【PSAグループ「BlueHDi」エンジン】プジョー・シトロエン・DSがクリーンディーゼルを遂に日本導入!

PSAグループが「BlueHDi」と呼ばれるクリーンエンジンを日本導入しました。これまでヨーロッパなどでは信頼性の高いユニットとして信頼を得てきたわけですが、日本の厳しいポスト新長期規制もクリアすることになり、本格的な発売となります。いったいどのようなパワーユニットなのか、どの車種に搭載されるのかなどを見ていきましょう。(飯嶋洋治/RJC会員)

PSAグループ(プジョー・シトロエン)のディーゼルエンジン「Blue HDi」とは?

photo by jima

7月12日、フランスの自動車大手である「PSA」グループは、新世代のディーゼルエンジンとして「Blue HDi」の日本導入を発表しました。同社はプジョー、シトロエン、DSというブランドを持ち、それらの今後の展開も合わせて発表しました。PSAは世界敵に大きなシェアを持っていることと思います。同社は世界を6地域に分けて販売戦略を練っていることから日本はインド・パシフィック地域となりますが、実は日本市場は世界販売全体でみると決して大きいものではありません(2015年ではプジョーが5,906台、シトロエンが1,979台)。ただし、インド・パシフィック地域では相対的に市場が大きい面や、冒頭でクリストフ・プレヴォ日本支社CEOが述べたように、昨年度より販売的には15%アップしていることから、より一層のテコ入れの意味も込めた日本導入ということになります。

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予見されていた「Blue HDi」の日本導入

実は「Blue HDi」の投入は、昨年10月の東京モーターショーでもプレヴォCEOが強調していましたが、今回の発表は、その約束を果たしたという意味もあるそうです。日本のユーザーはクルマに対する要求が高く「BlueHDi」はその期待に応えるべく、パワー、排気ガスのクリーンさをはじめ、エンジンに求められる要素のすべてを改善しているといいます。ちなみにこのエンジンは、昨年、世界的にはすでに100万台以上のクルマに搭載された実績を持っています。

PSAグループ(プジョー・シトロエン)のディーゼルエンジン開発の歴史は?

PSAはプジョー時代からディーゼルエンジン開発の長い歴史をもっています。1938年には世界で二番目になるディーゼルエンジンを開発し、「プジョー402」に搭載しています。時代が下って1979年には「プジョー604」にディーゼルターボエンジンを搭載して、パワフルなディーゼルエンジンを実現しました。1990年代からは、ディーゼルエンジンで問題になる排出ガスのクリーン化に取り組みはじめ、2000年にはDPF(微粒子フィルター)を発表、酸化触媒とSCR(選択還元触媒)と結合したDPFによる技術を「BlueHDiテクノロジー」と名付け、ヨーロッパの新排出ガス規制である「ユーロ6」をクリア、2013年9月からPSAグループの車両全般に採用されてきました。

PSAグループ(プジョー・シトロエン)のディーゼルエンジン「Blue HDi」の基本構成は?

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「BlueHDi」エンジンの基本構造はコモンレール式高圧直噴システムを持つ4気筒ターボディーゼルエンジンです。コモンレール方式は、現代のクリーンさを求められるディーゼルエンジンになくてはならないものとなっています。高圧縮比のピストンシリンダー内に、高圧ポンプ~コモンレール(一時的に燃料をためておくパーツ)を介して2,000バールの高圧燃料を直接噴射します。さらに同エンジンでは可変ジオメトリーターボが装着されており、低回転から高回転まで過給圧を最適にコントロールすることができます。これで力強いトルクと燃費性能を両立させているわけです。

高効率化と低フリクションも追求!

エンジンの基本的な部分として、高効率化と低フリクションも追求されました。2.0Lバージョンでは、空気と燃料の混合を最適化する新設計の燃焼室、摩擦を軽減するために低粘度オイルの採用、ピストンピンにダイアモンドライクコーティングを施すなどの手法がとられています。エンジン単体でも約7kgの軽量化が図られたということで、操縦性にも好影響が期待できるものとなっています。

PSAグループ(プジョー・シトロエン)のディーゼルエンジン「Blue HDi」のアドバンテージは?

photo by PSA

「BlueHDi」はクリーンテクノロジーをアドバンテージとして掲げています。欧州排出ガス規制「ユーロ6」、そしてより厳しいと言われる日本の「ポスト新長期規制」をクリアしているのはもちろん、さらに進化したものとなっています。このシステムは、排気系統に組み込まれた(1)酸化触媒、(2)SCR(選択還元触媒)、(3)DPF(微粒子フィルター)の3つのステップからなっています。

特にSCRにAdBlue(R)(尿素水溶液)を使用することで、多くは高温時に発生し、光化学スモッグの原因となるNOx(窒素酸化物)を90%削減したといいます。また、DPFの上流(エンジン側)にSCRを配置することによって、エンジン始動直後の低温時からNOxの除去が可能となり、DPFの効率を高めています。

AdBlue(R)は、トランクルーム下のタンクに貯蔵され、1年または10,000kmを目安に、販売店での点検・補充が推奨となります。残りの走行可能距離が2,400km以下になると、警告ランプと残りの走行可能距離の表示によって補給の必要性を知らせる仕組みとなっています。

DPFはセルフクリーニング機構を持っています。フィルターにPM(粒子状物質、すす)が一定量たまると、電子制御によって排気温度が高まり、すすは再燃焼し取り除かれるわけです。その際にフィルターは再生させるので、特別なメンテナンスも不要となっています。これによってPMは-99.9%とほぼ完全に取り除かれるといいます。

PSAグループ(プジョー・シトロエン)のディーゼルエンジン「Blue HDi」のラインナップは?

1.6L BlueHDi 120ps

総排気量1,560ccの4気筒SOHCターボディーゼルエンジンです。圧縮比は17.0とディーゼルならではの高圧縮比。PSAでは「クラストップレベルの燃費性能と動力性能のベストバランス」を謳っています。エンジン内部のフリクションロスを徹底的に削減することにも気を配りました。ディーゼルは高圧縮のために頑丈な作りが求められ重量増となりがちですが、シリンダーヘッドやエンジンブロックを総アルミ化し4.0kgの軽量化が図られています。このエンジンはプジョー308 Allure BlueHDiに搭載されます。同車の燃費は21.0km/Lと、同クラスではトップクラスの数値を実現しました。このエンジンはシトロエンC4 FEEL BlueHDiにも搭載されます。

プジョー308 Allure BlueHDi(photo by PSA)

シトロエンC4 FEEL BlueHDi(photo by PSA)

2.0L BlueHDi 150ps

総排気量1,997ccの4気筒DOHCターボディーゼルエンジンです。パワフルさと好燃費をバランスさせたもので、PSAでは「スポーティなミドルレンジ」を謳っています。コモンレール式高圧燃料噴射システムは、コンピューター制御により緻密な燃料噴射が可能となっています。これも燃料のコントロールには有効です。こうしたシステムにより動力性能のアップと低燃費、クリーン化の両立に貢献しています。ピストンの上下動による振動を打ち消すためのバランサーシャフトも設けられ、静粛性にも配慮されました。このエンジンはミニバン、シトロエンC4ピカソといった、積載量が多く、高トルクと低燃費が要求される車種に搭載されます。

2.0L BlueHDI 180ps

総排気量1,997cc4気筒DOHCターボディーゼルエンジンで、2,000rpmという低回転から400Nmの太いトルクを発生します。これは可変ジオメトリーターボチャージャーによるところも大きく、低回転では小型タービン的にレスポンスを高め、高回転ではフルブーストで大パワーの発生に貢献する仕組みとなっています。ダイナミックなスポーツ性能が信条で、PSAでは「ラインアップ最強のパワースペック」を謳っています。ちなみにこのエンジンを搭載したプジョー508GTは最高速度230km/h、0-100km/h加速は8.5秒を誇ります(メーカー参考値)。このエンジンにもピストン運動による振動を打ち消すバランサーシャフトが備えられ、静粛性も確保しています。同エンジンの搭載モデルはプジョー308GT、508GT、DS4といったスポーツ性能の高いクルマとなります。

プジョー508GT(photo by PSA)

DS4(photo by PSA)

主要諸元

1.6L BlueHDi 120ps

1.6L 直列4気筒SOHCターボディーゼル
最高出力 88kW(120ps)/3,500rpm
最大トルク 300Nm/1,750rpm
総排気量 1,560cc
電子制御コモンレール式筒内直接噴射
圧縮比17.0
可変ジオメトリーターボチャージャー

2.0L BlueHDi 150ps

2.0L 直列4気筒DOHCターボディーゼル
最高出力 110kW(150ps)/4,000rpm
最大トルク 370Nm/2,000rpm
総排気量 1,997cc
電子制御コモンレール式筒内直接噴射
圧縮比 16.7
可変ジオメトリーターボチャージャー

2.0L BlueHDi 180ps

2.0L 直列4気筒DOHCターボディーゼル
最高出力 133kW(180ps)/3,750rpm
最大トルク 400Nm/2,000rpm
総排気量 1,997cc
電子制御コモンレール式筒内直接噴射
圧縮比 16.7
可変ジオメトリーターボチャージャー

まとめ

photo by jima

発表会当日は北海道大学大学院工学研究院教授の小川英之氏とアナウンサー/キャスターの吉川美代子氏のトークセッションも行なわれました。そこでディーゼルエンジンのメリットが主に語られたわけですが、ディーゼルエンジンは高圧縮で燃焼されるため、高効率なことや、ガソリンエンジンはスロットルバルブで吸気量をコントロール(絞る)ために、ポンピングロスが発生するのに対して、ディーゼルエンジンはスロットルバルブが常に開放されている状態になっているために効率が良いことなどが語られました。

石原慎太郎都知事の時代には、PM(すす)の発生だけがクローズアップされ、いきなり完全な悪者扱いされてしまった感のあるディーゼルエンジン。しかし燃費が良い=CO2の発生が少ないということですし、PMとNOxをコントロールすることができれば、依然としてエコなエンジンになりうることは否定できません。また、ガソリンができる過程の途中でディーゼルエンジンの燃料となる軽油も必然的にできてしまいますから、それを有効利用しない手はないわけです。トークセッションでも語られていましたが、日本は余った軽油を輸出しているという現実もあります。

限られたエネルギーをより賢く使うために、自動車ユーザーも賢くなる必要があるのかもしれません。