【BMW M2クーペ 試乗】コンパクトなボディに強烈なパワー! これぞ「M」を体現

BMWでも「M」が付くか付かないかで、意味合いが違ってきます。このMはまさしくモータースポーツのMだからです。M社は古くは3.0CSLなどのツーリングカーのエンジン、F2で一時代を築いたM12/6エンジンを手がけ、市販車では70年代のスーパーカーのM1、モータースポーツで大活躍した初代M3(E30)などを送り出してきました。その血統を継ぐのが今回のBMW M2クーペです。(飯嶋洋治/RJC会員)

BMW M2クーペとは?

「M」の血統を継ぐ、コンパクトで過激なスポーツクーペ!

photo by iijima

BMW MといえばBMWのモータースポーツディビジョンです。1972年に設立された当時はBMWモータースポーツという名称でした。1979年に日本スーパーカーブームの頃ミッドシップスポーツカーである「M1」を手がけ市販されました。F1にもエンジンサプライヤーとして参加し、1983年はブラバム/BMWのネルソン・ピケがF1タイトルを獲っている(コンストラクターとしては3位)他、モータースポーツでの活躍は枚挙にいとまがありません。1993年に現在のBMW Mに社名を変更して、現在でも、BMWの中でも尖った部分で存在感を見せています。今回のM2もそうしたBMWの伝統の中に位置づけられるクルマといえます。

エクステリアは?

フロントスポイラーは見た目だけでなく、性能アップを重視!

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試乗車のM2はコンパクトなスポーツクーペですが、大径のタイヤが四隅に踏ん張った感じで、それだけですごみを感じさせます。一見は2シリーズですが、コーナリングの安定性を向上させるためのワイドトレッド化は明白で、フロントが70mm、リヤが65mmの拡大となりました。フロントスポイラーは大型のエアインテークと共用されており、空力性能とエンジン、ブレーキの冷却性能を高める配慮が見られます。キドニーグリルはBMW Mモデル特有のダブルスポーク・ホイールのデザインを反映、ハイグロス・ブラックにペイントされたダブルバーも採用しています。

操縦安定性向上のためにぎりぎりまでワイドトレッド化!

サイドビューから見ると、そのショートオーバーハング、ロングホイールベースぶりがよくわかります。トレッドの拡大と合わせて、コンパクトな中でも最大限の操縦安定性の確保を狙っている意図が見えます。フロントホイールアーチ後方からリヤに向かうキャラクターラインも、特に張り出したリヤフェンダーを強調するようで、Mというモデルには似つかわしいでしょう。

もともとモータースポーツでは一番の核となっていたM3が大型化してしまった現在、取り回しのよいサイズで、やる気を起こさせるという意味では、このM2がふさわしいのではないかとも思いました。

インテリアは?

一見普通だが、人間工学に基づく扱いやすさを重視!

過激な性能を謳ったクルマなので、コクピットもスパルタンなものを期待してしまいますが、イマドキのクルマですから、かなり洗練されています。ブラック基調で統一されており、シートにはブルーのステッチがほどこされています。わりと普通な感じで、過激なスポーツカーを想像するとちょっと拍子抜けという面もあるかもしれません。

ただ、見かけで判断してはいけないところ。BMWによると、サーキットでの過酷な走行状況においても、ドライバーの意図を確実にマシンに伝えるため、あらゆる装備を人間工学に基づいて設計している、といいます。電動調節機能付サイドサポートを備えたシート・バックは確かに見かけ以上にホールド性はよく感じました。ステアリングのグリップ感もいい感じです。もちろんパドルシフトも装着されます。さりげなく機能的という部分がM2のキモかもしれません。

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パワートレインは?

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3リッター直6ターボエンジンは、ダブルVANOSとバルブトロニックで制御。

ベースとなるエンジンはN55と呼ばれる直列6気筒3Lエンジン。これまでも3シリーズや5シリーズに搭載されてきたものです。Mは伝統的に頭にSが付くエンジンが搭載されてきており、やはり直列6気筒3LエンジンのS55と呼ばれるエンジンもあります。そういう面ではちょっと残念なのですが、ピストン、クランクシャフトのメイン・ベアリング、スパークプラグは、S55を積んだM4と共有し、パフォーマンスを上げています。

ターボチャージャーはシングルですがツインスクロール方式としてレスポンスを上げています。モーターによって吸気バルブをコントロールするバルブトロニックと、可変バルブタイミングシステムであるダブルVANOSを組み合わせ、低回転から高回転まで継ぎ目のない加速とレスポンスの向上を図っています。

向上したエンジン性能に見合う冷却、潤滑システムを付加!

冷却システム、オイル潤滑システムも、サーキット走行など過激な使い方を視野に入れたものとなっています。オイル・サンプ・カバーとサクション・オイル・ポンプを追加で採用。激しい加減速でもオイルの循環を妨げないものとなっています。さらにエンジン冷却ラジエターとトランスミッション・オイル・クーラーを追加採用したことで、熱対策を向上させています。

トランスミッションは7速 M DCT Drivelogic(エム・ディーシーティー・ドライブロジック)を採用しています。いわゆるデュアルクラッチトランスミッションで、シフトチェンジと途切れのない加速を果たすべく装着されたデバイスです。

その他、駆動系では、エンジンパワーを左右リヤホイールの間で自動で配分するアクティブMディファレンシャルが備えられています。これは車速やアクセル開度、ホイールの回転速度、ヨーレートなどの車両情報から、介入が必要とな運転状況を事前に察知し、電子制御式多板クラッチがリヤデフのロック率を0から100%まで調整するというものです。当然のことながら、このデバイスの有効性を確かめるような状況にはなりませんでしたが……。

サスペンションは?

アルミニウムの多様でバネ下重量を軽減し、軽快な操縦性の実現を図る!

BMW M4クーペと同じく、アルミニウム製フロント/リヤアクスルを採用しています。これは剛性を確保すると同時に、バネ下重量の低減を図ったものです。フロントのサスペンションは、ダブル・ジョイント・スプリング・ストラット式。コントロールアーム、ホイール・キャリア、アクスルキャリアをアルミにしたことでスチールに比較して約5kgの軽量化を果たしました。

リヤは5リンク式(マルチリンク)です。こちははコントロール・アームとホイール・キャリアをすべてアルミニウム製とすることで、スチール製に比べて3kgの軽量化となりました。

乗り心地は?

うっかりアクセルを踏み込むと、強烈な加速Gが待ち受ける!

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エンジンを始動させ試乗コースに出て普通に走ると、ちょっとした不整地でもコツコツとボディに入力があり、引き締まった足を感じさせます。3リッター直列6気筒エンジンは存在感を主張してきません。ちょっとペースを上げるためにアクセルを踏んだ瞬間に、強烈な加速力の片鱗を見せてくれます。正直いって「市販車でこんなに過激でいいの?」という感じ。370psというパワースペックから見れば不思議はないのですが、決して軽くはないボディをここまで引っ張るのは強烈です。

引き締まった足回りは「モータースポーツ仕様」としては満足のいくもの。

乗り心地に関しては、一般的にはかなり硬い部類に入ると思います。一定速以上でもドライバーのお尻にはそれなりの突き上げがあります。国産車のスポーティカーだったら絶対にお客さんから不満の出るレベルで、ここはMだから許される部分かもしれません。あとはさすがに19インチの扁平率35というタイヤはランフラットでないとしても重すぎるのではないかと思いました。

今回は、一般道けっこう荒れた路面の影響もあったと思いますが、サーキットのような路面でこれがどういう操縦性を見せるのか? というのは非常に興味深いところです。このクルマの限界の挙動を見るにはやはりそういうところが必要だと思いました。

主要諸元

車両型式

型式 CBA-1H30

エンジン

エンジン形式 直列6気筒DOHCターボ
総排気量 2,979cc
最高出力 272kW(370ps)/6,500rpm
最大トルク 465Nm(47.4kgm)/1400rpm-5,560rpm)
圧縮比 10.2
燃料消費率(JC08モード) 12.3km/L
使用燃料 無鉛プレミアムガソリン

トランスミッション

7速M DCT Drivelogic

寸法

全長 4.475mm
全幅 1,855mm
全高 1,410mm
ホイールベース 2,695mm
車両重量 1,580kg
最小回転半径 5.6m
定員 4名

サスペンション

フロント ダブル・ジョイント・スプリング・ストラット式
リヤ 5リンク式(マルチリンク)

ブレーキシステム

フロント/リヤ(ABS付) ベンチレーテッド・ディスク/ベンチレーテッド・ディスク

タイヤサイズ

フロント 245/35ZR19
リヤ 265/35ZR19

製造業者

BMW AG

まとめ

M2の試乗をまとめると、パワフルなエンジン、スムーズなトランスミッション、スパルタンなサスペンションというところです。操縦性に関しては、今回の一般道の試乗の範囲ではどこか神経質ということもなく、こういったサスペンションが苦にならない人ならば、普段の足として十分に使えると思いました。

こういう高性能をあまり意識せずに操れるようにしているのがM2の真骨頂なのかもしれません。こんなクルマに乗ると、習性的に? 「ジムカーナのトップドライバーに乗ってもらって、どのくらいのタイムが出るのかを試してみたい」と思ってしまいます。

また、個人的にはE30M3に乗っていることもあり、いろいろ興味深いものがありました。私のM3はノーマルということもあるのですが、今回のM2に比べるとM3の方がサスペンションはかなりしなやかな印象を受けます。言い方を変えれば、M2はすでに後からチューニングなどで手を入れる必要がないということなのかもしれません。その辺を完成度が高くて素晴らしいとみるか、手を入れるところがなくてつまらないとみるかはわかれるところだと思います。

そして何よりもM2のモータースポーツシーンでの活躍を見てみたいというのが今回の試乗を終えての感想でした。

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