【トヨタ コンフォート】タクシーや教習車用に使用される車の謎に迫る!?

タクシーを降りた時、何という名前のクルマなんだろうと、トランクリッドを見ると「COMFORT」なんて書いてある。コンフォートなんてあったっけ? と不思議に思った経験をお持ちの方も居るでしょう。実はこの車、トヨタが出しているタクシーならびに教習者用のモデルだったんです。

タクシーらしいタクシーを追求して登場

トヨタ クラウン コンフォート

普段、あまり意識はしませんが、商用車の分野においても当然メーカー間のシェア競争はあるわけです。1993年に日産から、クルーというタクシー(および、パトカー)向けモデルが新発売になると、トヨタもその分野のテコ入れに迫られました。そうして1995年に発表されたのが、トヨタ コンフォートという自動車です。

日産クルーが、小型タクシーに対応する設計であったのに対し、トヨタにはコンフォートのホイールベースを105mm延長した、中型用モデルのクラウン コンフォートという兄弟車も用意されました。小型車用のコンフォートと日産 クルーを比較すると、全長で前者が4,590mmの後者が4,595mm、全高では前者が1,515mmであり後者は1,460mmです。細かい数字の差はあれど、両者とも似たり寄ったりのクルマ。激しいシェア争いとなったことも想像がつきます。最終的には、2009年に日産自動車がクルーの生産中止を決め、この分野から撤退。タクシー用車両のシェアはトヨタが完全に掌握します。

実はクラウンじゃなかった? コンフォートの中身

子どもの頃、友人のお父さんが乗っていた、あのクラウンセダンの容姿。保守的であることに価値が生まれるという、今時めずらしい価値観で作られたクルマが、このトヨタ コンフォートでしょう。しかし実は、そのベースとなるのは6代目のマークⅡです(1988年から1995年に販売)。

トヨタ コンフォートは、主たる目的が小型タクシー用ですので、Cピラーを立てて後部座席重視の室内を実現しました。同時にトランク容量もできるだけ確保。また、インスツルメントパネル周りには、タクシー用の無線機および料金メーターなどの業務機材が収まるスペースも用意しています。また、ボディーのスポット溶接数を減らすことで、うまく耐用年数を長くしているそうです。これも、商用車独特の作りこみと言えるのでしょう。

そして当然、その燃料はLPGです。誕生当時に搭載されていたエンジンは、直列4気筒DOHCの「3Y-PE型」で、出力は58kW(79ps)でトルクが160N・m(16.3kgf・m)という性能でした。これは2008年9月から現行の「1TR-FPE」に変更され、出力83kW(113ps)でトルクは186N・m(19.0kgf・m)へと改良されています。また、兄弟車の「クラウン コンフォート」には、2001年まで直列6気筒DOHCを搭載のモデルも存在しました(スペック不明)。

駆動方式の方も、もちろんタクシーらしくFRを採用。そして、このコンフォートが教習車として使われることも想定しているためか、変速機には5速のマニュアルトランスミッションも用意されています。今時のFRセダンでは、この組み合わせは稀有と言えますね。

最近の例に反して、過度なハイテクで飾られるようなことはありませんが、それでも一通りの安全性能も装備しています。それらには、スピンや危険なスリップを抑える「バリアブル スタビリティ コントロール(Vehicle Stability Control)」、加速時のタイヤの滑りを抑える「トラクション コントロール(Traction Control)」もあります。もちろん、ABSなどのブレーキアシスト機能も持っています。

ただ、シャーシの方はそれなりに地味な設計で、サスペンションは前輪にストラット式、後輪にはトレーリングリンク車軸式が使われています。

もちろんグレードも選べます

2016年現在でのトヨタ コンフォートには、3段階のトリムレベル(グレード)があります。まず、もっとも基本的なのが「スタンダード」です。

タクシーとしてはじめるなら、最も初期投資が少なくて済みそうなのがこの「スタンダード」グレード。シートも、タクシー独特のあの「通発ビニールレザー」が張られています。それでも、「パワーステアリング」や「LED式ハイマウントストップランプ」、そしてAT仕様車には「STOP&START SYSTEM」などを装備。社内の空気清浄には「プラズマクラスター」も付いています。タイヤは195/65R。

次にくるのが、「スタンダード“デラックスパッケージ”」。このグレードになると、シート表皮は「部分ファブリック」になります。タイヤサイズは「スタンダード」と同じですが、「15インチ樹脂フルキャップ」で見た目を飾ります。「チルトステアリング機構」が付くのも、このレベルからです。

そして、最高級グレードとなるのが「SG」。これになると、シートの表皮はなんと「ジャカードモケット」が採用されています。さらには「2スピーカーAM/FMラジオ」や、「デジタルクロック」という電子装備が与えられます。

もちろん、全グレードともに「マニュアルエアコン」は標準装備です。こうやって見てみると、商用車として求められる仕様のために、うまく贅肉をそぎ落としているのがわかりますね。

トヨタ コンフォート SG【諸元表】

名称:トヨタ コンフォート SG
エンジン排気量:1、998cc
エンジン出力:83kW(113ps)/4,800rpm
エンジントルク:186N・m(19kgf・m)/3,600rpm
全長:4,590mm
全幅:1,695mm
全高:1,525mm
重量:1,390kg
ホイールベース:2,680mm
サスペンション:ストラット式(前)/ トレーリングリンク車軸式(後)

toyota.jp コンフォートの公式ページです。カタログ情報の確認をはじめ、オーナーの皆様の評価の閲覧、見積りシミュレーション、他車比較シミュレーション、カタログ請求などができます。

モディファイ版のコンフォートとは?

トヨタ クラウン コンフォート

縦置きエンジンに縦置きのトランスミッション、さらにはFRの駆動方式。車を作り変える仕事をしている人にとっては、放っておけない素材でもあるのが、このコンフォートなのです。

チューンアップ版の市販車もあったコンフォート

トヨタテクノクラフトは、2003年に教習者使用のトヨタ コンフォートにスポーツチューンを施し、プロトタイプとして発表しました。この、ルーツブロワー式スーパーチャージャーを装着して、パワーを高められたモデルが「トヨタ コンフォート GT Z スーパーチャージャー」です。

ベースとなったエンジンは、排気量2.0Lの直列4気筒DOHC(3S-FE型)で、ハイメカツインカムと呼ばれたタイプ。それを118kW(160ps)、221N・m(22.5kgf・m)までスープアップしています。もちろん、サスペンションんもスポーツチューン、車高もノーマルから30mm下げて安定感を増しています。最高速度は、実測で204km/hに到達。

このクルマは、2003年の東京オートサロンにおいて、「チューニングカー部門 優秀賞」に輝きました。

お尻を振り回しまくるコンフォート

シンプルな構成のFR車は、ドリフトベース車両としても最適でしょう。

チューニングショップOKUYAMAは、2004年、トヨタテクノクラフトから3代の教習車用コンフォートを中古で調達。これをベース車として、「D1仕様」の車両を2台制作しました。そのエンジンは、排気量2.0L直列4気筒DOHC16バルブの、「3S-GTE」を使用。エアロチューンのみならず、なんとドアをガルウィングに付け替えるという、ど派手なルックスへ大改造。まさに、「Comfort(快適)」から、「Competition(競技)」の世界への大転身と言えましょう。

「D1グランプリ」での戦績は、2006年の第3戦富士でベスト16入りを果たしています。

自分でも乗り回したいなら購入を検討

コンフォート教習車ガソリン仕様

一般の方がコンフォートを新車で買って乗っても良いんです!

日本では、「ウーバー」の様なサービスは違法です。ので、仮にトヨタ コンフォートが手元にあっても、第二種免許を取得しないとタクシーとしては使えません……。

それでも、コンフォートに乗ること自体は誰でも可能。なぜなら、街のトヨタディーラーで購入が可能だからです。つまり、普通の5ナンバーで登録し、自家用 として使う分にはまったく問題はないのです。今時めずらしいFRの5速マニュアル車、加えて、オーラがないところが個性だと言えるルックス、これはこれで一つの訴求ポイントとなっているはずです。

燃料がLPGなので、身近に最低でも一軒はガススタンドを見つけなければいけません。しかし、天然ガス自動車の普及は時代の潮流の一つですから、日本でのエコを先取りとも言えますね。

購入に際しては、トヨタの公式サイトで、自分の住所をもとに最も近い取り扱いディーラー(トヨペット店)が検索できます。新車価格については、そちらでお見積りをしていただきたいと思います。

コンフォートの中古車はさすがにないだろう……?

実はあるんです。

中古の市場をざっくり調べても、意外にすんなり複数の台数が出てきます。たとえば、2008年登録で走行距離が8.7万kmの5速MT車両が、車検なしの状態で490、000円です。あるいは、1999年の登録で同じ5速MTの走行距離10万kmという車体が、車検整備つきで380、000円。

オートマも選べます。元は教習車(ガソリンエンジン)という2010年登録の4速ATが、走行距離2.7万kmで車検なしなら598、000円。同じような教習車で2006年登録、走行が3.9万kmのオートマ車が、車検なしで398,000円というのもあります。

そしてなんと、「コンフォート GT Z スーパーチャージャー」まで出ています。こちらは、2003年登録で走行距離は7.3万kmに車検整備がついて、2,390.000円です(これは、ちょっとした出物ではないでしょうか)。

こんなにベース車両があるのなら、「TOYOTA GAZOO Racing」あたりで企画して、ファインチューニングのワンメイクレースでもやったら面白そう。そんなことも考えてしまいますね。

トヨタ コンフォートのまとめ

タクシー車両に求められる素性って何だろう。それは先ず、後ろ座席の居心地の良さでしょうし、大きなスーツケースを2つくらいは運べる荷室の容積でもあるでしょう。同時に、ドライバーが過度に緊張したり疲労しないレベルの、走行安定性も必要だと思います。

あとは、そこそこのオーディオとエアコンがあればOK。つまり、一般の自動車に必須である基本的な要素が見えるのが、タクシー用などの商用車なのです。

格好良いとはお世辞にも言い難い、このトヨタ コンフォート。でもそれに、説明しようのない興味というか魅力を感じてしまうのは、クルマの本質にもっとも近いシンプルな姿に、心のどこかが引かれているからなのでしょう。