかなかできなくて。ただ、個人的趣味としてもその辺は見てみたいなというのはあります」と今後の展望を語っていました。

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ニューテックDLモベル86(Dr.河石潤)は2014年に86を投入し熟成を重ねる!

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コース幅をいっぱいにつかいきれいなドリフトを見せる86。この辺はNSXを乗りこなしてきただけに、他のドライバーから一歩抜きんでたところ。派手なだけではなくスピードもよく乗っており、続くストレートにつなげている。

河石潤選手は、インテグラタイプRで2007年、2008年に全日本タイトルを獲得。その後、NSXをダートトライアルに投入するなど、活発に活動しているトップドライバーの一人。2014年にPN2クラスに86を実践投入しました。
「86はPN2クラスができた2014年から乗っています。86はクルマ自体がコントロールしやすいですから、ダートは乗りやすいと思います。PN2クラスの他のドライバーも、FFに乗っていた人が多いんですけれど、すぐ乗りこなせるようになりましたね」と言います。

トヨタ 86は楽しく走っているだけではタイムは出ない。シビアなドライビングが要求される!

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河石選手は特に難しいMRのNSXでダートを攻めていたということを考えると、ダートを走ってドリフトするのは簡単ともいえるでしょう。ただタイムの競り合いになると違うようです。「楽しく走っているだけではタイムが出ません。けっこうシビアな操作が要求されてきますよね」と言います。

86には電子制御が介入してしまうので、それをどう解除するかという問題もある。その辺を河石選手に聞くと大きく2種類の方法があると言います。
「ダートを走っている人は二通りいて、ボタンを長押しして電子制御をカットする人と、整備モードというのにして走っている人がいます。長押しした場合、若干ブレーキ制御が入っているようですが、そんなに邪魔にはなりません。ただ、ダートを走るとけっこうABSが介入してくる問題はあります。僕は整備モードにしていますが、この場合、電子制御はきれいにカットできるんですが、ブレーキバランスがすごく前よりになってしまいます。それはブレーキパッドで調整します」。

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トヨタ86の電子制御を踏まえてブレーキテクニックも変更が求められる!

ただ、これでも完全に問題解消とならないのが難しいところ。「ときどきブレーキ制御が介入してくるのがちょっとこわいかなという感じはありますね。従来だとダートを走るときは、ブレーキをガツンと踏んでロックさせてから戻すのがセオリーなんですけれど、ガツンと踏むとブレーキがかたまっちゃうことがあります。そうすると全然効かなくなってしまいます」と河石選手。「実は今日も第1コーナーでそうなってしまいました。ロングストレートの後だと、昔ながらの癖でガツンと踏んでしまうことがあって、本当はそーっと踏まないとだめなんですよね」とそのむずかしさを語っていました。

サスペンションセッティングに関しては現在、「中高速コーナーと低速コーナーを両立するセッティングを探している」と言います。
「プライベーターでやっていると、時間とお金がかかってしまうので、なかなか難しいです。とりあえず中高速セクションに合わせて、低速セクションはサイドブレーキをつかって曲がるという方向になっていますね。ショックアブソーバーはITOのオーリンズで、スプリングはスイフトの直巻きを入れています。スプリングレートは前後とも3kg/mmです。他のドライバーはもうちょっと柔らかいのが好みの人が多いようです。ショックアブソーバーの減衰力は20段調整式ですが、基本的なセットは決まっています。ただ、路面が荒れているときは、ちょっと番手を下げたりとか、フラットで舗装みたいな路面のときには番手を上げたりとか、当日の状況によって若干変えるくらいです」

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トヨタ 86はトラクション性能が高い。LSDも今までのセッティングではだめ!

もうひとつのセッティングのポイントはLSDです。「昔のFRはLSDのイニシャルトルクを強くしましたが、86はもっと緩くします。というのは、クルマも進化していてサスペンションも進化しているし、さらにタイヤも進化しています。もともとリヤのトラクション性能が高いですから、LSDの効きを強くしすぎるとピーキーになって乗りにくい。アクセルを踏んだ時にスバッとリヤが出る感じになってしまいますから」
タイヤの銘柄ははドライではダンロップディレッツア87R。それと92Rを使い分けるというかたち。タイヤサイズは205/65R15と195/65R15の両方が使えますが、これは「好みの問題ですね」ということでした。

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国沢.com(7)東西CリーフDL(Dr.小出久美子)はバランスの良さを生かして走る!

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全体的に安定したコーナリングだが、進入で回生ブレーキが入ってしまったのがぐっとスピードが落ちてしまった、コーナリングはやはりピッチングが目立つ感じとなっている。

今年、全日本ダートトライアルには電気自動車のリーフが参加しています。ドライバーは女性トップトライアラーとして、長年にわたって活躍している小出久美子選手です。さまざまなマシンに乗ってきた小出選手にとってリーフはどのような印象なのでしょうか?

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リーフはストレートスピードに難があるも、全体のバランスは良い!

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「コーナリングスピードは遅くないです。ストレートが速くないこともあるのですが、あまりスピードを落とさないでいけてしまう感じです。今後、速くなる可能性はとても高いと思います」と小出選手。

電気モーターというパワートレインについては、「レシプロエンジンと違うのは、トルク(254Nm/0~3008rpm)がいきなり100%発揮できるところです。これは有利です」ということだが、どうしても絶対的なパワー不足(最高出力80kW//3,008~10,000rpm)ということでは苦労しているようです。

「電気モーターなので、ちょっとでもパワーが上がれば全域にわたって稼げるので、パワーがやはり欲しいですね」と言います。これが苦戦の理由となっている面は否めないように思います。

リーフのダートラでのサスペンションは熟成途中。伸び側の減衰力とストロークが改善点。

シャシー、サスペンションに関して聞いてみると、荷重バランスが良いのもリーフの特徴と言います。「メーカーが良くバランスを考えてて、荷重が4輪均等にかかっています。ですから、コーナリングでロールがはじまってから流れ出すときの安定感や流れ出しも安定してます」と評価する一方、「どうもサスペンションのピッチングが多いです。フロントが浮いたときは、どうしてもトラクションが抜け気味になりますので、それが解消されて加速していけば、かなりストレートのタイムも縮むと思います」と言います。

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現在のサスペンションもメリットはあり、「多少暴れても接地していることで、コントロールできる」という面はあるそうです。現状ではそのデメリットが大きくでてしまっているところもあり、LSDなどでカバーはしているものの、「ダートラの現状だとコースの路面状況がかなり良いので、ある程度ピッチをなくして、もう少しストロークを削った方がいいかな」と言います。ストロークに関しては、昨年までラリー車として使われていたクルマでもあり、そのセッティングの影響ということもあるのでしょう。

テストを担当しているご主人の秋間忠之選手(ランサーエボリューションでSC2クラスに参戦中)にも、コメントをいただくと、「(小出選手も)大分慣れてきているんですけど、まだ多少おっかなびっくりのところがあるような感じです。ブレーキ踏まなくてもいけるのにというところで踏んでしまったりしている」と言います。これにも原因があって、「たぶんドライバーが不安がるのはダンパー(ショックアブソーバー)のせいだと思うんです。伸びた瞬間にハンドルが効かないんじゃないかという感覚がありますから」。

リーフの中速コースでの優位点を生かせば、好成績も期待できる!

「ドライビングの部分でまだまだ稼げる部分があるので、クルマのチューニングと一緒にドライバーのチューニングもともにしていかないとだめだなという感じはあります。どちらかというと高速コースよりも、中速コースは向いているかも」とも秋間選手。「そういうコースはドライバーも得意ですし、期待できると思います」ということなので、これからの熟成が期待されるところです。

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まとめ

ダートトライアル(ダートラ)というと、ちょっと敷居が高い競技のように思われるかたもいるかもしれません。しかし、今回紹介したクルマは、一般道を走れるナンバー付きのクルマでも参加できるクラスのものです。安全対策のためのロールケージが必要になりますが、あとはサスペンションセッティング、LSD装着、タイヤ選択が基本ですから、トップクラスと同じセッティングにするのも、比較的容易。記事に興味を持たれたかたは、一度イベント会場に足を運んでみてはいかがでしょうか? 派手なドリフト走行にハマってしまうかもしれません。