【ボルボ XC90 T8 試乗】ツインチャージドエンジン&PHEVという欲しいもの満載なクルマ

乗用車メーカーとしては小規模とはいえ、高い安全性で定評のあるメーカーがボルボカーズです。このところは販売面でも勢いがありますが、新プラットフォームであるPSAや新開発のパワートレインの投入など、さらに勢いが加速する可能性もあります。今回は、SUVのイメージリーダーともいえるボルボXC90T8に試乗する機会を得ましたので紹介します。(飯嶋洋治/RJC会員)

ボルボ XC90 T8とは?

photo by iijima

スウェーデンを代表する自動車メーカーがボルボカーズは、堅牢なボディや3点式シートベルトの発明など、安全性に対する信頼性で名高いメーカーと言えます。さらには80年代、グループAによるモータースポーツが盛んになった時代に、240Tが「空飛ぶレンガ」と異名を持つほどの速さを見せ、その後は840エステートというワゴンもヨーロッパツーリングカー選手権に投入したことで印象深いメーカーでもあります。

フォードや中国メーカーの傘下に入るなど経営的に厳しい時代を経ていますが、ボルボは2012年に110億USドルを投資して、より技術力、ブランド力を強化しました。その一環がプラットフォーム、パワートレイン、デザインを一新した「SPA(Scalable Product Architecture)」を初採用したモデルである「XC90シリーズ」となります。T5、T6(2バージョン)、T8のラインナップがあり、どれも過給機付きの2リッター直列4気筒のラインナップとなっていますが、今回紹介するT8は特にプラグインハイブリッドとなっているのが特徴です。

エクステリアは?

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SUVですから、国産車の場合「押し出し感」、あるいは「威圧感」というものを前面に出してきがちなところですが、XC90の場合、サイズ的なボリュームは感じるものの全体的にはシンプルなエクステリアで、どこかに「質実剛健なボルボ」のイメージを継承しているように感じました。スクウェアを基本としたデザインでどこか上品さも感じさせます。フロント回りの幅や厚みに比例してフロントグリル大型化しているところがあえて言えば「強い主張」を感じさせるところですが、個人的な好みとしては、控えめ? で全体的に好ましいエクステリアとなっているように思いました。

インテリアは?

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比較的小径のステアリングや、立体的な造形を持つシートなど、割とスポーティな印象を与えるインテリアのように思いました。運転席に座りシートポジションを調整するに際しても、操作系はシンプルで、前後位置、シートバックなどの電動調整のスイッチは、はじめてでも戸惑うことはありませんし、通常の体形ならチルトステアリングと合わせて良好なポジションが得られるでしょう。ただ、若干シートスライド量が前方に少ない感はありました。

シートに座ってぱっと目につくのは、センターディスプレイでタッチスクリーン式となります。試乗時にはカーナビとして使うことがメインだったので、いろいろな機能を試すことはできなかったのですが、使い方をマスターすれば非常に便利なインターフェイスとなるだろうと思いました。センターコンソールのスタータースイッチや、モード切替スイッチはダイヤモンド形の刻み入り、シフトセレクターはクリスタルを使用するなど、高級感を演出しています。

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インテリア全体に関してみれば、もちろん高級感という面も配慮されているのですが、車両本体で1千万円超という価格を考えるとダッシュボードの作りの感じなどはどうかな? と思う面もあったのは事実です。ただ、その分は機能面に転嫁されていると思えば、違和感のない部分ではあります。操作系に関しては短時間の試乗で「ただ走るだけ」であれば、戸惑うことはありません。ただ、現代のクルマはいろいろな機能、モードが付いていますから、それを使いこなすにはもう少し時間が欲しいというところでした。

パワートレインは?

XC90 T8の最大のポイントとなるのがここになります。エンジンは2リッター直列4気筒でスーパーチャージャーとターボチャージャーが装着されるツインチャージドエンジンとなります。低回転域ではクランクシャフトの回転によって、高回転域では排気圧力によって過給されることで、パワーユニットの能力を余すことなく使う意図が見えます。

さらにT8はリヤに駆動用モーターが配されたプラグインハイブリッド(PHEV)です。リチウムイオン電池を満充電にしておけば、このモーターだけで35.4kmの走行が可能となります。モード選択では、エコ運転では「Pure mode」、日常の運転では「Hybrid」、スポーティな走行では「Power mode」が選択できるほか、「AWD」、「Off road」、任意で設定できる「individual mode」が選択できます。

ボディ&サスペンションは?

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ボルボは「2020年までに、新しいボルボ車において、交通事故による死亡率や重傷者をゼロにする」という高い目標を掲げています。XC90では、新プラットフォームPSA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)を採用しています。昨今の流れではありますが、軽量化しつつ強度を高める工夫が盛り込まれています。特に乗員の収まるキャビン周りは、ウルトラ高張力鋼板(ボロンスチール)を多用するなどして、ボルボ史上最も安全なボディ構造の設計を実現した、といいます。

サスペンション形式はフロントダブルウイッシュボーン、リヤマルチリンクという組み合わせとなります。型式だけみると、いわゆる高級車の足回りで、ヘビーデューティなSUVのものではありませんが、実際には一般道での走行や長距離移動が主となると考えらえるこのクルマの使われ方を考えるとベストと言えると思います。今回の試乗車にはオプションの4輪エアサスペンションが備えられていました。これは、ドライブモードの切り替えで、乗り心地や車高を切り替えるという機能を持たせたものです。

乗り心地は?

セレクターでDレンジを選び、アクセルを踏み込むと当然ですが電気モーターの動力で静かに発進します。一般道に出て感じるのはソフトな乗り心地。これはエアサスによるところが多いのでしょう。あまりスピードを出す気を起こさせずに、ゆったり走る気持にさせるという感じでしょうか? 一般走行をする限りはスポーティさを感じさせるものではありません。ステアリングは速度感応式となっていて、高速道路では適度な重さを示すということでしたが、町中を走行する限りでは非常に軽いものでした。個人的にはもう少し手ごたえがあってもいいかな? と思いました。

「Power mode」にしてアクセルをちょっと深く踏みつけると、エンジンとモーターが駆動されて強力な加速を見せます。スーパーチャージャー&ターボチャージャー+電気モーターで2tを超えるボディをグンッと押し出す力は十分なものです。ブレーキタッチは回生ブレーキですが、踏んだ初期からリニアに効く感じがして、違和感は少ないものでした。国産車の感覚からいうと、初期にもうちょっと効いた方がいいと言われる可能性があるかもしれませんが、個人的にはこの方がいいと思います。

残念ながら、ハンドリングを試す機会はありませんでしたが、一般的な走行をしている限りは、ごくゆったりとした大人の走りを感じさせてくれました。ぜひともワインディングで、このAWDシステムがどのような走りを見せてくれるのか試してみたいところです。

主要諸元

車両型式

DLA-LB420XCPA

エンジン

型式 B420(スーパーチャージャー&ターボ付)
種類 インタークーラー付ターボチャージャーDOHC水冷直列4気筒横置き・16バルブ[ガソリン+電気]
総排気量 1,968cc
ボア×ストローク 82.0mm×93.2mm
圧縮比 10.3 
最高出力 235kW(320ps)/5,700rpm
最大トルク 400Nm(40.8kgm)/2,200-5,400rpm
燃料供給装置 電子燃料噴射式
使用燃料/タンク容量 無鉛プレミアム/50L

電動機

型式/種類 T35(前)、AD2(後)/交流同期電動機
定格出力 22kW(前)、28kW(後)
定格電圧 350V(前)、309V(後)
最高出力 34kW/2,500rpm(前)、65/7,000rpm(後)
最大トルク 160Nm/0-2,500rpm(前)、240/0-3,000rpm(後)
充電電力使用時走行距離 35.4km
電力消費率 4.10km/kWh
EV走行換算距離 33.7
一充電消費電力量 8.22kWh/回

駆動用バッテリー

種類/個数 リチウムイオン電池/1(96セル)
電圧/容量/送電圧 360V/26kWh/360V
エネルギー消費効率(JC08モード) 15.3km/L

トランスミッション

電子制御前進8速A/T(ロックアップ機構付)ギヤトロニック

駆動方式

電子制御AWDシステム(エンジン+モーター)

サイズ

全長 4,950mm
全幅 1,960mm
全高 1,760mm
ホイールベース 2,985mm
トレッド(フロント/リヤ) 1,675mm/1,680mm
車両重量 2,340kg
最小回転半径 6.0m
乗車定員 7名

サスペンション

フロント ダブルウイッシュボーン式 
リヤ マルチリンク式

ブレーキシステム

パワーアシスト付4輪ディスクブレーキ

タイヤ/ホイール

タイヤサイズ 275/40R21
ホイールサイズ 9.0J×21(アルミ合金)

まとめ

もうちょっと長時間試乗して、いろいろ試してみたかったというのが正直なところです。ツインチャージドエンジンと電気モーターによるパワーという面ではある程度実感できたのですが、リチウムイオン電池をボディ中間にもってくることにより、前後バランスを改善していることや、モードによるサスペンション特性の変化など、「走り」という面ではこのクルマの真骨頂には触れることができませんでした。

もちろん「ガンガン飛ばす」クルマではないとは思いますが、ボルボはラリーやツーリングカーレースでの活躍でモータースポーツのイメージも強いメーカーです。想像になってしまいますが、きっとワインディングやダート路面に持ち込んだとき、さらにこのクルマの良さが見えてくるのではないか? と期待せずにはいられませんでした。

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