【マセラティ シャマル】クーペデザインの真髄を行く、イタリアンスポーツの魅力に迫ります。中古車相場などの情報も!

モノの形状について色々と揶揄するのは簡単です。しかし、造形で何かを表現する方の仕事は、簡単なものではないでしょう。そして、その時点ではヒップでもポップでもない姿が、未来のどこかで偶然脚光を浴びることもあり得ます。この、マセラティ シャマルの姿も、そんなデザインの1つだと思うのです。

マルチェロ・ガンディーニ、もう一つの試み、それがシャマル・デザイン

出典:https://www.watanabejidousha.co.jp/news/120719_1/

今日もまた、世界中の自動車メーカーでは新しいクルマの形を求めて、デザイナーさん達が悪戦苦闘しています。そんな彼ら彼女らにしてみたら、市場に販売した途端いろんなパーツを引っぺがされて、第3者が用意した羽や筒を取り付けられる様子は、それなりに疑問を感じているでしょう。

まぁ、クルマの乗り方も十人十色。どちらにしても、それに対する愛着は変わりません。

さて、その要素の中でも、美しさと格好の良さが最も中心に置かれるのがカーデザイン。そしてそのメッセージを最も明確に表せるのが、2ドアクーペの車体ではないかと思います。歴史の上では、ランボルギーニ カウンタックなどという強烈な存在も居ます。同時に、その対極に位置すると言っても過言ではない一台として居る高級スポーツカーが、1990年に発売されたマセラティ シャマルでしょう。

異形と呼ぶべき姿のカウンタックに対して、シャマルの方はむしろトラディショナル。そして驚くべきは、その両方とも同じデザイナーの作品であるということです。その人こそ、ベルトーネに在籍していたマルチェロ・ガンディーニです。

マセラティ シャマルは、ちょうど同社のクアトロポルテIIIとIVの間を埋めるように販売された一台です。とは言え、そのノッチバックスタイルはサルーンのクアトロポルテとは全く違う存在となっています。

安定感のあるデザインが魅力

マセラティの様な少量生産&超高級車でも、ボディ表面のパーツを自分好みに取り換えたいと考える方は居るのでしょう。しかし、ガンディーニが描いたマセラティ シャマルのシルエットは、その動機も薄れるような安定感を持っていると思います。それは良くも悪くも、固く完成していると言って良いでしょう。

現行のグラントゥーリズモは、1990年代から2000年代に販売された、3200GTやクーペの血統を引き継いでいます。モデルのラインとしては、シャマルはその1つ前の時代に置かれているクルマです。そして、現行クーペが持つ曲線基調のスタイリングとは、かなりギャップのある直線によるデザインとなっているのが、このシャマルなのです。

もちろん、ボディパネルの成形技術など(そしておそらくフィッティングも)、ともすれば最近のマツダ車の方がレベルが高いかもしれません。しかし、ボンネットの後半ウィンドシールドの下に設置された独特のエアスポイラー(ダウンフォースのためではなく、ワイパーの効率を上げるために付けられています)や、サイドシルに配された空力処理も含めて、一流の節度というものを感じさせます。加えて、リアのホイールアーチは、第4世代のクアトロポルテIVやカウンタックにも適用していた「スラント形状」です。

ボディカラーに関わらず、かならずブラックに塗装されているというセンターピラーは、そのまま転倒時の安全性をたかめるロールケージの役割ももっています。フロントのヘッドライトは、外側の二つがロービーム、内側の二つのスクエア型がハイビームを担当します。

横から見たシルエットは、直線が作る台形を中心に置いたものでありつつ、良くみてみると節度ある曲面がうまく配置されている。トラディショナルと言えばそうですが、そこにはやはり、強いマセラティの存在感が浮かび上がります。この硬派なシルエットは、少し後に生まれたマセラティ ギブリIIへも継承されて行きます。

エンジン&足回り

その始祖をビトゥルボに置くマセラティ シャマル。当然のことながら、エンジンには2つのターボチャージャーを備えています。とは言うものの、シャマルの場合はV型8気筒DOHC32バルブ(ビトゥルボはV6)で、排気量は3.2L。出力は243.1kw(330.5ps)でトルクは431.5Nm(44kgm)を発生します。時速0のスタンディングから60mph(約96km/L)の加速性能は5.3秒で、最高速度は270km/hに到達しています。

ちなみにシャマルのこのエンジンは、フロントバンパーを前方に取り外すことで、ラジエター共々前に引き出す事ができる構造だそうです。その後方からプロペラシャフトへ駆動力を伝えるのは、ゲトラグ制の6速マニュアルトランスミッション。

マセラティ・エンスージアストの間では、ともすると評判の良くなかったかもしれないビトゥルボのシャーシ。それが、別のモデルであるカリフを得て、さらに改良され使用されたというのがシャマルです。そのフロントサスペンションには、路面とホイールの角度を最適に保つための、凝ったリンケージシステムが適用されていると言います。これによりシャマルでは、ハンドリングの応答性と正確さが向上しました。また、サスペンションには4モード式の電子制御ダンパーが装備されています。

希少なシャマルの中古車を探してみる!?

高品質で手作りレベルの少量生産。そんなスポーツカーを追求するマセラティ社は、いままで経営権を幾多の企業へ譲渡してきました。ちょうどシャマルの頃は、デ・トマソ傘下に入っていた頃、そして総生産台数は370台程度と聞きます。

こんな事情を考えると、日本国内にマセラティ シャマルが現存している方が凄い話に聞こえます。もしあったとしても、どなたかの箱入り娘になっていて、中古車市場などにはほぼ流れてこないと思われます。手に入れるには、オークションなどへの出品を待つ方が良いかもしれません。まぁ、新車の価格がおおむね14,000,000円程度ということですが、中古の車では価格の相場が形成されるほど数がなさそうです。

とは言え、実際にシャマルを所有して大事にしている方の話は、いくつかのブログやサイトに載っています。そういった所の言葉を見ると、ご多聞にもれず、付き合い方の覚悟と術がある人間のためのクルマ、との印象が伝わります…

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まとめ

技術が進んだ21世紀では、たとえば市販車のヘッドライトの形状を、面倒くさい程に凝ったものにすることも可能です。しかし、「比較的簡単に出来るようになった高度な技」は、やはり歴史に爪痕を残すモノではないでしょう。

すでにクラシカルな部類に入る、マセラティ シャマルのデザインスキームは、素朴と言えば素朴な手法によって成りたっているとは思います。それでも、格好良さに媚びない中に質感と存在感が表現されている、そんな魅力をもったスタイリングだと思います。