【クライスラー ニューヨーカー】57年ものロングセラー車にアメリカ自動車産業の歴史をうかがう

20世紀には、大きな戦争や、いくつもの経済危機を人類は体験しました。そんな波風の吹く中で、第二次大戦直前からはじまり57年間も販売され続けたという自動車が、クライスラーの製造していたニューヨーカーという一台。これがまた、多彩な変遷をたどったオモシロイ自動車なんです!

20世紀の半分以上も販売され続けたクルマ、その名はChrysler New Yorker

トヨタ カローラが最初に登場したのが1966年のことで、それが2012年に生まれたモデルでは第11世代になるそうです。それも大変な歴史ですが、世界には、さらに上回る長寿命を誇っているクルマもあります。その一台が、クライスラーが製造販売していたニューヨーカー(Chrysler New Yorker)という自動車。

このクルマ、小じゃれたモデル名称を持っていますが、もともとは、1938年型クライスラー インペリアルというモデルの派生車種でした。それが独立したシリーズになったのは1940年。実に、第二次世界大戦勃発前に誕生していたのが、このクライスラー ニューヨーカーなのです。

クライスラー ニューヨーカーのモデルは全14世代

1940年代のニューヨーカー

長すぎると言って良い歴史があり、非常に多くのモデルが作られたクライスラー ニューヨーカー。1940年代には、その第1世代と第2世代が製造されています。ボディスタイルとしては、4ドアのセダンに加えて、それぞれ2ドアのクーペおよびコンバーチブルという構成で登場しました。

クラシックカー独特の派手な外形を持ったこの時代のニューヨーカー、その巨大なボンネットには直列8気筒(第1世代には排気量4.9Lと5.3L、第2世代は5.3L)というエンジンを収めていました。駆動方式はもちろんFRで、変速機は3速のマニュアルトランスミッションが使用されていますが、エンジンとクラッチの間に流体継手をはさんだ、「Fluid Drive」という機構が使われたりしています。

ちなみに、1941年に、第2次世界大戦がはじまってしまった関係上、ニューヨーカーにとっての1942年のモデルイヤーは、平年の半分程となってしまったそうです。

実は、2016年の7月時点で、クライスラー ニューヨーカーの中古を検索すると、この1948年型の第2世代モデルが売りに出ているのが見つかりました。どこかで大掛かりなレストアを施したものと思われますが、値段は交渉のうえ決定とのことです。なかなか、味のあるクルマではありますが……

1950年代のニューヨーカー

第3世代から第5世代のクライスラー ニューヨーカーは、1950年代を通して製造されました。ボディシルエットのデザインとしては、1949年に発表の第3世代までは、オリジナルモデルのイメージを強く継承しています。また、いわゆるステーションワゴンの形状が加わったのも、第3世代のモデルからです。

1955年の第4世代になると、自動車デザインをテコ入れするためにクライスラーへ新たに参画したバージル・エクスナーの影響が、ニューヨーカーの形状にも見られるようになってきます。彼の仕事を象徴する特徴が、ボディの側面から後方にかけて作られた「フィン形状」でした。

1957年に登場した第5世代のニューヨーカーは、それまでのボテっとした容姿を脱ぎ捨てて、「Forward Look」と呼ばれるテーマの流れるようにモダンなシルエットを得ます。例の「フィン」も健在で、このモデルからは同じクライスラーの別モデル「クライスラー C-300(300Cではない)」へ車体の一部が移植されたりもしました。

ボディ形状にも、2ドアと4ドアのピラーレスハードトップが追加され訴求力を高めたのがこの頃。エンジンも、古風な直列8気筒OHVから、スペース効率の良いV型8気筒OHV(排気量6.4L)へと進化しています。

2016年の7月時点で中古車を検索すると、1957年型の第5世代クライスラー ニューヨーカーが、2,500,000円で出ています。

1960年代のニューヨーカー

モノコックのボディを得て1960年に登場したのが、第6世代のクライスラー ニューヨーカーです。この10年間には、第7世代までが製造されました。

1961年型モデルまでは、「Forward Look」によるコンセプトは健在で「フィン形状」が付加されたルックスとなっています。1962年にそのフィンがないボディ形状へと変更された時は、さまざまなところで辛辣に評価されたこともあったそう。同時に、4ドアハードトップのステーションワゴンなど様々なスタイルが試された、デザイン変遷的には活気のある時代となっています。

1965年に登場した第7世代は、デザイナーのエルウッド・エンゲルが手掛けたボディであり、「C-body」と呼ばれるプラットフォームを元に作られたモノコックを採用しています。このモデルのイメージは、ボクシーなセダンのイメージとなりました。エンジンも、最大で排気量7.2LのV型8気筒が載せられています。

1970年代のニューヨーカー

1970年代に製造された第8世代と第9世代のニューヨーカーも、先代と同じ「C-body」で設計されました。そのボディ形状も、いわゆるセダンチックなものが継続しています。

1974年には、縦線が強調された大型グリルを持ち、ヘッドライトにカバーのついた第九世代が生まれます。グレード構成には、ベースとなるものに加えて、ニューヨーカーブロアムという上位車種が搭乗したのもこの頃。

車体としては、かなり威厳を感じさせるクルマとなった1974年型ニューヨーカーですが、1973年にはじまる石油ショックと直接ぶつかってしまったのも事実。これは、1970年代後半のクライスラーが体験する経営不振へとつながってしまいます。

1980年代のニューヨーカー

さまざまな経済状況の影響もあってか、新たな「R-body」プラットフォームをベースに、軽量化と全長の短縮を目指したのが、1979年型の第10世代クライスラー ニューヨーカー。

エンジンも排気量5.2Lと5.9LのV型8気筒という、やや控えめな設定となったのがこの時のモデルチェンジです。それでも、立派なフロントグリルとカバーされたヘッドライトはそのままで、フルサイズの車であることを主張していました。ボディスタイルは、4ドアのセダンのみというラインアップに固まったのが、この時代のモデルからです。

小型化傾向はその後も続き、1982年には排気量3.7Lの直列6気筒を搭載した第11世代が搭乗します。

1989年には、「E-body」という新型プラットフォームのモデルも追加されます。第12世代となるこちらは、ディジタル表示のダッシュボードや音声アラートなどを装備した、旧来からの路線とイメージの異なるシリーズになりました。エンジンにも排気量2.2Lと2.5Lの自然吸気直列4気筒と、ターボ過給つきの2.2Lなどが搭載されて、いってみれば自動車ダウンサイジングの先駆けのようなクルマだったかもしれません。このエンジンは、フロントに横置きされ前輪を駆動しました。

1990年代のニューヨーカー

1988年から1993年に販売された、第13代目のニューヨーカーは、再び「C-body」をベースとしたシャーシとなり大型化が図られています。とはいえ、このモデルもエンジンをフロントに横置きするFWDはそのまま継承となりました。そのエンジンは、排気量3.0Lと3.3LのV型6気筒です。

外観の大きなポイントとしては、1982年型からなくなっていたカバー付きヘッドライトが復活したことでしょう。駆動系としては、1989年に新型の4速オートマチックトランスミッションが投入されます。

最後の第14世代となったのが、1994年に発表されたモデルです。シャーシは「Chrysler LH platform」をベースに設計され、ボンネットの下には縦置きされたV型6気筒エンジン(排気量3.5L)が収められています。

先代のルックスには、まだ時代物の角ばったところが残っていましたが、この最終タイプでは空力改善にも効果ありそうな曲面が多用されています。その姿は、別モデルの「クライスラー LHS」と多くの共通点があります。

この世代のクライスラー ニューヨーカーは、1996年まで製造販売され、シリーズ絶版となりました。

クライスラー ニューヨーカーのまとめ

どんなことでも、5年間継続するのはなかなか大変だと思います。ですので、57年もの歴史があったというクライスラー ニューヨーカーには、それがクルマであったとしても一種の尊敬の念を感じてしまうのです。

ビンテージ世代に製造された自動車は、へたをすると恐竜の化石より希少かもしれません。それが今でも(中古市場で)売りにでているというのも、かなりオドロキな話でもあります。完全なオリジナルではないと思いますが、こういったクルマによせる愛好家さん達の情熱が垣間見えますね。

そういう事情も含めて、このクライスラー ニューヨーカーは、とても興味深い一台だといえます。