【ボルボ 740】偉大なる240から血筋を引き継いで生まれた車

かつて、北欧の自動車メーカーであるボルボの作るモデルは、無用な色気には目もくれず自動車の本質だけを表現した製品群でした。その姿勢は、ある時突然のようにモータースポーツ界での成功をもたらしたりもしています。そして、同社にとってミドルクラスに設定された、このボルボ 740というクルマは、そんな生真面目な技術を受け継いだ一台でした。

240の血統を受け継ぐVolvo740

北欧の古き良き自動車メーカー。そんな呼び名が、1980年代から1990年代にかけてのボルボ社には合っていたと思います。どのモデルを見ても、同じく四角いクルマに見えてしまう。自動車の基本的な機能を実現することだけに関心があるような、そんな印象の会社でした。

しかし、その基本に忠実な姿勢は、ボルボ 240という歴史的な一台を生み出します。1980年代の中盤、ターボを取り付けられたこのクルマは、欧州や世界各国のツーリングカーレースに出場し、その地味なデザインからは想像できないような戦績を残したのです。

その240と同じ立ち位置、つまりミッドクラスセダンの役目を与えられて1984年に生まれたのが、ボルボ 740というクルマです(240は、その後も継続生産)。車名のナンバーの中央の数字は、これが主に4気筒エンジンを主体にしたモデル(760は6気筒エンジンが主)であることを意味しています。ほぼ同じクラスといっても、240よりラグジュアリー性を強める目的で作られたのが、740でした。

まだ、ボルボらしかった頃の4気筒モデル

先に書いたボルボ 240は、サーキットにおける速さに似つかわしくない四角基調のデザインから、方々で「空飛ぶレンガ」と呼ばれ愛されました。デザインには無関心と言っても良いようなこの角ばった容姿は、今でもボルボのアイデンティティーの一部として残っているでしょう。

240も740も、そして740の兄貴分である760も、いわゆる「ボルボのルックス」を与えられた自動車でした。

四角いカタチが逆に目を引く4ドアセダン

実際のところ、この時期のボルボ車のデザインを見比べても、どれがどの車かと言い当てるのは難しい気もします。とはいうものの、ベースとなった240より少し洗練された造形を与えられたのが、ボルボ 740でもあるからです。

基本となるスタイルは、もちろん4ドアのセダン。ボルボのように四角いクルマを作るなら、まさにうってつけなボディ形状です。そして、この時期のボルボ車には、エンジン前置き後輪駆動がお約束となってもいます。

発売当初、もっとも中心的であったエンジンは、排気量2.3Lの直列4気筒OHC。性能としては、出力が84kW(114ps)にトルクは192N・m(19.6kgf・m)というスペックのものでした。また、これにターボ過給をしたバージョンを搭載した、ボルボ740ターボも人気がありました。そのエンジンは、133kW(181ps)に260N・m(26.5kgf・m)まで性能アップされています。

1985年には、排気量に課税されていたイタリア向けに、2.0Lエンジンをインタークーラーターボで過給したタイプも発売されます。こちらは、出力117kW(159ps)でトルクは240N・m(24.5kgf・m)の性能となっています。

1989年になると、ボルボ初のマルチバルブエンジンとして、排気量2.3Lの直4DOHC16バルブが投入されます。このタイプは、出力は114 kW(155ps)でトルクは203N・m( 20.7kgf・m)の性能を発揮。

車名が740ではありますが、実は直列6気筒のディーゼルエンジンも設定されています。これには自然吸気(NA)とターボの2種類が存在。NA版の性能は、60kW(81ps)の出力でトルクは140N・m( 14.3kgf・m)、過給付きでは、80kW(109ps)に205N・m(20.9kgf・m)となっています。

トランスミッションは、4速と5速のマニュアル式、それに加えて4速のオートマが設定されていました。

【諸元表】ボルボ 740 GL(1983年)

名称:ボルボ 740 GL(1983年)
エンジン排気量:2,316cc
エンジン出力:84kW(114ps)/5,200rpm
エンジントルク:192N・m(19.6kgf・m)/2,500rpm
全長:4,785mm
全幅:1,760mm
全高:1,430mm
重量:1,269kg
ホイールベース:2,770mm
サスペンション:マクファーソンストラット式(前)/ 5リンクリジッド(後)

ユーティリティは抜群? 740 エステート (5ドアワゴン)

容積の効率を考えるとすると、ひょっとしたらボルボのような四角いデザインが一番かしこい作りなのかもしれません。そして、そのメリットを最大限に活かせるのが、リアを大きなハッチに変えて2ボックス化した、ワゴンのスタイルでしょう。

ある意味では、ボルボのイメージを代表しているのは、この740 エステートのような5ドア車です。後方へ思いっきり拡張したラゲッジスペースは、半端にスポーティさを狙ったりしないデザイン戦略の恩恵でもあります。ただ、スペックを見てみると、セダンもエステートも同じ全長となっているのに驚きます。

この740 エステート ワゴンにも、セダン同様に排気量が2.3Lの自然吸気エンジンが中心の設定。それに過給付きのターボエステート(2.0Lと2.3Lが存在)、そして2.4Lのターボディーゼルエステートなどの設定がされています。

【諸元表】ボルボ 740 GLE ターボディーゼル エステート (1986年)

名称:ボルボ 740 GLE ターボディーゼル エステート (1986年)
エンジン排気量:2,383cc
エンジン出力:80kW(109ps)/4,800rpm
エンジントルク:205N・m(20.9kgf・m)/2,400rpm
全長:4,785mm
全幅:1,750mm
全高:1,435mm
重量:1,372 kg
ホイールベース:2,770mm
サスペンション:マクファーソンストラット式(前)/ 5リンクリジッド(後)

トラディショナルな740の中古車ってある?

240や740の時代は、ボルボがもっともボルボであった時代です。巨大なチーズのブロックに似たボディ形状は、ある意味では現在でも価値というか存在感があるでしょう。そんなボルボ 740を今から購入するなら、中古の市場をさがす必要があります。

とりあえず見てみると、1989年登録で走行距離が9.0万Kmという車体(16バルブエンジン)が、320,000円という格安で出ていたりもします。また、比較的に新しい(?)1991年登録で2.0Lエンジンのエステート中古で、6.1万kmの走行距離という車体が798,000円です。

程度は別として、適当な車体を見つけるのには苦労しない個体数はあるようで、旧車のマニアさんにはオススメの一台かもしれませんね。

ボルボ 740のまとめ

1980年代中盤頃のボルボ社は、比較的にののんびりとした商売をしていたかもしれません。240の後継車と目される740を発表しても、240の方も製造しつづけたのもそんなことの現れでしょう。1991年に740の後を受け持たせる940のリリース後も、740はしばらく製造継続したりもしています。

そんな中でも、世界各地のレースで「異様な速さ」を見せつけたボルボ 240の血筋を直接引き継いだこのボルボ 740は、格別にアイコニックな一台といえるのでしょう。