プジョー 1007 電動ドアを開けて乗り込む未来感覚がステキ

プジョー1007。それはトールデザインのスモールワゴン。両側電動スライドドアを採用しているのが1番の特徴です。いつも3ケタを使うプジョーが初めて4ケタを採用したモデルでもあります。以降“従来のカテゴリーにとらわれない新しいコンセプト”のモデルに4ケタを使っていますね。そんな1007とはどんな突拍子もない車なのでしょう?

プジョー1007ってどんな車?

誕生から導入までの経緯

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%BB1007

2003年にプジョーのコンパクトハッチ“106”の生産が終了し、後継車の登場が待たれれていた頃、プジョーが新しいコンパクトを作っているという噂が流れました。市場ではいよいよ“107”の登場かとささやかれたのですが、どうも伝わってくる内容は的を射ないものばかり...。翌2004年に“1007”は発表されました。
けっこう待たされて、日本への導入は2006年2月になりました。
日本へ輸入された1007は、1.4L・1.6Lの2種類のガソリンエンジン+セミオートマチックの5速M/Tの設定でした。
1.4Lモデルは199万円、1.6Lモデルは229万円で、いわゆる2ペダルマニュアルのみの設定です。プジョー車では1007が初です。
1.4と1.6の違いは、サイドモールの非塗装/同色、エアコンのマニュアル/オート、15インチ鉄ホイール/16インチアルミ、ヘッドライトの内部がシルバー/ブラックといったところです。さらに1.6には、サンルーフとルーフレール、ESPのセット(20万円)が追加できました。

ちょっと小話

Photo by hertylion

プジョーの日本向仕様車はイギリス向けの右ハンドル車を流用しています。
イギリス人って車にエアコンを付けないんですよね。日本ほど暑くないのは事実ですが、それよりも理由は税金がかかるからなんです。
イギリスは、生活必需品は無税もしくは低利税なのですが、贅沢品は高利税なんです。有名な話ですが、ジャガイモは無税でポテトチップスは課税対象です。
そんなわけで、イギリスではエアコンが売れないものですから、右ハンドル用のエアコンの開発が遅れる傾向にあります。遅れるどころか開発されないことも。106は右ハンドル用のエアコンを開発しなかったため、日本には左ハンドルのみが輸入されていました。

OPEN SESAME!

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見てください、これ。なんと両側電動スライドドア!助手席側に採用されている例はトヨタのポルテがありますが、運転席まで電動スライドとは、さすがプジョーって感じです。なんだかもう、これだけでワクワクしちゃいますね。
サイズはトヨタのヴィッツ並みで、全長3,730mm×全幅1,710mm。ただし、背はずいぶん高く、1,630mm。ホイールベースに至ってはたったの 2,315mmと、今どきの軽自動車より短いんです。ただ、実車を目の前にすると、もっと大きく感じますね。常識外れの寸法と面構成で“コンパクトカー”と呼ぶのを少々ためらうほどです。ちなみにプジョーはマルチパーパスビークルと呼んでいます。

ピニンファリーナとのコラボデザイン

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膨張しがちなこの手の車ですが、さすがはピニンファリーナですね。要所をキュッっと締めることで、膨らんで見えないように工夫されています。
特に感心したのは、ドアのスライドレールをガーニッシュにしてあるところ。後ろをぐるっと回り込むように、左右のドアレールを繋いでいます。前から後ろまで流れるように走るプレスラインと、一段下がったプロテクトモールが並行して走るデザインは秀逸ですね。

着せ替えできる“カメレオキット”

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1007の楽しいポイントは両側電動スライドドアだけではありません。ボディカラーに合わせて内装色も変化するのですが、さらにカスタマイズできてしまうんです。
このツートンカラーの内側、色が薄い部分がジッパーで外れて交換出来るんです。エアコンの吹き出し口に付いているリングも合わせて交換できます。
ちなみに、この写真は我が家にいた車で、このラセルタイエローというボディカラーには濃淡の紺色デュオトーンが標準なのですが、ボディーカラーに合わせて交換しました。
気分で入れ替えるも良しですし、洗い替えに同じ色をもう1セット用意しておくのも良いですね。
ちょっとした裏技ですが、この機能を利用して“シートヒーター”を仕込んでいました。表皮がめくれてくれるので、実に簡単に取り付けできますよ。これからの季節にオススメのカスタムです。

乗ってみましょう

我が家では、デビューイヤーから一昨年までの7年間、ルーテシアに乗り換えるまでカミさんの足として活躍してくれました。当時の事を思い出しながらのインプレッションです。

開けドア!

まずは電動スライドドアを開けてみましょう。さすがにボディの中へドアが入ることはありませんので、一旦外へスライドします。その量約18センチ。ちょうどドアミラーの先あたりまでです。あまりぴったりと寄せて停めてしまうと、ドアが開くときになにかにこすってしまうかもしれません。電動だけに気付いたときには遅いですから注意が必要です。
一旦外へズレたら、そこから後ろへ動きます。ボディの後端手前でとまりますので、後ろ方向にはとくに注意は不要です。ただし、給油中に助手席を開けるのは御法度ですよ。実際にやらかしたことはありませんが、多分、とんでもないことが起きるはずです。

開口部はそこそこ大きいのですが、後席への乗り降りは“楽々”とはいかないですね。通常の2ドアよりは良いレベルです。

内部は広々空間

中へ乗り込むと、なかなか広大な空間が広がります。低く抑えたダッシュボードのおかげで、視界がとても広く運転が楽そうですね。
シートアレンジが多彩で、用途に合わせて使い分けできます。助手席&リヤシートは、バックレストが水平になるまで前に倒れます。背面は樹脂製のトレー状になっていますので、テーブルとしても重宝しそうです。
さらに、欧州車のセオリーであるタンブルホールディング(前転するように折りたたむ)も可能ですので、2人乗りの場合は最大325Lものラゲッジ空間が生まれます。
ちなみに、後席の座面幅の関係で、4人乗りです(日本では1人あたり40センチ必要)。タイヤハウスが張り出しているので内寸で120センチが確保できず、3人分としては認めてもらえないのです。

いざ発進!

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乗り慣れない2ペダルのセミオートマチックトランスミッション。今でこそ採用している車はたくさんありますが、当時はまだ見慣れないもので、我が家でも初めての体験でした。
マニュアルトランスミッションの“クラッチを切る~ギヤをシフトする~クラッチを繋ぐ”の操作を車がやってくれます。シフトノブを前へ倒すと1速に入ります。ゆっくりとアクセルを踏み込むと、上手にクラッチを繋ぎながら発進できました。
走行中は、シフトノブを前へ倒せばシフトアップ、手前に引けばシフトダウンできます。ハンドルの向こうにあるパドルでも同様に操作できます(右がシフトアップ・左がシフトダウン)。
なかなか秀逸なプログラムで、ブレーキを踏んで減速すると速度に合わせて自動でシフトダウンしてくれますので、エンジンブレーキを併用しながら減速可能です。
シフトレバー後ろの“AUTO”のスイッチを入れると、上述した操作をすべて車が行ってくれます。ドライバーはアクセルを踏み込むだけで“クラッチカット~シフトチェンジ~クラッチエンゲージ”の操作をしながら加速していきます。この際にアクセルを踏み込んだままだと、シフトチェンジ動作中に起きる減速分とエンジン回転のギャップのために、多少ギクシャクします。操作に慣れてきたら、クラッチが切れる瞬間がわかるようになりますので、アクセル踏む右足をわずかに戻してあげると、ギクシャクせずにスムーズに加速できます。

クリープがない・・・・なんて

上述したとおり、クラッチ操作を車が行うだけで構造上はマニュアルトランスミッションですから、普通のオートマチックトランスミッションのようなクリープ(わずかに前進する現象)がありません。
上り坂でブレーキを放すと後ろへ下がりますので、注意してください。サイドブレーキか左足ブレーキを活用しましょう。

意外なほど重厚な走り

ギミックに溢れたチープな小型車だと侮る事なかれ。小さくてもしっかり欧州車です。実にどっしりと安定して走るんです。こんなに背が高くてホイールベースが短いのに、たいしてピッチングがありません。ふらふら感もありません。でも硬い印象ではなく、ちゃんとフランス車の“しっとりふわふわ”な味付けなんです。

1007の良いところ・気になるところ

実際に乗って使って感じたこと。

まずは良いところ

決してファニーなスモールカーではなく、2クラスくらい上級レベルの作り込みの良さ。富裕層のカジュアルな足みたいな感覚です。
7エアバッグを標準装備している安全性の高さもいいですね。
カメレオキットで内装色のアレンジが変えられるのも楽しいところ。日本車にはない遊び心と実用性が共存しています。

要所に用意された細かなユーティリティーも使い勝手が良いのです。グローブボックスの照明、シートアンダートレイ、助手席シートバックテーブル、後席の床下収納、アームレストの小物入れがなどなど。
そして、小さな気遣い大きな便利なのが、ルームミラー上部にある小さなミラー。子供やペットを後席に乗せたときに、状況確認できるこのミラーは実に便利です。

逆に気になるところ

1番気になったのは、ドアの開閉ボタンがダッシュボード上、ハンドルの右にあること。つい、窓を開けるつもりで触ってしまいます。おかげで、停車中ならドアが開いてしまうことに。パワーウインドの操作スイッチは、欧州車によくあるようにセンターコンソールに2つ並んでいます。
もうひとつドアに関係する内容で、ドアが開いているとパワーウィンドが動かないこと。ドア前部にある接点がAピラーにあるプレートに触れることで導通する構造なので、ドアが開いているときは通電しません。
たとえば“降りるつもりでドアを開けたら窓を閉め忘れていた”なんてときは、一旦ドアを閉めて窓を閉め切り、もう一度ドアを開けなければいけません。
リモコンで窓も操作できれば、そのまま降りてドアを閉めてから窓を閉めれば良いので、改善できればさらに使い勝手が向上すると思います。

今からでも乗れる?

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手に入る?

残念ながら、すでに生産終了していますので、新車では手に入りません。
中古市場ではどうでしょうか。某サイトを覗いてみましょう。日本中に90台の中古車がありました。最終モデルにあたる2008年式の1.4Lモデルで50万円程度でした。やはり1.6Lモデルの方が多少高いですが、それでも60万円台からありました。

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維持できる?

これが一番気になるところ。私が7年間で体験したトラブルをご紹介しますね。
その1 電動スライドドアが開かない!
これは、大がかりな機械が壊れる訳ではなく、“ドアが閉まっている”を検出する小さなスイッチが壊れると起きます。7,000円程度の部品と交換工賃が10,000円前後で直ります。ちなみに7年間で左右1回ずつでした。
その2 クラッチアクチュエーターの交換
これも1007では定番のようです。上述したとおり、車がクラッチを操作しています。人の足がクラッチペダルを踏み込む代わりに、油圧で押し込む“アクチュエータ”という機械が付いています。
走行距離が5万キロを迎えるころに異音が出るようになりましたので交換しました。万一これが動かなくなった場合はクラッチが切れないわけですから、街の中で立ち往生することになりますので走行距離にはご注意を。
トラブルらしいものは以上です。
あとは一般的なルーティンの交換部品をこまめに換えることですね。とは言ってもタイミングベルト関係が10万キロごと、オイル類とブレーキは適宜というくらいです。
ちなみにこんな小さな車でも4輪ディスクブレーキですので、オイル管理とパッドの残り厚さを確認していればトラブルにはなりません。
ということで、意外にも少ない出費で乗り出せそうですね。
生産終了からすでに7年経過していますので、カメレオキットを初めとするアクセサリーも生産していないでしょう。オークションやネット通販でデッドストックが見つかれば良いのですが、程度の良い中古品でも見つけられれば買いですね。
消耗部品は、106や206、などと共用していますので、まだまだ入手困難になることはないでしょう。

最後のまとめ

プジョーの“新しいコンセプト”を背負ってデビューした1007の魅力、伝わったでしょうか。各部に“本気”が見て取れる意欲作のはずですが、後継車が出ないところをみると成功ではなかったようですね。今ではプジョーの4ケタはクロスオーバーの代名詞になっていますが、初代4ケタモデルの目指したところをご理解いただけたなら幸いです。