【プジョー 106】フランス流 “韋駄天” ホットハッチ

かつて日本には“韋駄天ターボ”と名付けられた車がありました。本来は5ドアハッチバックの小型大衆車として開発されましたが、後に元気なエンジンを積んだ3ドアモデルが追加されました。その走りはまさに“韋駄天”。ところ変わっておフランスでも似たような出生の車がありました。プジョー106という小さなハッチバック車です。

プジョー流ホットハッチ

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC

PEUGEOT 205 GTI

みなさん、“ホットハッチ”ってわかりますか。もう死語なのでしょうね。筆者の青春時代はホットハッチ全盛期でしたので、この言葉だけでもワクワクしてきます。
そもそも“ホットハッチ”に確固たる定義はありません。ただなんとなく、安価な大衆車をベースにしながら“普段使いに不自由せず、ひとたびムチを入れると結構速くて楽しめる”というイメージです。
そのルーツは、1977年に登場したフォルクスワーゲンゴルフGTIだと言われています。5ドアハッチバックの小型大衆車としてデビューしたゴルフに、格上性能のエンジンを搭載したGTI。人や荷物をたくさん載せて走り回れる便利さと、右足の理性を取り払えば下手なスポーツカーよりも元気な一面を併せ持つ、なんとも魅力的な車でした。
遅れること5年。プジョー初のホットハッチは205GTIです。ゴルフ同様に5ドアハッチバックの小型ファミリーカーとして開発された205に、1.6L/105psエンジンを搭載していました。この車はヨーロッパ中で受け入れられ、大ヒットモデルになりました。
日本でも“お洒落なフランスのスモールハッチ”としてテレビドラマや雑誌で使われ、日本ではほぼ無名だったプジョーの名をメジャーにした立役者と言ってもよいでしょう。

205の後継者

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%BB106

PEUGEOT 106 XS

そんな大ヒットモデル205でしたが、1990年ごろから欧州でのハッチバック車を取り巻く環境が変わったことで、そのニーズにそぐわなくなっていました。プジョーは急遽その後継車を二手に分ける戦略にでます。わずかに小さいながらもほぼ同格の106と、ひとまわり大きい306です。306はゴルフなどのCセグメントに投入されました。
プジョーの通例に習えば、205の後継車は206のように思えますが、旧態依然の時代遅れ感ただよう104の後継車と、309を代用していた3シリーズの後継車を急いだためだと思われます。
以降も205の生産は並行して続けられ、1998年に206にバトンタッチしました。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%BB104

PEUGEOT 104

リリースされたホットハッチ

こうして106が誕生しました。104の後継車としてフランス本国では1991年に登場。ヨーロッパ市場では3ドア&5ドアの構成で、エンジンは1,000cc~1,300ccを中心にしたファミリーユースターゲットの設定でしたが、1,400ccのインジェクション搭載車であるXSi(後にXSiは1,600ccに移行)が用意されました。
205GTI譲りのサイドプロテクトモール一体のオーバーフェンダーが特徴的なホットハッチはXSiと名付けられました。
日本では1995年に106XSi(1,600cc)のみが限定販売されました。

フェイスリフトでよりスタイリッシュに変身

1996年にフロントマスクの変更等のフェイスリフトを受けました。これに伴って1,600ccのDOHC16バルブを用意するという、非常に充実したラインナップになっています。この1,600ccDOHCのモデルは“106S16”と名付けられましたが、“S”はフランス語で弁・バルブを意味する“Soupape(スパップ)”のSをとったグレード名なのだそうです。てっきりスポーツのSだと思っていました。
骨格は変わっていないものの、格段に高められたボディ剛性もあいまって、プジョーのラインナップの中でもスポーツ性の高いモデルとして人気者になりました。
日本では106S16のみが輸入されました。当時からプジョーは日本向けには右ハンドルが原則で、イギリス向けなど右ハンドル仕様の106自体は生産されていたのですが、設計上日本向けに必須のカーエアコンを装備できなかったため、姉妹車のシトロエン・サクソと同様に、左ハンドルのまま輸入されていました。
日本仕様S16には1998年に「日本におけるフランス年」を記念したモデル『セリー・スペシャル1998』(250台限定)や、2002年の最終輸入仕様『リミテッド』等の特別仕様車が存在しました。『セリー・スペシャル1998』には、インディゴブルー、ビアンカホワイト、チェリーレッドのフランス国旗をイメージしたボディカラーが用意され、106のスポーティなイメージにはソリッドカラーがよく似合いました。
このうちインディゴブルーは正規輸入車にも存在しましたが、ビアンカホワイトは他にRallyeとリミテッドにしか存在しない希少な色です。
チェリーレッドにいたってはこのセリー・スペシャルにしか存在しない大変希少な色です。

日本車で言えば、スターレットやマーチ程度の大きさの車に1.6LDOHC16バルブエンジンを押し込んだ2代目ホットハッチは、このクラスとしては235万円という高額な定価設定にも関わらず永らく入荷待ちが続いたのでした。

並行輸入車

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%BB106

PEUGEOT 106 Rallye

106は、ヨーロッパではたくさんの限定仕様車が用意されました。なかでも競技用の“ラリー”、本革仕様の“グリフ”は日本へも数台輸入されました。
106ラリーは、基本的に競技参加用のモデルですが、走行快適性もそれほど犠牲にされていませんでした。エアコンレス、パワーウィンドレス、パワ-ステアリングレスにより810kg迄軽量化されたボディにより軽快な運動性能で、ホットハッチファン垂涎の1台となったのでした。初期型は1,300ccでしたが、マイナーチェンジに合わせてS16と同形式のDOHCエンジンが搭載されました。エアコンはオプションで装着可能で、特に後期型のラリー16Vは並行輸入を行なっていた有名ショップが装着して輸入していたおかげで、エアコンの装着率が高いいです。依然として軽量ではあるものの、エンジンも共通なためS16との違いは大きくないですが、ビアンカホワイトを求める声が多かったのも並行輸入台数が多かった理由のひとつでしょう。
106グリフ(Griffe)は、本革貼りの室内とメタリックカラーの高級仕様です。“グリフ”とはライオンが“縄張りを示すために印した爪痕”を意味します。つまり、プジョーの威厳を表した高級指向モデルなのです。イメージにふさわしい淡い色調の本革張りのインテリアや、ボディカラーもシルバー、栗色等シックなものを用意し、1,600cc(SOHC)エンジンを搭載していました。3ドア、5ドアともに存在しましたが、マイナーチェンジ前の限定仕様だったため、日本には数えるほどしか輸入されていません。

出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%BB106

PEUGEOT 106 Rallye16

乗ってみる?

出典:http://peugeotcabriolet.seesaa.net/category/2282050-1.html

XSi、S16ともに所有していた時期がありますので、当時の記憶を呼び出しながらのインプレッションです。
106は“小さい・速い・面白い”の3拍子。これ以外に言葉が見つかりません。とにかく運転するのが楽しいのです。左ハンドル・M/Tにも関わらず、とにかく楽しい。なのに実用性はなにひとつスポイルされていないのが106のすごいところでしょう。
小振りな3ドアハッチバックのボディは、大人5人をちゃんと飲み込んでくれます。このサイズでもリヤシートは分割可倒式ですから、シーンに合わせてラゲッジ容量を調節できます。
コンパクトなボディは、狭い日本の道でも気兼ねなくどこでも入っていけますし、この使い勝手の良さは他にはなかなか見つけられません。
クラッチ、ギヤシフト、アクセル、ハンドル、その他諸々の操作系はとても軽く扱えますので、か弱い女性でもきっと問題なく扱えることでしょう。
実際女性のオーナーもたくさんいらっしゃいましたので、お洒落なフレンチコンパクトがお気に召したのなら、臆せず挑戦してみてください。
確かに日本で左ハンドルは少々使いにくいかも知れません。ですがこのサイズ。しかもとても見切りの良いボディデザインも相まって、まったく苦になりません。追い越し&右折時はたしかに対向車が見にくいですが、少し身体を乗り出せば右端まで移動できるので問題なしです。
1トンを切った車重と元気に回るエンジン。そして小気味よく“スパッ”ときまるシフトフィーリング。何から何までドライブを楽しくしてくれる要素ばかりです。
シフトと言えば、106のトランスミッションは2~4速のギヤレシオが近い(クロスレシオ)ので、街乗りでもシフトチェンジが楽しくなるんです。A/Tなんかじゃもったいない、そんなフィーリングです。
XSiとS16ではエンジンフィールが違いますが、トルクフルでガンガン出て行くXSi、ぶんぶん回って元気に走るS16、といった感じでしょうか。
どちらも乗っていてストレスを感じない、とても楽しいフィーリングです。決して強大なパワーの持ち主ではありませんので、危険な領域に突入することがないのも106の良さかも知れませんね。

残念ポイントはないの?

と良く聞かれますが、笑ってしまうくらいダメポイントがないんです、106は。強いて挙げるとすれば、ふたつあります。
ひとつは、今の基準で考えれば、ドアロックのリモコン信号の到達距離が短いこと。ほとんどドアの横までいかないと届きません。正直、これならキーで施解錠するほうが早いくらいですね。
もうひとつは、内気/外気を切り替えるフラップを動かしているアクチュエータが頻繁に壊れることです。本来は切替が終わったらモーターも止まるはずなのですが、内部でギヤが壊れてモーターはずーっと動きっぱなしになります。空回りしているので、フラップ自体は動かないんですけどね。設計段階で改善できたのではないかと思います。
もうひとつ(ふたつじゃないんかい!)はシーン限定ですが、鈴鹿サーキットを走行した際にメインストレートを下りながら“6速が欲しい!”って叫んでいました。5速では見事に吹けきっていましたね。

いまからでも楽しめる?

最終モデルでも2003年ですからすでに12年経過しています。心配になる気持ちもわかりますが、実はこの106はなかなかのタフガイなんです。私が乗っていたXSiは12万キロを超えるまで乗っていましたし、その後譲った先でもさらに7万キロ程度乗られました。
メカニック時代には、10万キロを超えた106S16を何台もメンテナンスしていました。もちろん、定期交換が必要な部品はいくつかありますが、言い換えればそれらをきっちりしてあげれば、大きなトラブルが起きる車ではありません。
走行距離よりも、むしろ事故の修復具合などに気を遣った方がよいかもしれません。
上述したとおり元気に走り回る106ですから、“ちょっとぶつかっちゃった”レベルの事故を経験している可能性はあります。修復の段階で手抜きをされていると、見えないところで症状が悪化していることがあるかもしれません。

探してみましょう

出典:http://www.gooworld.jp/car/PEUGEOT/106/GF-S2S.html

まずは某中古車サイトで検索です。

中古車をお探しの方はこちら

11月25日現在、日本全国で37台の106が出てきました。ほとんどがS16ですが、中にはラリー(1.3L)も混ざっていますね。個人的にはテンサン(1.3L)ラリーに興味がありますが、みなさんにオススメするのはやはりS16かラリー16Vにしておきましょう。
年式にして1997年~2003年、走行距離にして8,000キロ~16万キロ。各色取りそろえてお待ちしております、という状況です。もちろん新しいに越したことはありませんが、ボディカラーも好みが分かれるところですよね。
最終限定リミテッドでしたら、インディゴブルー、ビアンカホワイト、サンダンスイエローとソリッドカラーが揃います。通常モデルには、シルバーをはじめメタリックカラーが揃います。たくさんのアフターパーツで、貴方好みにカスタム出来るのも大きな魅力ですね。

最後のまとめ

いかがでしょう。106の魅力が伝えられたでしょうか。“壊れやすいフランス車”のイメージからはほど遠い車です。エンジンやトランスミッションなどの機関関係は丈夫にできていて、定期的なメンテナンスを怠らなければ10万キロオーバーでもぜんぜん平気な顔をしています。
なによりも、サイズ感といい使い勝手といい、日本の街中で使うのにとても良いバランスの車です。
そして、残念ながら代わりになる車が見つからないという欠点(?)もあります。だからこそ、いまだに106オーナーは乗り続けているのでしょうね。