【マツダ アテンザXD(LDA-GJ2FP)試乗】サーキットを走りたくなる? 硬派なセダン

2012年、マツダが「SKYACTIVE TECHNOLOGY」を全面に掲げて投入したのが「アテンザ」です。それまでもスポーティなセダンとして人気がありましたが、さらにローアンドワイドなフォルム、SKYACTIVE-Dという、ディーゼルとしては異例の低圧縮比で環境性能を向上させ、ガソリンエンジンのような軽快さも実現しています。今回は中でも「アテンザXD」の6MTの試乗記をお届けします。(飯嶋洋治)

マツダ アテンザとは?

photo by mazda

セダンとワゴンの二本立て。注目は2.2リッターディーゼルエンジン。

2012年にマツダのフラッグシップモデルとして登場したのがアテンザです。「SKYACTIVE TECHNOLOGY(スカイアクティブテクノロジー)」というマツダのクルマ作りの哲学ともいうべき手法と、「鼓動」という、その後、マツダファンを満足させるだけでなく、マツダファンを増やすことになるデザインテーマを採用して市場投入されました。ボディタイプはセダンとワゴン。ガソリンエンジン車は2.0リッターと2.5リッターの設定、ディーゼルエンジン車は2.2リッターの設定となっています。試乗したのは、このディーゼルエンジン「SYKACTVE-D」を搭載したアテンザXDとなります。

エクステリアは?

試乗したセダンはローアンドワイドなフォルム。スポーティな走りを期待させるデザイン!

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マツダの新デザインテーマとなった「魂動(こどう)-Soul of Motion」を採用し、「凛とした存在感と、生命感のあるダイナミックな美しさを表現した」としています。今のトレンドからは離れてしまうのかもしれませんが、低くワイドなフォルムと流れるようなボディデザインが印象的です。マツダ共通のフロントグリルは、車種によっては目立ちすぎる(大きすぎる)と感じる場合があるのですが、アテンザの場合はそれも含めて全体的なバランスが優れているように感じます。「ソウルレッドプレミアムメタリック」がイメージカラーとなっていますが、職人の手で作り出すような精緻で高品質な「匠塗(TAKUMINURI)」専用プログラムで塗装されているそうです。

インテリアは?

機能優先はマツダのアイデンティティとして定着。自然な操作系がドライバーとしては魅力。

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インテリアの上質感、スポーティな雰囲気の中に機能性や快適性を融合することが図られています。その意図のとおりインストルメントパネル、ステアリングホイール、シートのそれぞれがスポーティな感じにまとめられています。特にメーター周りなどは、どちらかというと古典的なスポーツカーのような雰囲気になっていると思いました。タコメーターの許容回転数はディーゼルということもあり低いですが、それでも十分に楽しい走りを想像させるものとなっていると思います。シートのデザインもサイドサポートがしっかりと張り出している形となっていて、ホールド性にも気を使われているのか感じられました。

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自然なペダル配置や、操作系のレイアウトなどは最近のマツダのこだわりが一番出ているところだと思います。ステアリング、ペダル、マニュアルのシフトレバー位置などが、それぞれに調和している感じもあり、いきなり乗っても、戸惑うことなく操作できるということは大きな美点となるのではないかと思います。

パワーユニットは?

低圧縮ディーゼルのSKYACTIVE-Dは相反するPMとNOxを上手に低減。

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試乗したアテンザXDには2.2リッターディーゼルエンジンの「SKYACTIVE-D」が搭載されています。2ステージターボチャージャーで過給され、最高出力は175ps、最大トルクは420Nmを2,000回転という低回転から発生します。

ディーゼルエンジンはスパークプラグを持たずに、吸入した空気を圧縮して高温になったところに燃料(軽油)を噴射して、動力に必要な燃焼を起こすのが特徴です。そのために圧縮比を高く(20以上)にするのがかつての手法でした。しかし、SKYACTIVE-Dでは14と低い圧縮比になっているのが特徴です。圧縮比をどこまで下げられるか? がこのエンジンのキモといえるでしょう。

ディーゼルエンジンではPM(スス)とNOx(窒素酸化物)が問題になるのですが、圧縮比をぎりぎりまで下げたことによって、燃料と空気が良くまじりあい、酸素不足にならなのでPMが減少でき、燃焼温度が上がると発生するNOxに関しては、これも低圧縮になるので、燃焼温度が下がるために減るという「いいとこどり」ができるようになったのです。

もちろん圧縮比が低いということは始動性などに問題が出ることになります。その辺はマルチホールピエゾ式インジェクターによる細かな燃料噴射制御を行うことにより解決しています。圧縮比が低いということは、旧来のディーゼルエンジンのように頑丈に作らなくても大丈夫ですから、各パーツも軽量化できます。それがガソリンエンジンのような軽い吹きあがりや、静粛性にもつながっているわけです。

ボディ、サスペンションは?

剛性アップしたボディに、ストラット&マルチリンクを最適にセッティング。

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ボディは構造による強化、超高張力鋼板の使用による剛性アップが図られるとともに、軽量化も目指したものとなっています。より具体的には構造は、フロア下のトンネルメンバーの大型化による剛性アップがあります。これは前後左右のボディの動きを抑える役割も担っています。ピラー、ルーフメンバー、フロアメンバーになどの繋ぎ部分の断面には発泡充填剤を注入してあります。これは重量増を避けて剛性アップをするために有効な手法と言えます。材質的なものでは、超高張力鋼板の割合を先代より20%増やし、全体の58%としたことが挙げられます。

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サスペンションはフロントがマクファーソンストラット、リヤがマルチリンクとなっています。フロントはキャスター角を大きくとることで、直進安定性を向上する方向となり、高速域でのステアリング特性の安心感を高めています。リヤに関しては、マツダのマルチリンクはトレーリングアームを高めに取るのが特徴的ですが、アテンザではより最適な配置とすることで、高速時の安定感と、低中速域での軽快感のバランスの最適化を図っています。

乗り心地は?

長距離移動でも疲労感の少ないしなやかさ。ワインディングでもしっかりしたステアリングフィール。

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スカイアクティブ-Dの初体験がこのアテンザXDとなりましたが、旧来のディーゼルエンジンとは明らかに違う高い静粛性が印象的です。6速MTということもあり、シフトフィールを楽しみながら加速します。もちろん許容エンジン回転数が低いですから、高回転まで伸びるという感じはないですが、踏めば踏んだなりに加速していきます。ここもディーゼルエンジンをことさら感じさせることはありません。

シフトフィールは、カチッと決まるものですが、個人的な好みとしてはちょっと軽すぎるかなという印象も持ちました。同様にクラッチ踏力も軽いので、ここを扱いやすいとみるか、スイッチ的で物足りないとみるか? は個人の好みが大きいと思います。

サスペンションの味付けは、ラグジュアリー寄りのスポーティ? という感じでしょうか? 主に高速道路を走ったのですが、ある程度のスピードで長距離を移動するのに適したサスペンションだと思いました。長時間の走行でもストレスを感じさせないということではとても良いと思います。

実は、限界走行ではありませんが、この時はアテンザで軽くサーキット走行を行いました。限界域の挙動を確かめるようなスピードではなかったのですが、ステアリングフィールも適度に手ごたえのあるものですし、ターンインも素直な感じで好感の持てるものでした。ロールもあまり感じさせずに、ちょっとライトウェイトスポーツのような感じでコーナーをこなしていきます。

マツダにはアクセラやデミオといったスポーティに振ったクルマがありますので、あえてアテンザのディーゼルでサーキット走行をしようという層は少数派だと思いますが、もし私のクルマだったら、スプリングとショックアブソーバーはもう少し固めたいという感じはありました。

ただ、これは慣れの問題や私のドライビングの問題もあるのかもしれませんが、急制動ではなく緩めにブレーキングしながらヒールアンドトウをしようと思うと、アクセルのオルガンペダルをかかとであおるときに、ブレーキ踏力を一定に保つのが難しいような感じはもちました。おそらく、もう少しペースを上げて、フルブレーキングに近い状態からヒールアンドトウをすれば気持ちよくできるのではないかと思うのですが、そこまで攻める? のは遠慮しておきました。

主要諸元

車両型式

LDA-GJ2FP

エンジン

型式 SKYACTIV-D
種類 水冷直列4気筒DOHC16バルブ直噴ターボ
総排気量 2,200cc
ボア×ストローク 86.0×94.2mm
最高出力 129kW(175ps)/4,500rpm
最大トルク 420Nm(42.8kgm)/2,000rpm
燃料供給装置 電子制御燃料噴射装置(コモンレール)
使用燃料/タンク容量 軽油/62L
駆動方式 前輪駆動(FF)
燃料消費率(JC08モード) 22.4km/L

トランスミッション

6速MT

サイズ

全長 4,865mm
全幅 1,840mm
全高 1,450mm
ホイールベース 2,830mm
トレッド(フロント/リヤ) 1.595mm/1,585mm(19インチタイヤ)
車両重量 1,510kg
最小回転半径 5.6m
乗車定員 5名

サスペンション

フロント マクファーソンストラット式
リヤ マルチリンク式

ブレーキシステム

フロント ベンチレーテッドディスク
リヤ ディスク

タイヤサイズ

225/45R19

まとめ

SKYACTIVE-Dというエンジンは画期的と言われますが、実はそれほど特別なことはしていません。圧縮比をディーゼルエンジンが動くぎりぎりまで低めれば、相反するPMとNOxが減少するのはわかっていましたから、それを実現するために各部を見直したエンジンといえるでしょう。ただ、言うは易しですから、そこに至るまではさまざまなトライアンドエラーがあったと思います。そして市場投入された新エンジンは、各所で高い評価を得て、大げさにいえばディーゼルエンジンのイメージを変えたと言ってもいいでしょう。もちろん、完璧に排気ガスの問題がなくなったわけではないですが、これからも改善を続けることにより、化石燃料が使えるまでは、EVや燃料電池車と同様に期待の持てるパワーユニットと言えると思います。