全日本フォーミュラ3選手権、世界一を目指すハードな登竜門のルールなどをまとめ!

カーボンモノコックに装着された先進の空力パーツ、そして4本のスリックタイヤ。超本格的レーシングに必要な要素の全てが盛り込まれた『フォーミュラ3』のマシン。若手育成やヨーロッパ進出のための登竜門であると同時に、現在ではプロレースの世界にも近づく、そんな『F3』は知る人ぞ知るエキサイティングなカテゴリー? 今回は、その「もう1つのフォーミュラ」について見てみましょう。

ところでまず、「F3」ってご存知でした?

photo by dkikuchi

エフ?

「イチなら聞いたことあるけど、2とか3もあるんだぁ、へぇ〜そうなんだぁ」、と仰る向きも意外にたくさん居らっしゃるかもしれませんね。そう、自動車レースの『F』の次につく数字の話です。

大概の人が名前だけは聞いたことのある『F1』。この知名度の高さは、それにかかる巨額予算のインパクトに加えて、ドライバー達の持つ高い資質が支えていることは言うまでもありません。そして、その特別な才能を社会から掘り出すための、ある意味で直接的な登竜門となっているのが『F3』というカテゴリーなのです。

ちなみに、『F』とは、英語の『フォーミュラ(規格)』の頭文字をとたものです。したがって、我々の『F3』も正式名称は、『全日本フォーミュラ3選手権』となります。いわゆるフォーミュラ・カーと言うのは、座席が1つだけで、サスペンションアームとタイヤがむき出しのレース専用車のこと。エンジンはドライバーの後ろに搭載し、一般的に車体の前と後ろに空力のウィングが付いている、「F1タイプのクルマ」です。

このレースシリーズには、『FIA(国際自動車連盟)』が世界的なルールを決め、それに従う形で『JAF(日本自動車連盟)』が国内で有効なルールを策定しています。更にその上位ルールに従う形で、『日本フォーミュラスリー協会(JF3A)』が統一的な解釈を、さらに各レース大会ごとに特別規則書が策定され開催されるのが『F3』レースなのです。

さて、その車体には各部の寸法から使用可能な材質まで、こと細かくルールで決まっています。そしてそれに違反しなければ、性能アップのために何をやっても良い訳です。という訳で、以前は何社かのコンストラクターが技術で競い合ってもいましたが、現時点では世界的にイタリアの『ダラーラ社』の独占状態となっているようです。

日本独自のF3、それがNクラス

現在の『F3』は、空力処理などを含めた車体の技術レベルが非常に高いものとなっています。これは、裏返せばコスト高につながり、ルーキー達に対する参戦の門戸も閉じることになりかねません。

そんなことにも配慮して、『日本フォーミュラスリー協会』は、『F3』の中のエントリークラスを設定しました。これは、日本独自に策定したクラスで、名称を『Nクラス』と言います。何年か以前のシャーシを使って競い合うことにして、出来るだけコストをかけなくても参加できるクラスとなっています。

以前は、このクラスには別個にJAFのタイトルがかかっていましたが、2016年にはクラスの壁を取り払い全車が『全日本選手権』の対象になりました。とは言え、それでは弱者救済にならないので、現在は『日本フォーミュラスリー協会』独自で最優秀選手を選ぶ形がとられています。

世界基準の登竜門レース、それがF3

『F3』自体が、ほぼ世界共通の規格であり、従って各国内での成績も世界基準と言えることになります。ということは、『F1』などの国際的上位カテゴリーが若手を評価する良い基準でもあります。と言う訳でもちろん、ドイツ、フランス、イタリアなどのモータースポーツ先進国でも、活況を呈しているのが『F3』です(一部でヨーロッパF3へ併合する流れもあります)。

その中でも特にレベルの高さで有名なのが、「イギリスF3」でしょう。この大会は、実質的な「F1ドライバー・スクール」とも言えるレースシリーズ。過去には、ジャッキー・スチュワートやネルソン・ピケ、そしてアイルトン・セナらもこのリーグでチャンピオンを獲得。その後、フォーミュラ1のワールドチャンピオンへ昇りつめています。また、日本人として忘れてはいけない「英国F3チャンピオン」としては、佐藤琢磨(元F1ドライバー、現インディードライバー)もいます。

歴史をたどれば、1979年にほんの数台で有志が始めたという日本の『F3』も、いまや世界基準という呼び名に恥じないレベルに進化・成長したと言えるでしょう。

F3界の頂上を決める、それが伝統のマカオグランプリ

色々な人が色々な所で切望する、日本国内での公道レース。しかし、これほど時代が進んだ今でも、なかなか実現の兆しは見られません。まぁ、それなら近場の外国へ観戦に行きましょう…。

そう、そのレースこそ、1950年代に開始されたという伝統をもつ、あの『マカオグランプリ』。マカオの湾岸部を特別に閉鎖して、年に一度だけ開かれるこのレースの祭典には、世界中から強者の(そして野心に溢れた)F3ドライバーが集まり世界最速をかけて戦います。

全長で6kmを超え、直線と高速コーナーに加えて、追い越し禁止となる狭い区間まで存在するという超難関。それがこのグランプリの舞台となる『ギア・サーキット』です。もしF1ドライバーを目指すなら、この市街地コースを攻略することは必須とも言えます。
そんな訳で過去には、アイルトン・セナやミハエル・シューマッハという偉大なF1チャンピオンや、日本人F1ドライバーの佐藤琢磨も、このレースに挑み勝利を収めています。

一番速い者を決定するために必要、全日本フォーミュラ3選手権のルール

自動車レースがスポーツである以上、しっかりしたルールは不可欠です。そして観戦する側としても、ちょっとルールについて学んでおくと、レースの見方がぐっと深くなるかもしれません。

レースの形態

速さを競うためだけに作られるマシン、それがフォーミュラ・カーです。したがって、そのレースの形態もひたすらスピードを競う「スプリントレース」となります。
JAFの定める『国内競技規則』には、『F3』のレース距離も明確に定められています。それによれば、1ヒート制レースの場合は最短で65km、最長で100kmまで。2ヒート制の場合は、(各ヒートが)最短で65kmの最長は75kmまでで合計距離が150km以内でなければいけません。100kmという距離だと、鈴鹿サーキットを17周程度ということですから、やはりそうは長くないレースと言えるのでしょう。それだけに、スピードが肝となる訳ですね。

最近の『全日本F3』は、一回の週末に2レースを開催するフォーマットになっていて、最短距離に近いレースと最長距離に近いレースの2種類を組み合わせて行うことが多い様です。そのそれぞれスタート順を決めるため、土曜日に10分間づつの公式予選(10分間のインターバルあり)を行います。

タイヤ

フォーミュラ・カーの使用するタイヤは、基本的には溝の掘られていない『スリックタイヤ』。そして、最近のレースでは、その本数もしっかり制限されています。『日本フォーミュラスリー協会(JF3A)』の統一規則を読むと、プラクティス開始から最終レース終了までの間に一台のマシンが使える本数は、(1および2レース製で)最大2セット(前輪4本と後輪4本)となっています。タイヤのグルービングなど、一切の加工は禁止です。

また、全車両には『ヨコハマタイヤ』が供給する共通のコントロールタイヤ仕様が、義務付けられています。

車体

出典:http://j-formula3.com/about/about2.html

ダラーラ社の『F312』の場合だと、全長4,351mmに全福が1,845mm、そして全高が945mmとうサイズになるのが『F3マシン』です。ホイールベースは2,800mmということで、クルマとしてみても迫力あるスタイリング。

サスペンションは、当然のことながら前後ともにダブルウィッシュボーン式の独立懸架。ただ、フォーミュラ・カーの場合は、ホイールからダンパーが切り離されているのが面白いところです。そのためタイヤの上下動は、長いロッドを伝わった後ロッカーアームで向きを変え、車体に取り付けられたダンパーへ導かれる構造となっています。(ダラーラはプッシュロッド式)

エンジンのマウントは、『F3』も『F1』とまったく同じと言って良いでしょう。ドライバーが収まるモノコックの後ろにエンジン、そしてその後ろにギヤボックスを配置する、ミッドシップレイアウトとなっています。

車体の最低重量は565kgとのことです。

エンジン

ある意味で、日本はレーシングエンジン大国かもしれません。F1やインディにも、そしてル・マン24時間にも、日本ブランドのレーシングエンジンが多く使われています。

と言う訳で、次世代のトップレーサーを育てる『全日本フォーミュラ3選手権』が採用するエンジンも、その全てが日本製。2016年のシーズンでは、『TOYOTA TOM'S製の TAZ-31』と『HONDA製の MF204D』、そして『TODA製 TR-F301』という3機種から選べることになっています。これらは全て、2.0L直列4気筒DOHCの気筒内燃料直接噴射エンジン。それに、無為な出力競争が起きないよう、吸気のリストリクタ(制限器)が付けられています。とは言え、現在のF3エンジンは既に240馬力に到達しているのが現実。600kgにみたない車体重量ですから、そのパフォーマンスもなかなかでしょう。

ひょっとして、世界一への近道かも? 日本のF3

現役のインディカードライバーである、佐藤琢磨。『SGT』、『SF』、『WEC』などで活躍中の中嶋一貴。そのどちらも、日本の『F3』から巣立って『F1』への出場を成し遂げました。彼らが築いた『全日本F3』の評判は世界的にも有名。2016年のシーズンには、ル・マン24時間やスパ24時間などで表彰台経験もある強者、ヤン・マーデンボロー(英)が参戦したりしています。

ここ数年で言うと、2014年の『全日本F3チャンピオン』松下 信治は、現在海外で『GP2』と言うフォーミュラレースで修行中。これもまた、成績がF1へのステップアップに直接影響するという、ハイレベルなシリーズです。また、2015年のチャンピオンであるニック・キャシディは、日本の『GT500』にシートを得て、毎戦熾烈なバトルに身を投じています。

競争もレース技術的にもレベルが高い『全日本フォーミュラ3選手権』は、海外の関係者にとっても無視できない存在なのです。

まとめ

日本や世界で、年々ハード&ソフトのレベルがアップし続けている『フォーミュラ3』。上位のプロが運転するカテゴリーより、熱いバトルに発展することもしばしばみられます。

最近では、『スーパーフォーミュラー』のサポートレースとして開催されることが多いF3。しかし年に1戦、富士スピードウェイでは、F3が主役のイベントも開かれる(すみません、現時点で既に開催済です)ようです。そちらは入場料も手ごろで、他のレースとも併催されるので、モータースポーツ観戦初心者の方にはうってつけのイベントだと思います。

とにかく、日本からF1へステップアップするには、かならず通らなければいけないと言ってよいカテゴリー。これからますます盛り上がることを期待しています。

全日本フォーミュラ3選手権のスケジュール、レギュレーションやエントリーリストなど

スーパーフォミュラだけじゃない、実は奥深い日本のモータースポーツ界についてを解説。