【日産 クルー】タクシー向けに開発されたゆえの懐の深さが魅力!

2016年6月現在、日産自動車が日本国内でラインナップしているタクシー用車両はNV200バネットのみ。昔ながらのセダンタクシーはなくなってしまいました。しかし、かつては小型タクシー専用車として開発したセダンをラインナップしていたこともありました。それが今回ご紹介する日産クルーです。

日産 クルーとは?

日産 クルーは93年7月、小型タクシー向けとして乗用モデル廃盤後も製造を続けてきた、
910ブルーバード営業車、C32ローレル営業車の販売終了を受けて、日本初の小型タクシー専用車輌として誕生しました。

当時のタクシー業界のニーズに沿って、コンベンショナルな3BOXのFRセダンとなっており、そのコンポーネンツはC32ローレルセダンのフロントセクションと、Y31セドリック/グロリア営業車のキャビンおよびリアフロアパンを組み合わせたものとなっていました。

タクシー専用車ならではのつくりこみ

日産 クルーはタクシー専用車として開発されただけあって、高い耐久性・信頼性(リヤサスに独立懸架方式ではなく、簡易な構造の5リンク式を採用など)、および整備性(ボンネット開閉にガス圧式ダンパー採用など)の確保に重きをおかれていました。

またタクシー専用車としての生い立ちを象徴する部分として左右で異なるドアサイズも挙げられます。一般的にドアサイズは左右対称で設計されるものですが、このクルーではドライバーが日々利用する右前ドアと後席乗降比率の高い左リアドアの前後幅を反対側より50mmずつ大きくとった左右非対称設計となっているのです。

担当デザイナーから伺ったここだけの話

ちなみに、筆者は日産でこのクルーを担当したデザイナーさんにお話を伺ったことがあるのですが、小型タクシードライバーからの外見への要望として、「えばれる(威張れる)ことが大事」という要素があったそうで、(当時の)小型タクシーとしてはグリルやボンネット高など、立派に見えるよう意識してデザインしたとのことでした。言われてみれば、フロントヘッドランプの造形はY31セドリック/グロリア、リアの台形テールはY32セドリック/グロリア~シーマと、当時の上級日産車を彷彿とさせる意匠を意図的に取り込んでいるようにも思えます。

地味なイメージが強いクルーではありますが、当時の小型タクシーといえば日産以外では、X80型マークⅡセダンや、昔のルーチェをベースにしたマツダのカスタムキャブ、三菱のギャランΣのセダンなど、スリークな印象のセダンが主体だったので、これでも十分立派な風貌と言えたのでしょう。

日産のタクシー専用車開発という選択に刺激されたのか、トヨタも遅れること2年5ヶ月の1995年12月に小型/中型タクシー専用車としてコンフォート/クラウンコンフォートを送り出すこととなるのです。

タクシー専用にしておくのはもったいない? 次第に広がる活躍の舞台

タクシーと同時に発売開始されていた教習車仕様

実は発売当初から、タクシーのみならず教習車仕様が用意され発売されていたのですが、営業車としての扱いやすさが考慮された設計ゆえに、免許取得中の教習生にもなかなか扱いやすい車だったようです。実際にクルーの教習車で教習されていた方は下記のようにブログに書いていらっしゃいます。

・運転席からボンネットの先はよく見えるし
・安っちいシートだけどランバーサポートが付いてるし
・トルクあるし
・ギアもすぐはいるし
・小回り効くし

さすが、種車が営業車だけあって疲れにくいです。
ハンドルも軽すぎず重すぎず回しやすいし。

LPG車だけど、2リッターだしトルクが結構あるんですね。
半クラも分かりやすいし、そのまま保持するのも意外と楽ちん。

出典:blog.livedoor.jp

営業車ゆえの実直さが魅力に? 自家用仕様のサルーンが追加

そんな素性の良さゆえか、94年1月には自家用向けの「クルー・サルーン」が発売されます。といってもその内容は実直そのもの。エンジンは派手さは無いものの実用本位に徹した扱いやすさと直6ならではの素直なフィーリングに定評のあったガソリンRB20EとディーゼルRD28Eのラインナップ。もちろん5速フロアMTの選択もあり、5ナンバーの直6搭載のFRセダンとしてはリーズナブルな価格設定となっておりました。

当時は3ナンバー税制改変の影響で、5ナンバーサイズに収まっていたミドル~アッパーミドルクラスのセダンの多くが3ナンバーサイズに拡大していたのに加え、バブル景気の余波で贅沢装備が当たり前となっていました。クルー・サルーンは正にそういう時代の風潮を好まないユーザー層にうってつけだったのです。

パトカー仕様は実質的にスカイラインパトカーの後継車に! 

そして同年1月にはパトカーがラインナップに加わります。
このクラスの日産の警邏パトカー用車種としては長らくケンメリ以降のスカイラインが君臨していたのですが、R32型は実用性を多少スポイルしてまで走りに徹した性格が警邏パトとしては災いし積極採用に至らず、しばらく空席状態でした。

その穴を埋めんとばかりに登場したクルーのパトカーは、タクシー専用車ならでは実用性と廉価な価格を武器に全国の警察に大量採用され、R32型スカイラインの雪辱を果たすこととなるのです。

photo by ak23_katsu

通好みの素性の良さ? 多方面のカスタム(改造)ニーズに応える汎用性。

先に述べたように自家用仕様はラインナップされていたものの、小型タクシーやパトカー、教習車として見かける程度で、自家用車としての一般認知度は低かったであろう日産クルー。

しかしながら、下記のように多方面のカスタム(改造)ニーズを引き寄せるだけの様々な特徴を持っていました。

1.営業車向け故の高い耐久性・信頼性および整備性
2.クラシックな3BOXセダンスタイル
3.5ナンバーサイズ
4.MTの設定がある
5.FR車
6.RB系エンジン搭載車の中では安価な価格設定
7.エンジン/ミッション/足回りのいずれも他の日産人気車種の純正およびアフターマーケットのパーツの流用がしやすくチューニングする上でも汎用性が高い。
8.知る人ぞ知るマニアックな存在

ざっと挙げるだけでもこれだけの特徴があるのです。

あのミツオカ自動車も、ビュートに続くクラシックカスタムカー、ガリューのベースに起用

日産クルーベースのカスタムカーとして一番有名なのは、ミツオカ自動車のガリューかもしれません。
2代目マーチをベースに往年のジャガーMKII風の外装を架装したビュートがヒットしたミツオカは、ロールス・ロイス・シルバークラウドIIをモチーフにした上級車種・ガリューのベースにクルーを起用したのです。まさに上記の特徴1・2・6が改造ベースとして活かされた例ですね。

もちろんドリフトや走りに振ったチューニングにも向いてます。

先にあげた、特徴の要素から、ドリフトなど走りに特化した改造にも向いています。ドリフトなどで扱いやすい日産FR車の定番といえば、スカイラインにシルビア/180SX、ついでローレルや初代セフィーロといったところでしょうが、ここで意外性やマニアック度と狙うのであれば、クルーはまさに唯一無二の大穴的存在といえるでしょう。

業務用上がりも目立つ中古車、用途によって選びましょう。

クルーの中古車をネットでチェックしてみるとタクシー落ち、教習者落ちといった元業務用のものから、RB20DETへの換装~機械式LSDや車高調が奢ってある走りに特化した改造済みのものまで、だいたい30万円弱か55万円までの出物がありました。業務用で使われていたものは、定期的にメンテナンスされていたとは思いますが、使用用途や走行距離なども考慮の上、購入を検討されていた方が良いと思います。

改造車についても、価格と改造内容に釣られず、もはやメーカー純正でないことをわきまえた上で、その完成度や各部の状態をきちんと判断した上での購入をオススメします。

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まとめ

小型タクシーや教習車、パトカーでの活躍も見れなくなってきている日産クルーですが、単なる業務用地味セダンに留まらない、懐の深さというものを感じていただけたでしょうか?

日産クルーは業務用の地味な3BOXセダンながらも、どこかコアな車好きの琴線に触れる懐の深さをもっているあたり、古き良き日産の魅力をそなえた隠れた名車の1台かと思います。